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Deliver Happy   作者: 水門素行
一章 アルフィスト王国動乱記 三部 ~届け屋~
35/140

35 陰口?

 王都に向かうまでの道中で、リカは思う。何故歩いているのかと。


 確かに徒歩の利点は色々ある。馬車に乗るには金もかかるし、動きに制限もかかる。だが、それを考えても早く向かいたいなら馬車を借りたほうが良い。歩くよりかはずっと早いし、疲労も溜まらない。


 だが、その理由はすぐにわかる。先頭を歩いているギフトが直ぐあちらこちらにフラフラ歩き回るからだ。ロゼがどれだけ注意してもそれは治らず、今もふらっとどこかへ向かおうとして首根っこを掴まれている。


「フラフラするな。真っ直ぐ進めないのか。」

「歩いてるだけって暇じゃない?」

「お前が行きたいのではないのか?」

「俺は時間は気にしてないからな。」

「妾は気にしておる。頼むから真っ直ぐ進んでくれ。」


 若干の呆れを滲ませながらギフトの行動に逐一文句を言うロゼに、リカは少しだけ同情する。


 普段自由奔放なのは構わないと思うが、目的に向けて進んている時にもそれを発揮されるのは面倒だろう。それをロゼは呆れてはいるものの嫌な顔をする事もなく止めている。


 むしろ見ているとリカが苛立ちを覚えるほどにギフトは適当だ。だが何も言うわけには行かない。同行の条件として、文句を言わないことを約束されられたからだ。


 ギフトは自分の性格は理解している。目標があっても寄り道をしないでいられる保証などどこにもなく、それを咎める人間は絶対いるだろうから、先に封殺していたのだ。それは功を奏して街を出てそれなりの時間が経っても未だ怒られることはない。


 ロゼはギフトの行動に対して怒る気にはならない。出来ないことは素直に出来ないと言っている。それに付いて行くのが嫌なら勝手に行けばいい。自分の意志でギフトと行動することを選んだのに怒るのは間違っている。


 それでも逸る気持ちはある。だがそれはギフトに言えば改めようとはしてくる。小言を言ってしばらくは大人しくなる。次第にウズウズし始めふらっとどこかへ向かおうとするが、それも止めれば止まってくれる。そしてギフトも内心で何を思っているかは知らないが、不快感を表に出すこともない。


「以前もそうだったが寄り道が好きなのか?」

「寄り道が好きっていうよりかはそっちに行ったら何があるのかなって気になるんだよ。別に目的を忘れてる訳じゃ無いよ?」

「それは心配しておらぬが、子どもかお前は。」


 緩い会話は途切れることなく続く。これから向かう先で何が待っているのかわからないのに呑気なものだとはギフトとロゼ以外の全員が思っていることだろう。


 ロゼが王族なのはもう知っている。旅をする前に教えてくれた。その事に不満は無いし、薄々国の重要人物だろうとは思っていたからそれは問題ない。ただ、それなのにここまで緩みきっていていいのか、不安はないのかとどうしても聞いてみたい。


 だが、文句を言うなと言われた手前、それを一日目にして破るのは流石にダサい。自分たちで承諾したくせに約束の一つも守れないなんて、冒険者どころか人としてもどうかと思ってしまう。


 結果二人を見守ることしかできないが、どんどんストレスが溜まっていく。言いたいことは募るし気持ちもどこか浮ついてくる。言い知れぬ感覚とこれから数日続くのかと思うと自然と溜息が出てくる。


「リカ。駄目。」

「ミリアは気にならないの?私はすごいキツいんだけど・・・。」

「ギフト君はすごい人だと思う。魔道士としても人としても少し憧れる。」

「嘘?どこに?」


 さっぱり言っていることがわからない。暴れっぷりを直接見たわけではないが、あの光景を一人で作り上げたなら確かに強いとは思う。だが、同時に決して褒められる事では無いと思っている。


