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プロローグ
テレビ画面の美人アナウンサーが、連続通り魔事件の概要を説明している。そのニュースを見て、最上咲也は呆れ顔でため息を吐いた。
「まったく、何が悲しくてこんなことするのかな」咲也は一人暮らしの部屋で、もちろん独り言を呟く。
喋れば全て独り言になってしまう空間は、いささか寂しい。一人で、いや、独りで盛り上がった後に襲ってくる強烈な虚無感は、何とも言えないものがある。
しかし、その虚無感も上京してきた高揚感によって、すぐに打ち消されることになるのだ。
咲也はこの春、東京の有名私立大学に見事現役合格を果たしたのだ。それから、もう二ヶ月が経つのだが、高揚感はいまだに消えていない。
だが、この高揚感があるうちは大学生活を退屈しないで過ごせるだろう、という自信もあったので、咲也はこれが悪いことだとは思わない。
そろそろ午後九時になってしまうが、まだ夕飯の支度をしていなかった。咲也は立ち上がり台所に向かう。
「さて、今日は何にしようかな」そう言いながら、咲也は冷蔵庫を開けた。