第二話 スキル「鍵師」
本日はあと1話投稿予定です
今、俺は冒険者ギルドの前に立っている。異世界おなじみ、冒険者に依頼を斡旋する組織の建物だ。
この場所について聞き込みしている間に分かったことがいくつかある。
まずこの街の名前はセイン。元は宿場町だったものが発展してここまで大きくなったらしい。
次にこの世界には魔法が存在する。まあ精霊とか魔物とかその辺についてはまだいるか分からないが魔法はあるのだ。
といっても普通の主婦が炎の玉を打てるとかそういう訳ではないらしい。魔法が扱える者は5人に1人くらいで、そのほとんどは冒険者になったり、もっと大きい街に魔法を学びに行ったりするとか。まあ夫婦喧嘩で魔法が飛び交うような世界ではないということだ。
そしてもう一つ異世界らしいもの、スキルの存在。というか魔法がそもそもスキルの一種らしいが。まあ、その辺に関してはギルドの人が詳しいとのことなので、中に入って聞くことにしよう。
扉を開くと、正面に受付のような場所があり、きれいなお姉さんがカウンターの奥に立っている。そして、周りでは冒険者らしき人達が食事をしたり、何やら話し合ったりしている。とりあえず、まっすぐ歩いていく。
「こんにちは! えーとほかの街から来た冒険者さんですか?」
「あー、実はものすごい田舎からこの街に来まして? なんかとりあえずここでスキル? とか見てもらった方がいいよって教えてもらったんですけど?」
我ながら怪しい設定だが、どうだ?
「なるほど! すっごい田舎から! ではスキルを見ますね。あ、ここに手をかざして下さい。これはスキルが分かる魔道具なんですよ」
とてもピュアな人のようだ。
「えーと、出ました! これは……『鍵師』! 盗賊の方に多いスキルですね!」
周りの冒険者たちが一斉にこっちを向く。そりゃ盗賊とかいう単語が満面の笑みから飛び出したらそうなるわ!俺も一瞬、褒められたのかと勘違いしたけど!?
「あの、念のため聞くんですけど盗賊っていい人達ですか?」
「え? 荷車を襲ったり、家に侵入したりする悪い人たちですよ。あっ、すみません! そういうつもりで言った訳ではなくてですね!? えーと、あの伝説の冒険者ゴールドもスキルが鍛冶屋だったんですけど、じつは普通の鍛冶屋のスキルじゃなくて、どんなものでも作れるスキルだったんです。で、魔道具はスキルの強弱までは測れないから何が起こるか分からないっていうおとぎ話もあるくらいなので諦めないで下さいっ!」
おとぎ話かいっ! どうやらピュアではなくド天然らしい。周りの冒険者たちもクスクス笑っている。その内の一人が近づいてきた。高身長でイケメン、純白の鎧に身を包んだその様はまさに映画に出てくる王子様みたいだ。
「元気だしなよ。何もスキルが全てってわけじゃないし。冒険者じゃなければ何のスキルが無くても働けるよ」
「荷物運びとかな!」「ドブ掃除もできるぞ!」
野次が飛んでくる。
「おい、やめないか。すまん、気にしないでくれ。ここの奴らはちょっと言葉がきついんだ。とにかく、まぁその……生きていけるから。ね?」
こいつといい、受付のお姉さんといい、悪気がない言葉が一番傷つくんだよ! バーカ!
「他の仕事さがしますありがとうございました」
俺は自分史上最速の早口でお礼を言い、その場を振り返らずに去った。こんなにみじめなことがあるか?異世界に来てすごいスキルに目覚めて、冒険者として活躍するはずだったのに!「鍵師」って!なんでよりによって盗賊のスキルなんだよ!
ん? 待てよ。俺は死ぬ直前の自分の言葉を思い出す。
「大体このおんぼろアパートが悪いんだ。壊されるような鍵をつけやがって。俺だけが開けられる鍵とかあれば良かったのになぁ」
これだわ、原因。これを聞かれててこのスキルを授かった的なことか?
やらかしたああああああああ! もっとすごいこと考えてればよかったああああ!
「来世とかあるなら、絶対魔法士で無双しよう。俺だけが使える魔法も添えてくれ……」
とか言えば良かったああああ! 絶対無理だけど。
もうダメだ。この世界で俺は地味に生きていくしかないのだ。なんかそう考えると何もする気が起きなくなるな。
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