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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

腐女子が自分の考えたBL小説の世界に転生したら

作者: 夏風邪
掲載日:2018/03/29

タイトルが全てです。

是非とも頭を空っぽにしてお読みください。

我輩は腐女子である。

くれぐれも間違えないで欲しいが婦女子ではない。「腐った女子」と書いて腐女子である。

では腐女子とは何かと言われたら字面から想像して察しろと言いたいところだが、説明させて頂くとBLを好む女子を指した言葉である。オタクならば全ての女子が腐女子だという人もいるようだが本来はBLが好きな女子のみを指した言葉だ。

では次に、BLとは何かと言うとベーコンレタスの略称ではなくボーイズラブの略称である。んじゃボーイズラブって何って聞かれたらつまりはホモとかゲイのことだよ‼︎となる。


かなり特殊な嗜好であることはご理解されたと思う。


そんな特殊嗜好だがその実態を知っている人はどれくらいいるのだろうか。かく言う私もぶっちゃけよく分からない。

個人の趣味嗜好で色々と細分化されていき同じ作品の2次創作ジャンルでどれほどのカップリングが出来るか。人気ジャンルとなるともう把握仕切れない。王道からマイナー、マイナーを飛び越えて愛ゆえにありえないカップリングさえも成し遂げることがある。ちなみに私はマイナージャンル萌えである。


そう、言うなれば十人十色だ。腐女子の数だけカップリングが出来ると言っても過言ではないと思う。


さてここまで腐女子について語ってきたが、つまり何を言いたいかというと現状起きてしまった超常現象は私が腐女子であるがゆえのことではないのだろうかという話だ。


「姉さん?」

「ぇ、あ、どうしたの奏?」


悶々と考えこんでいた私を現実に引き戻したのは弟である水島奏だ。

奏は一見して天使かな⁉︎というような容姿をしている。ショタコンがいたら速攻で攫ってしまうくらいに愛らしい容姿をしている。さらっさらの金髪に透き通るような蒼い瞳。華奢に見える体躯。極め付けは幾つになっても損なわれないぷにっぷにのほっぺだ。つつくと程よい弾力で物凄い和む。天使だ、うん天使だよこの子。

そんな地上に舞い降りし天使の姉、それが私である。名前は水島紗凪という。

弟とは打って変わって典型的な日本人の容姿をしている。細すぎず太すぎていないと信じたい体型を根性で意地している普通の女子である。いや違った。趣味嗜好は普通じゃなかった。

そんな趣味嗜好は普通じゃないが見た目は普通の女子である私にはもう一つ普通じゃないことがある。


前述して腐女子であったが故に起こったと思われる超常現象、それは前世の記憶を持っていることだ。


真面な人にうっかり話でもしたら即座に救急車を呼ばれて入院させられることは間違いない。もし何も知らない私が誰かにそんな事実を暴露されたとしたら絶対にそうする。頭がおかしくなったとしか思えないのだから。

さて私に前世の記憶が戻ってきたのは今から六年前、私が中学校に入学する前の年のことだった。

当時の私は両親と母方の叔父と共にこの天使である弟を溺愛していた。それはもう過剰とも言えるくらいに。そのおかげ、いや、そのせいで天使のような弟はそれはもう手のつけられないくらいのクソガキだった。もう一度言おう。本当に本当に、クソガキだった。天真爛漫と言えば聞こえだけはいいが、つまりは聞き分けのないワガママなクソガキだ。あ、三回言ってしまった。まあいいだろう。何度でも言いたくなるくらいどうしようもない性格だったのだ。

そんなクソガキを何故そこまで溺愛できていたのか、覚醒した今では全く分からないが兎に角家族全員に加えて一部の親戚も加わって蝶よ花よと持て囃した。それはもう盛大に。あれは今となっては私にとっても弟にとっても黒歴史だ。

では何故いきなり覚醒したのかと言えば、実のところさっぱり分からない。ラノベとか夢を見せる小説の中では何かしらの前触れがあるのがテンプレだったりするが全くなかった。いつものように可愛い弟を愛でて部屋に戻ってさて勉強すっかと気合を入れたその瞬間スコンと前世の記憶が戻ってきた。言うなればアレだ、だるま落としで綺麗に中のやつを飛ばしたと思ったら隣にもだるま落としがあって、飛んでいった中のやつが隣の中のやつにぶつかってキレイに飛ばしたと思ったら何事もなかったかのように入れ替わってそこに立ってる感じ。分かりづらい?それもそうだろう、私もなんて言い表せばいいのか分からないのだ。語彙が圧倒的に足りてないので容赦して欲しい。

よくラノベとかである膨大な記憶を思い出して脳がオーバーヒートを〜なんてなかった。普通だった。強いて言うならば前世での黒歴史が一気に蘇ってきて羞恥で絶叫しかけた。今世では腐っていなかった私はこの記憶のせいで一気に腐り落ちたことは言うまでもないだろう。この世の歴史はホモと共にあるのだから仕方ない。そんなワケはないとか言うやつは偏った目で歴史を調べてみるといい。全世界にホモはいたのだ。日本の武将だって例外ではない。


