第22話 VSアテナ
次回から投稿頻度を落とします
非常にまずい。まさか助けた女の子が敵対する騎士団の副団長だったなんて。ラブコメ作家もびっくりの設定だ。
落ち着けマモル。騎士団にも穏健派とかいろいろあるかもしれないじゃないか。
「ちなみに副団長様はどうしてこちらにいらしたのですか?」
「なんだ急に敬語になって! まあいい。実は咎人を探していてな。国家転覆を目論む精霊と、それを使役するマモルという男なんだが、何か知らないか?」
「知りません」
はい、僕がマモルです! って言えるか!
逆賊扱いされてるし、情報が伝わるのが速すぎる。家にいるのが俺だけで良かった。
「そうか。時に君、名前は?」
「セメルと申します」
「ほんとに何なんだ、一体。さっきまでの軽快な喋りはどこにいったのだ」
本当の名前がばれたら絶対やばい! 何とかして帰ってもらわないと!
「マモルー! たっだいまー!」
バカヤローーー!!!
「マモル? 貴様がマモルか!? それにあれは精霊!? なんということだ、敵陣で飯を食べていたなんて……」
「そのマントの十字架……! 正方教騎士団ですか!」
「えっ、何? なんでそんな奴が家にいるのよ!」
「ごめん、気づかなかった。おまけに回復させちゃったし……」
「バカなの?」
「すみません」
「私を無視するなー! 全員表に出ろ! 一人残らず連行してやる」
そう言ったアテナの目は少し迷っているように見えた。
「やるしかなさそうね、マモルは後ろに下がってて!」
「え? 逃げないのか?」
俺は今すぐ走り出そうとしていたが?
「いや、あんなのに背中見せたら一瞬でやられるわよ」
「なんでさっきマモル君を殺さなかったんでしょうね~。わざわざ外に出たのも不思議です」
あの女騎士、そんなに強いのかよ!
「この辺でいいだろう。かかってこい」
アテナは街のはずれにある家からさらに少し歩いた全く人気のないところまで俺たちを連れてきた。
「ならっ! 先手必勝!」
ヘスティアが早速仕掛ける。5つの火の玉がアテナに向かって飛んでいく。しかし、彼女はそれをステップで躱し、踏み込んでくる。
「近づけさせない!」
カリュプソが水流で押し流そうとする。アテナは剣を振り下ろし、それを切った。
「はぁ!? どうなってんのよ、その剣!?」
「特別製だ。魔法を切れる」
アテナがカリュプソに肉薄する。下から振り上げられた剣がカリュプソを捉えることはなかった。
「危なかったですね~」
「チッ、風の精霊か」
今のは本当に殺す気だった。俺は震える手を抑え、考える。俺に何かできることはないか?
「次は無いぞ」
「こっちのセリフよ! カリュプソ!」
「うん! いくわよー!」
カリュプソが地面に水をばらまく。
「ほう、こんな水で足止めができるとでも?」
「今だー!」
炎の鎚が3つ出現。アテナに襲い掛かる。
「どこを狙っているっ!」
簡単に避けられてしまう。
「そうじゃないよ。地面を狙ったの」
アテナに避けられた炎の鎚が水浸しになった地面を叩く。すると轟音と共に大量の水蒸気が立ち昇る。
確かに、高温の水蒸気なら避けられないし魔法じゃないから切ることもできない!
「やりましたか!?」
「甘いな」
水蒸気の中から飛び出してきたアテナがカリュプソに触れる。アテナはマントで顔を覆い、火傷を最小限に留めていた。
「「「カリュプソ!」」」
カリュプソが消えた。アテナは手に持っている十字架を掲げる。
「これは精霊を封印する道具だ。初めて使ったが上手くいったな」
やばい。カリュプソが封印されて、アテナの手元にある。二人も動揺してる。
ここで、俺は違和感を覚える。なんで殺さなかった?それにさっきも俺を殺せたタイミングがあった。
……この状況を打破するには俺が動くしかない。自分の感覚と、……アテナを信じる。
俺はアテナに向かって真っすぐ歩いていく。
「ちょっとマモル? 何してんの!?」
「大丈夫だ、あとは任せた」
「何か考えがあるのですね、分かりました」
アテナが剣を正面に構える。
「君が戦闘を得意としないことぐらいは分かる。大人しく守られていた方が賢明ではなかったのか?」
「じゃあ他に俺の何を知ってるんだ? 趣味は? 性格は?」
俺はどんどん距離を詰めていく。もう目の揺らぎが分かる距離になっている。
「くっ、それ以上近づくと切るぞ!」
そうだ。俺を捕らえながらヘスティアとアネモイを同時に相手取るのは流石に無理だ。俺は封印できないしな。なら殺るしかないだろ?
「あとはお前に任せる。人から聞いたことじゃなくて、自分の見たものを信じろよ」
俺は手を広げてアテナの前に立つ。アテナは剣を上に振りかぶり、……振り下ろさなかった。
「……私には、君が悪人だとは思えない」
俺はアテナと手を重ねる。
「やっぱりな。お前はそういうやつだと思った」
「ふっ、君に私の何が分かるというのだ」
「分かるさ。自分の信条を絶対に曲げない頑固な奴だってことがな」
俺はアテナの目を見つめる。アテナは少し恥ずかしそうに目を逸らす。
「今日の所は勘弁してやる。だが、次に会ったときは……」
「今だっ! やれぇぇ!」
「へ?」
俺の合図とともに風が吹き荒れる。そして完全に油断していたアテナは剣を巻き上げられた。
「なっ!? 素手でも君くらいは殺せるぞっ、モガッ!?」
「よくも封印してくれたわね。今回のところはこれで勘弁してあげる」
俺が封印を解いたカリュプソがアテナの顔を水で覆う。アテナはしばらく抵抗していたがあえなく失神した。
「フハハハハ! 勝ったぞ!」
「卑怯」
「可哀想」
「今のはちょっと……」
「味方じゃなかったの!? いいじゃん、勝ったんだから」
俺はエルフに貰った縄でアテナを後ろ手に縛る。
「よし、帰るか」
精霊たちの冷ややかな視線を感じつつ、アテナを引きずって家に帰った。
「面白かった!」
「続きが気になる!」
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