第二十六話 500年
「あ、そうだ。ちょっとやり残したことがあって」
出発しようとしたところトールが話を切り出す。
「ん、なんだ?」
「友達と喧嘩……じゃなくて。ごほん、方向性の違いで道を違えてしまってな……」
なんかバンドの解散理由みたいだな。
「仲直りしたいってことでしょ?」
「ま……まあそういうこと」
トールって意外と普通に喋るな。というか普段の喋り方は弟みたいだ。可愛がられる理由が分かった気がする。
「でも会うの久しぶりだからちょっと楽しみ。というか僕たちどれくらい封印されてたの? おじさんになってたりして!」
「えっ! 友達ってもしかして人間なの?」
「うん、そうだけど?」
「……そっか」
重い空気が流れる。それはそうだ。トールの友達は既に死んでいる。それをみんな分かっているのだ。トール以外は。
「どうしよう……」
「言うしかないでしょうね」
ヘスティアとアネモイが小声で話し始めた。
「でもそれじゃあ……」
「いいわ、私が言う。あのね、トール。私たちは500年封印されていたの。だからその人はもう居ないわ」
「え……」
トールは信じられないといった表情でカリュプソを見つめる。
「ちょっと、カリュプソ! そんな言い方はないでしょ!」
「だって本当の事じゃない。変にごまかしてもいずれ分かることでしょ?」
「二人とも! いま喧嘩してどうするんですか!? トールに謝って下さい!」
珍しくアネモイが声を荒らげた。
「……ごめん、トール」
「私も、もっと違う言い方ができたと思う。ごめんなさい」
「ううん。二人とも僕の事を想ってくれてるのは分かってるから大丈夫」
「「……」」
「だけどちょっと一人にして欲しいかな。もしかしたら一緒には行けないかも」
そう言うとトールは精霊殿の中に戻ってしまった。
「今は一人にしてあげた方がいいんじゃないか?」
追いかけようとするヘスティアを引き止める。
「このままほったらかしにするって言うの!? 封印さえ解ければそれでいいって訳!?」
「ちょっとヘスティア!」
「いや、そういう訳じゃない。来るときに街があったろ。そこで手がかりを探そうと思って」
「そっか。ごめん」
「いや、いいよ。トールも言ってたけどそれだけ大事に想ってるってことだろ」
「そういえばさ、ずっと当たり前みたいに協力してくれてるけど何でそんなにマモルは優しいの?」
いきなりぶっこんできたな!
まあ打算的な理由は作ろうと思えばいくらでもある。この世界で守ってもらうためとか。お金を稼ぐためとか。折角異世界に居るんだから冒険したいとか。
でもそんなのは建前なのかもしれない。小恥ずかしいけど……
「楽しいからかな。こんな風に旅をするのも楽しいし、家でゆっくりするのも楽しい。お前らが笑ってくれるなら何だってするよ」
「じゃあなんか面白い話して」
「ヘスティアお前! 今いい話だっただろうが!」
「マモル君顔赤いですよ~」
「よくそんなクサいセリフ言えるわね」
「お前ら二度と飯作ってやらんからな!」
大ブーイング。しばらく話し合ってどうにか和解した。
「じゃあ絆も深まったことだし、トールを救うぞ!」
「「「おー!」」」
「なんだかんだ手伝ってくれるのね」
「なんかトールを見てると庇護欲というか、母性が呼び起こされるというか……」
「「「わかる」」」
こうして一致団結した俺たちは麓の街に繰り出すのだった。
「じゃあ自分は残ってますね~」
「うおっ! セオルか、すっかり忘れてた」
締めのセリフまで言っちゃったよ!
「ひどいっすね。まあそういうことで」
「お、おう。任せた」
こ、今度こそ麓の街に繰り出すのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる!」
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