第11章 ー偽りー
「ほんと世話かけちまったな、すまん」タチカゼは頭を下げる。
「まったくホントだよ、頭の癖に何やってるんだか・・・いてて」
セツナは斬られた腹部を抑える。
「おい、大丈夫か!?」タチカゼはセツナの背中を支える。
「心配ないよ、そんなに傷は深くないさ」セツナは笑顔を見せた。
「お前は基地に戻れよ、俺は残りのヘイキどもをぶっ飛ばしてくるぜ!一人で戻れるか?」
セツナはサムズアップで答えた。
タチカゼは乱戦している方向へ駆け出した。
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「くっそ!キリがあらへんな!!」サルトビが文句をたれ続けている。
「あんたは根性が足りないんだよ!もっと気合入れな!!」カエデの激が飛ぶ。
「ハア、ハア、そんないうんてもやな・・・」「サルトビ!上!!」
「ハ!?」上を見上げると上空から剣を振り上げニンゲンヘイキが襲い掛かってきた。
「うおおい!!!」サルトビは完全にふいを付かれ防御が間に合わない。
その瞬間もう一つの人影がニンゲンヘイキの胴を真っ二つに切り裂いた。
「お、お前は!」「タチカゼ!?」驚くサルトビとカエデ。
「サル兄、カエデ姉!悪い、迷惑かけた」タチカゼはカタナを構えた。
「さあ、名誉挽回といきますか!」と言うと同時に3体のニンゲンヘイキを切り捨てた。
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「ハァ、ハァ、ハァ・・・終わった・・・か?」
「ハァー・・・どうやらそうみたいやな・・・疲れた・・・で」
サルトビはその場で仰向けに倒れ込んだ。
「ハァ、ハァ、タチカゼ・・・ほんとにもう大丈夫なの?」
カエデが心配そうな顔でタチカゼに問いかける。タチカゼはカタナを鞘に収めながら
「ああ!カエデ姉、すまん!迷惑かけた!!もうほんとに大丈夫だから」
「ハァー・・・そう・・・」
カエデもそれを聞いて安心したのか、腰から砕けるようにその場に座り込んだ。
「我ながらやれやれだ・・・あああああぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!」
「うおおぉぉい!なんやねん、急に!!?」
サルトビは身体を半身起こしてタチカゼに怒鳴りつける。
「こんな事してる場合じゃねぇんだよ!!!急いでみんな集めないと!」
「なんや、どういう事やねん!?」
「とりあえず二人共、中へ。みんな集まったら説明する」
サルトビとカエデはなんとか重い腰を上げ、要塞の中へ向かった。
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「はぁー、僕のいない間にそんな大変な事になっていたんすか!?」
別任務についていて、要塞を離れていたコルチャが感嘆の息をもらした。
「・・・誰だ?」
タチカゼが至極真っ当な質問をする。
「あたしの弟子のコルチャだ。んで、こっちが蒼の風頭領のタチカゼだ」
セツナが簡単に説明を入れた。
「おお!あなたがうちのボスっすか!コルチャっす、まだまだ未熟ですがよろしくですます!」
コルチャは少々緊張しているようだった。
「そうなのか!戦力は一人でも多いほうがいいからな、よろしくな!」
「は、はいっス!!!」
コルチャは少し顔を紅潮させながら答えた。
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タチカゼ達は化学班の元へ向かった。「足」を手に入れるためである。
力任せに化学班のラボの扉を開く。
「じいちゃんいるかい?」
「なんじゃい!?扉はもっと静かに開けろと・・・お前、タチカゼか!?
敵の手に落ちたと聞いていたが・・・」
「まぁ、そこら辺は話すと長くなるんだが・・・」
タチカゼはバツが悪そうに頭を掻いた。
「その事は後で話すよ、それより火急なんだ!ジーベン、あるかい?」
ジーベンとはナノキューブを動力源とした四輪駆動車である。
「残念だったな、あれは皆出払っとるぞ。ミューなら何匹かいるが」
ミューはダチョウのような生き物で、とても穏派な動物のため扱いやすいのである。
「ミューか、この際贅沢は言ってらんないな!使わせてもらうぜ、じっちゃん」
そう言って扉に向かい一目散に駆けてゆく。そこにサルトビの待ったが入った。
「ちょちょちょ!待てやタチカゼ、こっち何が何やらチンプンカンプンや!
まずは説明せいや」
タチカゼは扉の前でぴたっと止まり、踵を返しサルトビ達に振り替える。
「時間がねぇ、簡単に説明すっぞ!イドの狙いはここじゃねえ!俺の役目はお前達蒼の風を
ここに足止めする事だ・・・やつらの本当の狙いは・・・」
タチカゼは壁に貼ってあった大陸の地図の南側を指さした。