 リカは最後まで反対した。戦争を起こして欲しくない気持ちはあるが、ギフト達に付いて行く必要は無いと言ったが、二人に押し切られここにいる。完全に納得はしていないのだ。


「正直私達がついて行っても邪魔にしかならない。」

「・・・そりゃそうかも知れないけど・・・。」


 自分たちを強いとは思っていない。リカは一度ロゼと打ち合ったが、ロゼですら自分が勝てるかどうかは怪しい。そしてロゼと力量が同じなら、あの状況を切り抜けることはできないだろう。


 少なくとも自分たちがあの人数に囲まれたなら、勝つことはできないだろう。逃げの一手を打つなら逃げ切れるかもしれないが、立ち向かおうとは思わない。


「だから突き放すことは出来た。それでも私達の意思を汲んでくれた。」

「脅したじゃない。」

「あれは脅した訳じゃない。と言うより私達を脅す必要はない。」

「・・・どういう意味よ?」

「その気になれば私達なんていつでも殺せるからですか?」


 今まで黙っていたルイが声を上げる。街を出てから一言も喋っていないルイに視線を向けると、にこやかな表情を浮かべていて、不安な様子は見られなかった。


「なんで笑ってるの?」

「ギフトさんはたぶん割り切ってるんですよ。とても残酷にとても優しく。」

「そういう事。残忍で甘い性格。」

「人格破綻者ですね。」

「それは言い過ぎ。でも言い得て妙。」


 リカには何一つ言っていることが分からないが、ミリアとルイはしたり顔で頷きあっている。疎外感を感じて二人を問い詰めても、適当に誤魔化すだけで、挙句の果てには直接聞けばと言われてしまう。


 直接聞けるならそうしている。だが、どこまでを文句と取るかはギフトの裁量次第だ。ちょっとの事で苛立ちを覚えられては自分達の目的も果たせないかもしれない。


「大丈夫ですよ。私としては目的は果たしました。それにギフトさんはそれくらいじゃ怒らないと思いますよ?」

「私は聞きたいことがある。そうだ。ちょっと聞いてくる。」


 言うやいなやミリアはトコトコとギフトに近づく。急に近づいてきたミリアにギフトは首を傾げながら口を開く。


「どうした?なんか用か?」

「魔法教えて。」

「え?何故に?急に何?」

「妾も教えて欲しいな。ちょうどいいし休憩にせぬか?」


 ミリアの言葉にロゼも便乗し、ギフトにせがむ。まだギフトは疲れていないから良いと思っていたが、ガルドーを見ると黙って頷いていた。


 疲れなど人によって様々だ。感覚ではもう少し大丈夫と思っていたが、疲労を感じる前に休憩を取ろうということなのだろう。ガルドーは荷物を置いてギフトに近づく。


「団体で行動するときは人の数だけ疲れやすいと思っていい。歩幅も違うんだ。合わせ続けるのは辛いものだろう。俺からすれば少し遅いしな。」

「それは俺の足が短いって言ってるのかなぁガルドー君?」

「歩幅が小さいというよりかは次の足を出すのが遅い。わざとやっていると思っていたが?」

「これで普通なの!じゃあもう休憩しよう!」


 足が遅いだのの話を打ち切り、ギフトは荷物を置いて煙草に火を付ける。


 ロゼはギフトが普段より遅いと感じたことはないが、恐らく常日頃から普通に遅いのだろう。ギフトが人に合わせるとは思えない。女性に合わせるとか考えている訳もないだろう。


