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日出づる国、異世界に転移す  作者: ワイアード
第5章 ハルディーク皇国編
78/161

第73話 亜人族国家との会談

無理やり感がハンパない感じで申し訳ないと思います…。


コメントに関してはユーザーのみに設定しました。


ーー ハルディーク皇国 皇城内 皇室



ランプの灯りに照らされた皇室には、ヴァルゴ皇帝と数名の『スキアーズ』がいた。



「ふむ…そうか…亜人族国家の王達が揃って何処かへと向かったと?」


「ハッ…申し訳ありませんが、何処へ向かったのかまでは…」


「よいよい…あらかた予想はついておる…ニホン国だろう。あのテスタニア帝国を破りし国、我が国の妨害工作を悉く阻止した生意気な国よ。」


「なるほど…では直ぐにでも彼の国へ密偵を送りますか?」


「いや、構わん。遅かれ早かれあやつらは終わりよ。ゴミが幾ら手を組んでも所詮はゴミに過ぎん。捨て置け…下手に逆らって来たら考えれば良い。」


「ハッ」



会話を終えると、『スキアーズ』達は忽然と姿を消した。



「そうとも…今はあんな国に構っている余裕は無い……それよりも『国家移転計画』を進めねば、この土地はもはや人が住むには限界がー」



コンコンッ



部屋のドアからノック音が聞こえてくる。



「こんな夜更けにか?…入れ。」



ガチャ!



「お、お父様?夜分遅くに申し訳ありません。」


「おぉ!キャサリアス!…どうしたのだ?こんな夜更けに?」



入って来たのは、ヴァルゴ皇帝の娘キャサリアス・ガピオラであった。オリオンの妹で年は19歳。長い金髪をした優しい彼女は恐る恐る皇室へと入っていく。



「ま、また…また戦が起きるのですか?」


「ん?ど、どうしたのだ急に?」


「い、いえ…オリオン兄様が、最近忙しそうにお気に入りの部下達と動いてましたから…また、いつもみたいに…せ、戦争が…」



ヴァルゴ皇帝は、キャサリアスの肩をポンと手を置くと優しく声をかける。



「お主は何も気にすることは無い…全ては我が国の繁栄と栄光の為…戦はどうしても必要な事なのだ。」


「で、でもそうなると…また大勢の人の命がー」


「その亡くなった命はその為の命なのだ。ハルディーク皇国の発展ため…その為に生まれた命なのだ。…女のお前には到底理解できない事だとは思うがな…だから、わしらに任せておけ。」


「は、ハイ…わかりました。」


「ウンウン!良い子だなキャサリアス…おい!」



ヴァルゴ皇帝がドアの向こうへ声をかけると置くから白髪で長身の鎧を身に纏った女性が出て来た。その女性の頭には2本の羊の角が生えている。彼女は王族護衛隊の副隊長にしてキャサリアスの側近、アリエス・ノーク。人族と羊の獣人族の混血種である。



「ハッ…お呼びでしょうか?」


「娘を部屋へ。」


「承知…さぁ姫様。」


「え、えぇ…。」



バタン…



娘のキャサリアスが部屋を後、ヴァルゴ皇帝はタラリと汗を一滴かきながら口元を抑え考える。



(キャサリアスの言うことが本当だとすれば…あやつは何故勝手に行動しているのだ⁉︎オリオンには国家移転計画の候補地の特定と具体案を命令していたはず…軍を勝手に動かそうなど…まさか…な?)





