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日出づる国、異世界に転移す  作者: ワイアード
第4章 クアドラード連邦国家編
62/161

第57話 予想外の敵

大変長らくお待たせしました。


最近仕事も忙しくなっておりますので、もしかしたら投稿ペースはこの調子になるかもしれません。

ーーアリ=ワンバ王国 ニルドール王国国境付近 第1前線



ゴツゴツとした岩肌の様な大地から所々生えている草木以外何も無い寂しげな土地に、アリ=ワンバ王国の第1前線部隊約2万の歩兵が士官や下士官の指示のもと、綺麗な戦列を組んでいた。


高く掲げられたアリ=ワンバ王国の国旗が風によってはためいていた。兵士達は鎧甲冑を身に纏い、銃剣付きのマスケット銃を肩に担ぎながら整列していた。その光景は、昔の横隊戦術と中世ヨーロッパの騎士が混ざり合ったようなものだった。


そんな光景を後方の丘から馬に乗って眺めていた第1前線部隊指揮官ダリル・キース少将は、望遠鏡を覗いていた。




「第1前線で此れほどまでの大軍勢…しかし、問題はニルドール王国だ…一体どうなっている?」



キースはニルドール王国側の方へ望遠鏡を向ける。するとそこには驚きの光景があった。



「何故ニルドール王国は、昨日まで配備していた前線の兵士や大砲を撤退させたのだ?」



ニルドール王国は昨日まで配備していた自国の前線部隊の兵士達を全て引上げせていたのだった。この事は、昨晩の偵察隊がニルドール王国の前線部隊が引上げ始めているのを目撃しており、始めはただの配置変更では無いかとアリ=ワンバ王国のキース少将達は考えていた。しかし、翌日ニルドール王国の前線を見てみると、綺麗さっぱり居なくなっていた。



「き、キース少将。これは…一体どういう事なのでしょうか?」



1人の将兵がキースに対し不安げな表情で質問する。不安に思っているのは、無論彼だけでは無かった、キースの後ろいた将兵が全員がそう感じていた。



「うむ……ニルドール王国で何か問題が起きたか…それとも罠か…すまんが私にもよくは分からない、こんな事は初めてだ。」


「で、では…国からの伝令を待つのみと?」


「そういう事になるな…今朝魔伝にて今回の件を上に伝えている。その時の命令次第でー」


「キース少将‼︎」



すると1人の兵が駆け足でキースの元へやって来た。



「何事か⁉︎」


「さ、先ほど軍上層部より伝令が来ました‼︎……『この機を逃すな、第1前線軍は本日より第1侵攻軍としてニルドール王国へ進軍を開始せよ』っとの事です。」


「何ッ⁉︎…クソッ!安全圏にいる老人共は何を考えている⁉︎」


「キース少将…どう…します?」


「……命令は命令だ。これより進軍を開始する。魔伝にて各士官に伝えろ‼︎これよりニルドール王国へ進軍を開始するとな‼︎それと、第1前線の翼龍騎士団ジョルガ団長に上空からの偵察と援護を要請しろ‼︎」


「ハッ!」




キース少将が前線基地へ戻ろうとしたその時、彼の携帯用魔伝石から通信が入ってきた。



「キース少将だ。」


『ーーよう‼︎キース‼︎命令を聞いたな⁉︎始まったぞ〜…戦争だ戦争‼︎ーー』



耳に響く様な大声が魔伝石から聞こえてきた。キースは思わず、魔伝石から顔を遠ざけてしまう。



「ウッ⁉︎…相変わらずデカイ声だなエルギン。」



この声の主はアリ=ワンバ王国闘龍騎士団団長エルギン・レドリッジだった。



『ーー何で翼龍騎士団なんかを向かわせたんだ⁉︎…ここは俺たち闘龍騎士団の出番だろうが‼︎ーー』


「はぁ…世界で唯一闘龍の大量生産に成功したレイス王国とは違って、闘龍は貴重なんだ。お前たちはここぞという時まで待機していろ。」


『ーーチッ!あんまり焦らしすぎんなよ!ーー』



キースが通信を切ると同時に、西空から暗雲がゆっくりと近づいくるのが分かった。何かしらの行動を起こす時に、西から暗雲が現れると災いが起こると彼は小さい頃、軍人であった祖父から教わった事を思い出した。



