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日出づる国、異世界に転移す  作者: ワイアード
第5章 ハルディーク皇国編
79/161

第74話 日本観光とそれぞれの思い

訂正…レイス王国の位置を東方大陸から西方大陸へ変えます。

ーー翌日 日本国 東京都 政府管轄のとある高級ホテル



亜人族国家の王達が宿泊しているホテル。そのホテルの前には多数の護送用の車がズラリと並んでいる。ホテルの周りにはいつものテレビ局のクルーは居らず静かだった。


今回の彼等の訪日で何かしらの問題が起きてはマズイと思った政府は、徹底的なガードで彼等をマスコミの手から守っていたのだ。



「さてと…そろそろ着く頃かな。」



ホテルの玄関で彼等を待っていた案内人の北上きたかみのぼるは、腕時計を見ながらボソリと呟く。


するとホテルの玄関からウェンドゥイル達が出てきた。目の前の自動ドアが開くと、彼等は一瞬ビクッとなる。



「こ、この魔法のドアは相変わらず慣れませんな。」


「ど、ドアだけの問題では無いがな…はぁ〜」



彼等が随分と疲れた様子に気付いた北上は、彼等にどうしたのか聞いてみた。



「お、おはようございます。えーっと…皆様、お疲れの様ですがぁ…な、何か?」


「ん?あぁいや、そのぉー…宿泊所はとても素晴らしいものだったよ!…す、素晴らしいものだったのだが…」


「??」



ウェンドゥイルとアビジアーナは、苦笑いで少し口ごもっていた。すると、シャロンとドヴェルグが2人の代わりにハッキリと話し始めた。



「「豪華ではあったが、些か不便でもあった。」」


「ッ!ふ、不便でしたか⁉︎」


「おうよ!ここのメシは格別に美味いし、酒も最高だった!部屋も亜人族相手にしては豪華過ぎるほどだったさ!…だが」


「使い方が分からない物だらけで大変だったわぁ…豪華だけど始めて見る物ばかりだったからねぇ。まぁあんまりこんな事言いたくなかったんだけど。」



何時も以上の要領で接待したつもりだったが、それでも不足していた事に北上は反省した。どんなに説明した所で、彼等にとっては別次元の世界の様なもの、もっと慎重かつ丁寧に案内するべきであった。



「こ、これはこれは…至らない点がありまして、申し訳ありませんでした。」


「いや、お主の責任では無いゾ。我らとてこれから良い関係を築いていく国の者にこの様な事はあまり申したくはなかった。しかし、もし我ら以外の何処ぞの国の使節団を迎える時は、この出来事を活かして欲しいと思い口にしたのだ…そうだな、シャロン殿?ドヴェルグ殿?」



アビジアーナの言葉に2人は軽く頷く。



「さて!朝から辛気臭い話しは終わりだ!…今日はハルディーク皇国についての情報共有だったな?」



バハムードが意気揚々と北上に向かって話す。



「はい。本日はその事についての、会談を行う予定となっています。ですが…」


「む?なんなのだ?」


「皆様にはその前に、この日本の…東京を案内していきたいと思います。」



北上の言葉にバハムード達は驚いた。てっきりこのまま国会議事堂へと向かい、昨日の部屋で会談の続きを行うものと思っていたからである。



「案内だと?何故この時に?」


「この時だからこそです。皆様の国々と我が国日本が国交を結ぶ様になる事は喜ばしい事ですが、皆様はこの日本の事をまだ殆ど知りません…ですから、ここで日本とは何なのかを理解して頂くことで、より深い関係を結ぶことが出来る思いました。」


「ふむ…異文化見学というやつか…ヒロセ王達は?」


「はい(広瀬王?…王様?)、皆様は現在会談の準備をしておりますので、その間に…と言うわけです。」



亜人族の王達は、納得した様子で「よろしく頼む」と話した。そこで北上は、「何か見学してみたいモノがアレばそちらへ個々で向かう事も出来ます」と話した。するとー




「ふむ…私としてはこの国の農作物について見てみたい!」


「俺ぁ建築物と鉱石類だ!」


「ホッホッホ!ワシはこの国は歴史についての学びたい。」


「私はこの国の美容品と衣服を見てみたいわ‼︎」


「私は特に…いや、この国の軍事力がいかほどなのか今一度見てみたい。…確か『ジエイタイ』と言ったか?その者たちの力をこの目で見てみたい!」


「僕はこの国の水質を調べてみたいなぁ〜。」



北上は、彼等の要望を聞くと「わかりました」と了解の返事を返した。実は事前に彼等がどう言った性格でどういう人達なのかをロイメル王国のホムルスやザハナスから聞いていた為、予め予想される場所の準備はしていたのである。