ーー皇城内 大廊下



暗い廊下の道を歩くキャサリアスとアリエスは、ある程度歩くと途中で立ち止まり、小声での会話をした。



「(どうでした?)」



アリエスの問いに対し、キャサリアスは申し訳なさそうに首を横に振る。



「(ごめんなさい…やっぱりお父様の考えを変える事は出来ませんでした…オリオン兄様を止めれるのはお父様だけだと思っていましたが…戦を是とするお父様もまた…)」



ひどく落ち込んでいるキャサリアスにアリエスは優しくギュッと抱き締めた。



「(あ、アリエス⁉︎)」


「(今までと頑張って戦を止めようとした…それだけでも立派な事です。どうか落ち込まないで下さい…きっと戦を回避する方法が有るはずです。)」


「(…うん。)」



アリエスの抱き締められたキャサリアスはその温もりを、物心がついた時に亡くなった母を思いながらうずくまる。そんな彼女をさらに強く抱き締めながらポンポンと背中を優しく叩くアリエス。



(あぁ…姫様…貴女様だけでも必ず…必ず護り通して見せます。…この身を犠牲にしても…。)



アリエス自身もキャサリアスの温もりから昔に感じた確かな感触を思い出していた。奴隷狩りによって殺された娘の温かみを…。



(この子は…この子だけはーッ!)



するとー




「ん?そこに居るのは誰だ?」



何処かで聞いた事のある声…うっすらと月明かりに照らし出される大廊下がその正体をゆっくりと晒す。


アリエスはキャサリアスを自身の背後に隠し、剣に手を掛ける。



「おぉ?なんだ…キャサリアスか。」


「お、オリオン兄様。」



その声の正体はオリオンであった。彼は側近のレオ・レハンバーゴを連れて大廊下を歩いたいた。



「こんな夜更けにどうしたと言うのだ?眠れないのか?」


「い、いえ…ちょっと夜風に当たりたくて…」


「そうか……おっと!そうだ、キャサリアスよ!『あの答え』を聴いていなかったな⁉︎…どうだ⁉︎決心はついたか⁉︎」



突然グイッと顔を寄せて質問して来たオリオンに、キャサリアスは一瞬ビクリとしたが、オドオドしながらも何とか答える。



「え?…あ、そのぉ…やっぱり…まだ……」


「ふぅむ……まぁ良い。遅かれ早かれお前には我々の計画には参加してもらうぞ!…ピスケスみたいな裏切りは…例え血を分けた兄弟であっても許さぬぞ?」


「は、は、はい…」


「そもそも、お前にそんな度胸がある筈も無いか。ハーッハッハッハッハ‼︎」



大声で小馬鹿にした様子で笑うオリオンとそれにつられるように笑う側近のレオ。2人はそのままキャサリアスを通り越すと暗い廊下の奥へと消えて行った。


姿が見えなくなるや否やアリエスはチッと舌打ちをしながら苛立っていた。



「(チッ!…下衆が!)…お気になさらないで下さい……姫様?」



キャサリアスは目からポロポロと涙をこぼしていた。驚いたアリエスは、涙を拭う。



「ご、ごめんなさい……私は意気地なしです…戦争を止める事も出来ない…臆病者です。」


「そのような事…何も戦争が決まった訳ではー」


「いえ!…オリオン兄様のあの目…アレは近いうちに戦争を企てようとしている時の目です。」



キャサリアスは戦争を止める事の出来ない自分自身を不甲斐ないと感じ涙を流していた。



「…キャサリアス様…私が奴隷商人に娘を殺された後、私は皇都の奴隷競売所に連れていかれ、大衆の面前で陵辱されそうになった時…身を呈して助けて頂きました。」


「それは…偶然皇都の視察に訪れていたお父様達とはぐれて…それで道に迷ってたら…その奴隷競売所に着いただけで……それに、あの時は無我夢中で、私が皇国の姫という立場を利用してあの場を収めただけで……貴女の大切な子はー」


