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日出づる国、異世界に転移す  作者: ワイアード
第4章 クアドラード連邦国家編
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第59話 思わぬ犠牲

3話分の下書きデータが消えました(泣)

ーー翌日 アリ=ワンバ王国第2前線基地


第1前線にて起きた、ニルドール王国軍の魔獣達との戦闘により約5000人の兵力を失い、第1前線基地を占領されてしまった。キース少将は、奇跡的に生き残ったウィジット大隊長と話をしていた。



「いやはや…見事に生き残ってしまいましたなぁ…あの砲撃の雨の中を掻い潜るのは、ハッキリ言って生きた心地がしませんでしたよ。」


「すまなかった……お前達を巻き込んでの敵へ向けた砲撃も、大した効果が無く第1前線基地を奪われてしまった。」


「いやいや、何を仰いますか。少なくとも第1前線基地の兵士達が第2前線基地まで撤退する時間を稼ぐ事は出来ました。あの判断がなければ、第1前線基地の兵士達は今の倍近くの死者が出ていたでしょう。」


「……お前は『強い』な。」


「…あの地で多数の部下を死なせた私が強いわけありません。みんな…いい奴らばかりでした……いい奴らだけが死んでいく…この世は非情です。私は…若い兵士達を死なせた……罪人です。」


「それを言うなら私もだ…。」


「……そういえば、魔獣軍団はあの後ピタリと進撃を止めましたよね?何故でしょうか?」


「さぁ…それは私にもー」


「それについては私が教えようか?」


「ッ!ダム少将!…何かわかったのですが!」



2人の会話に入って来たのは第2前線基地の指揮官、ダム・スケルガム少将である。



「ふむ…我が国の隠密部隊の情報では……あの魔獣軍団は、あの後ニルドール王国軍と衝突したそうだ。」


「ッ⁉︎な、何故そんなことが⁉︎」


「これは憶測に過ぎないのだが…多分あの魔獣軍団は、ニルドール王国自身も制御できなかったのではないかと思う。そして、ニルドール王国軍はその事をまるて『知らなかった』。だから、あの魔獣軍団と共に進軍してきたのだ。」


「それはまた…何故?」


「うーーん…すまないがこれ以上の事は何も…」


「今わかっていることは、クアドラード連邦国家傘下国連合軍の『敗北』…ですね。」











ーーアリ=ワンバ王国 第1前線基地 ニルドール王国占領下



ハルディーク皇国傘下国連合とクアドラード連邦国家連合の戦争…初陣は、ハルディーク皇国傘下国連合の『ニルドール王国』と『グワヴァン帝国』の勝利となった。しかし、その内容はハッキリ言って敗者に近い損害だった。



ニルドール王国軍が魔獣軍団に続いて進軍を開始、ニルドール王国の第1前線基地を壊滅させ占領出来た所までは良かった。しかし、問題はそこからだった。ニルドール王国軍は、魔獣軍団をこのまま一気に第2前線基地まで進軍をさせようとした途端、突然魔獣軍団がニルドール王国軍に襲い掛かってきた。


これはニルドール王国だけでは無く、グワヴァン帝国にも同様の事が起きていた。エルランジェ王国にトドメを刺すため、送り込んだ魔獣軍団が突然標的をグワヴァン帝国軍に標的を変えて襲って来たのだった。


言うことを聴く忠実な兵だと…味方だと思っていた存在からイキナリ奇襲に近い攻撃を受けた事により、両国の損害は決して無視出来ないレベルになってしまい、進軍を中止せざるを得なくなってしまった。