話が逸れた。


そんな前世の恥ずかしい記憶を取り戻した私だが、今世における重要な事実に気がつく。それはもう重要なことだ。だって生きてるだけで人の心の傷を抉ってくれるのだ。


なんて酷い現実なのだろうとこれからの人生を悲観したほどにつらく苦しい事実。


私が、恐らくは転生したのであろうこの世界は、私が前世で手慰みに書いていたBL小説の世界だという残酷な事実だった。


なんだそんなことか、とか思ったヤツは今すぐ私の前にきて土下座して謝れ。

大した文才が無く語彙力も無いに等しい人間が書いた文章だ。おまけに絶賛中ニ病を患っていたからこそのメアリー・スーな設定。

メアリー・スーが分からない?要は俺TUEEEEeeeeeeeeeっ‼︎ってやつだと認識してくれれば相違ない。設定盛り盛りの盛り盛りだ。


そんな好きキャラ愛され、好きキャラ総受け、好きキャラ至上主義だった頃の負の遺産。


それがこの世界だ。


名前から何から私の恥ずかしい記憶ポケットに残されていたものと全く同じである。

ただの偶然じゃないのか、と私もそう思った。というかそう信じている。そう思うことにしているのだ。現実から目を背けたい。

でも主人公の設定、生まれから家族構成に幼馴染、親戚等々の全てが記憶の通りだったのだから流石に偶然にしては出来過ぎじゃなかろうかと思うしかなかった。これは私の負の遺産の世界に等しいのだと思うしかなかった。


当時は本当に絶望した。


精神的に立ち直るのには苦労したけれど、ふと気付いたのだ。例え私の負の遺産の世界だろうと、私が生きているのはこの世界でしかない。

あの恥ずかしい設定を踏襲していく必要がどこにあるのかと。


そんな訳で、私は弟の人格改革に手を出したのだ。

そう、私の負の遺産である小説の主人公で私の弟の水島奏だ。

私の考えた当時の私的萌えな主人公は、家族にべったべたに甘やかされて傲岸不遜な甘ったれで中学校で世界が広がると今までの自分を認めてくれるのは家族たちと極近しい友人だけだと思い知らされて人生で初めての屈辱を味わいやさぐれて夜の街に繰り出して不良グループと知り合い鍛えられ愛されていくという設定だった。


はっきり言おう。


私は身内に不良グループに属すような人間は欲しくない。見た目からして怖いじゃないか。

根っからの悪人という人は少ないだろうがそれでも怖いものは怖い。

前世でもそういう人たちは忌避してきたのだからこの人生でも全力で回避したい。

要は甘やかされすぎたのが原因なのだから、過剰に甘やかすのをやめて常識、礼儀、マナーを叩き込めば良い。

そう思い立った私は、その日から心を鬼にした。弟がどれほど泣いて喚こうが、両親が抗議しようが聞き入れずに私は弟を教育した。

本当に苦労した。だって碌に話を聞こうともしない腕白坊主なのだ。我儘を聞き入れてもらえるのが当たり前だったから我慢なんて覚えているわけもない。

何度椅子に縛り付けて耳元で読経を聞かせてやったことか。

ちなみに邪魔してくる両親も椅子に縛り付けてヘッドホンをつけて般若心経を延々と聞かせてやった。


その甲斐あってか、私の黒歴史の主人公だった弟は輝かしい紳士へと調教し直された。


あの腕白坊主がこんなに立派になって…っ‼︎と感慨深くなる。青痣引っかき傷が当たり前だったあの日々は、この紳士な美少年を拝むための修行だったのだと思っている。

弟が変わると同時に、両親も変わった。

幼稚園でも小学校でも傲岸不遜な腕白坊主だった弟の周りからの印象は最悪だった。見目だけは良いから最初は人が集まるのだが、本性をみてしまえば一気に人は消え、両親に対する印象も真逆に変わる。

子供の躾もまともに出来ない親。そんなレッテルを貼られた両親、特に母に対する印象は底辺に近かった。


仕方ないことだし、自業自得だとも思う。


それが弟の性格が矯正されて、見た目通りの天使へと進化していくにつれて母への周りからの評価はうなぎ登りに上がっていった。

その裏にあった私の努力なんか気にしなくていい。私はこの世界で空気のように周りに溶け込んで静かに暮らしたいのだ。

いやまあこの家族の元に生まれついた時点で無理な気はしてるがそれでもきっと目立たずに生きていくことは可能なはずだ。


「姉さんってば‼︎」

「ぅぁはいっ!?」


回想に耽って完全に意識をすっ飛ばしていたらしい。我が可愛い弟の輝かしい御尊顔が目の前にあった。

ああ、なんてBLストーリーの主人公に相応しい可愛らしさなのか。


違った。


どうやら弟は大分ご立腹らしい。


「さっきから呼んでも全然反応してくれないなんて…風邪でも引いた?」

「いや、大丈夫。ちょっと考えごとしてた…」

「…………ホントに?」

「ホントホント、マジマジ、大丈夫だって。相変わらず心配性だよね我が弟は」


ジトーっと見てくる弟の顔は大変麗しい。

ちなみに私は文才もないが絵を描く才能もない。というか絵を描く才能が全くなかったので仕方なく文章を書いて心の奥底にある熱い想いを吐き出していた人間である。まぁ文才がないので出来た作品は察して下さい程度なレベルのものしかできなかったが。