こうして亜人族の王達は、各々が興味を持った日本の文化や技術などを見て回るべく、用意された車に乗って出かけて行った。








ーーウェンドゥイルの見学先



「ほう…これは何とも…不思議な。」



ウェンドゥイルは東京都郊外にあるとある田畑地帯へと赴いていた。そこで行われているのは田植えだった。彼は田植えを行う無人型のトレーラーを不思議そうに眺めていた。


あの重機も十分に気になるが、それ以上に植えているモノが何なのか気になっていた。



「…アレは何を植えているのでしょうか?」


「はい!アレは稲です。」


「…イネ?」


「はい、稲です。まだ青々とした雑草に見えますが、成長すると『米』と呼ばれる物が収穫出来ます。米とは外皮を取り去った粒状の穀物のことです。これが日本人の主食となっています。」


「ほう!ニホン人の主食とな。」



すると北上は、先ほど用意された炊きたてのご飯を持ってきた。ウェンドゥイルは、初めて見る米に最初は警戒していたが、恐る恐る一口食べて見るとその味が美味しいことに驚き、2口目、3口目と食べていった。



「これは上手いな!モチモチとした食感も微かな甘み…塩辛い物と一緒に食べたくなる食べ物だ!」


「喜んで頂けて良かったです。」


「キタカミ殿!この国の農作物をもっと見せてくれまいか⁉︎」



次にウェンドゥイルが案内された場所はさっきの場所から少し離れたとある山奥であった。


道中は森林地帯しか見えない場所に聳え立つ高層ビルの様な1つの建物があった。



これは高層型の農作物栽培を目的としたビルで、スチール製とガラス製の巨大な温室が存在する。冬は太陽光を利用した暖気システムと夏は植物によって発生した空気を使った冷気システムを使う。水はその土地の山から得た水と雨水を濾過して、農作物を育てる為の栄養豊富や水や飲料水に利用が可能。更に、複数のフロアでは家畜も飼育されており、家畜の糞で肥えた土の生成もしている。


日本は国土が少ないためにこの施設を建てるのには数が限られており、どうしても国内食料生産には限界があったが、ドム大陸で得た土地を使って建設した巨大な農業栽培ドームを建設出来たことで生産率を上げることが出来た。


ビル内を一通り回ったウェンドゥイルは、感じるモノが多すぎて逆に頭が真っ白になる。



「ウェンドゥイル様。如何でしたでしょうか?」


「な、何とも……言えん……凄過ぎてな。」


「他には何か見てみたいものは?」


「いや…だ、大丈夫だ。…ここの作物は皆安全なのか?」


「えぇ…下手に作る作物よりかはマシではないかと。」



そう言うと北上は再び用意していた採れたての大根ときゅうりを持ってきた。既に一口サイズにカットされたソレを、北上は爪楊枝に刺して一口食べた後にウェンドゥイルにも手渡す。



「ほう!何ともこれは水々しい!…それにこれらも初めて見る野菜だ。」



ウェンドゥイルは迷う事なく爪楊枝を使って一口食べた。



(ッ⁉︎……う、美味い⁉︎…何の味付けもせずにこんな美味いなど…まるで果実だ!)



あまりの美味さに感動したウェンドゥイルは、しばらく感慨にふけた後、北上の方へ目を向ける。



「キタカミ殿…これらの作物の育て方を教えて頂きたい。」


「日本との交易が上手くいけば必ず…」


「うむ…我が国の使節団を送りたい…無論教えて貰うだけと言うわけにはいかない。我が国のみ得られる特産物を用意しよう。」





ーードヴェルグの見学先



ドヴェルグはとある寺の修復作業現場へ訪れていた。そこには、多くの大工達が昔ながらの方法を活かして修復作業に精を出していた。


その作業の様子を腕を組みながら堂々と眺めるドワーフ族の王、ドヴェルグがいた。



「どうですか?ドヴェルグ様。」



案内人のみなみ恒雄つねおは、ドヴェルグに質問すると、彼は暫く黙り込んだ後に答えた。



「うーーむ…腑に落ちん!全くもって腑に落ちんぞ!」


「は、ハイ?」



そう言うとドヴェルグはのっしのっしと修復現場へと近づいて行く。南は慌てて危ないことを伝えて止めようとするが、それでも構わずに進むドヴェルグ。そして、彼が多数の骨組みが埋め込まれたとある柱の前に立った。



「……のだ?」


「え?」


「これは一体…どうやっているのだ⁉︎ほんの僅かな隙間すら無い‼︎…材木と材木を組み立てる技術は、至難の業!…だからドワーフ族でも大体のヤツが釘やら何からを使って建築する。ドワーフ族以外の種族では、ソレを使っても建築が出来ないことが多いが……なのにこの柱は…いや、これだけじゃない…この建物の全てが一切の釘を使われていない‼︎」



興奮冷めやらぬ様子で寺の内部を歩き回っている。まるで珍しいモノを目にした子どもの様であった。



「おぉ?これの難しさが分かるとはなぁ…御伽噺話の種族だと思ってたが、ドワーフ族ってのは本当に建築物を見る目があるだなぁ。」



すると半纏を着た白髪の老人がドヴェルグに話しかけてきた。



「あ?誰だお前?」


「俺は宮大工のみき雅三まさぞうってんだ。この古寺の修復を任された組の親方だよ。」



ドヴェルグは幹と呼ばれる男を見て確信する。



(ほう……ただの建築士じゃねぇな。腕が立つ…それもかなり。)


