表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日出づる国、異世界に転移す  作者: ワイアード
第4章 クアドラード連邦国家編
69/161

第64話 与野党協議

正直もう与野党協議は書きたくないですねぇ…全然上手く書けません…。


今後の展開のためのご都合主義的に見てくれれば幸いです。

ーー 一方日本国 国会議事堂



国会議事堂の与野党協議会では、日本が今後この異世界において、多少の軍事行動を取れやすくする必要性の有無を協議していた。



「えー…進民党、藤山議員。」



議長の言葉に呼ばれ、進民党議員の藤山議員が席を立ち話し始める。



「進民党の藤山です。えー…っと、まず率直に申し上げます。我が国が軍事行動を起こすのは、あのテスタニア帝国で起きた戦闘…いや、『悲劇』はあれで最後にするべきです。これからは、この世界でも平和主義を貫くためにも専守防衛を心掛けて行くべきです。軍事行動の規制緩和?…全くもって必要ありません‼︎総理、あなたはどうお考えですか?」



いきなりの核心とも言える話に野党側から拍手が起きる。



「えー…民自党、広瀬総理大臣。」



広瀬総理はスッと席を立ち上がり、答弁台へ向かう。



「えー…まず、我々が居た世界とこの世界の価値観を同じにしないで頂きたい。ここは異世界と言うことを十分に理解した上での発言を求めます。」


「基本的価値観の共有は、平和主義国家としての基本中の基本、それを同じにしてはいけないと考えるのは如何なものかと思います。それと、先ほどの質問の答えを仰ってください。」


「この世界の国々の大半は…常に他国への脅威に晒さられています。次は自分ではないか…それとも別の国か…分かりやすく言えば『弱肉強食の世界』なのです。我々が居た世界では、世論や国連などの組織がいましたが、此処ではその様な組織は全く存在しません。…イキナリ戦争をふっかけて、勝った国は負けた国の全てを容赦なく搾取する。あのテスタニア帝国もその搾取する側の一国でした。これからの日本は、その様な国々に武力行為を受け、犠牲者が出る前に行動に移す必要があるのです。」



広瀬総理の言葉に与党内からは拍手が聞こえてくるが、すぐに藤山議員が反論にでる。



「成る程…確かにテスタニア帝国の件は致し方なかった様な気がしますね。…ですがその行動に移す際、自衛隊側などから犠牲者が出る事は必至‼︎…自衛隊も国民の1人です。貴方は国民を守ると言いながら国民を危険に晒そうとしているではありませんか⁉︎」


「そうだ‼︎」


「もう辞めちまえ‼︎」



野党側からは藤山議員に対する賞賛の声と広瀬総理への罵倒の声が聞こえてきた。



「そうです…自衛隊も日本国民、その命無下には出来ません。彼らが実行するのは『血を流す政治』と言っても過言ではありません。だからこそ我々『政治家』がいるのです。しかし、それが通じたのは前の世界まで…この世界では殆ど通用しません。現にテスタニア帝国は有無を言わさずに『戦争』を仕掛け、他に日本と国交を結ぼうと考えてきた国々は『奴隷』などの要求もしくは取引に出たいと訴えて来ました。これらの国々は、我々が前にいた世界の長い歴史の中で愚の遺産と呼ぶべきものを『是』とする国々ばかりです。」


「広瀬総理…貴方は結局何が言いたいのですか?」


「つまり…我々は、そういった国々に対し力を行使する必要性があるというわけです。無論、我々も最大限の努力をします…ですが、それでも及ばなかった場合は自衛隊の力が、これからも必要になってくるわけです。」



与野党共に会議室内がざわつき始める。野党側からは相変わらずの罵声が聞こえて来る。


憲法改正した事で、自衛隊が正式な国防組織である事が認められた事は認められたが、その武力を行使するにあたっては、未だに難しいのが現状であった。広瀬総理はその規制をもっと緩和させるべきだと話していた。



