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三途の川の前に…  作者: 幻月
4/5

第4死

当たり前は突然当たり前ではなくなります。

今日のご飯は混ぜご飯。

私の休日は大体家でゲームか動画鑑賞。漫画を読むか、純文学の本の読書。

休みもやはり暇がない。

まぁ、充実しているからいいけれど。



プルルルルルル…



スマホが鳴る。

普段あんまり鳴らないのに。友達がいないからね。

そっと出る

「はい、もしもし」

「すまないが、今日また変わった御遺体がさ…担当出来そうなの、君だけなんだよー」

この雇い主である社長に一発パンチかましてやろうか…と素直に思ってしまった私がいるが、この人が居なかったら、就職口なかったし、食っていけないから逆らえない。

仕方ない…


「分かりました、私がやります。」


答えはわかりきっていたがね。

さ、行こう。



いつもの場所に来た。

相変わらず制服は嫌いだ。堅苦しい。

霊柩車から降ろされた御遺体は、どうやらワケあり。

警察官もいた。

へぇ…珍しい。

一礼をして、作業に入る。


棺の小窓を開けて覗くと40代くらいの男性。

働き盛りの男性だな。何気にザ・お父さんって感じだが。

会話を聞いてしまった。どうやら轢き逃げだったようだ。交通事故か…


白い霧が私の周りを覆う。

あぁ、来たな。御本人が。


「災難でしたね。いらっしゃいませ。収骨までお任せ下さい。」

「やはり、私は、死んでしまったんですね…妻と娘を残して。」

「えぇ、残念ですが、そうなります。」

無念と言わんばかりに呟くお客様。そりゃ、そうだろうな…自分が働いて、幸せな家庭を持ってる最中、いきなり奪われた未来…

私なら、轢き逃げした奴を呪うわ。


淡々と作業をこなしていると、男性は問いかけてきた。

「君は、随分と若いけど…偉いね、こういう仕事は、通常忌み嫌われるものだと思うのだけれど…」

「それは貴方の固定概念です。皆個性があり、考え方が違う。貴方は私みたいな作業員がいなければ、身体は無惨ですよ。」

そうだよね、ごめん…と言わんばかりに表情を曇らせた。

そんなの私には関係ない。仕事だから。

若いからとか、年だからとか関係ない。やるしかない。


収骨を済ませると、男性は自分の遺骨を見て呟いた

「私はもう…元には戻らないんですね。骨になってしまったのならば。」

何を当たり前な事を言うのだろうか。もう後戻りは出来ない。

「貴方は…確かにもう戻れません。轢き逃げした奴にはロクな死に方をしません。いずれ、私が担当します。だから、もう逝くべき場所に逝って下さい。もうここに居る理由は無いはずですよ。」

白く霧掛かった魂の彼を背に、骨壷を泣いている男性の妻に差し出す。

去った事を確認すると、彼は優しい笑顔を浮かべていた。


その笑顔が何を意味を示していたのか、私にはわからない。

ただ…私が感じたのは…当たり前を当たり前と思ってはいいけないな…と言う事だ。

彼は自分の妻が火葬場から去るところを見送ると、私に一礼し、うっすら白い階段を登っていった。







へぇ…天国に行く時って、ああやって行くんだ。

貴重なものを見たな。休日返上した甲斐があったな。

次は…いい人生が送れるように。





御行し奉る…なんてね。

さ、帰ってゲームの続きしよ。サ○ゼに寄ってからね。

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