「それでも…私は貴女様に救われた。それは事実…」



アリエスは再びキャサリアスをギュッと抱き締める。



「必ず貴女を守ります。」







ーー皇城内 オリオンの部屋



グラスを片手に酒を飲みながら皇都の夜景を眺めるオリオン…少し離れた場所で側近のレオが大剣の手入れをしながらオリオンに声を掛ける。



「オリオン様ぁ…そんなスモッグだらけの皇都を見ても、酒の肴にゃなりませんよ?」



レオの言葉にオリオンはフフッと笑った後、口を開く。



「いや…この汚れこそが……我がハルディーク皇国が強国になった証なのだ。この汚れが大きくなればなるほど、我が国は強くなる。」



ハルディーク皇国の最高機密の1つ…『ユートピア』。最先端の蒸気機関技術を応用した軍用兵器開発研究所である。その武器・兵器類の製造過程で排出された有害物質を『ユートピア』内に溜め込まない様に地上へと煙突を伸ばして外へ排出させている。この国の大気汚染の8割近くが、その『ユートピア』からの有害物質によるモノである。



「なるほど…この汚染された国そのものが勲章であると?」


「まぁな………トニーはいるか?」



彼の呼び掛けに奥のカーテンからスーッとトニーが現れた。



「えぇ…ここに。」


「うむ…トニーよ、父上の方はどうだ?」


「ヴァルゴ皇帝陛下は、相変わらず『国家移転計画』を真剣に考えて取り組んでいる模様です。…近いうちに計画の進行状況の報告を貴方様より求めてくるでしょう。」



トニーの言葉を聞いたオリオンは、クスクスと笑いながら言った。



「クックックッ…あのバカ親父は何も気付いてないんだな?…『国家移転計画』?…最初からそんなの微塵も進めてなどいないと言うのに…俺たちが『ユートピア』で行なっていることもその『国家移転計画』の準備だと思ってやがる。…そもそも『ユートピア』の存在事態知らないみたいだがな。」


「まぁ…シリウスはほんの数ヶ月前までは計画の事を知らなかった訳ですが……」


「あいつにギリギリまで俺たちの計画を教えなかったのは、あの男は親父と会う機会が多い男だからだ。下手に親父に計画を漏洩させるとかなり面倒な事になるからな…。」


「まぁ確かに…ですが、本当にヴァルゴ皇帝陛下に我々の計画を教えなくて良かったので?…仮にもヴァルゴ皇帝陛下は貴方様のお父上ですよ?」



するとオリオンはギロリとトニーを睨みながら声を荒げる。



「あの男はこの国の上に立つ器じゃない!」



突然の怒号に少し驚くトニーとレオ。オリオンは話を続ける。



「あの男はジャマでしかない!あの男…『根性無し』がさっさとくたばれば、次期皇帝は俺の物!オリオン体制の新ハルディーク皇国の誕生なのだ‼︎」



トニーは眉をひそめながらオリオンに問う。



「そこまでして……『あの時の決断』が許せなかったのですか?」


「当たり前だ‼︎あの時!…あの決断を誤らなければ、我がハルディーク皇国は今頃、サヘナンティス帝国やヴァルキア大帝国をも超える、最強の国になれたんだ‼︎‼︎」



グラスを床に叩きつけながらフーッフーッと息を荒げるオリオンにトニーは鼻で軽く溜息を吐いた後、口を開く。



「あまり声を出すと…皇帝陛下に聴かれますぞ?」


「…フン!…我が国はもう十分過ぎるほどの力を得た!今すぐにでも『クーデター』を起こしてもな!」


「…『悪魔の息吹』が完成してからですよ。アレは、ヴァルキア大帝国と渡り合うために必要な兵器ですから。」


「ならばサッサと実験をー」



コンコンッ!