ーー

◇ニルドール王国軍

初陣総兵力:40000人

戦死者:23000人

約9割近くが魔獣軍団による被害。



◇グワヴァン帝国軍

初陣総兵力:55000人

戦死者:27000人

約6割近くが魔獣軍団による被害。

ーー




元はアリ=ワンバ王国の第1前線基地だったこの場所は、人と魔獣の死体で埋め尽くされていた。そして、ニルドール王国軍はその死体の処理に追われていた。



「クソッ!やってられるかよ!」


「全くだぜ!何で魔獣や敵国の兵士の死体まで俺たちが処理しなきゃならねぇんだよ⁉︎」


「死体は放置して置くと、悪臭や疫病を発生するからだろ?いいから黙って運べ、どうせ全部燃やすんだ。」


「ちぇっ!」



ニルドール王国の若い兵士達は、ブツブツと文句を言いながら死体を一箇所にまとめていた。そんな中、兵士たちを指揮する1人の将校がいた。



「みんなぁ‼︎大変だとは思うが頑張ってくれ‼︎もう一息だ‼︎」



その指揮官を見て兵士たちの何人かが疑問に思う。



「あれ?何でミルゲ大佐が指揮してんだ?…じゃあ、レンツ将軍は?…」


「レンツ将軍なら…そこだ。」



クイっと顎を向けた先には、白い布に覆われた大勢のニルドール王国軍の死者が集められた場所だった。その中に1人だけ、多数の勲章が着けられた死体があった。その死体は、食い千切られた様な跡があり、損傷は激しかった。



「あぁ…そういう事ね…」


「まぁ元々部下から好かれてないヤツだったから、どうでもいいんじゃない?」


「…それもそうだな。ん?なんか団体客みてぇのが来たぞ。」



死体だらけの戦場に数人の軍服を着た男達が馬に乗ってやって来た。列の後方には荷馬車もある。しかし、その男達はニルドール王国の者では無かった。その中の一人がたまたま通りかかった兵士に声を掛ける。



「……ここの指揮官は誰か?」


「え?はい、えーっと…」


「私です。」



ミルゲ大佐がスタスタとその男の元へやって来た。すると男達は馬から降りて、ミルゲ大佐に話しかける。



「私はハルディーク皇国のラウル・ボラール中尉です。此度の戦は実に素晴らしい勝利でした。ニルドール王国の国王陛下からは勲功が、そして我が国からは…」



ハルディーク皇国のラウル中尉は、後ろにいた部下に合図を送ると、部下達は大きな袋が複数乗せられた荷馬車が運び込まれてきた。



「金の延べ棒500本…コレは貴方様1人分になります。他の兵士達には後で褒美金を持って来させますので、どうぞお受け取りください。」


「チョット待って頂きたい、これは一体どういう事ですか?」


「何がでしょうか?コレだけでは不足ですか?でしたら後100本お持ち致しまー」


「そうではありません‼︎これを見てください‼︎」



ミルゲ大佐は、魔獣軍団と自国の兵士達の骸の山を指差す。しかし、ラウル中尉は変わらない表情でその指差す光景を見ていた。



「ふむ……死体の〜…山ですねぇ。それが何か?」


「この者達の8割近くが、貴国が送って来た魔獣軍団に殺された者達です‼︎」


「はぁ…それは気の毒でしたねぇ…それで?」


「なっ⁉︎…何か説明しなければ…言わなければならない事があるのでないですか⁉︎」


「………別に何も無いとは思いますが?」


「ッ⁉︎ッ⁉︎……この魔獣達は生物兵器なのであろう⁉︎兵器として輸出してくるのだから我々の言うことは聞くようになっているはずではないか⁉︎」


「いえ…『忠実に命令に従う兵器』とは一言も言ってませんが?」


「なに⁉︎…では貴国は…この魔獣軍団が敵味方見境なく襲ってくる事を知っててッ⁉︎」


「勿論ですとも……」


「そ、それを知ってて貴国はッ‼︎ー」


「言っておきますが、当初我が国は貴国に対し、『合成獣キメラを輸入しますか?』と聞きました。いいですか?私達は合成獣キメラが必要かどうかの有無を事前に聴いていたのですよ?そしたら貴国の国王陛下は答えました…『勿論輸入します、させて下さい』っとね。」


「だ、だがしかしッ!…『合成獣キメラ』が制御不能の生物兵器だったとは一言も聞いていない‼︎」


「えぇ……まぁ…聴かれなかったので…聴いてくれればお答えしましたよ。」


「くっ!」


「宜しいですかな?では私はこれで…」



ラウル中尉は馬に乗ってその場を後にする。ミルゲ大佐は下唇を噛みながら悔しさを露わにしていた。そんな彼の元へ兵士達が心配そうに駆け寄る。



「み、ミルゲ大佐?……大丈夫です…か?」


「…あ、あぁ……大丈夫だ。」


「…お気持ち分かります。」


「……この荷馬車の金の延べ棒は…換金して亡くなった兵士達の家族へと贈ってくれ……私の分は……当然要らない…。」


「わ、分かりました……」







ーーエルランジェ王国 王都


グワヴァン帝国との戦争…とりわけ魔獣軍団の猛攻により、王都まで壊滅的被害が出てしまっていた。王都から命辛々逃げる事に成功したエルランジェ王国の国王は直ぐさま降伏を意を唱えた。王都内はエルランジェ王国の兵士達と魔獣軍団の死体はもちろん、グワヴァン帝国の兵士達からも多くの犠牲者が出ていた。その原因は勿論…



