第二十話 「マスター、いつもの」 「一番弱い酒ですね」
その日の夜は酒場で祝勝会をした。エルフと人間と精霊が同じ場所にいて同じ酒を飲む。こういうのっていいな。俺は麦酒の水割りをすする。うん、まずい。
「なんでそんなうっすいお酒飲んでるの? もしかして、飲めないの?」
「ああ、お酒弱くてさ」
「へー、子供みたい。アハハッ」
「お前にだけは言われたくない」
「あの~マモルさん? お話いいですか」
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私は酔ったヘスティアに絡まれているマモルさんに話しかけた。
「ん? マモルでいいよ。で、なに?」
「じゃあマモル君で。これからの事について話したいんですけど~」
「ちょっと! なに三人で話してるのぉ。ぐすっ。仲間外れにしないでよぉ。うわあぁぁん!」
「何だよ、次から次へと面倒くさいな!? マスター!パス!」
マモル君は二人を酒場の店主の方へ放り投げる。
「なんですか急に。危ないのでやめて下さいよ」
「ごめんごめん、ちょっと預かってて! で、これからの事だっけ」
「ぷっ! あははははっ!」
マモル君がきょとんとしている。それはそうだ。自分でさえいきなり笑いが込み上げてきたことに驚いているのだから。
「本当にマモル君は不思議な人ですね。あの子たちを投げ飛ばすなんて」
「投げ飛ばすって……。優しく放り投げたつもりだけど?」
「言い方変えただけじゃないですか。本当に普通に接しているのですね」
今まではその力ゆえに、信仰されるか疎まれるかのどちらかだった。でもマモル君はそのどちらでもない。
「マモル君。私も旅に同行したいのです」
そんな彼の影響で周りの人の精霊に対する見方も変わって来ている。ヘスティアとカリュプソも楽しそうだ。だから私は残る2人の封印も解いて、教えてあげたい。マモル君という存在を。
「ああ、歓迎するよ。でもイアンたちエルフは?」
「もう伝えました。いつでもお帰りをお待ちしております、と」
「そっか。じゃあこれからの行き先については明日考えるとして、今日は思いっきり楽しもう!」
「そうですね~、楽しみましょ~」
お互いに飲み物が入った容器を掲げる。
「「これからの旅路に乾杯っ!」」
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アネモイとしばらく話した後、ぶん投げたヘスティアとカリュプソを回収するためマスターのところに向かう。
「マスターありがとう。もう大丈夫……」
そこにはマスターにあやされるヘスティアとカリュプソの姿があった。まるで哺乳瓶を咥える赤ん坊
のように……酒瓶を咥えていた。
「あ、マモルさん。いやー、私も子供が二人いましてその経験が生きました」
「酒瓶を咥えてる構図が強すぎて何も内容が入って来ない!」
「笑ったり泣いたり大変でしたが、これで落ち着きました」
「マスターはよく落ち着いていられるね!? お前らもこれ以上飲むんじゃない! この前記憶飛ぶまで飲んだの忘れたのか?」
俺は二人から酒瓶を取り上げ、両肩に担ぐ。
「ったく、しょうがねぇなぁ」
「ふふふっ」
アネモイがこちらを見て笑っている。
「アネモイはこうはなるなよ」
「大丈夫ですよ~、私いくら飲んでも酔いませんから~」
嘘だろ。
「そ、そうか。じゃあこいつら連れて先戻ってるから」
そして、酔っ払い二人をベッドにシュート! 床についた。
翌朝。
「ねぇ、私また夜の記憶がないんだけど」
「私もだわ。マモル何があったか分かる?」
「ああ、二人で酒瓶を咥えながら抱っこされてたぞ」
「もう流石に騙されないよ」
「前回は大嘘吐いたわよね?」
「あら、今回は本当ですよ?」
「「どういう状況!?」」
こっちが聞きたいわ!
朝食後、部屋で話し合うことにした。
「第一回、これからどうするか会議~!」
「いえーい!」
「朝からうるさい」
「賑やかでいいじゃないですか~」
「というわけで次に助けるのは?」
「次は~誰が近かったっけ?」
「トールじゃない?」
「そうですね~」
「へー、どの辺?」
三人が口をそろえて言う。
「「「山脈の向こう側!」」」
「遠いな~」
「しょうがないわね。二人とも向こうにいると思うから」
「がんばって登りましょ~」
「じゃあ、早速……」
「気が早すぎる!往復分の交通費しか持ってきてないから、一旦セインの街に戻るぞ」
「ちぇー」
若いもんはせっかちでいけない。
そして4人になった俺たちはアマンの街とエルフに別れを告げ、帰路につくのだった。
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