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日出づる国、異世界に転移す  作者: ワイアード
第3章 ウンベカントの動乱編
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第54話 取り調べ

久し振りの連日投稿です。


ーー翌日 中ノ鳥半島基地 取調室前



先日に捕まえた『爆弾魔集団』の事情聴取を行っていた。そこから分かった事は、メンバーの殆どが雇われて入った者であるということ、そして、その者たち全員の家族が重病を患っており、それを治す薬をもらう代わりに働いていたという事だった。


そして、肝心の主犯格であるヘヴァックは最初、獣人族ワーウルフかと思っていたが、暫くするとそいつの正体は、『擬態魔法』を応用して獣人族ワーウルフに化けていた人族だった。


しかし、彼はずっと黙秘を続けているため、彼についてまだ詳しい話は聴けていなかった。



「悪いがカツ丼なんてもんは用意出来ん…そんなのガセネタだからな。」



取り調べをしている自衛官…内田。

部屋には記録係の職員とヘヴァックの後ろに2体の『PパトロールWウォーカー』が立っていた。


ヘヴァックは椅子に座り、両手を後ろに組まれ縛られていた。そして、内田の姿を見ると殺意の篭った目を向ける。しかし、内田はそれを毛ほども気にせず、ファイルに挟まれている資料を見ながら取り調べを続ける。



「さてと、じゃあ振り返りだけ。仲直りといこう。」


「貴様が…貴様らが来なければ……こんな事には…絶対に許さんぞぉ‼︎」


「やっと口きいてくれたか。まぁそんな事よりも、お前達は何の目的でダークエルフ達を狙った?…」


「フンッ…貴様らに答える義理は無い!」


「……我は何処の国の者ですか?」


「さぁな。」


「貴方の名前は?」


「…イヤだね。蛮族に名乗るな名など無い。」


「そうか…それじゃぁ『クソ野郎』でいいか?良いよな?…クソ野郎の目的は何じゃい?」



ヘヴァックは自分の事を『クソ野郎』と言われた事にかなり苛立った表情を見せる。しかし内田は、特に気にすることなく彼の事を『クソ野郎』と呼び再び質問を行う。

ヘヴァックにとってはそれが更に癪にさわる。蛮族と捉えている存在にそう呼ばれる事が許せはせなかった。




「じゃあクソ野郎…お前のその擬態魔法は、元々はテスタニア帝国独自の魔法技術だと聞いてたが、クソ野郎の国がテスタニア帝国から盗んだのか?それともテスタニア帝国がクソ野郎の国から盗んだのか?どっちだ?」



ヘヴァックの眉間がヒクついており、彼自身も露骨に苛立ちを表すが、内田は構わず続ける。



「おい…いい加減にー」


「その擬態魔法の応用を使えるのはクソ野郎だけか?まぁだとしたら凄いが、それが元々はどこの国の人間で、クソ野郎の国がそれを真似して、自分達も使えるんだぞと踏ん反りかえってるとしたら、クソ野郎の国はクソ野郎ということか?…まぁ大したモンでもないとは思うがー」



そしてついにヘヴァックの堪忍袋の尾が切れた。彼は椅子がガタァンと音がするほど身を乗り出しながら大声を出す。それに反応し、『PパトロールWウォーカー』が動こうとしたが、直ぐに内田が手をスッと出してそれを制止させる。



「貴様ぁ‼︎‼︎それ以上我が『ハルディーク皇国』を侮辱すると、このヘヴァック・ラジムが許さんぞぉ‼︎‼︎我が国の偉大なる目的が成功した暁には、お前たちはお終いなのだぞ‼︎」



内田は冷めたような目でヘヴァックを数秒見つめた後、何でも無かったかのようにペンを取り出しファイルの資料に書き込む。



「ふーん、『ヘヴァック・ラジム』…『ハルディーク皇国』っと…ご協力有難うございます。」


「あっ…」



内田はスラスラと今しがた話した情報を書き込んだ後ペンをカチッとしまい、再びヘヴァックの方へ哀れみの顔を向ける。



「 国の為に尽くしたというのに、自分の正体を自分のプライドの為にバラすなんて……」


「な、何をバカなー」


「我がやった事は…国を裏切ったも同然。貴方は国に見捨てられる。」


「た、た、たったあれだけの情報で何が分かるものか……」



声が震える…ヘヴァック自身得体の知れない不安感と恐怖心が芽生え始め声が震えてくるのだった。



「分かるさぁ…十分過ぎるほどに。」



ついにヘヴァックはガタガタと震えだす。その目からは恐怖…絶望…が薄っすらと見えてくる。



「は、はは……はははは…、わ、我が国がそんな簡単に私を裏切るわけが無い……私は…幼少期から国の暗部として、血の滲むような訓練を重ねて……何度も死ぬ思いをして…今では国の利益に関わる任務を与えられてー」