「アレは『雲』、ただの『雲』だ…だが嫌な予感がする。」



キースはまだ微かに見える太陽を見ながら、今日の命を祈った。







ーー

「進軍開始ーー‼︎」



命令を受けてから1時間後、キース少将の指揮の元、第1侵攻軍がニルドール王国へ向けて進軍を開始する。ゴツゴツとした荒地の上を整然とした隊列を組みながら行進していく。上空には500騎の翼龍騎士団が、一足先にニルドール王国へと向かって行く。地上にいる兵士達は、その翼龍騎士団に向かって手を振ったりしながら健闘を讃えていた。




「ウッヒョー!スゲェスゲェ‼︎2万人の大行進だ‼︎上から見るとやっぱり迫力が違うなぁ〜。」


「こっちもこっちで凄いだろう?500騎の翼龍騎士団が出動するなんて滅多にない事だしな。でも俺的には、闘龍騎士団が優雅に戦空を飛び回る姿が見たかったかなぁ。」


「それは言えてるなぁ‼︎」



翼龍騎士団達は、普段ならまず見る事はない光景に興奮しながら敵地へ向けて飛び続けてた。そして、遂にニルドール王国国境の上空を通過していく。



『ーーこちら翼龍騎士団のマトルです。たった今ニルドール王国国境付近の上空を通過していますが……やはり人っ子一人おりませんーー』



翼龍騎士団から魔伝での連絡を受けた第1侵攻軍のウィジット大隊長は不安に思う。



(おかしい…やはりおかしいぞ……ここは大人しく様子を見るのが得策だと思うのだが……命令に逆らうことは出来ない…。)



『ーーウィジット大隊長?ーー』


「いや、何でもない…そのまま進んでくれ、後でキース少将には私から伝える。」


『ーー了解しましたーー』




翼龍騎士団達も一向に現れない敵に対し流石に不気味に感じており、周りからは不安の顔が出てきていた。



「なんだよ…来るなら来いよ。」


「こうもアッサリだと…逆に……なぁ?」


「狼狽えるな‼︎隊を乱さず、飛行を続けろ‼︎」



すると、望遠鏡を使っていた1人の翼龍騎士が、前方から何かが近づいくるのに気付いた。



「ッ⁉︎だ、団長ォー‼︎前方から何かが来ます‼︎」


「なに⁉︎…遂に来たか……何が来ているか分かるか⁉︎ニルドールの翼龍騎士団か⁉︎」


「アレは……『ルフ』…多数の『ルフ』が此方に向かってきます‼︎その数約…200‼︎」


「る、『ルフ』だと⁉︎…バカな、何故魔獣が…それに『ルフ』は遠い南の地に生息する魔獣…こんな所に生息しているなど聞いた事がない‼︎」




『ルフ』とは、肉食の猛禽類…つまり『怪鳥』の一種である。国によっては『ロック鳥』とも呼ばれている。体長は約2〜3mほど、鋭い鉤爪と嘴で獲物を仕留める魔獣である。主に、南方の低文明国家圏に多く生息しているため、彼らはこんな北方に『ルフ』がいたことに驚いていた。




「なぜこんな北の地に『ルフ』がいるのだ⁉︎」


「皆目見当もつきません‼︎…それもかなり大きいです!体長は約5m、通常の『ルフ』の倍近い大きさです‼︎」


「ま、真っ直ぐ此方へ向かって来てます‼︎」


「団長‼︎」


「狼狽えるな‼︎…兎に角今は目の前の脅威を薙ぎはらう事だけを考えろ‼︎全騎戦闘用ーー意‼︎」



団長の掛け声と同時に、全員に緊張が走る。そして、翼龍騎士団は龍騎士専用の大剣と長槍を構え、翼龍は口内に火炎弾を練りながら待ち構える。



「焦るな‼︎……火炎弾の射程距離内に入ってからだ‼︎…」



200を超える『ルフ』達が、鋭い鉤爪と嘴を向けながら近づいてくる。その顔は明らかに圧倒的な殺意で満ちていた。餌を狩る空の狩人では無く、ただ目の前の存在を『殺す』…その様な感情が伝わってくる。