「ソニーです。夜分にすみません、準備が整いました。『ユートピアの解放』です。」


「「ッ‼︎」」



ドアの向こうにあるソニーから聞こえた『ユートピアの解放』…これは即ち、『ユートピア』で造られた武器・兵器類が戦争できるレベルにまで製造できた事を意味する。そして、その実力を試す機会の現れでもある。



「ついに…ついにだ‼︎良し分かった!直ぐに私はユートピアへ向かう……城の事は…レオ、トニーに任せたぞ?」


「イヨッシャァァ‼︎」


「お任せを…。」



オリオンは身支度を整えると廊下に待機していたソニーと共に『ユートピア』へと向かう。



「遂に計画が始まるのだ……『皇国再生計画』が‼︎」



暫くすると皇城内から多数の悲鳴と爆炎が起き始めた。突然の皇城に起きた出来事を、皇都にいた民衆達は訳が分からずにその様子をただ見ていた。








ーー翌日 日本国 領空内上空



亜人族国家の王達との会談のため、彼らを乗せたC-2輸送機は、中ノ鳥半島航空基地から日本国の羽田空港に向けて飛びっていた。


機内に取り付けられた専用の椅子にシートベルトを着けて座る王達がいた。


ウェンドゥイルとシャロン、ドヴェルグはソワソワと落ち着かない様子で機内をキョロキョロと見渡す。アビアーナとバハムートは特に臆する事なく黙って座っていた。オルカフは固定された大きな水槽にプカプカと気持ち良さそうに浮かんでいた。




「おもしろいよねぇ〜これどうやって浮いてるんだろう〜?ウェンドゥイルぅ〜〜わかるぅ?」



ウェンドゥイルは冷や汗をかきながら近くのモノに必死に掴まっていた。



「わ、わ、私には分かりません!シャロン殿が詳しいのでは⁉︎」


「ば、ば、馬鹿言わないでよ⁉︎こ、こんなもの身を任せて飛ぶなんてオッカナイ状況で、冷静に答えられる訳ないでしょ⁉︎」



シャロンもウェンドゥイルと同じ様に冷や汗をかいていた。そんな2人の様子を見ていたバハムートは溜息を吐いた。



「全く情けない…」


『皆様にお知らせします。当機は30分後に日本国は東京都、羽田空港に到着します。』



機内のアナウンスがなると例の3人はやっと着いたとホッとした顔をする。





ーー数時間後


羽田空港は多くのカメラマンやテレビ中継のクルーが待機しており、彼らが空港に到着し、輸送機から降りるや否やフラッシュが彼らを包んだ。



「えーっスタジオの皆様!見えますでしょうか!この異世界に転移してから約1年半、政府は遂に、異世界の…亜人族国家のトップと会談を行う為、国内へ招待しました!」


「国民からのアンケートでは、約40%が『国内に招待するべきではない』という意見がー」


「今回の亜人族国家のトップとの会談で政府はどの様な話を持ち出すのか…それはまだ明らかにはー」


「ーーっということで、日本と異世界の国々とのより深い友好関係が締結される可能性がー」


「今回の会談に対し、中国とロシアの駐日大使は、『我々の相談無しに会談をするべきではない』との反対意見がー」



カメラに向かってレポートを始めるアナウンサー達、止めどなく照らし続けるカメラのフラッシュ…歓声なのかどうかも分からない…とにかく興奮した様な声が聞こえる事に亜人族国家の王達は戸惑いを隠せないでいた。



「な、なんだこれは⁉︎」


「そんなにドワーフが珍しいのかニホンは⁉︎…かぁ〜〜やかまししいなぁ‼︎」


「ホッホッホ!亜人族は珍しいみたいじゃな。」


「眩しくて目を開けてられん!まるで太陽の光だ!」


「あらぁ?私は嫌じゃないわね〜。」


「早く行かないと…オイラの身体渇いちゃうよぉ〜。」



王達は案内の元、テレビクルーやカメラマン達を振り切りながら何とか専用車両に乗り込み、国会へと向かう。



その移動の最中に目に入る景色全てが…圧倒的なまでの摩天楼の光景に言葉を失っていた。自国の大市場よりも賑わい、活気溢れる街並み、見たことの無い服装、ガラスで出来た高層建築物、馬を使わないで動く謎の金属の塊etc…


