外伝 日本無き世界
アンケートの結果作成した外伝です。
本編とは一切関係は有りませんのでご心配無く。
あと2045年という事もあって、現在とは多少違い所もあると思います。
また、クオリティも高くないので変に期待しないで下さい( ;´Д`)
ーー2045年 4月10日 アメリカ合衆国
日本が異世界に転移した翌日、とんでもないニュースが全米に放送された。
『緊急ニュースです!昨夜、東アジアで震度3の地震が発生したと同時に、日本国との一切の通信が途絶えました!今現在、政府はあらゆる手段を通して日本国政府へ連絡を取っています!』
このニュースは全米で全ての放送が一時中断になるほどの大事件だった。特に在日米軍基地に派遣されている人や日本へ旅行に行っている人の家族や知人、友人が一斉に連絡を取ろうとしていたが、誰一人繋がった人はいなかった。アメリカ政府はそういった人達の対応に追われていた。それもそのはず、日本はもう…地球には居ないからである。
これはアメリカだけに起こった事だけてはなく、全世界で起きていた。アジア…欧州…中東…アフリカetc…世界中がパニックである。
ーー半年後 アメリカ合衆国 ホワイトハウス 大統領室
大統領室では、大統領、副大統領、大統領首席補佐官、大統領次席補佐官、国務長官、国防長官などが深刻な顔でテレビを見ていた。
『中国海軍の艦隊が南沙諸島へ展開を始めました。合衆国政府は、インドネシアの米軍基地へ緊急警戒体制を敷くよう指示を出しました。また、東南アジア諸国も中国軍艦隊の南沙諸島展開に対し、大規模な軍を派遣する事を決定。一方の中国政府は〝盗られたものを返してもらうだけだ〟と発表しております。』
『国連のサム国連事務総長は今回の一触即発の事態に対し、〝話し合いで平和的に解決すること〟を声明しています。しかし、今現在の国連は、〝有って無い様なモノ〟と各国から非難されており、マトモに機能していない状態です。』
『ロシアは今回の問題に対し、あくまで傍観の立場を表明しています。』
『一体世界はどうなってしまうのでしょうか?…日本国が居なくなった事で世界はあの忌まわしき世界大戦への道へ突き進んでいますー』
ブツン
テレビの電源を無言で切った、第54代アメリカ合衆国大統領エドワード・ジョーンズ…彼は、大きな溜息を吐きながら顔を隠すように両手を顔に当てる。
「神よ……何故なのですか?……何故日本を?………」
「大統領……」
「…日本が消えてから世界は変わった、悪い方向にな。アジア情勢のバランスは崩れ、対中に備えた在日米軍基地も消えた。それがわかると中国は一気に行動に出てきた…ロシアに至っては、明らかに漁夫の利を狙っている。中東のテロ組織も急激に激しさを増し始めた……」
「それに……世界第3位の国内総生産(GDP)の国が消えた事で、世界中の株価が大暴落…職を失った人達が一瞬にして莫大な数へと増えていきました……今も増えるばかりです。」
「『世界恐慌』の再来か…」
しかしそれだけではなかった、今の世の中に出回っている家電製品や車などの部品の殆どが日本製であるため、日本が消えた事により、それらの部品が供給できなくなってしまった。それはつまり、殆どの製品を作ることができなくなったのである。
そのため世界中の製品組み立て工場の殆どが機能停止状態、これによってさらに多くの失業者を増やすことになってしまった。そして、これらの問題は、先進国ならともかく、中小国では経済が儘ならないレベルにまで崩壊仕掛けていた。
そして、アジア情勢はさらに最悪の一途を辿っていた…
「韓国のイム大統領は…今朝も我が国に対し援軍を求める電話を……」
この話を聞くとジョーンズ大統領は苦虫を噛む様な表情で答える。
「クソッ…こっちの気も知らないでッ‼︎…」
「まぁ…無理もないでしょう……今回の問題で一番被害を受けていると言っても過言では無いのが、韓国ですから……」
日本が消えた事で各国が驚愕と絶望、不安を覚えるなか、韓国だけが国中大盛り上がりで喜びに満ちていた。異例のスピードで『日滅記念日』と呼ばれる休日が制定される程だった。
韓国中の祈祷師、僧侶が「私達が日夜日本滅亡のお祈りをしていたからだ」とテレビの前でコメントしており、その中でも有力な祈祷師を英雄として祭り上げるなど、それはもう国をあげてのお祭り騒ぎだった。
しかし、実際のところ韓国政府はかなり焦っていた…韓国が存続するにあたって掛け替えのない国が消えた事に…
その問題は直ぐに起きた。日本が消えた事による経済的大打撃もそうだが、1番の問題は国民不満の吐け口である。
今までは、政府への不平不満は全て反日政策、反日外交などで何とか国民の不満を日本へ向けさせる事が出来たのだが…今はその日本が存在しない。国民による政府への不平不満はもう爆発寸前であった。