「ロゼが非常に失礼な事を考えている気がする!」

「気のせいだ。食事でもするか?」


 少し浮かんだ考えを見事に看破されるも、それ以上の追求を逃れる。


「食事で何でも誤魔化せると思うなよ?」

「なら止めておくか?」

「・・・食う。」


 誤魔化せるとは当然ロゼも思っていない。だが、ねちっこく言ってくる性分でも無いので、それ以上弁明もしない。


 食事を取るためにとギフトとガルドーが狩りに出向き、女性陣はそれを待つ事になる。反対意見も出たが、ギフトが鬱憤を晴らしたいと言われ、ガルドーと別々の場所へ向かう。


 後に残された女性陣はリカだけイライラしている以外は特に問題ない。ただお互いをよく知っているわけでもないので特に会話が弾むことはない。


 聞きたいことは山ほどあるのが三人の心情だが、それを直接聞くのは憚られる。ロゼだけを省いて話すのも気が引けるし、どうしたものかと頭を悩ませる。


 ロゼはそれを気にした様子はなく、てきぱきと食事の準備を進めている。半ば無理やり付いてきた形なのに何もしないのは不味い。ミリアとルイが慌ててその作業を手伝うが、リカは険しい表情のまま動こうとしない。


「ねえ。私あいつ嫌いなのよね。」


 そして何を思ったのか、直球な一言を投げつける。あいつとは言わずもがなギフトのことだろう。二人は何故か納得しているが、リカは何も知らない。ついていくと決めるにしても、もう少し時間が欲しかった。


「ふむ、そうか。」


 だがロゼは何も言い返さない。それだけ言うと作業に戻り、口を開かない。最初に会った時はギフトを悪く言われて突っかかってきたのに今度の反応は淡白だった。その事が余計にリカをイラつかせる。


「なによ。言い返さないの?」

「・・・正直に言えば仕方無いだろう。ギフト自身嫌われても良いと思っているし。むしろ嫌いになるよう誘導している。」


 ロゼはいい加減慣れたし、ギフト自身基本は寛容な性格をしている。だが、必要以上に馴れ合おうとはしていない。


 自分で言うのもなんだが特別扱いをされているのだろう。何がきっかけでそうなっとたのかは知らないが、ギフトの中でロゼに良くすることは抵抗なく行っているように思える。


 だが、他の人に関してまで同じようにはしていない。ギフトの正体からも必要以上に親しくなるのを避けているのだろう。突き放すような言動も多いのはロゼも理解している。


「だがな、それはギフトの一面だ。妾はギフトに嫌いと言われたが、今は気を許せるほどには仲がいいと思っているぞ。」

「何それ?やっぱり頭おかしいんじゃない?」

「かも知れぬな。別に理解しろとは言わぬ。ただ決めつけてる内はお主は何もわからないままだろう。」


 リカはギフトを穿った目で見ている。第一印象も良いものでは無かったし、容赦なく人を殺したギフトをいい目で見ることは出来ない。それが普通の感覚だ。


「見てればわかる。何も知らぬままは勿体無いぞ?」


 知れば知るほど世界がわからなくなる。ロゼはギフトに出会ってから様々なことを知ったと思っている。今までが知ら無さ過ぎただけかもしれないが、どんどん世界が広がっていくのは自信を成長させる。


 ギフトにしてみればまだまだ知らないよと笑われだろうが、成長はしたと思っているし、ギフトもロゼの成長を楽しんでいる。


「わかる。新しい知識を得るときは高揚感がある。」

「そうだな。だがまだ教えて貰えぬ事の方が多い。帰ってきたら聞いてみるか。」

「賛成。」


 ロゼとミリアは笑い合い、ルイはそれを微笑ましく見守っている。リカは謎を残されたまま、悶々とした気持ちを抱えて、空を見上げて溜息を一つ漏らした。






更新がまた止まるかもしれませんすいません。

ちょこちょこブックマークとか増えてきてとても嬉しいです。

しかし無常にも時間は流れていくのです。

時間が止まってくれれば沢山更新できます。誰か開発してください。

それか脳で思ったことを字として保存できる機械を下さい。


まぁ単純に文字を打つのが遅いんですよ。

慣れて来たのですがまだ間に合いません。

頑張りますので皆さんもゆったりお付き合いください。


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