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三途の川の前に…  作者: 幻月
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第2死

つらいですか?では末路を教えてくれるお客様がご来場されたので、見てみては如何でしょうか。

またお客様だ。

しかもまた普通ではないお客だ…

棺の窓をを開けると外傷が見られない美しい御遺体。

しかしワケありだから私に回してくる…


エンバーミング〈死化粧〉を施そうと棺を開けると下半身がない。

これまたけったいなこった…

私がまた無関心にそう考えると、やはり引き寄せてしまうのだろう。

その本人が青い魂で現れた。

随分若い子だ私とそんなに変わらない…


「あの…ここ、どこですか?私、さっきまで…駅にいて…」

「火葬場です」


キッパリ情もなく応えると、女性は驚いた顔をして固まっていた。

「あの、嘘、ですよね?それ…私、です、か?」

見て分からないか…無理もないか、突然なんだもんな。


「ここは火葬場ですよ、見て分かりますでしょ?」

「なんで私がそんなとこにいるんですか?」

こちらが聞きたいよ…何故下半身がないのかも謎だし。



「貴女は死んだからここにいるの。如何しますか?最期まで見てから逝きますか?」

冷たく感じるだろうか?だが、これほど無関心、機械的でなければメンタルに大きなダメージを受けるから。

遺族からも反感を買う時もあるが、此方も生きている人間だからな。保身をして何がいけない。

そう自分に言い聞かせながら、淡々と作業をしながらそのお客様の判断を待った。


「判断が出来ないなら、話だけ聞きますよ。心当たりはないんですか?警察からは何も聞かされないものでね…」

「私にも…分かりません…」

察した…

私の中で三つの選択肢が生まれた

一つは他殺、二つ目は事故、そして…三つ目は…


「相当病んでいたんですか。貴女。」

「なんで分かるんですか…」

遺体をよく見ると左手首にリストカットの痕があったからだ。

しかも、薄っすらではなく、くっきりだ…

つまり、最近まで切っていたのだろう…私にもその痕があるからわかるのだ。


「成功しちゃったんだね…自ら命を捨てて、死んだことに気がつかないんだ。一つ勉強になりましたよ。」

女性は私の言葉でようやく思い出した様だ。

そう…自殺だったのだ。


「たしか、自殺をすると、天国も地獄にも行けないそうですよ。自分で選んだ道なんだから…仕方ないですね。」

黙ったままの女性は俯き頷いた


1時間が経ったようだ

白骨化した下半身のない遺骨を収骨して溜息をついた。

ラベルらしき紙を見たら、彼女はまだ21歳だった様だ

苦しい、辛い、生きるのがしんどいから選んだ道…だが分からなかったようだね。


生きていた方が良かったと思うことになるだろう。

自分の終わりの姿を見た女性は呟いた。

「もっと生きたかった…」

もう遅いよ。

そう思いながら黙って骨壷をお坊さんに渡して、仕事が終わった。

女性はそれを見てからか、お坊さんとは別の方向を歩み出し消えた。

恐らく、また自殺した場所に戻ったのだろう。

永遠の飛び降りをしに…


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