王達はまるで別次元の世界に来ている様な心境で、ただ東京の景色を車窓から眺めていた。



「な、何という……言葉が見つからん。」






ーー国会議事堂



議事堂前にも多くのテレビ中継のクルーが待機していたが、専用車両は確保された道路に沿って、特に問題無く門をくぐり抜けた。


そして、車両から降りた彼らは、建物を見るやその大きさ、美しさに感心していた。。



「ほう…これがニホン国の王城ですか?」



ウェンドゥイルの言葉に付添人が答える。



「いえ、これは『国会議事堂』と言いまして、国会…つまり国の議会を行う為の建物です。」



するとドヴェルグが一本の柱を触りながら呟く。



「コレは……良い石材だ。オマケに…左右対称的ときた…これを作った奴ぁ大したもんだ。」


「…そう言って頂けると、建設に携わった人達も報われるでしょう。」



いつもは飲んだくれの様な態度が目立つドヴェルグが、国会議事堂を見た途端に真剣な眼差しで眺めていた。



「1つ1つが精密に造られてる……だが、何よりも重要なのが材料。この建物に使われてる石材はかなり良いモノだ。…ガハハッ!こりゃあドワーフといい勝負が出来そうだな!」



すると1人のスーツ姿の男性が彼らの前に現れる。



「では皆様、早速会議室へご案内致します。今回の会談はそちらで。」



亜人族の王達は、緊張した面持ちで案内に従い中へと入って行く。




ーー国会議事堂内 会議室



いつもの首相官邸内の会議室よりも広いこの場所で、異世界に転移して初めてこの世界の国の王を招き入れての会談が行われる。


この部屋には、広瀬総理を始めとする大臣達が既に椅子に座って待機していた。そして、彼らが来るまでの間、先に到着していた舛添外交官が彼らに注意事項を述べていた。



「えーっ、既に承知していることとは思いますが、念の為にもう一度おさらいしておきます。まず、彼らは亜人族である為、そんな彼らの容姿などを見て偏見や差別的な発言はくれぐれも無い様にお願いします。また、文化の違いもあり、多少の無礼な態度は大目に見てあげるようお願いします。」



舛添の注意事項を聴いていた各大臣達は、渡された資料を見ながらどの様な事を聞くか互いに確認し合っていた。資料には、各亜人族国家の文化や特徴などが書かれている。


その中で広瀬総理は、頬杖をつきながら黙って資料を眺めた後、舛添の方へ目を向けて、笑顔でオッケーのサインを出す。


そんな広瀬総理の軽い返事に舛添は若干の不安を覚えるが、既に亜人族の王達が来られる中、任せるしかなかった。



コンコンッ


ガチャ



「失礼します、お連れ致しました。」



ウェンドゥイル達は室内へと入って行く。アビジアーナとバハムート、オルカフの3人は、少し頭を屈んでドアをくぐるが、天井は高めである為、屈む必要はない事が、この部屋を選んだ理由である。



ーー

◇日本国

総理大臣 広瀬勝


副総理大臣 南原武


官房長官 小清水源八


経済産業大臣 渋川礼治


外務大臣 安住宏


防衛大臣 久瀬靖人


厚生労働大臣 田嶋直人



◇獣人族の国『ヴェルディル王国』

〝獣王〟アビジアーナ・アンプルール



◇エルフ族の国『アルフヘイム神聖国』

〝聖王〟ウェンドゥイル・アルヴァーナ



◇ドワーフ族の国『ドルキン王国』

〝鉱王〟ドヴェルグ・ドルキン



◇ドリアード族の国『リリスティーグ国』

〝妖妃〟シャロン・テオ



◇水人族の国『バルフォール海底国』

〝海王〟サリヴァーン・オルカフ



◇龍人族の国『ドラグノフ帝国』

〝龍王〟バハムート



ーー


日本国と各亜人族国家の王達が顔を合わせ会談が始まる。日本国側の大臣達は、彼らが入ると同時にスッと立ち上がり、軽くお辞儀をした後に自己紹介を行う。



「遠路遥々ようこそ御出で下さいました。私が日本国総理大臣の広瀬ひろせまさると申します。以後、宜しく御願いします。」



まず始めに広瀬がニコッと笑いながら挨拶と自己紹介を行う。後に続いて他の大臣達も自己紹介をし、亜人族の王達もそれに答える。



(この男がニホン国の王か?…一見王には見てなんだが…。)



