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第十四話 笑い上戸に泣き上戸

 翌朝、俺たちは馬車に揺られていた。景色がゆっくりと流れていく。


 右手には大きな山脈があり、御者の人によるとその向こうに王都があるらしい。なので山脈のこちら側は王国の領土でありながら半分自治領のような扱いなんだとか。


「ほら見て! もう街があんなに遠いよ!」


「危ないからあんまりはしゃぎすぎんなよ」


「またそうやって子ども扱いする」


 だって言動が子供だもの。精霊の低い身長も災いしているのかもしれないが。


「そういえばカリュプソは小っちゃいとか言われたときどうするんだ?」


 カリュプソもヘスティアと同じようにムキになったりするのだろうか。


「いちいち言い返すなんて、自分が幼いって認めてるようなもんじゃない。大人は落ち着いて受け流すことができるのよ」


 だってさ、ヘスティア。


「でも私とマモルのこと変な勘違いしてた時は、すごく動揺してたよね」


「あ、あれはもういいでしょ! いつまでも昔のこと掘り返すなんてほんとお子様ね」


「なにぃ!? 変な想像してたのはそっちでしょ」


「へっ、変な想像とか言わないでよ」


 お前ら小学生か。




 2日経過……。




「やっと着いたー!」


 俺たちがアマンの街に着いたのは2日後の夕方だった。


「あんたなんでそんなに元気なの? 信じられない。マモルを見てみなさいよ」


 ヘスティアがこちらを見て一言。


「老けた?」


「老けてないわ! あー、腰いてー」


 2日間馬車に揺られ続けたせいでお尻、腰、背中が大変なことになっている。


「ほら、下ばっか向いてないで前見てみてよ! セインの街と全然違うよ」


 俺は腰を刺激しないようにゆっくり顔を上げる。するとそこには、たしかに見たこともない街並みが広がっていた。


「これは……確かにすごいな」


 木造の建物という意味ではセインの街と大差ない。しかしこのアマンの街の建物は森と共存している。自然に生えている木を柱として利用し、家を建てているようだ。地面も舗装されておらず、ふかふかの土がむき出しになっている。


「まさにエルフが好きそうな街並みね」


「でも見た感じ住んでいるのは人間だよな。もしかしたら街の人とエルフは友好な関係なのか?」


「その可能性はありそうね」


「じゃあさー、聞いてみればいいんじゃない? すみまsモガッ!?」


「バカなの!? 周りを見なさいよ」


「明らかに民間人じゃない人がいる。おそらくこの街を拠点としている兵士だ。彼らに聞かれたら怪しまれるに決まってる」


「フガフガー!(分かったから手を放してー!)」


 カリュプソがヘスティアの口を開放する。


「ふぇぇ。じゃあどうするのよ?」


「情報収集といったらあそこだろ」





 というわけで酒場にやってきました。二人とも初めて入ったようで興味津々だ。


「おい、嬢ちゃんたち。ここはお子様が来るところじゃないぜぇ、ヒック」


 早速酔っ払いに絡まれている。


「お子様!? あんたいい度胸ね。勝負よ!」


「カリュプソ、ヘスティアのお守りを頼む」


「しょうがないわね、全く」


 カリュプソに任せておけば大丈夫だろう。俺はカウンターに座る。


「お客さん初めてですか? 何にしますか?」


 この人がマスターか。ここはかっこよく決めたいところだが……


「うむ。ではこの店で一番弱い酒を頼む」


 あいにく俺は酒に弱い。ほろ酔いでガチ酔いするくらい弱い。


「では麦酒の水割りでよろしいですか?」


 それ本当においしいの? まあ他に選択肢はなさそうだし頷いとくか。


「それで聞きたいことがあるんだけど。この街とエルフってどういう関係?」


 マスターが眉をひそめる。


「それは……」


「安心して。俺はセインの街から来たんだ。王都の者じゃない」


 俺の言葉を聞いて、マスターは周りに兵士がいないことを確認する。そして、


「この街でエルフを嫌いな人間などおりません」


 と言った。


「エルフの方々は後から移住してきた我々を追い返すことをしないばかりか、住居の建設の手伝いま

 でしてくださったのです。それからも我々が人間との交易の窓口になったりと交流は続いていました。エルフと同じく精霊を崇める者も少なくありません」


 マスターはここで一旦言葉を切る。そして


「しかし1週間前、王都の兵士たちがここにやってきてエルフを討伐するためにこの街を拠点とすると言ってきたのです。我々も王国民なので抵抗するわけにもいかず、彼らの暴挙を許してしまっているのです」


 と加えた。この街の人たちはやはりエルフと敵対してなんていなかった。警戒すべきは王都の兵士だけということか。


「実はエルフと話がしたい。俺なら彼らが信仰している精霊の封印を解ける」


「なんと……。しかし今は難しいかもしれません。人間というだけで森に入った途端攻撃されてしま

 う。そのくらいエルフは人間を警戒するようになってしまった」


 そうなのか。でもヘスティアとカリュプソが一緒なら分かってくれるはずだ。


「大丈夫だ、俺たちに任せてくれ。必ず精霊とエルフを救ってみせる」


「ありがとうございます」


 俺はマスターと固い握手を交わした。


「あ、そうだ。いい宿知りませんか?」


「それならこの酒場の隣に私の知り合いが経営している宿があります。私の名前を出して頂ければすぐ泊めてくれるでしょう。タードの知り合いだと仰って下さい」


「ありがとう、タードさん! よし、ヘスティア、カリュプソ! 宿も見つかったから行こう!」




「私に飲み比べで勝とうなんて500年早いのよ! 一回封印でもされて出直してきなさい!アハハハハッ」


「つ、強えぇ。あの小さい体のどこに入ってるんだ」


「男なら約束守って全部おごりなさいよ!」


「おいっ、お前手持ちいくらだ?」


「ここにいる全員の合わせて足りるかどうか……」



 何やってんだあいつは。というかカリュプソはどうした?止められなかったのか?


「あ、マモルー。遅いじゃないの、ヒック」


 ……。


「何よその目は。もしかしてこんな酔っぱらいはもう要らないっていう目? ぐすっ。置いてかないでよぉ。封印を解いてくれたことは感謝してるんだからぁ」


 まじでこいつらここに置いていこうかな。でもマスターに悪いしなー。


 俺は二人を両肩に抱えて店を出る。宿屋の店主にはすごい目で見られたが、それでもマスターの名前を出すと部屋へ案内してくれた。酔っぱらい二人をベッドに放り込み、俺は酒くさいのが嫌なのでソファーに横になった。


「面白かった!」


「続きが気になる!」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、もちろん正直な気持ちで大丈夫です!


ブックマークもしていただけると嬉しいです。


これからも執筆していくので、応援よろしくお願いします。


追記:ブックマーク、評価ありがとうございます!


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