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日出づる国、異世界に転移す  作者: ワイアード
第5章 ハルディーク皇国編
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第66話 『A・W』出動

長らくお待たせしました。

ーー 中ノ鳥半島基地 第2作戦指令センター



正面の壁面に巨大なモニターとその両サイドに中型モニターが1つずつ付けられていた。

その巨大なモニター画面の前にも無数のコンピューター端末などの電子機器が付けられたデスクが多数配置されていた。


大きくて立派な映画館の部屋2つ分はあるであろうここは、『作戦指令センター』の1つである。



「『あまふね02、05、06』目標到達時間まで1分。」


「1分了解…解放リリース用意。」


解放リリース用意完了…」


「目標到達まで5…4…3…2……解放リリース。」


「……『あまふね02、05、06』の解放リリース確認…全ての『あまふね解放リリース完了しました。」



巨大なメインモニター画面には、点滅している15個の緑色の点が『ある海岸付近』で止まっている様子が映っていた。その緑色の点の上には『解放リリース完了コンプリート』と表記されている。


機器が付けられたデスクに座って、モニターもコンソールに向かって黙々と情報の整理などを行っているのは、サイバー関係などに秀でたオペレーター達だった。


そんな様子を見守りながら命令を下す酒井陸将の姿があった。



「(よしよし…まずは無事に『AアサシンWウォーカー』を乗せたポッドが出たか…次は無人援助機を…)」


「良し…『片影かたかげ』を出せ。」


「了解…『あまふね15』より『片影かたかげ』射出まで5…4…3…2……射出。」


「『片影かたかげ』射出完了です。」


「うむ!…第1段階終了!後は各員『AアサシンWウォーカー』の補助サポートにあたれ。」


「「了解」」



酒井陸将は部屋の中央までゆっくりと歩くと直系2m弱の円柱状の台座の前で止まった。そして、その台座にあるパネルを操作する。


台座の中心部から立体映像ホログラムが映し出される。そこに立体として映っているのは、リアルタイムのこの世界…と言うよりはこの『惑星』であった。



「あれ?陸将、どうかしたので?」


「ん?いや…別に…」


「それにしても…この星の全体像がだいぶ見えてきましたねぇ。」


「そうだなぁ…衛星を20基も飛ばしたんだ。このくらいは普通だろ。」


「でも…日本から遥か西側はまだ把握できていないのですね。把握出来たのは…3分の2ってところですかね?」



この惑星の立体映像ホログラムには遥か西側の所が欠けていた。まだ、そこの衛星写真などが入手できていないからである。しかし、普通ならとうに把握出来ていたはずだが『それができなかった。』



「……原因はわからないが、衛星はここの地帯だけが『捉えられない』……何でだろうな。」








ーーイール王国 沿岸部



静かな夜に聞こえてくるのは、波音と眠気を誘うほど心地いい風の音。そしてあたりを照らすのは、大きな月と点を覆う億の星々…息を飲むほど美しいこの沿岸部の夜景…だが、イール王国沿岸部警備隊にとっては、そんな夜など関係無かった。



