第3死
若いからと…油断しないほうがいいですよ
新たな客が来た。
不可思議な死に方…
また私に回ってくる。
若い22歳の女性。
棺の窓を開けると、悔しいくらい美人だが、メイクの跡がある。
ずっとメイクしていたんだろうな。
そこに、また恒例の魂となったお客様ご本人が来た。
「いらっしゃいませ、貴女の最期を見にきたんですか」
「え、これから彼氏とデートなんだけど?合コンだって行かなきゃだし。」
私の嫌いなタイプだな…正にパリピって感じがするな。
関わりたくない人種だ。だが、亡くなったからには、私のお客様。
やるしかない。
「貴女は亡くなりました。その様子だと…性が乱れていたのでは?」
図星なのか、げっ…とう表情で私を見てくる。
恐らく、中絶も経験しているのだろう…
こんな若い命を…簡単に。
「お父さんが再婚して…家に居たくなかった。だから、複数の男の家を転々として泊まってただけだよ。することはするじゃん。」
「いや、私には判りませんね。」
キッパリ言ってやったら、少し不機嫌そうに表情がかわるお客など目もくれず、私は淡々と作業を続ける。
綺麗だからと、腐敗されては困るから。
荼毘が終わり、収骨をすると、引き取り手の父親らしき人物が私に話をかけてきた。
「娘を弔って頂き、ありがとうございました。」
そう言い残すと、骨壷を抱えながら駐車場に行き、車に乗り込み、去っていった。
密葬だったのか…別に自殺したわけでもないのに…環境のせいだったわけか。
その一部始終を後ろから見ていた本人は、もう自分はこの世にいないのだと、再確認したようだった。
「もう逝きなさいな。私の役目は終わりましたから。早く帰りたいので、行くべき場所に逝ってください。」
無機質にお客様に伝えると、こう、呟いた。
「最期に聞かせて。私は…なんで死んだの?」
「HIV…免疫不全…そこから何らかの感染症に掛かったのではないですか?私は医者じゃないので、判りませんが、匂いから察するに、性に壁が無かった様に感じましたよ。」
そっか…と言わんばかりにふと、優しげな顔になり、歩み始めた。
「忘れないでくださいね。貴女は天に昇るかもしれない。ですが、親より先に死ぬことは罪。親不孝者だとういう事を御理解くださいね。」
遊ぶ事は悪いことではない。しかし、限度を持ってほしいものだ。
今日もまた、天気がいいな。
彼女は父親によって供養されるだろうが、その供養せざるを得なくしたのは…紛れもなく、その父親である事を…
彼女の将来を軽視した結果だと…私は厳しく思っている…