「(おかしいッ!やはりおかしいッ!…『ルフ』は確かに肉食の猛禽類ではあるが、滅多な事では人を襲わない…魔獣の中では比較的『温厚』な生き物だ…なのに…)」



そして、『ルフ』達と翼龍騎士団との距離が200mを切ると同時に翼龍の口から火炎弾が発射される。



「撃てェーーーーーー‼︎‼︎」



紅蓮色の火炎弾が真っ直ぐ『ルフ』達へ向かって進んでいく。最前にいた『ルフ』達の何匹かは火炎弾を避けるが、その後方にいた『ルフ』に命中してしまう。



ギェェェェェェェェェェッ‼︎



火炎弾が命中し、生きたまま丸焦げとなっていく『ルフ』達は断末魔の叫び声を上げながら地上へと落ちていく。火炎弾は1度に2体ほどの『ルフ』を撃ち落とし、上手く当たったものは一気に3〜4体を仕留めていた。



「目標に命中‼︎…約60体の『ルフ』を仕留めました!」


「良し‼︎第1列は後方へ!第2列火炎弾用ーー意‼︎…撃てェーー‼︎」



最初の火炎弾を撃った1列目は後方へ旋回し、既に火炎弾を練り構えていた第2列目がすかさず火炎弾を撃ち出す。撃ち出された火炎弾は、最初に避けた『ルフ』達にも命中、さらに50体近くを撃ち落とした。



「『ルフ』達との距離が100m切りましたーー‼︎」


「全騎接近戦用ーー意‼︎」



今度は3列目以降で長槍ランスや大剣を構えていた翼龍騎士団が前方へ出てきた。そして、一気に速度を上げて『ルフ』達へ向けて突っ込む。



「突撃ぃーーーーー‼︎‼︎」


「「ウォォォォォォォォォォォォオオ‼︎‼︎」」






ーー

一方未だニルドール王国国境まで500m以上の地点で行軍を続ける第1侵攻軍は、翼龍騎士団から現在『ルフ』と交戦中という魔伝報告を聞いたところだった。



「ウィジット大隊長、何故『ルフ』が…怪鳥がこんな所に…」


「…サッパリわからん……だが我々の脅威ならばそれを撃退するまでよ。翼龍騎士団からの死傷者は?」


「今の所はまだ一人も出ておりません。」


「そうか……このことをキース少将に報告せよ!大至急だ!」


「ハッ‼︎」


「……一体何が起こっているのだ…」








ーー第3前線兼最終防衛基地


ニルドール王国との3番目の前線にして最終防衛ラインでもあるココは、堅固な石造りの城塞砦で、城壁の規則的な凹凸が鋸のようにつけられた狭間ツィンネからは真鍮式大砲の砲門がヒョッコリと外へ向けて顔を出していた。この様な城壁が果てしなくズラリと建てられていた。万が一、この城壁が破られるようであれば、この城壁の奥に存在する都市や町、村なとが敵に攻め滅ぼされてしまう。


その砦内の作戦司令本部には、第1前線基地の指揮官キース少将の姿があった。彼は他の基地の指揮官達と供に、今後の作戦について話し合っていた。




「…そうですか……ナウゴーラ国とエルランジェ王国も我が国と同じ様に、ハルディーク皇国傘下国と遂に衝突しましたか…」


「ハイ。ラリオノフ共和国はその2カ国があるからこそ今の所は敵との交戦無く済んでいますが、もしナウゴーラ国とエルランジェ王国のどちらか一方でも敗れた時には、ラリオノフ共和国も敵との交戦を余儀なくされるでしょう。」


「その2カ国の戦況は?」


「エルランジェ王国は、ハルディーク皇国傘下の『グワヴァン帝国』と交戦中で、戦況はあまりよろしくはありません。クアドラード連邦国家からの援助やその他の国々から援軍は来てきますが…やはりグワヴァン帝国の方が一枚上手…徐々に押されています。」