バハムートは広瀬の目をジッと見つめるが、とても彼がこの国のトップである事に違和感を覚える。それほど、彼にとってはあまり頼りなさそうに見えたのだ。



「さて…ではぁ、始めますか。」



最初に行ったのは同盟関係の締結についての条件の確認である。



「ヒロセ殿…我ら亜人族国家は、列強国の一角、ハルディーク皇国の脅威に晒されている。無論、我らだけに限った事では無く、その脅威は貴国にも及ぶとの話をお聞きしました。」


「…ウェンドゥイルさん、貴方様の仰る通りだ。我が国は、幾度もハルディーク皇国の妨害工作に悩まされて来た。不幸中の幸い、大きな軍事的衝突は起きてはいませんが、それも最早時間の問題であると我々は思っています。」



アビジアーナが広瀬の言葉に質問する。



「ふむ…では貴国は彼の国の脅威については重々承知していると?」



その言葉に防衛大臣の久瀬が頷きながら答える。



「はい。我が国では既に彼の国の密偵を何人か確保しておりますし、様々な情報を通じて彼の国の動向については、目を光らせているつもりです。」


「ほう!…列強国の密偵を何人もか⁉︎」



久瀬の言葉にバハムートが反応する。



「ニホン国の兵士達は中々の様ですな。先日も私の背後目掛けて飛び蹴りをして来る者もおりましたよ!いやはや、龍王の私に恐れもないとは…怒りを通り越して感心しましたぞ!」



バハムートが笑いながら話している中、大臣達全員が顔を真っ青にして聴いていた。



(と、飛び蹴り⁉︎…ど、ど、ど、どこの自衛官だ⁉︎)


(久瀬さん!貴方何か聞いてますか⁉︎)


(いやいやいや!なんも聞いてない!それ、えッ!誰、ちょっ、本当に⁉︎)



それもそのはず、一国の王…しかも高い戦闘能力に秀でた龍人族の王…〝龍王〟に対してその様な暴挙をしでかしたのなら、日本にとっては大きな脅威となっていた可能性が高い。下手をすれば、ドラグノフ帝国と一戦交えることになる事も…しかし、それ以前に大きな国際問題日本に発展する。全ての非は此方にある。


久瀬は一瞬、「何処の大馬鹿野郎だ!」と口に出そうだったが、ここは堪えて慎重に行う様にした。彼の態度を見たところ、怒るどころか気を良くしている様にも思える。



「我が国の自衛官がその様な暴挙を…謝って済む問題ではありません…申し訳ありません。」


「気に病むことはないぞクゼ殿!…ここ数十年、〝龍王〟の名に臆して、我に挑む者は現れることはなかった…故に私はあの様な者がまだいた事が非常に嬉しかったのだ…変な話だが、礼を言いたいのは此方だろう。」



確かに、いきなり飛び蹴りをくらって気分を良くするなどおかしな話ではあるが、本人の機嫌が良く、日本に対するプラスな印象を与える事が出来たのなら、結果オーライにする事を決めた。



「ねぇ〜ねぇ〜、そっちの話は終わった〜?だったら早く本題に戻りましょう。」



シャロンが退屈そうに呟くと、ウェンドゥイルがゴホンと咳払いをした後に口を開く。



「ゴホンッ!…た、単刀直入にお聞きします。ヒロセ殿、貴国は我らと本当に同盟を組むつもりでいらっしゃいますか?」



ウェンドゥイルの言葉に広瀬は答える。



「日本としては、友好的な国々と強い協力関係を結び、あらゆる脅威から守る事が大事であると考えています。バラバラな『群』としてではなく、1つの『個』となって、ハルディーク皇国などの軍的思考国家に立ち向かうためにも必要不可欠ではありませんか?」