「どうかしたかい?」


「いや、何でもねぇよ。俺はドヴェルグ・ドルキンってもんだ。見て通りドワーフさ。」



すると南は、幹に向かって血相を変えて詰め寄る。



「み、み、幹さん⁉︎こ、この方はドワーフ族のおー」


「細けぇ事は良いんだよミナミさんよ!気にすんな気にすんな!」


「え、いや、でも…」


「ミキ…さんだったかい?悪りぃがこの建築法について…ちょいとばかり教えちゃくれねぇかい?」



幹は一瞬キョトンとした顔をした後、豪快に笑う。



「…ハッハッハッ‼︎勿論だ‼︎」



こうして2人は南の事など御構い無しに寺を回った。



「これは金輪継と言ってなぁ…柱や梁、桁を繋ぐのに使う技法だ。一見簡単そうだが、強固に組み込まれたコレは易々と外れる事は無え。」


「ほ〜〜〜〜〜…」


「んでもってコレは、車知栓と言って柱を繋ぐのに使う技法だ。」


「は〜〜〜〜〜…」



幹の案内と説明のもと、興味深そうに聞いていたドヴェルグだったが、手がウズウズとしていた。それを見た幹はある提案をドヴェルグに話し始める。



「…これから柱の一本を新調するんだが…ちょいとやってみるか?」


「い、良いのかよ⁉︎」



幹の提案を聞いたドヴェルグは、目をキラキラさせながら喜んだ。


その後、作業場へと移動した2人は一本の柱の前に立っていた。一通りの説明を聞いたドヴェルグは早速作業に取り掛かる。周りには興味深そうに見つめる多くの大工達がいた。



「よし…これをこうして……こうで…なるほどこうか……これは並大抵のドワーフ族じゃあ出来ねぇかもしれねぇな。」



次々と作業をこなす姿を見た幹達は、唖然とする。気付いたら言われた作業を終わらせ、言ってもいない作業を進める。



「え⁉︎ちょっ、あんた⁉︎」


「あの設計図通りにやれば良いんだろ?…んでもってここがこうか?…成る程そうか!」



まるで早送りしているかの様に進める手際の良さと器用さに驚きを隠せない幹はタラリと汗を流す。


そして、開始から僅か30分で予定させていた全ての作業を終わらせてしまった。勝手に進めていた事もあって内心不安で点検をする幹だったが、全てが完璧に出来ていたことに更に驚いた。



「こ、こいつぁたまげた‼︎熟練の奴でも早くて1時間以上は掛かる作業をたった30分で終わらせやがった‼︎」



ドヴェルグは誇らし気にドヤ顔を決める。



「へへへ!俺ぁドワーフ族の王だぜ。ドワーフ族の王たる者、常に最高の技術を有してなければ意味がねぇのよ!」


「す、凄い…ドヴェルグ様。」



離れて見ていた素人の南でも分かる神業…するとドヴェルグがイキナリ南に詰め寄ってきた。



「なぁなぁ!ミナミさんよ‼︎近いうちにウチの若い衆をここに連れてきた、ニホンの建築技術ってもんを学ばせてやりてぇ!そうすりゃあ、俺達ドワーフ族の新たな技術の段階へ行ける‼︎なぁ!…なぁ!」


「え、そ、そうですねぇ…我が国との交易が栄えたら…でしょうか?」


「おうよ!頼むぜ‼︎よーし!次は鉱物と酒だ‼︎」



ドヴェルグは幹達と別れの挨拶をした後、次なる目的地へと向かった。


車で数時間進み、東京へと戻る。そして、上野にある国立科学博物館へと立ち寄った。特別に貸し切りとなった博物館には、多種多様な鉱物類が展示されており、ドヴェルグは真剣な眼差しで1つ1つを見つめる。



「如何ですか?」


「……俺の知らない鉱石もあるなぁ…ふむふむ…面白いな。」



1つ1つを興味深く見つめているとドヴェルグはある1つの鉱物に目が入った。それをマジマジと見つめると級にギョッとした目つきへと変わり、南の方へ顔を向ける。



「お、お、おいミナミさんよ!こ、これ…これ‼︎」


「はい?…えっと…『翡翠』ですか?それがどうか致しましたか?」


「ひ、ひすい?俺たちはコレを『ジェドラ』と呼んでるんだか…まぁそんな事はいい!それよりも、何で超貴重な『儀石』である『ジェドラ』が⁉︎…ま、まさかコレ…ニホンで採掘出来んのか⁉︎」


「へ?、ハイ…翡翠は日本の糸魚川市で採掘される鉱石ですが…。」



ドヴェルグは暫くブツブツと独り言をした後に南へコソコソと耳打ちをする。



「な、なぁミナミさん。このジェドラを…ご、極秘裏に…ドルキン王国へ輸出する様頼んじゃくれねぇかい?も、勿論そんな大量にはいらねぇよ…そ、その代わりコッチもそれなりのモンを渡すからよぉ…な?…な?」