「うぅ〜ッ!寒ぃ〜!何でこの国の昼と夜の気温の差がこんなにデカイんだろうなぁ。あーあ、潮風が肌に染みるぜ。」


「文句言ったってしょうがないだろ?ほら、あの岩礁へ行って辺りを見てこよう。」


「えぇ〜⁉︎あそこはつい10分前にラム達が見てったばっかりだろ⁉︎ほら!あいつらのランタンの光が見えるぞ!」



2人から約2、3㎞先に小さなランタンの光がユラユラと揺れながら進む姿が2つ見えた。



「…ハァー、いいから行くぞ。」


「えぇ〜端折ってもいいじゃぇかよォ〜。」



それほど広くない場所だが、大きな岩が所々にある為、万が一ここへ何処かの国の間者が来たのなら、隠れるのにうってつけの場所である。


2人は持っていた槍を使いながらランタンを照らし注意深く見ていく。



「あ〜あ…こんな所に入ってくる間者なんているのか?俺だったら絶対に………ん?」



するとやる気のなかった1人の警備兵が岩礁近くの海辺を見て何かに気付いた。その異変に気付いたもう1人の警備兵が彼に近づく。



「…おい…あそこの波の揺れ方…なんか可笑しくないか?」



その海辺の波の揺れ方が、他の所と比べると妙に不自然なのが見てわかる。それが、ゆらりゆらりと此方へ近づいてくる。



「…あぁ…見てわかるよ…ありゃ元漁師の俺からしたら…大きな獲物だな…虹鯛ポグか?いや、もっとデカイ。」



先程までダルそうに仕事をしていたとは思えない程真剣な表情で観察をする男と真面目だった男は、何か異変があると見るや否や急に弱腰になって彼の背後へ隠れていた。



「な、なぁなぁ…もしかしたら南方イール海豹アザラシじゃないか?」


「まだ季節的にそれはあり得ないし、まずこんな岩礁近くを泳ぐわけがない。」


「そ、そうか…でも…ひっ⁉︎」



それはゆっくりと此方に近づいて来た。怯えきった警備兵は槍を構えるが、ガタガタと震えて腰も引けていた。するともう1人が腰巾着から黄色い魔鉱石を取り出した。



「お、おい⁉︎何する気だ⁉︎」


「こんな時のためにこれを支給されてんだろ?」



男は黄色い魔鉱石に魔力を込めるとそれは少しずつ光り始めた。するとそれを何かがいたところへ思い切り投げた。



「おりゃ!」



バシャン!っと水飛沫を立てて落ちた所は、数秒後にまるでそこら一帯だけ太陽の光が当たったかのように光りだした。ただ明るくなっただけで無く、その一帯約5m以内の海辺の透明度が高くなり、海中の様子が見えてきた。



「あっ!閃光石フラーシュか!」


「おうよ、ほらお前もなげろ。」



もう1人も閃光石フラーシュを何かがいた海辺へ投げると数秒後に明るくなり、海中の透明度も高くなった。そこから見えるのは、様々な魚が泳いでいる姿が見えた。しかし、その中に先ほど見えたモノは見当たらなかった。




「可笑しいなぁ…確かにここらへんに居たんだけどなぁ。」


「………あっ!」



すると1人が何かに気付き声を出した。明るくなった海辺の一点へ向けて指を差す。



「お、おい!なんか分かったか⁉︎」


「い、岩鯛だ。」


「なにぃ?」



そこには『岩鯛』と呼ばれる全長3mを超えた魚がユラユラと泳いでいた。



「なーんだ…岩鯛かよ。」


「は、ははは…あぁ〜良かったぁ〜。」


「おい!大丈夫か⁉︎」


「なにかあったのか⁉︎」



そこへ後から来た警備兵達がやって来たが、2人は事の経緯を話すと心配して損したといった様子で持ち場へと戻った。



「魚だったみたいだなぁ…よし!行くか!ほらさっさとしろ。」



先程まで怯えきっていた男が、何もなかったとわかった途端に強気になったのが、彼にとっては癪だったが、イマイチ納得がいかない事があった。



「本当に岩鯛だってか?…明らかにあの波は魚類が泳ぐ時に出るものじゃなかったんだが……まぁ…いっか。」



人っ子一人居なくなった岩礁地帯は、打ち付けてくる波の音以外何も聞こえなくなってきた。しかし、少しするとその場に不自然な音が突然聞こえてきた。



ジャリ…ジャリ…ジャリ…ジャリ…



それは確実に足音であり、浅瀬を歩きゆっくりと陸へ向かってくる音だった。そして、その音は少しずつ増えていった。


ついにその足音が陸まで到達すると足跡だけがクッキリと現れ、他の胴体部などは全く見えなかった。しかし、その見えない何かは不気味な機械特有の声と共に明らかになる。




『……目的に到着、周囲に敵影なし。ステルスモード解除。』



その機械特有の声を発する何かは少しずつその姿を現した…『AアサシンWウォーカー』である。その数45体。



『各機、登録インプットされた目標ダーゲットへ移動開始。』



次の瞬間、『AアサシンWウォーカー』達が一斉に散開を始めた。アスリートさながらの体勢フォームと人間のレベルを遥かに超えたスピードで、各機に登録インプットされている目標ダーゲットへ向けてロケットスタートで走り出した。









ーーイール王国 来賓専用部屋 星の間


堀内と護衛自衛官の宇津木は、中村の腕に装着されていた操作機能付きモニターパネルを見ていた。そこには中村を中心とした、半径2㎞以内の地形が映し出されていた。所々に緑色の点45個と赤色の点30個が見える。