故に自作の小説はキャラ構想はするもののそれを描くことは出来なかったのだが、幸いにして世の中は作品に溢れていた。理想のキャラクターの絵を探すのには事欠かずに、複数の神絵師様のイラストで妄想したものである。


つまり、弟の顔はその神絵師様の絵が現実にいたら正にこうなったという麗しさなのである。


日がな一日眺めていられる。


「それでね姉さん。明日、友達を連れてきたいんだけど…」

「おー、いいよ。健ちゃんでしょ?」

「いや、うん、健司もだけど…」


健司というのは、弟の幼馴染である小鳥遊健司というお隣に住んでいる子のことだ。

弟が暴君だったことからの付き合いであり、弟の性格がここまで矯正されたことで彼が私に付けた渾名は「鬼軍曹」だった。

どっからその言葉を知ったのかと当時は不思議だったが何のことはない。大元の原因は私だ。

彼は弟と違って私の考えた設定通りに育ったのだ。弟ほど昔の私の理想をぶっ込んだりはしていない、いやしたかな、どうだったかな、したかもしれない、うんまあしたかもしれないということだが、弟が天使の如き愛らしさならば幼馴染である彼にはその天使を守るための強さが欲しいと考えた。ぁ、うん、理想をぶっ込んでました申し訳ない。

強さ=軍人=日本での軍人相当は即ち自衛隊隊員という短絡的な思考で彼の父親は陸上自衛隊

隊員、彼の夢もそんな父に憧れて自衛隊隊員になることであるという設定にしたのだ。

彼はその通りに成長して、今から身体を鍛えているので弟よりも体格が良くしなやかな筋肉がついている。

ガチムチと細マッチョのちょうど中間くらいの体格でとても私好みな肉体の持ち主である。


そんなことはどうでも良い。


「“もだけど”ってことは…新しい友達を呼んだってこと?」

「友達…うん、友達…だと思う…」


弟の言い澱む様子が気になるが、なんでも話せる友人というのがごく僅かしかいない弟が家に友人を招くのはとても珍しい。

きっとこれは弟が仲良くなりたい人を招こうとしているのではないだろうか。


ここは姉として、協力すべきだろう。


そして私の黒歴史とは違う、弟の力で作り上げた男だらけのハーレムを見せて欲しい。


「分かった、じゃあオヤツ用意しておくね」

「ぇ、ぁ、うーん」

「ん?甘いのは嫌いな人たち?じゃあポテチとかのがいいかなぁ」

「いや、何でも食べると思う…」

「分かった、じゃあパウンドケーキでも作ろっか」

「ぁー、うん、よろしく…」


弟はなんだかとても困った顔をしているがお姉ちゃんは気にしませんよ。

そんなに私手作りのオヤツはダメか?

いや、でもいつも美味しい美味しいってぺろりと平らげるだろうに。


まあいいか。

弟の大切な友人候補を全力でおもてなしするために、前世でのコミュ症が今世では若干改善されたお姉ちゃんは頑張りますよ‼︎



そう意気込んでいる私を尻目に、弟が

「姉さんたらリアルで“男をゲットするなら胃袋を掴め”をやっちゃうからタチが悪いんだよなぁ…姉さん手製のオヤツとか食べたらアイツら絶対に姉さんの料理目当てに押し掛けてくるに決まってるよ…」

などと呟いているのには全く気づかなかった。


私はすっかり忘れていたのだ。

主人公の姉も、前世の私はきっちりと設定を作り込んでいたことを。

その設定では、姉は弟ほどの麗しさなど持ち合わせていない割と平凡な顔立ちだが料理がうまくて人の胃袋を掴むことに長けているという謎の設定を付けていたことを。

そして意図せずしてその設定を、この世界を黒歴史と称して止まない私こそが踏襲していたのだという事実に気づいてすらいなかったのだ。


その後、私が意図しないままに弟の幼馴染の胃袋を掴んで離さなかったせいで弟の幼馴染とのフラグが乱立している現実に呆然とすることになるとは、この時の私は思いもしなかったのだった。




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― 新着の感想 ―
[一言] 腐女子とBLという言葉につられてやって来た者です。 腐女子って想像力豊かなのでしょうか……だから、こんな発想になるのですね。私を除いて。
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