「広瀬総理…貴方は御自分が何を言っているのか分かってー」


「重々承知してます…他国から日本を…国民を守る為には日本の力を誇示し、それでも問答無用で攻撃を仕掛けてくる者には力で押し返す必要があるのです。」


「貴方はつまり…自衛隊をただの戦争の駒としか見ていたいのですか?」


「とんでもない…先ほども申した通り、彼らも大切な日本国民です。しかし、内外からの脅威から守るには、口先だけでは全くの『無力』。テスタニア帝国がそのいい例でした。では藤山議員、そこまで言う貴方は、いざ戦争が起きそうになった時は、その国へ行って対話で解決できますか?日本を植民地としか捉えない国へ行って、対等に話し合えると御思いですか?」


「……」


「私なら行きますね。それでこの国を戦争の脅威から守れるのなら喜んで…しかし、もし私の首だけだ済まなかったら?…これからの日本は、今まで通りでは『危ない』のです。この平和を守る為に、自衛隊の方々の力が必要不可欠となります。」



バンッ!



突然野党側から机を叩きつける音が聞こえてきた。全員がその方向へ目を向けると怒りの形相をしていた臼井野党代表がいた。



「その発言は不謹慎だ‼︎…もしこの国が再び戦争への道を歩むのであれば、断固として対話での解決を目指す‼︎それが、戦争を引き起こして大罪を犯した者達の子孫である我らの使命‼︎これは国民全員の総意だ‼︎」



臼井野党代表の発言に野党側からは拍手喝采が響き、与党側からは罵声が聞こえてきた。



「ふむ…では臼井議員…貴方はいざその時が来たら、自らがその場に立って対話での解決試みると?」


「何故ですか⁉︎我々は野党…それは国の代表党である与党の仕事です‼︎」


「全くもって矛盾してますなぁ…自分はあんな事を言っておいて、いざその時が来たら逃げるのですか?」


「ッ〜⁉︎何だと‼︎」



すると突然臼井議員が、壇上から降りて広瀬総理に掴みかかろうとした。与野党の議員達も混ざり、会議室は一気に大混乱となった為、会議は一時中断となった。




しかし、この臼井議員達の発言と行動によって、世論では野党に対する強い不信感を抱くようになってきていた。それによって、広瀬総理が提案した内容に賛同する人が5割を超え始めた。


そして、数日後…与野党協議では一進一退を繰り返していったが、徐々に与党側に追い風が吹くようになってきた。







ーークアドラード神国 神都



あの大規模な異教徒弾圧運動から数日後、国内はいつもの日々を取り戻していった。人々が買い物をし、お喋りをしたり、遊んだり、働いている姿は昔と変わらなかった。


ある光景を除いて…



「あら!こんにちは、今日もいい天気ですね。」


「こんにちは、本当にいい天気ですね〜…おや?…あらあら、また異教徒が見つかったのですか?」



首都で立ち話をしていた2人はある光景を目の当たりにした。


「あぁ…アレですか?…確か昨日3番通りであの異端児の仲間を見つけたそうですよ…愚かな人達…あの異端児と関わりを持たなければ磔にされずに済んだものを…」



そこには、血だらけで磔にされた死体があった。この国では、アギロン大司祭が統治しているといった様子で、異教徒もしくは無宗教者は見つけ次第弾圧せよと言う決まりを作った。


その結果、わずか数日で500人以上の人々が惨殺されていった。


だがこの磔にされていた者たちは異教徒ではなかった。アギロン大司祭は、異教徒・無宗教者だけでなく、エドガルドと少しでも関わりを持つ人間を容赦なく根絶やにしようと企んでいた。



「本当に…あんなに熱心な信徒であったディカルド様を殺すなんて…エドガルドがアヴァロン様に対し色々と無礼だった事は前々から知ってはいましたが…」


「しかしまぁ〜…『アギロン法王様』がこの国を全てからまだ数日ですが…何だかこの国が浄化されてる気がしますねぇ?」


「全くですね〜、クアドラード連邦国家は今では『クアドラード神国』…この国は栄光へと道を進み始めている!ディカルド大統領の死は決して無駄ではなかった…そういえば、数日前に出撃した軍はどうなったのですかね?」