赤色の点はどれもこの城の周りから殆ど動いていないが、その点に向かって緑色の点がかなりのスピードで動いているのが分かった。



「えーっと…中村さん。この緑色の点が『AアサシンWウォーカー』で赤色の点が『敵』っと言うことで良いんですよね?」


「ハイ。今、『AアサシンWウォーカー』達がそれぞれのシステムに登録インプットされている目標ダーゲット地点ポイントへ向かってます。」



確かに緑色の点一つ一つが赤色の点の方へと向かっていたが、残りの10体は此方の方へと向かっている。



「あれ?この10体は?」


「我々の護衛ですね。」


「そ、そうですか…なんか…味方と分かっていても、こんな猛スピードで此方に向かってくると思うと怖いですね。」


「なぁ中村さん…それぞれがポイントに着いたら直ぐに拘束するのかい?」


「いや、先ずは監視だ。」


「え?でも連中は俺たちの暗殺を企んで…」


「だからこそだ。モニターを見ても分かるだろうが、今連中はこの城を囲んでいると言っても位置がバラバラで離れている。より確実に拘束するには『仕掛けてくる時』が一番良い。少なくとも今よりは敵がまとまり、一気に拘束しやすくなる。その万が一を考えて10体の護衛を呼んだ。」


「でもその仕掛けてくるのが何時になるやら…」


「心配すんな…直ぐに仕掛けてくるさ。多分、明日の夜中辺りかな。」


「なるほどねぇ……おっ!全機配置についたみたいだな。敵も動いていないから気付かれてない。」


「どうですか堀内さん?どこに『AアサシンWウォーカー』がいるかお分かりで?」



堀内は少し離れた椅子にポツンと座っていた。そして、中村の質問に苦笑いで答える。



「確かに…『WALKARウォーカー』がいるのは心強いですが……暗殺って…やっぱり私狙われてたんですね…いやぁははは…参ったな…はぁ…」







ーーイール王国 王城のとある場所



イール王国配属の『スキアーズ』隊長ヨルチは、周囲になにか変わった気配が出ている事に気付いていた。



(なんだ?……何かに見られてるような気が…気のせいか?)



ヨルチは懐から魔伝石を取り出し、仲間達に連絡をした。



「そっちはどうだ?」


『…あぁ、問題無し。コッチ側のルートは把握した。』


『コッチもだ。』


「良し……では先程話した通り、本国からの命令により明日の夜仕掛けるぞ。ニホン国の使者達は皆殺しだ。」


『…本当に殺るんですね。』


「ソニー様が戻られた。彼の方が持ち帰ったモノにより例の物が爆発的に進化を遂げたそうだ。アガルドは勿論のこと…ニホン国も度々我が国を妨害していたからな…始末せよとの事だ。」


『…だったらイール王国もぶっ潰すか?』


「いや、この国はもう少し保留だ。例の物の実験に使うそうだ。」


『…シリウス殿の件はどうなる?我が国がニホン国の使者に手を下した事がバレたら…』


「問題ない…イール王国のモノが殺った事にすればいい。」


『…了解。』



ヨルチは魔伝を切ると再び周りを見渡す。しかし、特に異常はなく普通だった。それがヨルチにとっては腑に落ちなかった。



「………敵は姿を消せるのか?…フッまさかな。擬態魔法をもってしても姿を消すことは不可能だ。」



ヨルチはそう自分に言い聞かせるとその場を後にした。すると彼が見つめていた何もない所から、ステルスモードをOFFオフにした『AアサシンWウォーカー』が姿を現した。



『録音完了…本部へ送信。』







ーーハルディーク皇国 監獄島



監獄島はひどい嵐に巻き込まれていた。激しく降り注いでくる雷雨に暴風、監獄自体は問題ないと思われるが、島そのものが沈むのでは無いかと見張りの兵士たちは少し不安を抱いていた。



「うっひゃ〜…ひでぇ嵐だな。」


「全くだ…これじゃ『猛銃』様もエドガルドを搬送出来ねぇな。船を寄せる事が出来ねぇよ。」


「そうだな…てか俺たち中の見回りしなくて良いのか?」


「あぁ?別に構いやしねぇだろ?あの堅牢から出る事なんて出来ねぇんだし、そもそもこの島から出る事すら出来ねぇよ。」


「はははッ!全くだ!」



見張りの兵士達が監獄内の警備兵室で窓なら外を見ながら酒を飲んでサボっていた。普通ならば罰則モノだが、ここの監獄島は別であった。この監獄島が出来てから30年間誰一人としてここから逃げ出した者がいないからである。一番の理由はやはり孤島であるという事。仮に海へ逃げ出せても、沖合で待機している戦列艦から砲弾の雨あられが降り注いでくる。