「……はぁ〜…ナウゴーラ国は?この国は貴重な上質魔鉱石が取れるヒルデゴ山脈を有する国だ。絶対に敵の手中に奪い返されてはならぬぞ?」


「ナウゴーラ国はハルディーク皇国傘下の『アクティス王国』と交戦中ですが、一進一退の状況です。」


「少々キツイかも知れぬが、ここはやはり我が国からも彼の国へ援軍を送るべきだろう…まぁ司令本部にいる将軍達もそこは分かっているとは思うがな……では、我が国…第1侵攻軍の状況について何か分かったことは?…今の所、ハルディーク皇国の傘下国連合とまともに戦いが始まっていないのは我が国だけだからなぁ…」


「ハイ。実はまだこれと言った報告は……ナウゴーラ国やエルランジェ王国の戦況では起きていない未知の出来事に、今我が国は直面してますから…」


「……国境にいた敵兵が一夜にして突然引き上げ始めたのだ…この様な事は今まで一度も無かったのだ。」



コンコンッ…ガチャッ





「会議中に失礼します。第1侵攻軍のウィジット大佐兼大隊長から魔伝がありました。現在、第1侵攻軍の翼龍騎士団が、交戦を始めたとの事でー」


「おぉ‼︎やっとか‼︎」


「ふぅ…やれやれ、ニルドール王国があまりにも予想外な動きをしたものだから内心ドキドキしたが…」



伝令兵の報告にホッと胸をなでおろす将兵達だった。正直なところ彼らも、予測不能なニルドール王国の動きに動揺していたからだった。その為、敵が普通に交戦を始めてきた事に内心良かったと思っていた。



「それで、翼龍騎士団が交戦中と言うことは、ニルドール王国側の翼龍騎士団が相手なのであろう?敵将は誰だ?」


「い、いえ…」


「ではまさか…闘龍騎士団か⁉︎バカなッあの国がイキナリ貴重な闘龍を動かすなどー」


「第1侵攻軍の翼龍騎士団が交戦している相手は、闘龍騎士団でも翼龍騎士団でもありません!それどころか…人ですらありません。」


「「ッ⁉︎」」


「ひ、人ではない…と?…では彼らは今何と戦っているのだ⁉︎」


「『ルフ』です!」


「る、る…『ルフ』⁉︎ま、魔獣と戦っているのか⁉︎」



将兵達全員が、自国の翼龍騎士団が戦っている相手が、ニルドール王国の翼龍騎士団だと思っていた。しかし、相手がまさかの魔獣だった事に動揺を隠しきれないでいた。そして、何が一体どうなっているのか…一斉にその伝令兵へ詰め寄りながら一方的な質問を投げかけていた時、キース少将がスッと手を挙げて、他の将兵達を落ち着かせる。



「皆さん落ち着いてください。それでは答えられるものも答えられませんよ。」


「う、ウゥム…」


「驚いているのは私も同じです。……では一つずつ質問していきますよ?…今我が第1侵攻軍の翼龍騎士団が交戦しているのは『ルフ』だけですか?」


「は、ハイ…」


「数は?」


「約200体と聞いてます。」


「陸軍の状況は?」


「連絡を聞いた時点では、ニルドール王国国境から約500m地点でしたから…今はもう国境を越えてもおかしくありません。」


「……そうか」



キース少将は考え込む。出来ることなら陸軍だけでもそこで行軍を停止して、状況を見てから行動を起こしたい所ではあるが、国境を越えた時点では『もう手遅れ』の可能性があった。



「いやな予感が的中したな……」



するとまた別の伝令兵が会議室内へと入ってきた。



「し、失礼します!さ、先ほど第1侵攻軍から魔伝が入りました!…侵攻軍は…」


「ん?どうした?」


「は、はい…現在第1侵攻軍に……か、壊滅的な被害が出ています!」


「ば、バカな⁉︎何が起きたと言うのだ⁉︎」











ーー数時間前 ニルドール王国内 上空



「オラァッ!」



翼龍騎士団員が、襲い掛かる『ルフ』目掛けて大剣を振り下ろす。『ルフ』はそれをなんとか躱そうと身体を捻るが、それに合わせて翼龍も動いて来た為、躱しきれず左翼を斬り落とされてしまう。