「神聖なる異教徒狩りからしばらくしない内に、引き上げてきましたよね?確かあの後ぉ〜…ハルディーク皇国の輸送船が沢山来てそれに乗せられたような…あの異端児…エドガルドの奴も乗せられたぞ!」


「あぁ〜そうであったな!確かアギロン法王様は、ハルディーク皇国は偉大なるアヴァロン様が認めた国だったそうな。」


「何と⁉︎そんな素晴らしい国をエドガルドは攻め落とそうとしたのか⁉︎…何と愚かな⁉︎あんな男は殺されて当然だ!」


「まぁまぁ…きっとアヴァロン様の御加護を受けたハルディーク皇国が素晴らしい罰を与えるはず…」






ーー法王聖堂



クアドラード連邦国家時代の大統領府を呼び名だけを変え『法王聖堂』となった。法王聖堂の周りには整えられた草木やアギロン法王の銅像が複数建てられていた。



その法王聖堂の中にある法王室では、デスクに座りながら考え事をしていたアギロン法王がおり、シワの寄った眉間からは汗が垂れていた。



「(全ては…上手くいっている…上手くいっているのだ!この国も乗っ取った!この大陸はもはやハルディーク皇国のものとなった!チョットした想定外な出来事もここまでくればどうと言うことはない…ハズだった…なのにこの2つの出来事はどうだろう…これはかなり厄介!)」



デスクの上には2枚の書類があった。それはスキアーズがつい先日持ってきた報告書出会ったが、そこに書かれていたのは…




〜〜イール王国へ向かったアガルドは、ニホン国の使者と合流後、何かしらの会談を行ったもよう…またニホン国使者の暗殺は、本国から中断の指示が来た為、今一度監視のみを続行する〜〜



「(暗殺中断ッ⁉︎…何故だ⁉︎ここでアガルド達が殺した様に細工すれば色々と有利になるはずなのに⁉︎…本国は何に警戒したのだ⁉︎……これもそうだが…もう一つの報告書も…)」



もう一つの報告書は、イール王国にいたスキアーズとは別の部隊からのものであった…




〜〜約2週間程前、エドガルドが『魔伝とは違う物』を用いて大陸外へ向け連絡を取っていた事が最新の『魔波測定器』にて判明…当初はイール王国と思われたがイール王国では無いとの事…分かり次第報告する〜〜



「(何だこれは⁉︎大陸外とは…どこへ⁉︎そもそも…魔伝のような物⁉︎…魔波測定器は魔力を用いたものであればそれを必ず鮮明に捉えるはず…捉えきれないという事は……魔力を用いないで遠方にいる者と連絡が取れる物ということか⁉︎…これは信じられん‼︎)」









ーーハルディーク皇国 監獄島



ハルディーク皇国領海内に存在する孤島を丸ごと監獄にした島…そのままの意味で『監獄島』と名付けられた。



その監獄島最下層に1人の男が収監されていた。身体中大きな鎖に繋がれて殆ど身動きが出来ていない男は特に平然とした様子で座っていた。



(宗教国家の弱点を突かれたな………あのまま進軍しても本国の裏切り者が後方から仕掛けて来ただろう…そうなっては軍が大きく崩れてしまう…最初から詰んでいたというワケか……『僅かな可能性に賭けた』が、やはり無駄だったか…)



カツ…カツ…カツ…カツ…



誰かか地下牢への階段を降りてくる音がした。



(見回りの時間にはまだ早過ぎる…誰だ?)



