第13章 シン・ニンゲンヘイキ
タチカゼのカタナとジーンの剣が鈍い金属音を立てぶつかり合う。
「こいつは俺がやる!皆はそっちのデカ物を頼む!!」
ジークフリートはゆっくり歩みを進める。
「頼むって言われても・・・こいつをすか!?」
コルチャはつばをゴクリと飲み込んでジークフリートを見つめる。
ジークフリートは槍だけでなく剣や大砲など様々な武器を
背中に背負っている。その姿が更に彼を大きく見せていた。
「帰りたい・・・」
「バカな事言ってないで行くよ!」セツナがコルチャの
背中を思いっきり叩いた。
「いてぇぇ!・・・覚悟決めるっす・・・」
タチカゼとジーンは何度か剣を交えた後、顔を突き合わせる。
「タチカゼちゃーん・・・君、僕と一人でやるつもり?なめられたもんだね!!」
ジーンは剣でタチカゼのカタナを押し込む。
「そうですけど、なーにーか問題が!!」
タチカゼはおもいっつきりジーンの剣を押し返した。
押された勢いでそのままジーンは距離を取り、地面に下りた。
そこにタチカゼは追撃を加える。
「不知火流一刀『風車』!」タチカゼはジーンの目の前で縦に回転、そのまま
の勢いでカタナを振り下ろす。ジーンはかろうじて剣で受け止めるが、勢いの
強さに体勢を崩した。そこにタチカゼのカタナが振り下ろす。
ジーンは何とか体を捻りかわそうとするが、交わしきれずに胸を
斬りさかれた。ジーンはチッと舌打ちをする。
「一人が・・・何だって?」タチカゼ不遜なたたずまいでカタナ
でトントンと肩を叩く。その間にジーンも体制を整える。首をコキコキと音を立てながら回す。
「・・・君を舐めてたわ、本気でいくわ!」
といった瞬間、ジーンの姿はタチカゼの目の前から姿を消した。
『何!?見えなかった、どこから来る!?』
その時、背中が熱くなり鈍い痛みが走る。「くっ・・・!」「ははっ!!」
タチカゼはバックステップでジーンから距離をとる。唯一の救いはすぐに傷口の再生が始まる所だろう。「痛って・・・」タチカゼはカタナを構え直し、ジーンを睨みつける。
ジーンはため息を吐いた。「あーあ、やはりニンゲンヘイキ同士だと傷口がすぐ再生されちまうからキリがねぇなあ。」肩にトントンと剣をあてる、どうやら癖らしい。
「なぁ、お前がもう一人のタチカゼという事は分かってる。分かってる上で聞くが・・・イド帝国に
戻って来い、それが俺達ニンゲンヘイキの本懐だ。」
「嫌だね!」タチカゼは間髪いれず答えた。「ニンゲンヘイキの本懐だぁ?お前がそんなもん、勝手にきめんなよ!俺は俺の信じた道を行く、それだけだ。」
「ま、そういうと思ったよ・・・タチカゼちゃん、ここから先は手加減できないわ。」
「それは、俺もだよ!!」
二人は同時に地面を蹴って突っ込んでいった。カタナと剣がぶつかった瞬間、眩く火花が飛び散った。