第58話 魔獣軍団
戦闘描写はやっぱり難しい……
ーー
遂にニルドール王国国境を越えた第1侵攻軍は、そのままの勢いで進軍していた。そして戦闘が始まる…しかし、相手は『人』では無かった。
「第1列銃兵隊‼︎撃ち方用ーー意‼︎」
下士官の号令と共に、マスケット銃を構えるアリ=ワンバ王国の兵士たち。全員の顔には『恐怖』が浮き出ていた。今目の前から迫って来るのは人ならざる者…『魔獣』だからである。銃が小刻みに震え上手く狙いが定まらず、更に焦りが見えてくる。このマスケット銃の射程距離は最大約150〜200m前後…有効射程距離は70〜100m程であるため、かなり引き付けなければならない。
「落ち着けぇーー‼︎訓練通りにやれば問題は無い‼︎」
下士官は何とか落ち着かせようと声を張り上げる。『リザードマン』と『サイクロプス』の大軍が徐々にハッキリと見えてくる。リザードマンは剣や槍を持ち、胴体と頭にはニルドール王国の鎧甲冑を身に纏っていた。そして、その後方にいる青銅製と思われる鎧兜を着けた『サイクロプス』が迫って来る。
「砲兵‼︎…放てぇーー‼︎」
後方で準備をしていた大砲を砲兵達が、発火口に種火のついた棒を付けると轟音と共に砲口から火が吹きでる。
ドォン! ドォン! ドドォン! ドォン!
数秒後、魔獣軍団のいたる所で巻き上がる土と共にリザードマン達が吹き飛ばされ、五体がバラバラとなる者もいた。後方にいたサイクロプスにも何発か命中したものの、青銅の鎧もあって、致命傷には至らずそのまま進軍してきた。リザードマンも何十匹かは仕留める事が出来たが、その津波の如き勢いは止まらなかった。
「クッ!砲兵弾込め急げーー‼︎第1列……撃てェーー‼︎」
魔獣軍団との距離が100mを切ると、下士官の号令と共にマスケット銃を構えた兵士たちが一斉に引き鉄を引く。
ダダダダァーーン‼︎
乾いたような破裂音が連続して大きく鳴り響き、それによって発生した煙がモクモクと舞い上がる。
「クギェェェェェッ⁉︎」
リザードマン達は奇声をあげながらバタバタとその場に倒れていく。鎧を貫かれ、鎧に隠れていない所に銃弾が当たり、そこから血しぶきが吹き出しながら次々と倒れて行く。
「第2列前へ‼︎…撃てェーー‼︎」
ダダダダァーーン!…
「良ーし!下がれー!隊を整え次第、第3列撃てェー!」
再び銃兵の一斉射撃によってバタバタと倒れるリザードマン。撃っては下がり撃っては下がりを繰り返す事で少しずつ距離が離れていくアリ=ワンバの兵士達の顔にも少しずつ余裕が表れてきた。しかしー
「ッ⁉︎サイクロプスが前に出てきたぞ‼︎」
銃弾の雨に中々前に進まなくなったリザードマン達をかき分けて、サイクロプス達が先頭に出てきた。大きな棍棒と槍を持ちながらドスッドスッと大地が揺れる足取りで迫って来る。
「グルゥアアーー‼︎」
「撃てェーー‼︎」
サイクロプスへ向けてマスケット銃が火を噴いた。しかし、まるで何事も無かったように進み続けていた。リザードマン達は、サイクロプスを上手く盾に使って、銃弾を防ぎながら前進してくる。
「こいつらッ⁉︎意外に知能があるのか⁉︎」
「クソッ!デカイ図体だけでも厄介なのに、鎧までつけられちゃどうしようも無い!」
「弱点の『目』を狙っても面付き兜で当たらねぇ‼︎」
「砲兵撃てェ‼︎」
砲兵がサイクロプスへ向けて大砲を撃とうしたその時ー
ドグォォォ…ッ‼︎
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁーー‼︎」
突然砲兵達がいた所で大きな爆発が複数で起きた。土煙を巻き上げ、砲兵達を吹き飛ばす事でその場は一瞬にして地獄と化した。突然の出来事に動揺を隠せない兵士達。そして、そのうちの一人が向かいにある丘の方へ指をさした。
「だ、大隊長‼︎アレをッ⁉︎」
「ッな⁉︎あ、アレは…⁉︎」
「ニルドール王国軍です‼︎」
国旗を掲げた者を先頭に、ニルドール王国の軍勢が列をなして行軍していた。
「ふふふ…ハーッハッハッハ‼︎‼︎見事に命中したな‼︎まさかハルディーク皇国の魔獣達がここまで役に立つとは思わなかったぞ!」
「レンツ将軍、魔獣ではなく『合成獣』ですよ。」
「そんなことはどうでも良い‼︎さぁ砲兵部隊‼︎魔獣軍団を援護しろ‼︎」
後方で砲弾の弾込めをしていたニルドール王国の砲兵達が急いで準備を終える。
「砲兵!砲撃用ーー意‼︎……撃てェ!」
ドドォォン ドォンドォン ドォン ドォン!
