表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/33

17 開幕。運命の断罪式

誤字脱字報告、ありがとうございます!

ここから断罪編、真相解明編となります。

最後までお付き合いいただければ幸いです。

 エルヴィン王太子殿下の17歳誕生パーティ会場は、王宮の大ホールで開かれる事となった。

 パーティ開催は夕刻からで、この国の多くの王族や貴族、官位を持つ者が集められていた。


 今日この日はエルヴィン王太子殿下のお父上、つまり国王と王妃の両陛下もいらっしゃるという事で、断罪をするのには打ってつけの日である。


「……ビアンカ」

「はい」

「ありがとう、私の我が儘を聞いてくれて」

「いえ、私は当たり前の事をしたまでです。何故なら私はイリーシャ様ではなく、アメリア様の家庭教師なのですから」


 王宮エントランスホール、受付口に並ぶ列で私はビアンカにそう礼を告げた。


 ビアンカはリセット家の家庭教師であり、子爵家の令嬢でもあるので貴族として堂々と参加する事を許されている。私はビアンカの遠縁という事になっているので問題なく会場入りできた。(ちなみに父マルクスと母ナタリーは、ビアンカとは別行動でこの会場にいる)


 今日、私はアリア・テイラーとして参加している。髪型や髪色はアリアの格好だが、ビアンカ特製の顔の特殊メイクは今日は落としている。何故なら今日は仮面舞踏会なので仮面で目元を隠しているし、今日は正体を明かすつもりで来ている。仮面を取り外すだけで私とわかってもらうには、顔のメイクはしない方が良いと考えたのである。

 殿下は今日の自分の誕生パーティを仮面舞踏会で催したかったらしく、その為このパーティにはマスクの着用も許可されていたので、メイク無しでも上手く顔を隠せると踏んでいたのだ。


 それだけではない。私は今日、私が一番大切にしている代々リセット家の令嬢に受け継がれ続けてきた、()()()()調()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のドレスを着用している。

 何故なら、私にとってこれがある意味私のデビュタント(社交界デビュー)になるからだ。


「皆! 今日はよく集まってくれた! 今宵は私の17の誕生祭だが、私への祝辞はほどほどとして、まずは食事と会話、それに踊りを存分に楽しんで欲しい!」


 エルヴィン王太子殿下の挨拶によって運命のパーティが開かれた。何故、今日を仮面舞踏会にしたのか、私にはすぐに理解できた。

 エルヴィン殿下の隣に座するマスクを着けた女性。おそらくイリーシャだ。彼女を婚約者として仰々しく発表する為の、殿下のつまらないサプライズ、といったところか。


「ねえねえ、殿下は今フリーなのよね。今夜のパーティで目をつけられたら玉の輿、ありえるんじゃないかしら!?」

「無理無理。あなた知らないの? 殿下はあの悪女で名高いアメリアと婚約破棄する前から意中の女性がいたのよ。ほら、あそこに座っているでしょう?」


 というような女子たちの囁きがあちこちから耳に入る。

 予想通りね。イリーシャを婚約者として発表するつもりなんでしょう。

 とにかく今はまだパーティを楽しみましょう。

 私はビアンカと目を合わせ頷く。


 ちなみにクロノス様もすでにこの王宮大ホール内にいる。私たちと一緒にいるのは目立ってしまうので、彼はひとりでここに参加したように見せかけている。

 が、お互い目に入る位置にいるようにしている。


「ねぇ! クロノス様おひとりよ。ダンスが始まったら声をかけてみましょうよ」

「えー、やめておいた方がいいわよ。なんでも数日前にクロノス様を誘った女子は振られたって話みたいだし」

「え? じゃあまさかお相手がいるのかしら」

「なんでも悪女と付き合ってるらしいわ。クロノス様を振った女子たちがひっきりなしに話していたもの」

「悪女って……まさか例の?」

「もしそうだったら凄いスキャンダルよね」


 そんな会話が私の傍で繰り広げられている。

 クロノス様の人気は相変わらずだが、すっかり悪女にたぶらかされてる、みたいな風評が広がってしまっていますわね。

 けれど我慢。今はまだ動く時ではないのだから。



 そんなこんなでパーティは食事会、交流会、そして舞踏会と特に問題も起こる事なく進行していき、皆がダンスをひとしきり堪能した後。


「さて、皆の者! ここで少々素晴らしい報告がある!」


 いよいよエルヴィン王太子殿下が新たな婚約者を発表するタイミングが訪れた。


「薄々勘づいている者もいるであろうが、この私の隣にいる淑女。彼女が私の新たな婚約者である!」


 会場がざわめきだす。

「さあ、前へ」

 仮面を付けた少女がエルヴィン殿下の手を取り、一歩前へ歩み出た。

 そして仮面を外し、


「皆様、ご機嫌麗しゅう。私が此度エルヴィン殿下の新たな婚約者となりましたイリーシャ・ウォン・リセットですわ」


 と簡単に自己紹介しつつ、流れるような美しいカーテシーで挨拶を行なう。

 その挨拶を聞いて更に会場はざわめきを増す。


「リセットって……あの悪女の妹?」

「やっぱりそうよね、あのアメリアの妹よ!」


 そんな声があちこちからあがる。


「皆、よく聞け! 彼女はリセット家の令嬢でアメリアの妹ではあるが、あの悪女、アメリアとは正反対のまるで聖母のような人格者なのだ。彼女は長年異母姉妹の姉であるアメリアに虐められ続けてきた。そんな彼女を憐れみ、私が相談に乗っているうちに私は真実の愛を見つけてしまったのだ。その相手こそがこのイリーシャだ!」


 虐め? 私が?

 ないない、した事ないんですけど。


「お姉様はお妃教育の日々が嫌になり、ストレス解消だと言っては私を影で虐め、それだけに飽き足らず、あちこちの殿方とも付き合うようになりました。その現場を私は殿下と共に見てしまい……」


 なるほど、それで先日の私の浮気現場の映像を、と。


「そういう事だ。話せば長くなるからこれ以上は割愛する。加えて言うならイリーシャはアメリアと違って優秀な宮廷魔術師にもなれるほどの才能の持ち主だ。私と共にこの国を支えていく事は間違いないだろう。とにもかくにも、私の将来の妻は彼女以外にありえないッ!」


 わぁッと会場が湧き上がった。

 うーん、この清々しいほどの私の悪役令嬢っぷり。聞いてて笑っちゃいそうになりますわぁ。


 ま、でも頃合いよね。

 そろそろ始めましょう。




 本当のパーティ(断罪式)を。





この作品をご一読いただき、ありがとうございます。


もし読まれてみて面白かった、続きが気になると思われた方は、この下にある【☆☆☆☆☆】評価とブックマークなどで応援してくださると嬉しいです。


誤字脱字報告や些細な感想まで全て受け付けておりますので、遠慮なく頂ければ幸いです。

よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすくて面白い [気になる点] 続き! [一言] 断罪編!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