「ふんふんふふ〜〜んっとぉ…ゲッゲッゲッ‼︎」



(…不気味な笑い声だな…だが男である事は確実…)



「エドガぁ〜〜?…エ〜ドガぁ〜〜〜〜?」



エドガルドの名前を気持ちの悪いくらい甘い声で呼びながら、『猛銃』ベネット・サジタリュウス将軍が現れた。ベネット将軍は、軽快なステップで階段を降りたあと、スキップしながらエドガルドがいる檻のすぐ前までやって来た。



「エドガーエドガー!…エッドガーー‼︎」


「うるせぇぞ…」


「ゲッゲッゲッ‼︎そうイライラすんなよぉ〜『アヴァロンの御子』いや!…『光将』って言うべきかなぁ?ゲヒッ!」


「お前は…?」


「おうおう!何だよぉ〜つれねぇなぁ!俺の事知らねぇのぉかよぉ〜?」


「ふん……そのイカれよう…まさか噂の『猛銃』か?」


「ピンポンピンポーーン‼︎ゲゲッゲゲッ‼︎」


「そのイカれた将軍様が…こんな辛気臭いところに何の用だ?…悪いが茶は出せないぞ…こんな状況じゃあな。」


「ゲヒッ!なかなかいいジョークだよぉ!でもねぇ…俺の目的はお茶じゃねぇ…でも…その血でまみれた手で淹れてくれるお茶も中々良いねぇ…あっはぁぁ…興奮してきちゃったぁ♡」



エドガルドはベネット将軍の股間部分が不自然に盛り上がっているのを見ると鼻で笑いながら軽蔑した。



「フンッ…下衆が……さっさと要件を言え。」


「おいおいおい‼︎言葉遣いに気ぃ付けなぁ!子供が聞いたらどうする気だ⁉︎ゲッゲッゲッゲッ‼︎…目的は2つ……1つは約2週間前…お前は大陸外へ向けて『魔伝では無い何か』を使っていた事…」


「……」


「…誰と連絡を取っていた?……何を使った?」


「さぁな…俺は送ってない…でも内容は言ってやろうか?…どうせもう意味が無い。」


「ふあ?送ってない?…なのに内容は知ってる?…どういうことだ?」


「…『もしお前達がトレボール王国とビルカ公国を落とせたら…加勢してやる……これは国同士の約束だ』…とね。」


「うーーーーん?…なんかおかしくなぁい?」


「ふふふッ…だから俺からじゃなくて、『向こうから掛けてきたんだ』。」


「へぇーー(マジかよ…どこだ?)まぁまぁ…その国が何処なのかはすぐに分かることさ、ゲッゲッゲ‼︎」


「フンッ…どうだか…。」


「ん?」


「いや…ふふふ…」


「…まぁいいか……それじゃあ次は…エドガー…お前ぇ…俺たちの仲間にならねぇか⁉︎」


「なんだと…?」



予想外の事に少し驚いたエドガルドは、興奮気味に話すベネット将軍の話をそのまま聞いた。



「いいじゃねぇかよぉ〜〜どうせぇ、お前ぇ達に居場所なんかねぇじゃあないかぁ?だったらぁ‼︎俺たちの仲間になってぇ‼︎その力で…敵を殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺しまくろうぜぇ‼︎お前ぇ程の戦士はそうはいねぇんだ…勿体ねぇ!ましてや龍人族でさえマトモにコミュニケーションが取れねぇ『雷龍』を従えてるんなら尚更よぉ‼︎」