ニルドールの大砲から放たれた砲弾がアリ=ワンバ王国軍へと落ちていく。激しく土を舞い上げながら、兵士達の叫び声が止むことなく聴こえてくる。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ヒィ!あ、足がぁ!」
「誰か来てくれ!助けてくれ!」
ウィジット大隊長は歯噛みした。出来ることなら、重騎兵団でニルドール王国軍を一掃してやりたいが、魔獣軍団がその行く手を阻んでいる。そして、ついに魔獣軍団がアリ=ワンバ王国軍の目と鼻の先まで来ていた。
「ぜ、全軍接近戦に備えろー‼︎」
兵士たちは、銃剣を前に突き出して魔獣軍団を待ち構える。そして…両軍が激突した。
「「グルァァァァァァァァァァ‼︎」」
「「ウオォォォォォォーー‼︎」」
金属と金属がぶつかり合う音、肉を切り裂き、貫く音、悲鳴、絶叫、怒鳴り声…様々な音や声が混じり合う。
数ではアリ=ワンバ王国の方がやや勝ってはいるが、明らかに倒れている兵の数はアリ=ワンバ王国の方が多かった。銃兵達は、基本的に射撃訓練のみを重点として行っていた為、この様な白兵戦に対する訓練はあまり重要視していなかった。ましてや相手はリザードマンにサイクロプス、戦闘能力は人族以上だった。
リザードマンは、振り下ろしてくる剣や突いてくる槍を高い瞬発力と反射神経を活かした戦い方で避けながら、デタラメに剣を振り回し、アリ=ワンバ王国の兵たちを斬り倒していく。
「うわぁぁ!」
「く、来るなぁ⁉︎」
「ウギャァ‼︎」
サイクロプスの動きは愚鈍で知能もそれほど高くは無いが、その巨体と怪力を使った豪快な戦い方を得意とする。巨大な棍棒を足下にいる『群がる者達』めがけてフルスイングで振り下ろす。1度の攻撃で複数のアリ=ワンバ王国の兵士達が吹き飛んで行く。その中にはリザードマンも何匹か巻き込まれていた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」
「ひ、怯むなぁ‼︎あの様なデカブツ、足下を切り崩せば脅威は半減する!足下を狙え‼︎」
アリ=ワンバ王国の兵たちは、サイクロプスを足下から崩す為、足を集中して攻撃しようとするが、サイクロプスは巨大な足を上げ、足下にいる兵士達を勢い良く踏み潰す。
グシャッ‼︎
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
「ギェェェェェ⁉︎」
兵士達と一緒にリザードマンも何匹か巻き込まれてしまったが、サイクロプス達はそんな事は御構いなしにどんどん踏み潰していく。
「クソッ!やはり銃ばかりに頼っていた銃兵では分が悪すぎるかッ!…後方にいる全ての歩兵隊、騎兵隊を出撃させろ‼︎」
「す、既に向かっております‼︎ですが…後方の歩兵隊、騎兵隊達の残りはおよそ約3000人弱!」
「そ、そこまで減っているのか⁉︎…幾ら敵の砲撃を雨の如く受けたとしても、身を隠すなり散開するなりして避けていた筈だろ⁉︎何も馬鹿みたいにその場でずっと整列してた訳ではあるまい⁉︎」
「そ、そうなのでが…ニルドール王国軍の砲撃を受けて少しした後、兵士達の半数近くが撤退を…」
「ッ⁉︎な、なぜ止めなかった‼︎」