しかし、どんな堅牢な牢獄にも必ず穴はあるものである。






ーー監獄島内部


酷く湿気った場所…恐らく嵐の影響もあるだろうが、こんな不衛生かつ湿気った牢屋に何十年も放り込まれれば誰だって気が狂い、病気にもなる。



「あぁ…日が…日が当たるところに…」


「うわぁ!ね、ネズミにかじられた!」


「ギャハハッ!オメェさんは終わりだな!直ぐに『黒点病』になるぞ!」


「ういっくし‼︎(ボキィ!)…あぁ…また骨が…」


「死にたい…死にたい…死にたい…死にたい…死にたい…」



長い長い日光浴不足で極度の骨軟化症と骨粗鬆症、重度の貧血症状、鬱病などを患う囚人で溢れていた。


しかしその囚人達とは違い、走り回る1人の囚人がいた。その囚人は牢の『外』にいたのだ。その光景を見ていた何人かの囚人たちは一瞬驚いたが、直ぐに『幻覚』と受け止めて、その場にへたり込んだ。だがそれは幻覚ではなかった。



「(……良し確かこの道を進むと…地下牢に続いたはず…)」



身なりこそはかなり落ちぶれしまってはいたが、その男はハルディーク皇国の元外務局局長のネイハム・エアドレッドである。彼はヘヴァック・ラジムを使った工作が失敗したことにより、降格及び謹慎処分を受けていたが、その後すぐにこの監獄島へ入れらてしまった。



(やっぱり私を始末するのだな…ピスケス殿と同じ様に…だが、私とてこれで終わるつもりはない!)



ネイハムは少しずつ進んでいくと、地下牢への階段を降りていった。



(全く!あんなに国の為に尽くしてきたというのに、あの程度のミスで私を殺すのか⁉︎冗談じゃあない!死んでたまるか!もはや忠を尽くす国など存在しない…怖いものなど何もないぞ!)



彼が階段を降り切ろうとしたその時ー



「誰だ?」



階段を降り切った先にあるドアから1人の男性の声が聞こえた。



(…こ、この距離から気付くのか⁉︎…噂通りの化け物だな。)



ネイハムは内心ビビりながらも歩みを進める。そして、とある牢へと辿り着いた。その牢の中に居たのはー



「やぁ…捜したよエドガルドさん。」


「あんたみたいな人が、こんな所で何しているのだ?それもそんなみすぼらしい格好で…ってか、どうやってここまで来た?」


「そのセリフ…そのままあんたに返してやろう…この監獄島を設計したのは私だ。この監獄島の内部について誰よりも熟知している。まぁ…そんな事を知っている人間は殆どいないがな。」