南は何でここまでしてあの翡翠を欲しがるのか分からなかったが、取り敢えずは相談してみることを伝えた。





ーーバハムートの見学先



『第1部隊‼︎撃ち方用ーーー意‼︎狙え‼︎』


『撃てぇーーーー‼︎‼︎』



ダダダダーーーーーン‼︎



20式小銃の発砲音がけたたましく鳴り響く。ここは陸上自衛隊の東富士演習場である。バハムートはヘリコプターによる空路(本人は自分で飛んで、ヘリの案内の元)でやって来た。


この日は、亜人族国家の王が視察に来るという事もあり、特別に現段階で直ぐに動くことが出来る部隊による火力演習を行っていた。周りには、地元の人達も結構な数で見学に来ていた。


案内人の東原ひがしばら耕作こうさくは、心配そうな表情で空を眺めていた。何故なら、重鎮であるバハムートが、地上ではなく空から演習の様子を見学していたからであった。



「おとーさん見てー‼︎お空にドラゴンがいるよー!カッコいいねー!」


「そ、そうだね…でも、あんまり見ちゃ…ダメだよ?」


「えぇー?なんで?」



地元の人達も演習よりも空にいる龍にばかり目が行ってしまう。



(だ、大丈夫かな?…せ、説明したくても…あんなに高いところに…)



バハムートは静かに演習の様子を停滞しながら眺めていた。しかし、内心は動揺と興奮の渦がまわっており、かなり困惑している。目の前に起きている摩訶不思議な日本の軍事力に、只々驚いていた。



(あの銃は、我々と知っているモノとは次元が違う!…大小様々だが、どれもが強力過ぎる!…む?今度は何だ?)



『続きましては、99式自走155㎜榴弾砲による演習です……配置用ーーー意‼︎』



5輌の155㎜自走榴弾砲が配置に着くと、マイクによる合図と共に一斉に発射される。



『撃てぇーーーー‼︎』



ドドドドーーーン‼︎



「〜〜〜〜〜〜〜ッ⁉︎⁉︎」



突然強烈な爆音が鳴り響き、思わず耳を抑え目を閉じてしまうバハムート。何とか目を開けて、周りを確認する。



『弾〜〜〜〜着……今ぁ‼︎』



するとここからかなり離れた場所で大きな爆発と土煙が発生する。その光景を見たバハムートは、絶句する。



(な、何という威力!…さっきの銃をはるかに凌ぐ!…更に射程距離も長い!しかし、これほどの破壊力はそう何度も連続して撃ち出すことなど出来ー)


『次弾装填‼︎…用ーーー意!』


(⁉︎ま、まさか⁉︎)



咄嗟にバハムートは耳を抑える。



『撃てぇーーーー‼︎』



ドドドドーーーン!



再び鳴り響く轟音…そして、今度は更に遠い場所から爆発と土煙が発生する。



(あ、あれほどの破壊力を有する兵器を……あ、あんな短時間で次を撃ち出せるのか⁉︎)



バハムートが呆気にとられていると次はバタバタと音を響かせながら何が近づいて来た。彼は次から次へとやって来る日本の兵器に頭が混乱しそうだった。



『続きましては、AH-64D…アパッチ・ロングボウによる演習です。今より、赤い丸印のついた敵戦車へ向けた掃討攻撃を開始します!』



AH-64Dは、赤い丸印の付いた敵戦車を模したモノに向かって対戦車ミサイルを撃ち出した。それは猛スピードで目標へ向かい、外すことなく見事に命中し、爆発と同時に粉々に吹き飛ばした。



(…凄い…だが空中戦においては負ける気がせん!)



飛行兵器が出て来ると妙に強気になるバハムートであったが、AH-64Dの凄さは十分に受け止めた。そして、アレを『鉄の甲蟲』か何かの新種の蟲と思っていたが、中に人が乗っていることを確認すると、蟲では無い空飛ぶ乗り物である事を理解し、更に驚愕する。



(あ、アレを…ひ、ヒト族如きが創り出し…操っているというのか⁉︎し、信じられん!我が帝国の高名な錬金術院の術者を全て集めてもあんなモノは創れない‼︎…ニホン国…お、恐ろしい国だ。)



そして一通りの演習を終えるとバハムートは地上にいる東原の元へと降りた。



「バハムート様!如何でしたか?」


「う、うむ!…まぁまぁだな。しかし、我が帝国の軍事力には一枚遅れをとるが…な。」


「そうでしたか…いやぁ申し訳ありません。本来であればもっと多種多様な兵器類をお見せしたかったのですが…何しろ色々と準備不足でして、ほんの一部しかお見せできませんでして…」


