第52話 捜索活動
今日は2話分投稿します。
ちょっと巌城が出てくる話はトラウマです…過去の失敗がありましたから…これも上手く書けてるか不安です。
次回からは少し間隔が開くと思いますので、よろしくお願いします。
ーーウンベカント 輸出入品用荷馬車の停泊場
運ばれてきた荷物を持って大きな倉庫へと運ぶ多くの人々やフォークリフトが行き交う。その中に、ドワーフ族のドンパがいた。
ドンパは一つ30㎏はあるであろう箱を5つ持って近くの倉庫へと運ぶ。
「よい……しょっと‼︎」
ドサッ!
「フゥ〜…えーっと、次はー」
「よう!頑張ってるね!」
「ん?おうよ!(なんだ、ニホン人か)」
彼が次の荷物を確認する為リストの紙を広げながら倉庫を後にしようとした時、後ろから声が聞こえた。振り返ると、頭に鉢巻を巻き、薄汚れた袖無しシャツを着た筋肉質の中年男性が荷物を整理していた。
彼の声かけに思わず答えるドンパ、再び荷物を取りに行くとその男性も付いて来た。
「次はー」
「次はあの荷物だべ?」
「おうよ。」
「お前さんここ長いの?」
「ん?いや、まだ一月半ってとこかな。」
「そうかい!そうかい!いやぁそれにしてもドワーフ族って本当に力持ちなんだなぁ〜俺ぁ感動したよ〜!」
「え?そ、そうかい。」
突然ではあるが褒められたことが嬉しいドンパは思わず顔がニヤけてしまう。その後も2人は他愛もないで盛り上がり、意気投合する。
「ブワッハッハッハッハッハッ‼︎‼︎お前おもしれェなぁ‼︎…本当にニホン人は変わり者っていうかなんというか…あ、いやぁ別にバカにしてるワケじゃあないだ。」
「ハハハハハッ!分かってるよ!…ところでちょーっとつかぬ事を聞きたいだけど……あんちゃん…ここ最近おかしな事って無かったか?」
「あぁ?何でそんな事聞くんだ?」
「俺ぁここに来てまだ日が浅いからよぁ…おもしれェ事に興味があるだ。…何でもいいからよぉ〜」
「う〜〜ん、おかしな事かぁ……あっ‼︎」
「オッ⁉︎なんかある?」
「そう言えば…昨日の夜……仕事帰りにおかしなのを見たなぁ…」
「どんなだった⁉︎」
「俺が仕事帰りに『かちょー大通り』の裏路地で、ボロボロのダークエルフを抱えながら移動してる奴を見かけたよ。アレは〜〜……確か…メイド服?だったかなぁ?…とにかくそんな服装をした奴が運んでた。」
「……ちなみにそれは『花鳥大通り』の何処?」
「ほらぁ…えっと……『KoKo壱番屋』と『魔鉱石加工店』の間の裏路地でだよ。」
「ん〜?『魔鉱石加工店』?」
「あり?知らねぇのかい?龍人族のドルビンって奴が経営してる店だよ。『KoKo壱番屋』は…分かるよな?お前さんトコの店なんだし。」
「……勿論…分かるさ…ありがとよい。」
「いいって事よ‼︎所でずっと気になってたんだがー」
ドンパが振り返って後ろで会話していた男性に声を変えようとしたが、既にそこには誰も居なかった。
「ん〜?おかしいな?何処に行った?……『あんたは誰だ』って聞こうとしたんだけど…。」
すると倉庫の前を主任の藤原が通って来た。
ドンパは藤原に声を掛ける。
「あ!フジワラ主任!さっきここに居た人いませんでしたか?ニホン人の方なんですが…」
ドンパの言葉に藤原は首を傾げる。
「ん?何を言うとるんだドンパ。この倉庫で働いてる日本人は俺以外誰も居ないぞ?」
「へ?」
その倉庫の物陰に隠れている1人の男性、彼は左耳珠に指を当ててまるで『誰かと会話してる様』に話しを始める。
「こちら『蝙蝠』…有力な情報を得た。繰り返す、有力な情報を得た。」
ーー中ノ鳥半島基地 監視モニター室
そこでは2人の黒スーツを着た男性が、モニターの前で作業をしている自衛官の後ろに立っていた。
「政府関係者の方が此方に来る事は、酒井陸将から話は聞いてました。例の留置所爆破事件で監視カメラの映像なのですが……」
自衛官がパネルを操作しながらその当時の留置所の監視カメラの映像をさがしていた。そしてー
「あった!此方です。」
