天丼
初めてのグルメ系なんで感想だらけです。
僕に語彙力求めたらダメです。
書いてて楽しかったです!
6月某日、それは酷い酷い雨だった。
バケツをひっくり返したような雨という現実味のない例えが、この日ほど当てはまらない日はあるだろうか。
私はそんな日にも関わらず、傘を忘れてしまった。
折角残業せずに帰れる!
よく頑張った!ノルマ達成!
と心躍らせていたのに、何だこの有様は。
駅まで屋根の付いているのが幸いだった。
改札通り抜けたはいいものの、電光掲示板には赤文字で見合わせが右から左へとスクロールしている。
ふと窓口をちらり。
全ては天気が原因だというのに、駅員に怒号を飛ばす大人たちや、それを何故か嬉しそうに撮るテレビ局員たちが密集していた。
あの海に飛び込むなど言語道断だ。
さぁ、どうしたものか。
そう柱に背を預ける私に襲ったのは、強い脱力感。
そういえば今日、私は弁当を買い忘れ、昼食を抜いたのだった。
時間はある、なにか食べよう、そう思って正面を見ると、天丼屋が1軒。
私は吸い込まれるように扉へと動いていった。
扉が開くと同時に、ロボットの乾いた
「いらっしゃいませ」に
出迎えられた。
やや、これはシュガーくんではないか、と思いつつ、彼の平らな胸板、パネルへと目を移す。
なるほど、先払い型か。
おお、キャッシュレスときたか。時代だな。
そう脳内で感激しつつ、メニューを開く。
私は最初に表示された天丼(単品)の大盛を即決し、精算に移った。
ふむ、こういう払い方だと、いまいち金を使った感じが出てこないな。
おっと、ちゃんと払えたようだ。
シュガーの横の直方体からジジジと食券が印刷される。
そして、またしても乾いた
「ありがとうございました」
これはもう笑うしかない。
吐き出された券を持ち、カウンターへと歩く。
その途中でやる気溢れる
「らっしゃーせ!」が
店内にこだましたのは、少し驚いた。
対称的だな。
予め水が置かれた席に着した俺は、細めの女性に券を渡す。
すると、「テンタンオオモリィ」と、
見た目に合わぬ迫力ある高い声が響いてきた。
はは、これじゃあ駅窓口と変わりゃしないな。
私はコップの水を口にする。
ほう、冷えてる。いいなあ。
氷も大きいし、丸い―――キャバの高い酒に入ってるアレのようだ。
…私にもそういう趣味があったら良かったのだが、生憎、酒自体好きじゃない。
接待を伴うこの仕事に私は向いてないのかもしれない。
縁がないのか、したこともされたこともないけどね。
それにしても、天丼が単品、大盛で500円。
…安い…のか?私は残念ながら天丼の相場を知らない。
ゆえに、ここが激安かぼったくりか分からん。
私はまたもや水をごくり。
ふむ、やけに爽やかな水だ。
おかわりおかわ―――おっと、中に檸檬が入っている。
一時期ハマっていた拉麺屋にあったのだが、
ここでも使われているとは思わなんだ。
…ああ、美味い。たかが水と舐められん。
「ぉまたせしやしたぁ」、とん。
声のわりに丁寧な置き方だな。
さて、肝心の天丼のご到着だ。
おや、これはご親切に。たくあんが4つにきゅうりが2つ。
タイミングが重要だ。話を戻し、天丼だ。
私は蓋を手にし、ぱかっと景気よく開く。
ほぁぁ、いい色だこと。
えびにかぼちゃ、オクラにさつまいも。
おお、しめじまでもか。
豪華なことだ。
おや、よく見たらご飯が白い。
水の入れ物の近くに張り紙が…
ほうほうほう、(天つゆセルフサービス)ときたか。
客は好みが分かれる。それを考えてのことか。
流石だな。
で、天つゆ、と、これか。
いかにも、な感じな円柱の入れ物だ。
それぐるりぐるり。
このぐらい濡れた方が美味しいんだよ。
割り箸をパキりと割る。
綺麗に割れて更に機嫌が良くなる。
私はえび天をつまみ上げ、半分まで一気に口に入れた。
ああ美味い。
途中まで味わい、つゆ色に染まった飯をかきこむ。
最高なんだこれが。
衣のサクサク感は消えているが、この食感も捨て難い。飯の親友だ。
私は無我夢中でその工程を繰り返していた。
おっと、天が先に消えてしまった。
さて、出番だぞ、たくあんくん達。
半月状に切られたそれを口に入れ、飯を入れたと同時に噛み砕く。
ほぉ、いい食感だ。…だが、飯の味が強すぎる。
つゆを少しかけすぎたようだ。
あ、あとから来たなあたくあん。
しぶとい奴め。
飯の柔らかさに対抗して、漬物が目立とうとしてくる。
こりゃいい闘いだ。
さぁて、きゅうりくん、君も行ってみよう。
ほー、なるほどなるほど。
別で漬けてある…梅か?…うん、梅だな。
しょっぱいにすっぱい、合わなそうで合う組み合わせだな。
飯が進む。
2つしかないのが非常に辛い。
さらばきゅうり。
飯もあとわずかじゃないか、ラストスパートだぞ、たくあんくん、さぁおいで───
───ふぅ、食べた食べた。
私はレモン水を最後にぐいっと飲み干し、どんぶりと共に、カウンター上へと置いた。
「ごちそうさまでした。」
そう言うと
「ありが「ありが「ありがとうございましたぁっ」」」
とバラバラに元気よく返ってきた。
聞いてて気持ちがいい。
出口専用と書かれた扉を押し開き、店外へと出る。
状況は…おお、大幅遅れとなってる、動き始めていたようだ。
私はホームへ向かう前に、振り向いた。
[天丼たろちゃん3号店]
…覚えておこう。
私は前を向いて歩き出した。
雨は止んでいた。
実際に存在するお店とは全く関係ありません。
こんなこと妄想してたら腹が減ってきました。
某有名チェーン店でも行こうかな…
インス短編シリーズは一旦ここまでです。
Twitterでネタ受け付けてツイッ短編シリーズでも…なんて考えてます。