「引き止める余裕がー」
ドォォォーン‼︎
ウィジット大隊長と部下はすぐ側に落ちてきたニルドール王国軍の砲撃を受けてしまい、吹き飛ばされる。
「うぐっ!……お、おのれぇ…」
ウィジット大隊長は何とか起き上がり、足下を見るとさっきまで話していた部下の上半身だけがその場に残っていた。
「2万の兵が……こんな事……」
彼は辺りを見渡す。味方と魔獣が入り乱れるており、乾いた土煙と血が至る所で舞い上がる。次々と倒れる仲間達…ウィジット大隊長は苦虫を噛む顔で、苦渋の決断を出す。
「ぜ、全軍撤ーー退‼︎‼︎今はとにかく第1防衛地まで撤退しろぉーー‼︎‼︎」
「ッ⁉︎」
ウィジット大隊長の言葉に兵士達は一瞬戸惑いを見せるが、直ぐに蜘蛛の子散らす様に一目散に引き上げて行った。
「て、撤退だー‼︎」
「急げー‼︎」
そんな逃げる彼らを魔獣達は見逃す筈もなく、リザードマン達は得意の脚力であっという間に追いつき、押さえ込んだ後滅多刺しにしていく。
「ぎゃぁぁぁぁー!」
「た、助けッ!ー」
魔獣軍団だけで無く、ニルドール王国軍からもダメ押しの砲撃が襲い掛かってくる。ウィジット大隊長はたまたま主人を失った騎士の馬を見つけ、それに乗って戦場を後にする。
「逃げろー!今は逃げる事だけを考えるんだーー‼︎」
ウィジット大隊長は先ほどの部下の死体から携帯用魔伝を拾い、それを使って第1前線基地へ連絡を送る。
「第1侵攻軍は壊滅‼︎これより撤退する!敵は魔獣軍団を率いてやってくるぞ⁉︎急いで第2・第3の前線基地へ連絡してくれ‼︎」
ーー第1前線基地
ーー『第1侵攻軍の壊滅』ーー
ーー『魔獣軍団』ーー
この報せを最終防衛基地にて受けた時、キース少将は『龍車』を使い、第1前線基地へと戻っていた。
「キース少将‼︎第1侵攻軍がー」
「報告は受けておる。今の状況は?」
「ハイ。先に撤退をしていた歩兵隊と騎兵隊約2000人は戻ってきましたが…ウィジット大隊長はまだ…」
「そうか……大砲の準備を急げ‼︎敵はもう直ぐそこまで来ておる‼︎」
「ハッ!」
「き、キース少将‼︎」
「今度はなんだ!」
「え、エルランジェ王国がグワヴァン帝国に降伏しました……」
「なにっ⁉︎バカな…確かに劣勢ではあったが、こんな短期間に…何が起きたのだ⁉︎」
「報告によれば、『魔獣の大軍がイキナリ押し寄せてきた』との事で…」
「我々と同じか…」
「キース少将、これは…」
「恐らく…ハルディーク皇国が噛んでいるな…クソッ!」
すると突然鐘の音が鳴り響く。この鐘の音は敵が国境付近まで近づいてきた時鳴らすものである。
『魔獣だーー‼︎魔獣軍団が来たぞぉー‼︎』
『ッ⁉︎ウィジット大隊長や他の兵士達も来たぞ‼︎…だが敵と入り乱れてて、下手に大砲を撃てば…』
「キース少将‼︎」
「………致し方あるまい…彼らとて同じ事を選ぶだろう…」
「は、はい?」
「砲兵‼︎魔獣共が射程距離に入り次第撃ちこめ‼︎」
「し、しかしー」
「このまま躊躇していたら、あの化け物共が国境を越えてしまう‼︎……命令を下したの私だ‼︎…お前達はそれを忠実に守った…それだけだッ!」
「ハッ!砲兵‼︎砲撃用ーー意‼︎」