「その結果がこれだ。今、国の利益を損ねる事を口にした。」


「そんなぁ…ドム大陸の時は……国は…ヴァルゴ皇帝陛下は…私を許して下さったのだ……」


「だったら尚更だ。二度目は無い。」


「あぁ……あ………ぁ」


「その皇帝の期待を裏切った…」



ヘヴァックの目は絶望に呑まれてしまった。そして、ボソリとある不安な気持ちが口に出る。



「私は……殺されるのか?」


「少なくとも、我々は貴方を殺しませんし、危害を加える気もありません。」



この答えにヘヴァックはある違和感を覚え、それが段々と恐怖に変わる。



「『は』ってなんだ⁉︎……違うやつらが俺を…こ、殺すのか?そ、そんなぁ…わたしは……全てを国に捧げたのにッ!こんな…こんな……い、いやダァ…死にたくなぃッ」



涙をだらだらと垂らしながら懇願してくる。内田は、そんな彼をニヤリと笑いながら語り掛ける。



「なら素直に全てを話しなさい。貴方の身の安全は日本国政府が守ります。貴方が協力してくればの話ですが。」


「話すッ!話すッ!何でも話します‼︎」


「よろしくおねがいしますね…。」



そう言うと内田は椅子から立ち上がり部屋を後にする。




ーー中ノ鳥半島基地 応接室



ここにはルナとメト、ジウがソファに座っていた。煌びやかでは無いが、このソファやテーブル、壁などの精巧な作りに驚愕していた。そして、テーブルの上に置かれた紅茶をメトがヨダレをゴクリと飲み込みながらマジマジと見ている。



「る、ルナ戦士長…このいい匂いのするお茶は何でしょうか?凄く美味しそうです。」


「落ち着けメト、差し出されたからといってそれを飲んではダメだ…毒が入っているやもしれんぞ。」


「えっ⁉︎毒ッ⁉︎…こんな美味しそうなのに…。」


「ハァー…メト、隠密部隊としては基本中の基本だぞ?…ガマンしろ。」


「うぅ……」



コンコンッ


「失礼します。」


ガチャッ



ドアをノックして入って来たのは、外務副大臣の淡島あわしまとおるだった。

彼が部屋に入るとルナ達は、右手を胸に添えて軽くお辞儀をする。淡島もそれに応えるよう礼をする。


そして彼はテーブルの上に置かれた紅茶を見ると一口も手を付けてない所を見て、フッと笑う。



「フフッ紅茶はお嫌いでしたかな?」


「別にそう言うワケではありません、どうかお気になさらず…。」



この言葉で淡島は確信する。



(なる程…彼女達は本物みたいだな……流石は『隠密部隊』…と言ったところかな。)



「そうですか、分かりました。…では本題に移りますが宜しいでしょうかな?」


「こちらは構いません…もとよりそのつもりでしたから…。」




ーー15分後



淡島は顎に手を当てて考え事をしていた。彼女達は日本に対する諜報活動をヴァルキア大帝国に命令(とは言っても彼女達に命令を下したのは族長だが)された。そして、任務に失敗したと思いヴァルキア大帝国からの刺客が15人の内12人の仲間を殺したと思われた。


しかし、あのヘヴァックから聞き出した情報により、その刺客はハルディーク皇国の者あった事が分かった。ヴァルキア大帝国への日本国の情報流出妨害とダークエルフを使った事により日本国と亜人族国家との関係を崩す事を目的とした陰謀だった。



「……あなた方の話を聞いてようやく今回の騒動を結びつける事が出来ました。」


「いえ……あ、あのぉ!」


「はい?」



ルナが詰め寄るような形で淡島に質問しようとする。淡島の後ろでは、警備していたSPが一瞬身構えるが直ぐに警戒を解く。



「……酒場〝ニシタニ〟の人達はどうなるのでしょうか?…知らなかったとは言え、私達のことを匿ったことで……何かしらの罰を与えるのでしょうか?」


「いえ、その心配はありませんよ。それに彼らが通報してくれたから、大きな犠牲を出さずに事が済んだのですから…あ、あなた方のお仲間については……非常に残念でした…お悔やみ申し上げます。」



淡島はルナ達に対し頭を下げる。それを見た彼らは、一瞬戸惑ってしまう。



「い、いえいえ!…彼らも覚悟の上だった筈ですから……」



ルナの言葉にジウは目を閉じてウンウンと頷く。メトは少し涙ぐむも、何とかジウに続き頷いた。



「…それで……あなた方の今後についてなのですが、アルフヘイム神聖国へ連絡して本国へ帰国させようと考えています。」


「ッ⁉︎あ、それについては…チョット…」


「?」




ーー数分後…



「あぁ〜なる程…そんな掟が…」


「はい…しかし、戻れというのであれば戻りましょう…もとより我らは影の存在、何時でもー」


「それでは我々も付いて行きましょう。」


「ー死ぬ覚悟はありま……え?」



まさかの言葉にルナ達は言葉を失う。依頼先…つまり獲物である国の者がみすみす殺されに行くようなものだからである。



「ば、バカな事を言うな‼︎…こ、殺されるだけだ‼︎」


「ハハハハハッ…我が国とアルフヘイム神聖国は友好的かつ同盟関係を結んでおられるのです。そんな国の…それも政務官を殺したとなればウェンドゥイル聖王は、恐らく黙ってはいないでしょう。それは、あなた方ダークエルフの族長も望んではいない筈…だからこそヴァルキア大帝国と組んだのでは?」


「うっ⁉︎」



これにはルナ達も変に反論できなかった、正にその通りだからである。例え彼が来ても、流石にウェンドゥイル聖王との繋がりを持つ者を殺す事はあり得ないからである。それこそ、ハイエルフ族とダークエルフ族の争いが始まる。族長もウェンドゥイル聖王もそれだけは避ける為に、一応平和的関係を保っているのだから。



「……ですが、何故そこまでするのですか?いくらニホン人がお人好しだからと言っても、流石に何かを狙っての事でしょう?族長様に近づいて何をするおつもりですか?」



ジウの言葉に淡島はニッコリと笑いながら答える。



「ハハ…なぁに、『ヴァルキア大帝国よりも日本とお友達になった方がずぅーーーっと良いんだよ!』って伝えるだけですから。」

次回からは日本の出番は少しオヤスミです。

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