掃除
ひだまり童話館『ピカピカな話』参加作品です。
僕は小学校二年生。一年生が入学してきたから、お兄さんになったんだ。だからお兄さんとして僕の得意なことを教えてあげようと思ってるんだ。
僕の得意なこと、それはね掃除さ! お母さんに教わったんだけど、家の中を綺麗にすると気持ちがいいんだ。
僕はぞうきんで綺麗に床もふくんだよ。最近の子はぞうきんの絞り方も知らないんだって。ふふん。僕が教えてあげないとね。
さあ、掃除の時間だ。僕はぞうきんを手にして廊下を駆け抜ける。少しずつ綺麗になっていくのが気持ちいい。一年生にも指導だ。ぞうきんの絞り方が甘いと、廊下がびしょびしょになっちゃう。僕は一年生にも指導して、皆興味津々で聞いてくれた。
ただ、僕が気になっているものがある。それは、学校の創立者? の銅像だ。誰も掃除していない。僕は子分(一年生)を引き連れ、銅像の掃除をすることにした。ぞうきんでふくと、すぐにぞうきんは真っ黒になった。少しずつ銅像を磨いていく。
ふう。綺麗になった。
「感心、感心。君たちは偉いね。綺麗に掃除してくれてありがとう」
校長先生だった。そのとき一年生の一人が呟いた。
「ピカピカ……」
銅像に向かってではなく校長先生に向かって。
「こらっ!」
「逃げろ!」
校長先生の言葉に皆逃げ出した。僕を除いて。僕は責任者なんだ。最後までいないとね。
「まったく……ん? 君は逃げないのか?」
「はい。責任者ですから」
僕はふんぞりかえって言った。
「そうか。まあ、銅像も綺麗にしてくれたしな。早く帰りなさい」
「はい」
僕は銅像と校長先生から離れて歩き出した。そしてそっと後ろを振り返った。銅像を眺めている校長先生を見て僕は思った。
銅像も校長先生の頭もピカピカだ!