第十三話 黒幕っぽいなにか
「一番丈夫な金庫をください」
俺は生活用品などを扱う鍛冶屋に来ていた。まあ、さすがに旅に大金を持ち歩くわけにはいかない。だからといって家に裸で置いておくのも危ないしな。この前みたいにタンスに隠して空き巣に盗られるわけにはいかないのだ。
「はいよ。マカライト製の金庫だ」
店主が奥から重そうな金庫を台車で運んできた。確かに丈夫そうだ。
「このダイヤル式の鍵は魔道具を埋め込んである。対となる鍵がねぇと例え鍵師のスキルを持ってたとしても開けられねぇのよ」
そういうと店主は指輪を俺に渡してきた。
「これがその鍵だ」
確かに金庫の鍵と同じ模様が描かれている。
「それが魔法陣だな。金庫の魔法陣と反応して鍵が開くんだ。スペアは作れねぇから失くすなよ」
「はい、分かりました。ヘスティア!」
俺はカリュプソと店内を物色しているヘスティアを呼び、指輪を手渡す。
「何これ、結婚してくれってこと?」
「えええ!?やっぱりそうなの!?」
「違うわ!それ溶かしてくれ」
「は?おい兄ちゃん何を言ってr」
ヘスティアは指輪を握りしめる。すると手の中が赤く光り、次に手を開いたときにはただの金属の塊になっていた。
「対となる魔道具を壊すなんて……、兄ちゃん正気か?」
「大丈夫です。びくともしない箱を買いにきた訳じゃないですから」
俺は金庫の鍵の部分に手をかざす。解除!
カチリ。
「な……、開いた!?」
というわけで俺しか開けることのできない金庫を手に入れた。これで長旅も安心だな。
「じゃあ店主、この台車借りますね。お金はさっき机の上に置いておきました」
腰を抜かす店主をよそに金庫を店から運び出す。台車を返しに店へ戻ると
「そのスキル、悪いことには使うなよ」
と言われた。もちろん、そんなこと思っていたらとっくに盗賊になっている。俺は大丈夫ですよとだけ答えて家に帰った。
時を同じくして、王都。三人の男たちが円卓を囲んでいた。彼らは正方教の最高指導者であり、彼らの意思が正方教の意思となる。
「それで、今日は何の用でここに集まったのですか?」
太った男が声を発した。腹に蓄えられている肉は彼が今の地位に上り詰めてからせっせと貯めてきたものである。
「そうですよ。今回はあなたが私たちを呼んだのですよね」
背の小さい男もそれに続く。彼の身長を馬鹿にしたものは一人残らずこの国から追い出された。
「ええ、実は……」
細身の男が口を開く。今の彼の顔は普段の穏やかそうな表情とはかけ離れている。
「精霊の封印が解かれたとの報告が入りました」
「なんと……」
「詳細は?」
「どうやら既に2匹が逃げ出したらしいですね」
「そうですか。では当然他の3匹を押さえるのですよね?」
「ええ。そして逃げ出した2匹もまた封印する」
「しかし精霊たちの実力は本物と伝え聞いていますが」
「大丈夫ですよ。先人は自らの武勇伝を誇張するものです。どうせ大したことありませんよ」
「それもそうですな」
教会の地下にある会議室に3人の笑い声が響き渡った……。
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