「……下らんな」


「あぁ?」


「私は貴様らの軍門に下るつもりはない…」


「ふーん…これでもか?」



ベネット将軍がスッと手を挙げると、控えていた部下がエドガルドの部下3名を連れて現れた。



「ッ⁉︎」


「ほぅらぁ〜…こいつらがどうなっても良いのかよぉ〜?ゲッゲッゲ‼︎」


「え、エドガルド様‼︎私達の事は気にしなー」



ダァーン‼︎



突然の銃声…それと同時に血しぶきをあげて倒れる部下。


ベネット将軍の右手にはモクモクと煙を上げる『ジョンソン』と書かれた銃が握られていた。



「なっ⁉︎…」


「あっ‼︎大変な事になっちゃったぁーーーー‼︎カッワイソー‼︎うっわこの人カッワイソー‼︎」


「貴様ァ‼︎」


「おいおいおい‼︎テメェが断ったからだろぅ⁉︎」


「…他の者たちはー」



ダァーン‼︎ ダァーン‼︎



今度は2発の銃声が鳴り響く。さっきとは別の2人の部下が倒れた。


ベネットの両手には『カルロス』と『ダミアン』と書かれた銃が握られていた。



「お、お前ぇ…ッ⁉︎」


「ゲーッゲッゲッ‼︎いやぁ〜やっぱり人を撃つのは楽しいねぇ♡」


「いい加減にー」


「あっ…」


「ッ⁉︎」


「アァーーーーーーーーーーーーッ‼︎‼︎」



突然驚きながら叫び声を上げ始めたベネット将軍は、右手に持っていた『ダミアン』に向けて話しかけ始めた。



「『ダミアーーン』‼︎お前はこの前撃ったばかりだろぅ⁉︎なーんで他の子たちに譲ってあげなかったんだ⁉︎お前ぇお兄ちゃんだろ‼︎悪い子だ‼︎お前は悪い子だ‼︎」



ベネット将軍は『ダミアン』と呼ばれる銃を床に叩きつけた。そして、ホルスターにしまってあったもう一つの銃を取り出し、ブツブツと話しかけた。



「なぁなぁ〜今度はお前が撃ちたかったよなぁ?『ジェシカ』?…大丈夫大丈夫…今度は君を使ってあげるからさ〜…本当だ約束だよぉ〜……あぁ⁉︎」



今度は突然猛スピードで走り出したと思えば、先ほど床に叩きつけた『ダミアン』を腕から飛び込むようにスライディングしながらキャッチして話しかけ始めた。



「ごめんごめんそんなつもりはなかったんだよぉ〜…でも悪いのは君だよぉ〜?他の子に譲って上げる優しさが足りなかったんだよぉ〜……そんなぁ⁉︎嫌ってなんかいないさぁ誤解だよ誤解ぃ〜機嫌直してくれよぉ〜?」



暫く銃に話しかけた後、ベネット将軍は銃を全てホルスターにしまった後、再びエドガルドの元へ向かった。




「ゲッゲッゲ‼︎…お・ま・た・せ♡」


「……。」


「あんたの部下はまだいる…さぁどうする?全てはお前次第だ‼︎」


「クッソが……部下の命は守ってもらうぞ‼︎」


「ん?って事はぁ〜…ヤッタァーー‼︎仲間になってくれるんだね⁉︎ヤッホォーイ‼︎」


「変に勘違いするな‼︎部下の命があるからこそだ‼︎」


「そりゃあつまり…部下の数だけ俺たちの為に動いてくれるってワケよねぇ⁉︎…ゲッゲッゲッゲッゲッゲッ‼︎」


「…チッ‼︎」


「いやぁ〜良かったよ〜…一時はどうしようかと思ったけどさぁ…お前が部下を大事にしない指揮官だったらどうしようかと不安だったんだよぉ〜?」


「このイカれ野郎が‼︎」


「ゲーッゲッゲッ‼︎…なんとでも言え‼︎」


「…ロナルド将軍は良い指揮官だったというのに…貴様は…」


「ッ⁉︎」



エドガルドが『ロナルド』と呼ばれるハルディーク皇国の将軍の名を口にすると、突然ベネット将軍は血走った目で迫って来た。檻がガッシャンと大きな音を立てるほどの勢いでぶつかり、ベネット将軍の額から少し血が滲んで来たが、当の本人は全く気にしていなかった……いや、それすらも全く気付いていなかった。



「俺がぁ…『ロナルド・ピスケス』に劣るとでも言いたいのかぁ⁉︎」


「別にそういう意味で言ったわけではないが…自分からそう言うということは…自分でも認めてるってワケじゃないのか?」


「ッ⁉︎違う‼︎」


「そんなことはどうでも良いことだがな…彼は素晴らしい指揮官だった…死んだ事は実に残念だったが…」


「はぁ?…あいつが…あの優男が…『素晴らしい』だと?……違う違う‼︎…違う‼︎」



ベネット将軍は檻を思い切り蹴ると、同じところを行ったり来たりと落ち着かない様子だった。そして、怒りそのままで、時折両手を激しく動かしながら話を始めた。



「いいかエドガー⁉︎あいつは…ロナルドの奴ぁ〜とんでもねぇ……馬鹿野郎だ‼︎‼︎人間の本質ってぇのをまるで分かっちゃいねぇ‼︎あいつの考え方はいずれ…俺たちの国を破滅に追いやる…いや!人間の進化を止める事になる! 」


