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第十七話 精霊アネモイ

 しばらくしてさっきのエルフが迎えにきた。檻の入り口を開け、外に出るように促す。俺たちは後ろ手に縛られたふりをしてエルフについていく。


 階段をずっと登ると外に出た。後ろを振り返ると大木があり、そこに俺たちが出てきた通路があった。どうやら大木の中の地下空間に捕らわれていたらしい。そこから街中を歩いてアネモイが祀られている場所に向かう。


 エルフの街はアマンの街と似ている。中には木の中に住んでいるエルフもいた。


 街を連れられている俺たちをエルフたちが道の端で見ている。彼らはとても疲弊しているように見えた。怪我をしている男もいる。


 先頭を歩いているエルフが独り言のように呟く。


「みんな人間との争いで疲弊している。人間は俺たちを裏切った。仲間も殺された。だから俺たちはお前たちを許さない」


 そんなことない! エルフと戦ってるのはマナンの人達じゃないんだ!


 俺はそう大声で叫びたかった。しかし今そんなことを言っても聞く耳を持たないだろう。結局アネモイの開放が前提条件なのだ。


「着いたぞ。下手な気は起こさない方がいい」


 そこは円形の祭儀場だった。普段はここで祭りや催し物が行われるのだろう。しかし今は武装したエルフが10人ほどいて物々しい雰囲気だ。


 ここから逃げるのは無理な話だろう。だがアネモイの封印を解けば勝算がある。どうやら祭儀場の中心にある祭壇の上の、翼の形をした髪飾りにアネモイが封印されているようだ。距離は20メートルといったところか。


 俺は二人に目配せをする。


「いくぞっ!」


 俺の声に反応したエルフたちがすかさず矢を放ってくるが、既にヘスティアとカリュプソが壁を展開している。俺は祭壇に向かって一直線で走る。右側には炎の壁、左側には水の壁。

 さながらモーゼのようだ。


 しかし祭壇の前には4人のエルフ。でも二人を信じて突っ込むしかない。すると水の渦が現れ、エルフを押し流していく。


「「行け! マモル!」」


 右手が髪飾りに触れる。封印解除!


「みなさん喧嘩は駄目ですよ~」


 おっとりした声が祭儀場に響き渡る。周りを見るとエルフたちは皆、呆然と上を見上げている。上を見ると、武器が全て風に巻き上げられていた。


「エルフの皆さん落ち着いて下さい。彼らは敵ではありません、私と同じ精霊です」


 そういって祭壇の上に降り立ったのはアネモイだ。緑色のふわりとしたドレスに白いマントを羽織っている。背丈はやはり小さいが大人の魅力を感じる。


 エルフたちがざわつき始める。


「しかし、彼らは言い伝えとは背格好が違います」


「そうですね~。何か言い訳はありますか~?」


 アネモイはヘスティアとカリュプソの方を向く。


「「封印されたときに背が縮みました!!」」


 いけしゃあしゃあと嘘をつきやがった。アネモイは目をひそめると


「そういうことにしておきましょう~」


 といった。安堵する二人。


「……でも嘘だったらお仕置きですよ」


 付け加えられた死刑宣告に震え上がる二人。……こっちを見るな、助けてやらないからな。


「では本当に……。私たちはなんてことを」


「まあ、今回は許してくれると思いますよ。ね?」


「し、しょうがないなぁ」


「次からは気をつけることね」


 完全に場の主導権がアネモイにあるな。風の精霊だけに場の風向きも自由自在ってか。


「ありがとうございます!」


 エルフたちがひざまずく。いや、10:0で悪いのこいつらだから。そんなことしなくていいから。


「その人間のお方もアネモイ様の封印を解いて頂きありがとうございます」


「いや、そういうのいいから。それより俺、村の人たちとエルフを助けるって約束したんだ。

 だからまだ終わりじゃない」


「村の人たち? 一体どういうことですか?」


 俺はエルフの森を侵攻しているのは王都の兵士であることを告げた。


「そうですか。彼らは奴らに加担していたわけではないのですね」


 よかった、ようやく誤解が解けた。あとは正方教の兵士を追っ払うだけだな。


「そういえば何で奴らはここを攻めるんだ?その理由が分かれば和平交渉とかもできるんじゃないか?」


 俺がそう言った途端、エルフたちの顔が曇る。あれ?なんかまずいこと言ったか?


「残念ですが彼らとは分かり合えません。……正方教をご存じでしょうか?」


「ああ、この国で広く信仰されてるっていう。ここを攻めているのも正方教の兵士だよな」


「はい。この国の国教は正方教。国が手厚く保護し、正方教もまた国をまとめるのに一役買っています」


 なるほど。


「そして我らは正方教でなくアネモイ様を信仰している。だから攻めてくるのです」


「ちょっと待て。論理が飛躍してないか?」


「いえ、そのままの意味です。正方教を信仰していないものはいつか団結し国に牙をむくだろう。だから根絶やしにする。それが奴らの考えです」


 だめだ。脳が理解を拒んでいる。歴史で習ったはずなのにいざ同じことが現実で起こるとこうも胸糞が悪いものなのか。


「それに奴らはまずは話し合いをしよう、と我らに接触してきました。そして派遣した仲間の使節を皆殺しにした」


 ヘスティアが息をのむ。カリュプソとアネモイは静かに聞いている。


「そんな奴らと分かり合えるはずがないっ」


 拳を強く握りしめるエルフ。


「ごめん、何も知らないのに」


「いえ、あなたが悪いことなどありません。私はイアン、1週間前から族長を務めております」


「ああ、よろしく。俺はマモルだ。正方教を追い払うのに協力する」


「私も! ヘスティアよ」


「同じくカリュプソ」


「もちろん私も協力させて頂きます~。今回のことは流石の私も我慢の限界ですからね」


 こうして、対正方教ドリームチームが結成された。名前はそうだな、正方教からエルフを守る党とかどうだ?


「面白かった!」


「続きが気になる!」


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、もちろん正直な気持ちで大丈夫です!


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これからも執筆していくので、応援よろしくお願いします。


追記:ブックマーク、評価ありがとうございます!


追追記:小説家になろうの外部ランキングサイトがあるらしいので始めてみました。1日1回までで、リンクを押すだけで自動で投票ができます。目次とページ下部にリンクがありますので気が向いたらどうぞ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] こんにちは!面白かったので最新話まで読み進めてしまいました。 キャラが立っており、マモルと精霊たちとのかけ合いややり取りもクスッと笑えます。 [気になる点] 文句なし! と言いたいところで…
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