「グギィィギェ!」



『ルフ』は不気味な声を上げながら、落ちていった。



「へッ!ザマァみろ!クソ鳥野郎‼︎…他の皆はッ⁉︎」



彼が一体の『ルフ』を倒し後、すぐに周りを見渡し仲間の安否を確認する。周りの皆は自分と同じ様に次々と『ルフ』達を仕留めていた。


襲い掛かる『ルフ』の眉間に目掛けて長槍ランスを突き刺し、『ルフ』は一瞬にして絶命した。また、向かってくる『ルフ』をギリギリまで引きつけてから、その長槍ランスを投げて『ルフ』を貫いていた。



「クッソォッ!寄ってたかりやがって!」



すると一騎の翼龍騎士団員に対し三体の『ルフ』が追い掛け回していた。しかし、その距離は少しずつ縮まり、『ルフ』達の鉤爪と嘴が団員を捕らえようとしていた。その時、翼龍が勢いよく身体を回転させた。『ルフ』達は翼龍の身体に薙ぎ払われてしまい、体勢を整えようと一瞬その場で滞空した。すると、その隙を狙って翼龍は『ルフ』達目掛けて火炎弾を撃ち込んだ。


そして、『ルフ』達は一瞬にして丸焦げとなり、地面へと落下する。



「鳥の丸焼け一丁‼︎」


「ウォォォォォーーッ!」



また別の翼龍騎士団員が、一体の『ルフ』に追われていた。その『ルフ』は他の『ルフ』よりも速く、そして機動力がある…苦戦していた。



「クッソ!だったらッ!…」



すると彼は翼龍を上に向かって大きく弧を描くように旋回する。突然の動きに『ルフ』は大きく困惑し、あっという間に背後につかれてしまった。



れェ‼︎『メトス』‼︎」



彼は『メトス』と呼ばれる相龍に指示を出すと、『メトス』は背後についたと同時にその『ルフ』の首根っこを噛み千切る。『ルフ』は頭部と胴体が分断された状態で、血を撒き散らしながら落ちて行った。




「団長ォーー‼︎『ルフ』は全滅です!一掃しましたァーー‼︎」


「良ーし‼︎、被害報告‼︎」


「第1侵攻軍翼龍騎士団総員500騎の内12騎が殺られました‼︎」


「12騎か……」


「団長‼︎殺られた12人の仇を討ちましょう‼︎」


「そうです‼︎もうこのままニルドールの首都まで攻め入ってやりましょうよ⁉︎まだ翼龍の背には投下用の魚獣油樽を積んだ翼龍が残ってます‼︎」


「団長‼︎」


「団長ォ⁉︎」


「…無論だ‼︎既に侵攻軍としての命は受けているこのまま一気に攻め込もうぞ‼︎我らアリ=ワンバ王国翼龍騎士団の誇りを思い知らせてやー」



グッシャァ‼︎‼︎



突然、団長に向かって下から『何か』がかなりのスピードで通ると同時に団長の声が聞こえなくなってしまった。他の団員達が、団長が『居た』場所へ目を凝らすと、上からグシャグシャになった『団長だったモノ』と『翼龍だったモノ』が落ちて来た。死体はまるで巨大な物体に勢いよくぶつかった様な酷い有様だった。



「え?……」



副団長達は呆気に取られてしまうが、その『何か』が飛んで来た下へ目を向ける。そこにはー



「な、何だよこいつらッ⁉︎」


「『ルフ』に気を取られすぎて気が付かなかった…」



地上には鎧甲冑を身に纏った『サイクロプス』と『リザードマン』の大軍で覆い尽くされていた。そして、そんな魔獣大軍団を観ていたのは、翼龍騎士団だけでは無かった。ここかは少し離れた森の茂みから、動物の毛皮を着ている山賊風の男達が居た。



「凄いものだなぁ。ただの魔獣もハルディーク皇国の魔法技術をもってすれば、ここまで強力な『兵士』に生まれ変わるのだなぁ。」


「ですが『ルフ』が全て殺られましたぞ?」


「あんなのはただの前座だ。直ぐに第二陣の『ルフ』や『コカトリス』がいるでは無いか?…だがその必要は無いかもなぁ…今の見たか?サイクロプスが足元の岩を掴みそれを敵の翼龍騎士団へめがけて投げたのを!」