「そうか……あと、その様子じゃあ…誰かに見られたら不味いんじゃあないか?」


「あ、あぁそうだろうな。見張りの者に見つかれば、私は殺される。お前も遅かれ早かれ殺されるんじゃあないか?」


「…俺は殺されない…俺の部下もな……この前あのイカれ野郎と契約しー」


「『仲間になれ』っと言われたんだろ?残念だが、正しくは『捨て駒になれ』だ。奴等と手を組んだら碌な目に遭わないぞ。」


「そんな事お前には関係ない。」


「…まぁ今はそんな事どうでも良い…それよりも…『ここに居るのは私とお前の2人だけか?』」


「…なに?」


「…まだか……だが私の予想ではそろそろ来る頃だと思うのだが…」


「…いやぁ…もう居るぞ。」


「え?」



すると突然、上から『何か』が降りてきた。その『何か』は、ネイハムの前に立つとイキナリ彼を掴み上げて床に叩きつけた。



「うぐっ⁉︎」



『何か』はー

全てが『黒』だった。

ーーー顔。服装。履物。眼光と呼吸も、実際そうだと言うのでは無く、雰囲気や気配などが『黒』だと感じる。


…『別班』である。



胸ぐらを掴まれながら床に押さえ付けられた状態のネイハムは意識が飛びそうだったが、何とか持ち堪えた。



「はぐぅあ…き、君達は?…」



黒いオーバーマスクを被った眼の鋭い隊員は答えることなくこのままネイハムを締め落とそうとしていた。



「がっ…はぁ……ッ⁉︎」


「待て。」



すると1人の男がその隊員に向かってやめる様声を掛けた。隊員は、直ぐに手を離しその場から少し離れた。開放されたネイハムは数秒息を整えた後、再び質問をする。



「き、君達は?」


「私は鈴木と申します。私たちは…日本国の者です。」



『別班』とは答えなかったが、ネイハムにとってはその答えだけで十分だった。何故なら日本国の隠密部隊という事が分かったからである。



「そうか…君達が日本国の隠密部隊か……申し遅れたな、私はハルディーク皇国の元外務局長のー」


「……元外務局長?…では、貴方がネイハム・エアドレッド?」


「あ、あぁ…そうだが?」



ネイハムは彼の言葉に少し驚いていた。実は別班達の任務は2つ…『エドガルドの救出』と『ネイハム・エアドレッドを見つけること』であったからだ。



「我々は日本国の者です…貴方の発見とエドガルド氏の救出の為ここへ参りました。」


「ッ⁉︎」



この言葉を聞いた時、ネイハムは心の底から歓喜していた。彼がここへ訪れた理由は、日本国の隠密部隊が幽閉されているエドガルドを救出しに来ると睨んだからである。


ネイハムは日本の隠密部隊がエドガルドを救出しに来た理由は、彼の力を手に入れるのが目的だと思っていたが、実際のところ違っていた。しかし、そんなことは彼にとってはどうでも良いことだった。


彼は日本国の隠密部隊と出会い、一緒に救出して貰おうと考えていたからだ。


しかし、彼らはエドガルドだけでなく彼も捜していた。理由は分からないが、彼にとっては願ったり叶ったりだった。



「つ、つまり…私を助けに来たというわけか?」


「……」


「…ど、どうした?なぜ黙っている?」


「…オイ、エドガルド氏を牢から出せ。」


「「ハッ!」」



隊長の鈴木は隊員達にエドガルドを牢から出すよう指示を出す。隊員達はエドガルドを担ぎながら、牢から連れ出して行った。



「う、うむ!では次はわたー」


「ネイハムさん…我々はとある人物からの情報で貴方の事を知りました。」


「あ、ある人物?」


「そこで我々は、貴方から話を聞きたいと思いここへやってきた所存です。」


「そ、そうか…それで何を聞きたいのだ?」



鈴木は辺りを少し見た後、コッソリと彼の耳元で呟いた。



「この世界の西側…貴方達の国から見れば東でしょうか?…そこについて知っている事を話して頂きたい。」


「ッ⁉︎そ、そうか……」



ネイハムはこの言葉を聞いて彼らが自分を尋ねて来た理由がはっきりとわかった。そして、同時に『喋ったら殺される』事も…。



「そ、それを…話せば……私も連れ出してくれるのか?」


「えぇ…勿論です。」


「(嘘だな…彼らが必要なのは私が知っている情報であって私の命ではない…喋れば用済み…殺される。だが…ここで殺されるワケにはいかぬぞ。)」


「……どうしました?時間がありませんよ?早くお話しください。そうすれば一緒にー」


「わたしはな…この監獄島を設計した者だ。」


「……?」


「だから…この監獄島の事は隅から隅まで知り尽くしている。…スズキさん、貴方達は私が知る情報が目的なのでしょう?だったら…ちゃんと聞きだせるよう私を『ここから連れ出す必要がありますな⁉︎』」


「ッ⁉︎」



するとネイハムは落ちていた石を拾いそれ壁に向かって投げ付けた。すると、投げ付けられた石壁の一部がユックリと奥へ引っ込んでいく。



ゴ…ゴゴ…ゴゴゴゴゴ………カチッ



ゴーーーンッ!ゴーーーンッ!



すると突然、監獄島の緊急時に鳴らす鐘が監獄島全体に鳴り響いた。その音は遠く離れた沖合にまで届いて行った。



「ははは…万が一地下牢で何かあった時の為に仕掛けたカラクリだ。さぁ…私が知る情報が欲しければ私をここから連れ出せ!早くしないと、私は勿論お前達やエドガルドも殺されるぞ‼︎」


「た、隊長⁉︎」


「…チョット不味くないですかい?」



隊員達が鈴木にどうしようかと伺うが、鈴木は特に慌てた様子は見られなかった。



「各員エドガルド氏とネイハム氏を連れて回収ランデブー地点ポイントへ向かえ。途中遭遇する危険分子は各員の判断で排除せよ。」


「「了解」」


「……全く…この世界は飽きないなぁ。」

ネイハムが知る情報とは一体何なのか…

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