先日のアビジアーナとほぼ同じ事を口にする広瀬に期待感を抱くウェンドゥイルだが、どうにも虫が良すぎることに逆に違和感を覚える。



「……それは我々にとっても非常に有難い事ではあります。ですが、とてもそんな簡単に同盟を締結出来るとはとても思えませんが?」



広瀬は口元に手を当てて少し考え込む様な素振りを見せる。



「……御察しが良いですね…では申し上げましょうか…皆様方の国に我が国の自衛隊の基地を建設していきたいと考えております。これを認めて頂けるのであれば、我が国としても非常に有難い事なのですが…どうでしょうか?」


「「⁉︎」」



亜人族の王達に戦慄が走る。他国の軍を自国に招き入れて、基地建設を容認するという事は、彼等からしたらとても考えられない事であったからである。



「ひ、ヒロセ殿…幾ら何でも他国の軍を自国へ入れるなど…」


「無論、土地を貰うのではなく、『借りる』のです。借りている分の支払いはするつもりですし、半径50㎞以内に民家などが無い土地に建設したいと考えておりますし、今後の交易も考えて我が国の特産物を多量に輸出いたしましょう。」



広瀬の答えに亜人族の王達は、話し合いを始めた。



「ウェンドゥイル殿、貴国はテスタニア帝国の一件でジエイタイに土地を明け渡したであろう?」


「アレは一時的な…臨時のもので、あの戦争後は綺麗に引き上げましたよ。」


「俺の国の山脈要塞を越えてくる敵なんかいねぇよ!交易だけでも十分だ!何でニホンの軍を⁉︎」


「自分の国の土地を渡してでもと考えると、チョット悩ましいわねぇ。で」


「オイラの国は海の中だけど良いのかなぁ〜?」


「オルカフ…お前んのとこの『蟹』は、特殊魔鉱石で都市は空気に包まれてるからいけるだろ?」


「来られるかどうかの問題だよぉ〜。」



亜人族の王達が受け入れるのかどうするのか話し合っているとアビジアーナが広瀬達に向かって口を開く。



「我が国としては…貴国の兵達を受け入れよう。」


「な⁉︎あ、アビジアーナ殿⁉︎」


「皆の者よ、よく考えてもみよ…ニホン国の圧倒的なまでの技術力、文明力を…魔法も存在しない国が列強国に負けぬ力を有しておる。そのような国と同盟を組み、軍を招きいれる事で、他国の野蛮な侵略国はそれだけで近寄ることすらせぬだろう。」


「…だが、軍を入れるというのはー」


「我らの国とニホン国は大きく離れている。もし我が国に何かあった時、駆けつけた時にはもう遅かったという事では洒落にならぬ。より広範囲に展開し、動きやすく、情報を得るためには必要な事なのであろう。それに私は…テスタニア帝国の一件で多くの同族達を奴隷から解放し、さらに『ウンベカント』で雇用を与えているこの国を…信用したいと考えている。」



アビジアーナの言葉を聞いたウェンドゥイル達は、少しの沈黙の後、それぞれの答えを口に出す。



「確かにそうですな…アフルヘイム神聖国も認めましょう。」


「ケッ!…まぁ同族の借りがある…ドルキン王国もだ!」


「ドラグノフ帝国も了承する。」


「リリスティーグ国も…良いかなぁ……ハルディーク皇国は何かと困ってるし。」


「僕も良いけど…海の中だよ?」



各亜人族国家から了承を得た広瀬は、スッと立ち上がり手を差し出す。



「皆様方のご決断とご協力…感謝に絶えません。」



こうして、日本国と亜人族国家との同盟締結会談は無事に幕を下ろした。これを後々『日亜同盟連合』と呼ばれる。メディアや野党からの強い非難の声が上がっていたが、ハルディーク皇国の存在、戦争を極力回避する為の連携と言う政府の説明に、国民からの理解の声も少なくはなかった。


