第十九話 俺たちは負けなしの正方教騎士団だ!
俺たちは正方教騎士団だ。これまでいくつもの反乱分子を潰してきた。過去には他国との戦争もしたらしい。俺が入団してから負けたことはない。
今回もたった50人ほどのエルフを殲滅するだけの楽な戦だ。おっと、言い間違えた。聖戦だ、聖戦。
しかし、1週間前にのこのこと出てきたエルフの使節団を殺してから戦況に動きがないのは退屈だな。上は資源だなんだと言っているが、燃やしちまえばいいんだよこんな森。あーあ、退屈だなー、見張り。
そのとき、森の奥から矢が飛んできた。しかも1本や2本ではない。ついにエルフがしびれを切らしたか。鼓動が早くなり、笑みがこぼれる。
「敵襲―! 奴ら、しびれを切らして攻めてきたぞー!」
見張りの叫ぶ声が聞こえた。すぐさま陣形を整えるよう指示を出す。
しかし意外と早かったな。自暴自棄になったのだろうか。だが、手負いの獣に一矢報われるほど正方教騎士団は甘くない。それに山脈を越える都合上、精鋭を集めてきた。絶対に負けることはない。
「団長! 陣形は整いましたが、奴ら森から出てこちらを囲み、全方位から弓矢で攻撃を仕掛けてきます!」
「慌てるな。一旦円形の陣形に組みなおし、魔法士を守りつつ西へ後退! 川を背に陣形を立て直せ!」
フン、確かに少しは考えてきたようだが詰めが甘すぎる。攪乱して陣形を崩そうという魂胆が見え見えだ。ならばこちらは西に川が流れているから、川を背にいつもの陣形を組みなおせばよいのだ。
しかし、動きが異様に早い。こちらも適度に魔法で応戦しているが遮蔽物がないにも関わらず全く当たらない。
「団長! もうすぐ川にたどり着きます!」
「よし! 陣形を組みなおせ! 一転攻勢だ!」
川を背にして魔法士が後ろに下がり、兵士が前に出る。
「撃てー!」
その瞬間、後方が爆発した。
「後ろから襲撃です! 魔法士に甚大な被害が!」
「バカなっ!? 後ろは川だぞっ!? 魚でも攻めてきたのか!?」
さらに後方で爆発が起こる。魔法士たちが必死に応戦しているが何かに阻まれ攻撃が通っていない。
「あれは水!? 一体どうなってるんだ!」
「前方からエルフが攻めてきます! どうしますか、団長!」
「ええい! 生き残っている者たちで円形の陣形を組めっ! 守りを固め、まずは事態を把握して……」
そのとき、私の目に飛び込んできたのは巨大な火の渦だった。平原の背丈の低い草に火が燃え移り、運の悪いことに旋風が巻き起こったのだ。それは騎士団をも飲みこみ勢いを増していく。
「神よ……。私たちに味方してはくれないのですね……」
「神? 笑わせないで下さい。これはあなたたちが精霊の怒りを買った結果に過ぎず、神の仕業ではありません。業火の中であなた方の信じる神とやらに許しを請うたらどうですか?」
突如、戦場に流れた声に周りの兵たちが続々と戦意を喪失していく。ある者は逃げ惑い、ある者は懺悔し、そして等しく飲みこまれる。そして戦いは終わった。
アネモイ怖すぎるよ。なんだあの口上は。絶対敵に回したくないな。それはともかく作戦が上手くハマり、俺たちは大勝利を収めた。
アネモイのサポートを受けたエルフたちが兵を取り囲み、弓矢で攪乱するふりをする。そして川に追い込み、攻勢に転じようとしたところで川にカリュプソの能力で隠れていたヘスティアが魔法士に後ろから攻撃する。これが俺が立てた作戦だった。
結果は想像よりもうまくいった。なんなら火災旋風のおまけつきだった。
「いやー、うまくいったわねっ!」
「まあ、私の水中に潜る技術があってこそだったけどね」
「お疲れさまです~」
「じゃあアマンの街と仲直りしに行こう!」
俺は族長のイアンを連れて街に戻る。村に入るとさっきの火の渦が見えたのか、人が集まっていた。
「正方教の兵は倒した! エルフたちはもう自由だ!」
「アマンの人々よ。森に入った者を攻撃してすまなかった」
すると、街の長のような人が前に出てきた。
「イアンさん、謝るのは我々のほうだ。何も力になれずすまなかった。許していただけるのであれば何でもする」
「ならば今回のことは水に流して、また仲良くしてくれないか。久しぶりに酒が飲みたいんだ」
そう言ってイアンは笑った。そして二人は握手を交わす。うんうん、良かった。すると、群衆の中のマスターと目が合った。俺はサムズアップで喜びを伝える。
「面白かった!」
「続きが気になる!」
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