返済は計画的に
住むところを確保するにせよ、まずはお金が必要との結論に至った。
「シャーリー、お前って金もってたりするんか?」
「いいえ。ございません」
「そっか」
人類最強って言われるくらいだから王様から多少は優遇されたりしてるのかとも思ったが。
「じゃあ、お金は借りるしかねえな」
「金貸しに頼るよりもきちんと稼ぐほうを推奨いたします」
「それは違うな、シャーリー。お金ってのは結局信用のあるところに集まるもんだ。俺らの場合は借りるほうが手っ取り早く大金得られるぜ」
「信用……ですか?」
「そ、人類最強女騎士っていう信用がな」
シャーリーは良く分からないといった風に首をかしげた。戦闘能力に特化しているだけあって戦い以外のことになるとからっきしってのは本当みたいだな。
しかしまあ、シャーリーはぱっと見絶世の美女、なおかつ巨乳だ。こんなのと町を一緒に歩いてると優越感とともに身の危険が感じられてしまう。果たして、そんな俺の予感はすぐさま的中することになる。
「てめえ、人にぶつかっといてごめんなさいの一言もねえんかや!」
「良い度胸してんじゃねえか、ああああ!?」
チンピラ風の男二人に絡まれた。どこの世界にも一定数はいるもんだな。
「聞いてんのかよ、おい!」
胸倉を掴まれる。されるがままである。
「許してほしいならどうすんだよ、分かってんだろおい!」
「お金か? 残念ながら俺らはまじで一文無しだからそれはちょっと……」
「金がねえなら女よこせや! その隣の奴を。そいつに貢がせろボケ!」
一方の男がそう言ってシャーリーに手を伸ばそうとした、その瞬間――
バタ、バタン!
二人の男は一瞬にして地に倒れ伏した。
「シャーリー、お前がやったのか?」
「はい」
「何をしたん?」
「双方の頭部同士を衝突させました。軽症にとどめております」
「そっか」
倒れている男二人の持ち物を漁る。どうにも盗品っぽいが結構な額のお金をもっていた。
「ま、今度会ったとき返せばいいか」
男二人から私的に合法な方法でお金を預かることにした。
その後は信用創造のプロセスにのっとり、着々とお金を増やしていった。
はじめはチンピラのお金を担保にシャーリーの人類最強という信用を生かして小額ずつ借りていき、借りたお金をまた担保に供してまた借りた。そんなこんなで相当の借用証書を渡したときにはかなりのお金がたまっていた。
「これほど借りては後の返済に困るのでは? 利率もかなり高めに設定してますし」
「まあ大丈夫だろ。利率は仕方ねえ。ここらで差つけないと金貸しとかの公的な機関には対抗できないしな。あれ、てかシャーリー、お前腹減ってたりする?」
「いえ、別に」
うつむき加減で答えられた。
「隠さなくてもいいだろ。今、腹なっただろ?」
「……」
心なしか顔を赤らめているような気がした。表情自体は常に真顔だが、恥ずかしさみたいなもんは多少は感じるんだな。
「ま、俺も腹減ってきたし」
片田舎によくある微妙なデザインのお店に入った。アメリカンドリームって言葉が似合いそうな場末の酒場である。
「いらっしゃいませーって、あ!」
「あれ、まなみ?」
「翔!?」
クラスメイトの白石真奈美に出迎えられた。