「なぜ急激に景気が悪くなった⁉︎」
「なぜ失業者が増えてきたのだ⁉︎」
「それも全て日本が居なくなったからだ!」
「なぜ日本が居なくなった⁉︎」
「祈祷師達が日本滅亡の儀式をしたからだ‼︎」
「北朝鮮軍が南下を始めた!38度線に多数の大隊を展開している!大統領を始めとする官僚達は、避難勧告を出す前にソウルから逃げ出した!何故こうなった!」
「在韓米軍は何をしている⁉︎こんな時こそ同盟国の力を見せる時ではないのか⁉︎」
北朝鮮の大軍が38度線に続々と集結し始めていた。しかし、アメリカ政府は在韓米軍をインドネシア基地やグアム基地へ移動させる命令を下した。
それもそのはず、在韓米軍の実力は日本と在日米軍の支援を受ける事で始めて発揮されるからであって、その両方が消えたとなれば、もはやどうにもならず在韓米軍は撤退するしかないという意見が国防総省内で広がり、ついには決定された。
皮肉な話ではあるが、日本に対して常日頃から恨み、妬み、敵意を向け続けていた韓国は、日本が消えて無くなった事で初めて、日本が韓国にとって重要な国であることに気がついたのである。
反日によって国が成り立っていた国…それはつまり、日本が無くなれば国としての体が保てなくなる事を言う。そして、そう言った問題は韓国だけではなかった。
中国も日本が消えた事によって、国の指導部である共産党に対する国民20億人の不平不満を日本へ逸らすことができなくなったのである。
オマケに日本が消えた事による世界的大不況の大荒波が世界第2位の経済大国である中国も大打撃を受けてしまい、多くの失業者を出してしまった。その数は数億人にも及び、今も数が増えつつあった。
中国は全国レベルで大中小様々な暴動やデモが起きており、中国人民解放軍はそれらの鎮圧に各地へ引っ張りダコ状態で、死者の数も膨大だった。しかし、これらの暴動は共産党にとってはある意味チャンスでもあった、20億人にまで増えた自国民を『減らせる』事が出来るからである。だが…もはや内戦と言っても過言では無い程だった。
「日本と言う国が消えただけでこの始末……皮肉なものだ…世界中の人々は失って初めて、あの国がこの世界にとって無くてはならない存在だった事を実感したのだからな。『アジアのバランサー』?…とんでもない…日本は世界の秩序を守る為に欠かせない国の一つ…『世界のバランサー』だったのだ…」
日本が消えて数週間、アジア情勢が緊張に包まれた時、日本に変わって韓国が『アジアのバランサー』を掲げて立候補して来た。しかし…内容は悲惨なものだった。
インフラ整備、鉄道建設、経済資金援助、親睦を深める交流会、安全保障etc…日本であれば全て上々に上手くできた事であったが、その全てが大失敗に終わった。
資金の横領、インフラ整備・鉄道建設における費用の問題、現地人とのトラブル、手抜き工事による事故、交流会での歴史的認識における対立、安全保障面での頼り無さと不甲斐なさ…逆に東南アジア諸国との連携が難しくなってしまったのである。
無論、アメリカ政府も日本に代わって東南アジア諸国との連携強化を図るため何度もコンタクトを取ろうとしたが、殆どが門前払いを受けてしまった。宗教問題もあり、アメリカ政府も殆ど何も出来ない状態となったが、中国人民解放軍が動き出した事により、一時的ではあるが東南アジア諸国と軍事的連携をとる事で合意出来た。しかし、この連携が上手くいく保証はどこにも無かった。
中東諸国に至ってもそうだ。近年は日本がインフラ整備や経済援助、相互理解を深める為の文化交流によって、中東諸国でのテロ活動も少しずつ落ち着きを取り戻しつつあった。
しかし、日本が消えた事(現地で働いていた日本人が一人残らず消えた)により、その代わりとして国連が介入する事になったが、直ぐに現地人とのイザコザが所々で発生し、その事でカッとなった国連の警備隊が銃を発砲、現地の女の子が射殺されてしまった。これにより、世界各地で中東諸国によるテロ活動が爆発的に増え始め、欧州諸国は毎日が自爆テロ、銃乱射テロが多発している。
国連は資金不足で殆ど機能せず頼りに出来ない、欧州でもテロの対応で手一杯、かつての超大国アメリカでさえもこの荒れ狂う混沌の…世紀末の世界に一歩でも間違えたら滅びかけてもおかしくない状況に追い込まれてた。
「日本よ…どうすれば皆が手を取り合い、平和的に解決するのだ?……思い返せば我が国アメリカは…『武力』でしか解決した事がない……教えてくれ……どうすれば良いのだ?…どうすれば良かったのだ⁉︎」
ジョーンズ大統領の願いに応える者はそこには居なかった。そして、代わりに遠くのビルで大きな爆発と爆煙が答えた。