「……」


「エドガー…人間が他の種より優れてるところは何だと思うよ?」


「なに?」


「人族は他の種族より劣った種族だった…力は弱い…寿命は短い…とりわけ器用でもない…空を飛べるわけでもない…牙もない…毒もない…高い魔力があるわけでもない…」


「……。」


「だがたった一つだけ…他の種を遥かに凌駕するモノが一つだけあった…『欲望』だ‼︎」


「欲…望…」


「そうだ‼︎…底知れぬ、圧倒的に深い欲望‼︎それが国を大きく成長させる為には必要不可欠なモノだ‼︎」


「フンッ!下らんな。」


「…あいつはいつも言ってたさ…『争いは悲劇を生むだけで、何の価値もない…平和こそが人が人であり続ける為に必要なものだ!』ってよ!…だが、そんのもの『カス』だ‼︎…長い戦争の道を歩んできたからこそ、俺たち人族は他種族を圧倒するまでに成長出来たんだ‼︎平和なんてぬるま湯に浸かってたら人間はあっと言う間に衰退しちまう‼︎全てを手に入れたい…圧倒したい…支配したい…土地が…鉱山が…奴隷が…金銀財宝全てが欲しいと言う欲望こそが人を成長させる‼︎そして、戦争が続くと科学や魔法も大きく発展する‼︎…相手を倒す為にはどうすればいいのか死に物狂いで考えるからだ‼︎」


「イカれた理論だ!」


「そうかぁ?実際今この世界を総べている5つの列強国は皆、長い長い戦争の歴史の末、『列強国』という栄光を手に入れたんだ‼︎滅び去った国の共通するところは、『平和を愛していた』…分かっただろう?…平和なんて何の価値も無い‼︎平和こそ…全てを滅ぼす害悪そのものだ‼︎」


「お前の話の中で…どうしても納得のいかないところがある。」


「んぁ?」


「平和を願っていたロナルド・ピスケスの死とその話の共通点がイマイチの読めない。」


「ゲッゲッゲッ!あいつはなぁ…殺されたんだよぉ〜!『平和を愛したが故に』ってヤツさ!」


「ッ⁉︎…バカなッ!そんな理由で殺すのなどー」


「あぁ〜そうさ…そんな考えを持つ奴は他にも幾らでもいる…こんな事でいちいち殺してたらキリがねぇ…あいつが殺された理由はなぁ…俺たちの『計画』に賛同しなかったからだぁ‼︎」


「ッ!計画だと?」


「そうさぁ…あいつは選ばれた人間だった。ムカつくが軍人としての才能は俺も認めてた…最初はオリオン様からの『あの計画』に賛同しようって空気だったんだぜ⁉︎…でも最後の最後で裏切りやがった……だから殺された。」


「その計画ってのは何だ?」


「ゲーッゲッゲッ!んな事ぁ今はお前なんかに教えねぇよ‼︎…スゲェぞ…びっくりする内容さぁ…あの人は本気で全てを手に入れるつもりなんだよぉ〜…俺はあの人のそんな貪欲さに…惚れたんだ。」


「……」


「まぁとりあえずいいか……んじゃ明日迎えに行くからよぉ〜いい子ちゃんで待ってるだよぉ〜…ゲッゲッゲッ‼︎」



ベネット将軍は部下を連れて階段を登りその場を後にする。そして、エドガルドが話していた事を思い出していた。



「『向こうから掛けてきた』だと?…魔伝以外の方法となると…『無線電信』か?いや、まさかな…」

エドガルドへ連絡をしていたのはどこの国なんでしょうかねぇ…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