「おのれぇぇ‼︎‼︎ハルディーク皇国の奴等ぁ〜我々を騙したな⁉︎とんだ『欠陥品』を寄越しおってッ!何が金の延べ棒500本だ!そんな物より、貴様らの魔獣軍団に殺された私の兵士達に対し謝罪の一言でも言わんか‼︎」


「し、将軍閣下…随分と御怒りで…」


「無論だッ!コレを怒らずにいられるものか!列強国であるハルディーク皇国なら、傘下国に頼らずとも十分にクアドラード連邦国家とその傘下の国々を叩き潰すことは出来たであろうにッ!クソッ!」


「では…何故ハルディーク皇国は我が国の様な傘下国を?…」


「そんな事は決まっておる!…『試験』だ。」


「し、『試験』…ですか?」


「うむ…『列強国であるハルディーク皇国の傘下国に相応しいかどうかを見極める為のテスト』だ…」


「それじゃあ…死んでいった仲間たちは…」


「……実に腹立たしい事よ‼︎…ん?」



グワヴァン帝国の将軍が宿営テントの隙間から、エルランジェ王国の国民達が檻のついた馬車へ連れて行かれる光景が目に入った。



「…あの国民達……どこへ連れて行く気だ?我が国の奴隷市場か?だがその様な命令は出ておらぬが…」


「買取先はハルディーク皇国です。」


「なに?ハルディーク皇国に奴隷制度は存在せぬはずだぞ?」


「えーっと…奴隷ではないですね……要望書類には『娯楽用』と書いてあります。それも…お一人様ですね。」


「はぁ?『娯楽用』だと?」



将軍はその『娯楽用』と言う言葉に疑問を感じながら、手枷を付けられた民達が次々と檻付き馬車へ運ばれていく姿を眺め、あることに気付く。


「ん?…その割には…老若男女問わずなのだな…普通なら若い娘を選ぶものだろう?まぁ中には齢10にも満たない少女を買うモノ好きもいるが……あの中には男だけでなく老人もいるではないか。」


「さぁ…それは分かりませんが……買ったのはハルディーク皇国の将軍です。」


「なに?」






ーーハルディーク皇国 皇城内 魔伝情報管理室


ハルディーク皇国の情報分析及び管理を行う部署である此処では、この国の情報分析官達と王族専属魔導士の『大魔導士』カプリコス・カミュアス、軍務局長の『知将』リブラ・グリエントがテーブルを囲いながら座っていた。


その中で複数の書類を持った分析官がペラペラと説明をしていた。



「ーー以上が、今回の戦による全ての報告になります。」


「……なるほど…良い…非常に良い!」



先の報告を聞き、ニンマリとした笑顔で口を開いたのは軍務局長のリブラだった。



「そうですね…密偵が使った『特殊魔波検知機』によって、思った以上のデータを得る事が出来ました。」


「ふふふ…一般の人々は勝利に酔っているようだが…『勝利』?…そんなモノはどうでも良い、そうですよね?…カプリコス殿。」



白く長い髭を蓄えた白髪の老人…カプリコス大魔導士は、リブラの問い掛けに静かに答える。



「此度の戦の『勝利』は『オマケ』の様なものだ…我らの真の目的は……その中身にある。」


「その通り、テスタニア帝国の件と今回の戦……思った以上に早く完成できるなぁ…。早速そのデータを元に『例の物』を作るよう魔法技術開発局へ伝えてくれ。」


「ハッ!」



分析官達が書類を持って部屋にする。残ったカプリコスとリブラは不気味ににやけながら呟く。



「『魔操機』開発がこうも早く進むとは……これで我が国は更に強大な軍事力を得る…『あの計画』をより完璧なモノにする為の礎となれる。そうですねぇ?カプリコス殿。」


「しかし、ナウゴーラ国がまだ降伏していない。『魔操機』開発には、より上質な魔鉱石が多量に必要となる。本当に上手くいくのか?」


「御心配なく…既にナウゴーラ国は、駒遊戯で言うところの『詰み』です。」

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