「(〜〜ッ⁉︎あ、アレで全てでは無いのか⁉︎)ほ、ほう…そうか…次は我が息子と共にもっと色々な兵器類を見てみたいものだ。」


「えぇ!その時は是非!」


「…それよりも少し気になったのが『音』だな。アレでは直ぐに場所が敵にバレてしまうのでは無いか?」


「え?ま、まぁそれは仕方がありません…それに見合った火力を有してますから。」


「ふむ…そうか」



バハムートは少し考えた後にある事を思いついた。



「ふふふ…ヒガシバラよ。貴国の最先端の軍事技術によって造られた兵器類の幾つかを我が国へ輸出する事は可能か?」


「え!そ、それはハッキリ言ってかなり難しいと思いますよ‼︎我が国は他国への武器の輸出は法律で禁止されてますし、何より秘密保護法にあたります!」


「そ、そうか…だが、可能な範囲でも良いのだ。我が国としても自国で高度文明国家や列強国にも対抗できる力が欲しいのだ。何も全てニホン国に頼るわけにもいかぬからな…貴国としてもそんな何ヶ国と庇えるほどの余裕は無いのではないか?」


「むぅ…。」



バハムートは少し癪に触るが、少し自国を弱く見せて相手からの同情により交渉の場へ持っていこうと思っていた。



「そ、そうですね…上に聞いてみないことには何とも…」


「おぉ!そうか!期待しておるぞ‼︎…ではその時の見返りに我が国からもあの爆音問題を解決できるモノを貴国へ贈ろう!」





ーーアビジアーナの見学先



アビジアーナは東京都内の国立図書館へと赴いていた。そこの広い個室で1人大量の本に囲まれながら黙々と読んでいた。本は全て日本の歴史に関するモノばかりだった。


アビジアーナの隣には案内人の西川にしかわ裕太ゆうたが静かに立っていた。



「…ふむ…ふむふむ…そうか。」



アビジアーナは本をパタンと閉じると静かに呟いた。



「ウェンドゥイル殿から聞いて、まさかとは思っていたが、ニホンも異世界から来た国なのだな。」


「…はい。俄かには信じられないとは思いますが…事実です。」


「そうか…大変であったな。」


「お心遣いありがとうございます。」



そして、再びアビジアーナは本をペラペラとめくり出した。



「不思議なモノだな…次元の違う世界から来たと言うのに…文化も違う…文字も違うのに、言葉は通じ、現に文字も読めている。」


「我が国も、最初のロイメル王国との会談の際、どうやって相手国とコミュニケーションを取るかでかなり悩みに悩みましたが、結果そしてその悩みは無駄に終わりました。」



ロイメル王国に限った事ではなかった。アムディス王国、テスタニア帝国、アルフヘイム神聖国、サヘナンティス帝国etc…。多くの国々と関わったが、未だ一度もコミュニケーションで問題となった国は1つもなかった。


この件に関しては、日本政府も調査をしていたが、異世界に転移してから今日まで何一つ進展がなかった。何よりもここは魔法が存在する世界…日本の想像を超える奇跡の力か魔法があっても可笑しくはなかった。


実はこうした事に関して疑問に思ったのは、日本だけでは無かった。ロイメル王国もアムディス王国も、その他の国々も何故文化が全く違う国同士でも言葉が通じ、文字も読めるのか分からず、長い間研究し続けて来た。


更に言葉が通じない国も少数ある事から益々分からなくなり、結局は日本と同じ様に全く理解不能だったのである。



「本当に不思議だ…もしかしたら、我々には遠く理解の及ばない…何か別の…神に等しい力があるのかも知れぬな。」


「本当にそうだとしたら、何だか少し…ワクワクします。」


「ほぅ!そうかそうか!ホッホッホ!…それにしても、ニホンは我々が思ってい以上に歴史の古い国だったのだな。……多くの血も流している。一体どんなものだったのか…ワシには想像すらつかぬが、恐らくは国が滅びても可笑しくない時代だったのだろう。」


「…第二次大戦…ですね。」


「……そうかそうか…そう言うのだったな。…読むだけでこんなにも胸が痛くなる…当時のニホン人達は、さぞ苦しかったであろう…だが、貴国はその時代を乗り越え、今も存在している!これは決して簡単な事ではないぞ!…ニホン国は強い国だな…自信を持て…そして誇りに思うのだ…自分がそんな国に生まれた事に…。」



全く違う世界の…それも猿の亜人族に言われると妙な違和感を正直感じた西川だったが、まるで憧れの熱血教師に励まされた気分になった。



「…ありがとうございます。」


「ホッホッホ…さてと…何時間も読み更けてしまったな……。そうだ、ニシカワ殿!この歴史書を私に下さらぬか⁉︎無論タダではない!見返りとして、私が持っているこの世界の…地図を貴国へ献上する。」


「ち、地図ですか?」


「そうだとも……あの『大霧の先も記した地図』を有しているのは我が国だけ…ワシだけなのだ。」





ーーシャロンの見学先



シャロンは東京都内の原宿に来ていた。美容商品や衣服類を見てみたい(買いたい)という希望から原宿のありとあらゆる洋服店や美容店をまわっていた。



「キャーーーーーこれ可愛い〜〜‼︎ねぇねぇ天内あまないちゃん!これもお願い‼︎」


「は、はぁ…」



案内人の天内あまない優子ゆうこは、原宿の街を案内すると同時にシャロンの買い物に付き合わさらていた。購入費用は全て政府が請け負う為、それは良かったのだが…



(ちょ、ちょっと買いすぎじゃないかしら…)