そして、ハルディーク皇国の情報提供会談は後日行われる事となり、亜人族の王達は政府が用意したホテルへと向かって行った。





ーー数時間後 首相官邸 会議室



「はぁーーーー…先ずは皆さんお疲れ様。」



取り敢えず大きな壁を超えた大臣達は、官邸の会議室に集まり、今後について話し合いを始める。椅子に座るや否や全員が深い溜息をついていた。



「取り敢えずは、各亜人族国家に自衛隊基地を駐留する事で何かあった時も直ぐに偵察し情報を収集し、必要であればそれなりの行動を即時に取ることも可能にはなったわけだ。だが…」



官房長官の小清水が腕を組みながら話し始める。目を向けた先には今現在、日本が把握している異世界の地図がプロジェクターを通して映し出されている。



「移動も考えると…自衛隊の基地建設はどのくらいで可能だ?」



南原副総理が資料をペラペラとめくりなが答える。



「だいぶ急を要しましたし、かなり無理やりな形で計画は実行できますが、自衛隊基地の建設完了には…そうですねぇ……多数の工事用『WARKALウォーカー』やドローンなどの無人機を使っても、早くて1ヶ月は掛かります。機材などの運搬も入れれば更に1ヶ月…」


「つまり順調に行っても2ヶ月以上はかかるって事か…まぁそれでもかなり早く進むほうだな。無人機がまだ発展途上だった時代だったら間違いなく1年以上は掛かってただろう。」




安住は地図を暫く眺めた後に広瀬に問い掛ける。



「広瀬さん、協力者のネイハム氏の証言が本当であれば、我が国として『最悪の事態』を回避すべく、万全の状態で備えなければいけません。サヘナンティス帝国も国内のテロ騒動にバタバタとしていますが、自体が落ち着き次第、日本へ向かい今後について話し合いたいとの事でした。」



広瀬は大きく欠伸をした後、目をこすりながら安住の問いに答える。



「まぁ…サヘナンティス帝国と…列強国の一角との交易が出来るようになったのは良かったね。これで列強国情勢の情報を得る事が出来る。…でもその中で厄介なのが、『ヴァルキア大帝国』と『ハルディーク皇国』」


「はい…ヴァルキア大帝国の力がどれほどなのかはネイハム氏も詳しくは分かりませんでしたが、『大量破壊兵器』を有している可能性がある事は話していました…」



久瀬はこの『大量破壊兵器』という言葉を聞いてピンと来る。



「…まさか『核兵器』ってわけじゃないよなぁ?」


「…可能性は否定出来ませんね。それよりも今考えなきゃならないのは、ハルディーク皇国に対しどう動くべきかでは?」



田嶋は不安そうな表情で久瀬と安住は見る。



「十中八九、武力衝突は避けられないでしょうか?もう一度対話で何とか出来ませんかね?」


「あの会談も…今までの妨害工作、ネイハム氏の話も考えれば、対話で何とかなんて無理でしょうね。ハルディーク皇国の軍事力がネイハム氏の知っている時よりも格段にレベル上がっているのは確実…」


「久瀬さんの言う通りです。」



田嶋は頭を抱えながら溜息をつく。久瀬はもっとシャキッとしろと叱咤を入れるが力無い返事しか返って来ない。



「まぁねぇ…ハルディーク皇国に関しては今後も注意して行きましょう。ロイメル王国とアムディス王国に駐留している大使達にも伝えて、両国の国王に注意勧告を…後は…」



南原が一通り説明しまとめた後、スマートガラスを操作して、ブロジェクターの画面が切り替わる。そこに映し出された写真を見て広瀬はいつになく真剣な目をする。



「大霧の先…『第2世界』…『レムリア共和国』…『ガルヴァス王国』…はぁ〜、また面倒な事になってきたなぁ。」



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