「えぇ見ましたよ!見事命中しました!……ん?今度はアリ=ワンバ王国の陸軍が見えましたよ!」


「そうか…フフフフッ……こいつらがどんな活躍をするのか楽しみだ…」


「それにしても、何で我が軍を撤退させる必要があるんでしょうか?オマケに『暫くは出撃もするな』など…名誉を欲しがる猛将達は黙っていませよ?ハルディーク皇国は何を考えているのでしょうか?」


「さぁな?多分…後々の手柄を自分達のモノにしたいのではないか?だが、そうはさせるか…此度のアリ=ワンバ王国との戦争の手柄は、我々ニルドール王国のモノだ!」


「では、後方で待機している軍には何時でも出撃出来るよう魔伝で伝えておきます。」


「うむ!」







一方上空にいる翼龍騎士団は、今現在の状況を地上にいる陸軍に伝える為魔伝を使おうとしていた。



「は、早く今の状況を伝えろ‼︎進軍中止だ!」


「は、ハイ!今すぐにー」



グシャッ!



「ッ⁉︎」



また下から何かが猛スピードで魔伝を使おうとした団員に直撃する。団員は、翼龍共々ゴミのように落ちていく。



「さっきと同じだ⁉︎…何なんだ!」


「ふ、副団長!アレを!」



1人の団員が地上の方へ指をさす方向へ目を向けると、サイクロプス達が岩を持ち上げ、此方に向かって投げようとしていた。



「ッ⁉︎アレだったのか⁉︎…そもそも届いていたのか⁉︎ここまで⁉︎」


「こ、此方に向かって投げてきます‼︎一斉にッ」


「イカン!ぜ、全員回避行動を‼︎」



次の瞬間、地上から正に大砲の如き勢いで翼龍騎士団へと向かってくる大量の岩石群。全員、何とか躱そうとするも止まることなく投げてくる岩石に次々と打ち落とされてしまう。



「クッソォ‼︎副団長‼︎大丈夫でー」



ドグォッ!



団員が副団長を気遣おう声を掛けた瞬間、打ち出された岩石が今度は団員の真上から落ちて来た。団員は岩石と一瞬に地上へとおちていく。



「何⁉︎う、上からも気を付けろ!投げてきた岩石が落ちて来る!」



下からだけでも精一杯の彼等は、上からも落ちて来る岩石まで注意する余裕はなかった。



「うわぁぁ!」


「ギャァァーッ!」


「た、助けー」


「避けきれ無い!だ、誰かー」



聴こえてくる仲間たちの断末魔の叫び声、その声が段々と少なくなってくるのが分かると、副団長は目に涙を浮かべる。



「ち、畜生が‼︎何でこんなー」



次の瞬間、涙で歪んだ副団長の視界から岩石が向かってきた。そして、強烈な衝撃と共に副団長はボロボロになったオモチャの様に地上へと落ちて行った。



「ふ、副団長ォォーー⁉︎」


「もう無理だ‼︎…逃げろぉー‼︎」



残っていた翼龍騎士団達は一斉にその場から引き上げて行った。そして、遅れてやって来たアリ=ワンバ王国の第1侵攻軍がその一部始終を観ていた。



「う、ウィジット大隊長⁉︎」


「……まさか…500騎もいた翼龍騎士団が…」


「ッ⁉︎だ、大隊長‼︎ま、魔獣どもが此方に来ます‼︎」


「ぜ、全員戦闘態勢をとれ‼︎‼︎」



アリ=ワンバ王国の第1侵攻軍は、津波の如く迫ってくる魔獣軍団を迎え撃つために、マスケット銃を構えた兵達が一斉に前に出て、魔獣軍団へ向けて銃口を向ける。


一応今後の展開は出来上がっているのですが、武器・兵器ネタが無いのがなんとも…やはり資料が無いと厳しいですね。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >魔獣と戦っているのか⁉︎ 結局魔獣というのが幻獣全般を指す一般名詞なのか、ハルディークの人工生物兵器を指す固有名詞なのかガバガバな気が。正確にはハルディークのは合成獣な訳ですけど、…
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