付き添いのSPがもう持つところなど無いくらい洋服や化粧品の入った袋を持っていた。コレではSPでは無くただの召使いである。一応、護衛用の『WALKERウォーカー』も連れていたが、下手をすればその『WALKERウォーカー』も荷物持ちになってしまいそうな勢いである。



しかし、そんなことは御構い無しに無邪気に洋服を選ぶシャロン。周りの人々は初めて見る夢物語の存在…ハーピィー族の彼女を珍しそうに眺め、写真を撮るものも少なく無かった。



「あぁ〜〜〜〜ん、コレも可愛い〜〜!」



当の本人はまったく気にしていない事に天内は逆に尊敬の念すら抱いていた。そして、天内自身も猛禽類の様な手足と羽根をチラチラと珍しそうに見ていた。すると、さっきまで気にも留めなかったシャロンが服を選びながら天内に話し始めた。



「ふふふ…ハーピィー族は珍しい?」


「へ?…あっ!いや…その…。」


「キャハハ!良いのよ!…ドリアード族は希少種族だからね。この世界のヒト族も物珍しそうに見つめるもの。」


「え、えっと…ちょっと良いですか?」


「ん?」


「あ、貴女様はハーピィー族ですよね?」


「えぇ、そうよ。」


「その…ドリアード族とハーピィー族が…なんかゴッチャになって…何だか…そのぉ…。」


「ややこしいって事ね?確かにね!キャハハ

!」



天内は本当なら聞いてはいけないかもしれない質問を、どうしても気になる為聞いてしまった。しかし、シャロンは特に気を悪くするでも無く、服を楽しそうに選びながら話を続ける。



「ドリアード族って言うのは…要するに妖精族ってこと。ハーピィー族はその中の一種ってわけよ。他にも『半鳥セイレーン族』や『小人ノーム族』、『湖女オンディーヌ族』、『羽霊シルフ族』…これら全てを含めてドリアード族なのよ。」


「そ、そうだったんですか。」


「良し‼︎じゃあ次の場所へ行くわよ‼︎」


「え!まだ行くんですか⁉︎もうそろそろやめ…ん?」



天内はシャロンが買った洋服類を見てある事に気付いた。



「あ、あのぉ…この洋服は子供サイズのヤツですよ?」


「ん?えぇそうね。わかってるわよ?」



よく見ると買った服の殆どが子供サイズの服ばかりであった。



「し、失礼とは思いますが…お、お子さんがいらっしゃるのですが?」


「そうよ、それがどうかしたの?」


「そ、そうだったんですか…ですが…それにしてもちょっと多すぎでは?」


「そうかしら?むしろコレで丁度いい位だと思うけどなぁ〜〜。」


「度々失礼ですが…お子さんは何人ほど?」


「え?1男19女だから…20人ね!ふふふ!あの子達が喜ぶ顔が目に浮かぶわ!」


「ッ⁉︎」



天内は驚愕した。そんな沢山の子供がいたなど微塵も予想していなかったからである。



「は、ははは…す、すごい数ですね。」


「そうかしら?これぐらいが私達の国では普通よ。1番多いので70人も産んだ人だっているんだから。」



70人…ギネス更新記録で69人を産んだ某国の人を超える記録である。あまりの現実離れした事に天内は空笑いするしかなかった。



「な、ななじゅ…ははは。」


「まぁ元々ハーピィー族は妊娠しやすい種族だし、一度に3つ子が産まれるのも普通よ。男は滅多に産まれないけどね。そもそもハーピィー族ほ寿命は60年で短いから、より沢山の子孫を残すための能力ってヤツなのかしらね!」


「さぞかし人口も多いんでしょうね…。」


「ん〜〜?そうでも無いわよ。えーっと…確か1万にも満たない筈よ。」


「え?…い、いくら寿命が短くても、それじゃ割に合わないんじゃ…」



するとシャロンの表情が突然段々と暗くなっていった。



「…15年位前だったかな……私の国リリスティーグ国は、その時一度滅びかけた事があったのよ。さっき言ったでしょ?ドリアード族は希少種族だって……何処からかは分からないけど、当時のヒト族国家の間ではある噂が流れ始めたのよ。」


「ある…噂?」


「えぇ……『ドリアード族の血には不老不死の力が宿る』ってね。普通ならこんな噂は、エルフ族とかに当てはまるものだけど、私たちはエルフ族よりも希少種族だからって理由で狙われたのよね。オマケにあの時は、私達ドリアード族もエルフ族と同じ長寿種だと勘違いされてたし。」


「……ま、まさか」


「……でも最初の内は、あまりよく分かっていないドリアード族に大抵のヒト族国家は臆してたからそんなに影響はなかったわ…でもその噂がついに列強国内にまで届いたの。」


「あ、あの5大列強国ですか?」


「そうよ……更に15年前…つまり30年前ね。列強国内では新参者のヴァルキア大帝国が、同じ列強国のアルサレム王国とペリュード連邦を倒してその圧倒的な力を他の4ヶ国に知らしめた。だからその日以降、列強国は各々が自国の力を蓄える為に有りとあらゆるモノを吸収して、ヴァルキア大帝国に対抗できる力を得ようと躍起になっていた。そしてその内の一角であった、バーグ共和国はあのデマを聞いて、あるはずもない不老不死の力を手に入れようとした。」