上官の号令と共に大砲を目標へ目掛ける。全員の顔には恐怖が滲み出ていた。敵に対するものでもあるが、それ以外にも…『味方も巻き添えにしてしまう』事に恐怖していた。
ーー
大砲が自分達の方へ容赦なく向けてくる様子を、必死に逃げていた兵士達は気付いた。
「ッ⁉︎お、おい…アレって…」
「おいおい冗談だろ⁉︎あいつら俺たちを殺す気かッ⁉︎」
「や、やめろ…やめてくれぇ‼︎」
ウィジット大隊長もその様子には気付いていたが、特に焦る様子は無かった。もし彼が向こうに居て、今の様な状況であったのなら、同じ事をしていたからだ。
「(キース少将……)」
「う、ウィジット大隊長‼︎どうするんですか⁉︎このままじゃあ俺たち…味方の大砲に吹っ飛ばされますよ⁉︎」
「ふっ…そうだな。」
「は、はい?」
「だったら……死ぬ気で走れ‼︎」
ウィジット大隊長は馬から降りて、自分の代わりに怪我をしていた兵士を乗せて馬を走らせる。
「さぁ行くぞ‼︎みんな走れーー‼︎死にたくなければ走れ‼︎」
兵士達は死に物狂いで必死に走り続ける。そして、数秒後に第1前線から砲撃音が鳴り響いた。
ーークアドラード連邦国家 大統領府
大統領府の大統領書斎室で、ディカルド大統領が頭を抱えてながら座っていた。
「エルランジェ王国がこうも早くに降伏するとは…ナウゴーラ国も何時落ちるか…頼みの綱はアリ=ワンバ王国か…今回我が国への寝返りを他の国々へ勧めたのも彼の国…アリ=ワンバ王国も落ちたとなれば…低文明国家群は直ぐにでも降伏するだろう…」
「閣下…そう気に病む事は御座いません。」
「ん?…おぉアギロン大司祭殿!」
書斎室へ入ってきたのは、クアドラード連邦国家の大司祭アギロン・グドゥモだった。彼は煌びやかな服装と突き出たお腹を揺らしながら、ディカルド大統領へと近づいて行く。
「先ほど…アヴァロンの使者から御告げがありました。」
「おぉ‼︎御告げが!…それで⁉︎内容は⁉︎」
「『今は苦しき時でも、必ずその苦しみが報われる日が近い内に訪れるであろう』…と。」
「これはつまり…」
「此度の戦は…今は劣勢でも必ずや我々が勝利するというアヴァロン様からの御告げです…」
「……そうか…そうだな‼︎我々にはアヴァロン様が付いておるのだ‼︎何を気に病む必要があったのか…大司祭殿…感謝致します‼︎」
「いえいえ…私はアヴァロン様に仕えているだけの存在ですので……」
「では……先ずはアリ=ワンバ王国とナウゴーラ国、そしてラリオノフ共和国へ我が国からの援軍を送るとしようか‼︎」
「ッ⁉︎お、お待ち下さい閣下…」
「ん?何だ?」
「ご、ゴホンッ!……たった今、またアヴァロン様からの御告げがきました。『援軍は不要…事の成り行きを見よ』との事です。」
「なにっ⁉︎その様なこと…今まさに同胞達が助けを求めていると言うのにか⁉︎」
「ほう…閣下、あなたはアヴァロン様からの御告げを信じないと?」
「い、いや…そう言う訳ではなー」
「ならば…このまま何もせず見守る事に専念しなさい。それが…アヴァロン様のー」
バターーーンッ‼︎
「「ッ⁉︎」」
突然ドアを開けて入ってきたのは、ディカルド大統領の息子であるエドガルドだった。エドガルドは怒りに満ちた表情で詰め寄って来る。
