第十五話 一家に一台、熱感知
翌朝。
「ねぇ、私昨日の夜の記憶がないんだけど」
「私もだわ。マモル何があったか分かる?」
「ああ、二人で逆立ちしながら牛乳飲んでたよ」
「えっ! 本当に!?」
「いや流石に嘘でしょ。……嘘よね?」
「さぁどうだか」
そのまま朝食まで悶々としてるがよい。
食堂に移動し、朝食を食べた。宿屋の朝食は野菜が中心でとてもおいしかった。
「ここの人は肉や魚は食べないんですか?」
皿をさげる時に聞いてみた。
「確かにあまり食べませんが、エルフみたいに全く食べないわけではありませんよ。それでトラブルになったこともないですし」
まあそうだよな。とりあえずこの街でも肉は食べられそうで安心した。部屋に戻ったあと昨日マスターから聞いたことについて二人に共有しておく。
「つまり、兵士たちに気づかれないように森に入って私とカリュプソがエルフと話せばいいんでし
ょ。楽勝じゃない」
「私もそれでいいと思うわ」
「じゃあどうやって森に入るかだな」
「それなら私にいい考えがあるわ。なんでここのお酒はおいしいのか分かる?」
「なんだ、まだ酔っぱらってんのか」
「違うわよ! 街の西側に山脈から流れてきている川があるわよね。あの川の水は山脈の雪解け水。その水を使っているからおいしいのよ」
「それで? それがどうしたの?」
「あの川を下るのよ。そうすれば森の近くまで誰にも気づかれずに行けるわ」
なるほど。ただでは酔っぱらわないと。
「でも下るってどうやって?船だとすぐ見つかると思うけど」
「私は水の精霊よ。二人を水中で運ぶなんて造作もないわ」
街から少し離れた川の上流まで来た。ここは森からも距離があるので兵士の姿もない。
「本当に溺れたりしないよな?」
「任せなさい!」
そう言うとカリュプソは水の球体を作り、川に沈めた。
「じゃあ二人とも手をつないで」
俺とヘスティアはそれぞれ差し出された手を握る。すると体が浮いた。ヘスティアも使っていた浮遊魔法だ。そして川に飛び込む。
思わずつぶっていた目を開けるとそこは水の中だった。どうやら球体の中に空気が閉じ込めてあるようだ。
「空気には限りがあるから急ぐわよ」
カリュプソがそう言うと球体が進みだした。だいたい水深1メートル辺りを進んでいるのだろうか。魚たちが避けていく。
「そういえば、アネモイってどんな奴なんだ?」
「普段はのんびりしてるんだけど、怒ると怖いって感じかな」
「怖いってどんな感じ?」
「そうだねー、大体森の外まで吹き飛ばされるかな」
怖っ! 気を付けよう。
「ヘスティアは3日に1回くらいやられてたわね」
そんなに怒ってたら怒ると怖いじゃなくて、ただの怖いひとなんよ。
そんなことを話しているうちに結構進んだ気がするな。
「これ外の様子分かるのか? エルフの森がどの辺にあるのかとか」
「それは……とにかく進むわよ」
ノープランかよっ! 地上に出て兵士に囲まれましたとかシャレにならんが?
「じゃあ私が探るから適当なところで水面に浮かんでくれる?」
あって良かった熱感知。
ある程度進んだところで静かに水面に近づく。
「どうだ、ヘスティア?」
「うん、大丈夫そう」
「良かった。そろそろ空気がやばかったの」
水面から飛び出し、着地する。そこには一面森が広がっていた。といっても樹海のような鬱蒼とした感じではなく、木漏れ日が射し込んでいて神秘的な様相だ。
「よーし、進もー!」
熱感知で索敵ができるヘスティアが先頭を務める。俺たちは森の奥へと進んでいった。
「面白かった!」
「続きが気になる!」
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