「ま、まさかそれでバーグ共和国の軍勢が押し寄せて⁉︎」


「ふふふ…違うわ。その時のバーグ共和国は少数民族がいる近隣諸国に対して統一戦争の真っ最中だったから、コッチまで手を回す暇がなかった。…するとそこへある国がコレをチャンスと思って仕掛けてきた。…貴女達もよく知ってる国よ。」


「そ、それは…?」



シャロンは少し笑みを浮かべながらゆっくりと答える。



「…テスタニア帝国よ。」


「ッ⁉︎」



あの異常なまでの奴隷制度を是としていた狂気の国『テスタニア帝国』。その国が関わっていたと聞くとそれ以上聞くのが恐ろしくなってきた。



「15年前…テスタニア帝国は先代皇帝のリウマードが亡くなってから直ぐに、息子のベルマードが次期皇帝に即位して間もない頃だったわ。バーグ共和国があのデマで私たちを狙っていた事を知ったテスタニア帝国は、その不老不死の力をバーグ共和国へ献上し、自国の力を認めさせようとしてたのね。…でもテスタニア帝国とリリスティーグ国の距離はかなり離れてる。だけど、あの国は各地の有名な奴隷大商会に多額の資金を出して、代わりにドリアード族狩りを依頼したのよ。」



当時のテスタニア帝国は、ベルマード体制に変わってから、どうすれば自国の力を列強国に認めさせて貰えるのか考えていた。すると、例の噂を聞いたベルマードが、密偵やタレコミ屋、情報屋を使って各地の大きい奴隷商会を多額の依頼金を出して代わりにリリスティーグ国へ攻めるようにさせたのだ。



「あの時は…本当に酷かったなぁ……傭兵部隊なんて優しいもんじゃない…もはや一国の軍隊に匹敵する数の奴隷商会連合が津波のごとく押し寄せて来た。無論、私達も戦ってけど多勢に無勢…勝負にもならなかった。そして、多くの民が連れ去られ……殺されて…その血を次々樽へと注ぎ込んでいた。それはもう何十隻もの巨船に詰め込めるだけ詰めるほどの数……何万って数の民が殺されていった。生き残った女は陵辱されて…殆どが2度と子供の産めない身体にされた。」



天内達は息を飲んで話を聞いていた。全員が、信じられないような事が起きた事実をこの耳で聞くという覚悟で聞いていた。



「私も含めて生き残ったのは僅か1000人足らず…何とか城に籠城して凌いでだけど、もう時間の問題だった。すると先代妖妃だった私の母様が…己を犠牲する覚悟で一か八かの賭けに出た。」


「か、賭け?」


「……当時母様の事を好いていた列強国の一角のレイス王国の国王の元へ向かったの。そして、助けてもらうよう頼みこんだ。…何とか国外へ母様を連れ出して、レイス王国の国王に会いに行ったの…そして状況を聞いた国王は直ぐに軍隊を派遣、何とかギリギリで国家滅亡の危機は免れた。でもその代わりとして母様はそのままレイス王国の国王の側室に…リリスティーグ国の国家軍事機密であった『グリフォンの卵』を渡す羽目にもなった。」



壮絶な人生を経験したとは思えない軽々とした性格は、ある意味その辛さを誤魔化すためのものだったのかもしれないと思った天内…。



「そして今度は…ハルディーク皇国が確実に覇を唱えようとしている。私は…母様が身を犠牲してまで守ったリリスティーグ国を守る義務がある!…だから私は必ず…必ず!」



強い意思を有した瞳で力強く話す言葉に強い衝撃を受けた天内は、彼女に対して強い尊敬の念を抱くようになっていた。



「あの日以降、国の崩壊は免れたけど、もう国としての機能が出来てないに等しい状況だった。今までずっと国の発展に尽くしていた男達の殆どが殺されたし、生き残った男は全員を国防へ派遣するしかなかったの。幸い海に囲まれた国だし、小さな島国だったから…ギリギリ足りたけど…今度は住居の建設やら何やらをする人が居なくなって大変だったわ。だから…苦肉の策として…薬草や美容に効く野草を育てることで観光客を呼んで、元々悪知恵の働く種族性を利用した詐欺でボッタクリをする。あっ!その時からもうあの噂がデマだって事が広まったし、テスタニア帝国は結局無駄金を使ったてわけよ!…そして、一番儲かったのが…」



するとシャロンは身体をこれ見よがしのポージングをし始める。



「娼婦業ね…バカな男達が下心丸出しでくる様はもう滑稽だったわ。」


「……失礼ですが…旦那様は?」


「正式な夫はいないわ…あの子達の父親はみんなバラバラなの…生涯を誓い合う夫が見つかるまでは誰との子供のでも構わないけど、一度決めたら離婚は出来ないし、夫以外との性交は死罪だから。あ、子供はそのまま夫婦の子供として育てていくわよ。」