「父上‼︎何を仰るのですか⁉︎今直ぐに援軍を送るべきです‼︎同胞国達は貴重な戦力、それを無くすことが如何に致命的な事か…今の状況を見れば分かりますでしょう⁉︎」
「エドガルド⁉︎」
エドガルドは部屋に入るなり、アギロン大司祭の方へ睨みつけながら問い掛ける。
「アギロン大司祭殿‼︎貴方は軍人ですか?」
「…私は偉大なる神アヴァロン様に仕える大神官…軍人ではありません。」
「では口出ししないで頂きたい‼︎戦は我ら軍人の役目‼︎貴方の出る幕ではありません‼︎」
「何を言ってー」
「貴方は豊作祈願なりなんなりに専念していれば良いのです‼︎…」
「何ですと?…」
アギロンの手がプルプルと震えだす。一見平静を装っているが、その目は怒りに満ちていた。
「自分の道や生き方も…神に頼らなければ何も出来ない者は『邪魔』だと言っているのです‼︎」
「神を侮辱するのですか……今に天罰が下りますよ。」
「天罰?私は朝の礼拝もしなければお供え物をした事はこの10年間一度もやってない…これは立派な神への冒涜であるというのに私には未だに1度とたりとも天罰が下らない…何故でしょうね?」
「……。」
「そもそも貴方はー」
「え、エドガルドーー‼︎」
「ッ⁉︎」
突然、ディカルド大統領が短剣を息子であるエドガルドへ向けて来た。その手はカタカタと震えている。
「…父上」
「この馬鹿者が‼︎…大司祭殿に対しなんたる無礼をッ⁉︎…神への冒涜だぞ‼︎」
「父上…目を覚まして下さい……さぁ短剣を置いてー」
「黙れ‼︎神への反逆者めが‼︎…エドガルド…儂は今まで、お前の神に対する無礼な態度には目を瞑ってきたが…今回ばかりはもう我慢ならん!…お前を…全軍総帥の任を解く!」
「父上‼︎」
「新たなる全軍総帥には、アヴァロン様に仕える大神官、アギロン大司祭を全軍総帥とする‼︎…宜しいでしょうかな?アギロン大司祭殿。」
「…これもまたアヴァロン様の御導き…謹んでお受け致しましょう。」
「うむ!此れで良い!良いのだ!…衛兵‼︎息子…いや…神への反逆者エドガルドを部屋へ連れて行け‼︎」
すると2人の衛兵が入ってきて、エドガルドの元へ近づく。
「…エドガルド様……申し訳ありませんが、どうかー」
「分かっている……暴れたりはせぬ…さぁ行こうか。」
「……ありがとうございます。」
エドガルドは衛兵2人に連れられて、書斎室を後にする。ディカルドは短剣を机に置き、アギロン大司祭の元へ跪く。
「アァッ!…アギロン大司祭殿…どうかお許しください……愚息のした事とは言え、神に対する無礼な行為を…どうか…」
「……アヴァロン様は…大変お怒りです…アヴァロンは…此度の行為を『許さない』と申しております。」
「そ、そんな…」
「しかし、心広きアヴァロン様は、貴方に最後のチャンスを与えるとの事です。」
「ッ⁉︎そ、それは一体ッ⁉︎」
「……これからは…アヴァロン様に使えるこの『アギロン・グドゥモに大統領と同等の権力を与える事』…それでアヴァロン様は此度の行為をお許し下さるそうです。」
「それは勿論ッ‼︎神々の怒りから逃れられるのであればッ!」
この言葉を聞いたアギロン大司祭はニヤリと口元を歪ませる。
「貴方に…アヴァロン様のご加護があらんことを…」