「は、はぁ…」


「…あの時以降、変に構ってくるようになったのがドラグノフ帝国の…バハムートね。あいつったら…自国の事でも一杯のはずなのに、私達の国が立て直すまで、ちょくちょく援軍を送ってくれたり、自ら様子を見に来たりしてたのよ。本当に…バカな男よね。」



この時のシャロンの目が恋心を抱く乙女の目をした事に気付いた天内。喧嘩するほど仲が良いとはこの事を言うのかと思った。



「あっ!そうだった!…ねぇねぇ!ニホンの美容薬品と洋服…私の国にどんどん輸出してよ!勿論それなりの金は払うし、それなりのモノも用意するわよ?」


「そうですね…ゆくゆくはそうして行きたいと考えてます。」


「…何なら…この身体をー」


「あ、それは結構です。」





ーーオルカフの見学先



オルカフは、都内のとある浄水施設へと訪れていた。彼は数十分に一度、ペットボトルの水を頭からかぶって乾くのを防ぎながら見学をしていた。


案内人の地館ちだてりょうは、一つ一つを丁寧に説明していた。話を聞いていたオルカフは相変わらずの声質ではあったが、真剣そのものだった。



「ーーっと言うわけで、汚染された水はココへ運ばれて、特殊な機械で濾過洗浄を行い、再び自然界へと戻るか都市部へと運ばれるっというわけです。」


「ふむふむ…成る程ねぇ〜。随分と難しい言葉ばっかりだったけど〜…」



オルカフは浄水された水を触れると暫くジッとした。



「ふふふ…生き生きしてる…中々あるもんじゃないよ〜〜。」


「あ、あのぉ…オルカフ様?た、淡水ですが…」


「えぇ〜〜?大丈夫だよぉ〜。僕達水人族は、水であれば何処でも平気なんだよぉ〜。でもねぇ…汚れた水は身体にとっても悪くって、あのハルディーク皇国から来る汚染水の影響で僕の国の民も困ってるんだよぉ〜。」


「そ、そうだったのですか…」


「それにしても…水を綺麗にして戻すモノを作るなんて…ニホン人は凄いねぇ〜〜。普通だったらそんなこと考えるヒト族はいないんだよぉ〜?」



ここの世界の人々にとっては、水は自然と出て来るもの。出て来て当然、あって当然と考えているため、それを再利用しようとは考えてすらいなかった。



「僕のねぇ〜〜」


「は、はい?」


「僕の国は〜〜『カルキノス』って名前の大っきな大っきな蟹の背中にあるんだよぉ〜〜。海底都『ヴォジャノーイ』!一応水人族以外も住める様に特殊な魔法壁で都の周りには空気が篭ってるんだぁ〜〜。」


「それは実に…神秘的なー」


「でもねぇ〜そんな平和だった僕の国がねぇ〜…たまたまマグネイド大陸近くを移動してた時にねぇ〜…浴びちゃったのよぉ〜〜あの国の汚染水をねぇ〜。」



あの国とはハルディーク皇国の事である。



「そしたらねぇ…いっぱいの人が病気なってねぇ…カルキノスも元気なくしちゃったしさぁ〜〜。だからねぇ…一回ハルディーク皇国に『汚染水はもう流さないで』って言ったら…『偉大なる列強国であるハルディーク皇国に対して、低文明国家レベルの亜人族が偉そうに言うな』って…怒られちゃってさぁ…」


「……」


「列強国って何なのぉ?高度文明ってなぁにぃ?低文明ってぇ?…何でそんなので国の優劣を決めちゃうのかなぁ?」



幼い雰囲気からは到底思えない、重く…深い事を聞いて来るオルカフの質問に地館は何も答えられなかった。



「昔はね〜もっと色んな国があったって大じじ様が言ってたんだぁ!…歌や音楽を愛する国、祭りの国、馬を愛づる遊牧民の国、酒の国、一杯の面白い国があったんだって!…でもねぇ〜、列強国とか高度文明国家が出て来る様になってから、色んな国が徐々に侵略されて、無くなっちゃったんだよぉ〜」


「そ、そうです…ね。」


「だからさぁ〜〜…世界が寂しくなるのはもう嫌何だよぉ〜。」



オルカフは相変わらずの声ではあるが、もう何処かの国が無くしたくない…これ以上住処である海を汚されたくないっという強い意思を感じた。



「あ、そうだ!ニホンの医術って凄い優れてるって聞いたからさぁ〜〜僕の国の民達の容態も見て欲しいのねぇ〜〜。」


「え、えぇ構いませんが。」


「ありがとうねぇ〜〜!代わりに何か贈りたいけど〜〜何にもないんだよねぇ〜〜。…そういえばぁ〜〜最近、でっかい大陸棚を見つけてねぇ〜〜そこから変なモノ見つけたよ〜〜。…そうだ!その場所教えるからさぁ〜〜」



さらに数時間後、亜人族の王達はそれぞれの見学先で満足した後、遂に日本政府との第2の会談を行う事となる。一方ハルディーク皇国では、ある実験を試みようとしていた。


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