「…では再生してみて頂いてもよろしいでしょうか?」
「えぇ勿論構いませんが……我々も何十回と見てもいまいちよく分からないのです。」
そう言いながら自衛官はその時録画されていた留置所檻の前でのカメラ映像を再生する。
「此方です…」
そう言って映し出された映像には檻の中にいた15人のダークエルフ達。それらを見て黒スーツの男の1人が呟く。
「……あの2人は…他の13人とは本当に無関係みたいですね。あの13人とは離れて2人固まって座ってる…明らかに他人だ。」
「えぇ…最初は仲間かと思ったのですが…どうやらタダの盗人みたいで…ですがこの後…」
映像ではその盗人2人の内の1人が、スッと立ち上がり13人の前まで移動した。そして、十数秒後に一瞬の閃光後に、画面は砂嵐となった。
「映し出されたのはコレだけです。他の監視カメラの映像も確認しましたが、彼等が映ったのはコレ一つのみ…映像も何度も見直しましたが、大したことはなにも…」
黒スーツの2人は少しした後、部屋を後にする。
「少しここを離れてもよろしいですかな?」
「え?えぇ構いませんが…」
「スミマセン、直ぐに戻ります。」
黒スーツの2人は監視モニター室から出た後、近くの物陰に少し隠れながら会話をする。
「……どうだ?今の映像を見て。」
「彼の言う通り、アレだけでは何ともって感じですね…」
「お前…『読唇術』出来ただろ?」
「確かに出来ますが、さっきの映像でも見たら分かるように、その自爆した男は監視カメラを背にして立ってましたし、他の13人も彼が前に被ってた所為で、殆ど読み取れませんでした。」
「『殆ど』ってことは、少しは読み取れたって事だな?」
「ま、まぁそうですが…『我々はまだ任務を遂行出来る』までは読めましたね。」
「流石だな…普通ならあんな短時間で読み取れねぇよ。……だが、その会話から察するにあのスパイ達も爆死野郎の事を自分達の仲間かその関係者だと思ってたみたいだな。」
「ですが…コレだけではどうにも……もう一度見ましょう。」
2人は再び監視モニター室へと入る。
「スミマセンが…もう一度ぉ…見せて頂いてもよろしいでしょうか?」
「は、ハイ、大丈夫ですよ。ですが…何度見ても同じだと思いますよ…」
自衛官は再び映像を再生する。すると、何かに気付いたのか、2人の黒スーツの内の1人が映像を止めるよう声を掛ける。
「ちょ!、ストップ!」
「え⁉︎」
自衛官は咄嗟に映像を止める…そこに映し出されていたのは、爆発する瞬間だった。
「あ、あのぉ…どうかしましー」
「ココ!…ココ拡大してみて。」
「は、はい。」
彼が指差した所をズームアップすると、1人のダークエルフの姿がアップされる。
「このぉ…ダークエルフが何か?…」
「ここ見てごらん…」
彼が指差す所は、そのダークエルフの首元だった。
「コイツの首元にある…アクセサリーみたいなの…なんか妙に光ってない?」
「え?ま、まぁ光ってると言えば光ってますが…コレは爆発の瞬間に出た閃光が彼の首元にあるアクセサリーに被っただけですよ。」
「……あの時見つかった魔鉱石のアクセサリーは12個…あいつらは13人……だとしたらあいつは…」
「…生き残こりって事ですか?」
「…可能性はあるな……すみませんこの男の画像部分だけをこのメモリに入れてくれませか?」
「えぇ構いませんよ…」
自衛官はメモリに先ほどのダークエルフの画像を入れ、それを男に渡す。
「はい、どうぞ。」
「良し、行くぞ!…あ、映像どうもありがとうございました‼︎」
こうして2人は監視モニター室から出て行ってしまった。一人ぽつんと残された自衛官は何がなんだか分からない様子でその場にただポカンとしていた。
ーー中ノ鳥半島基地 某所。
別班の隊長鈴木は、某部屋で1人デスクに座って先程手に入れた不審者情報の報告書を眺めていた。
(8番通りでの黒装束は……チッポケ盗人……小竹通りの住宅街では……タダの酔っ払い……)
既に何時間も報告書を眺めていたが、これといってピンとくるものは無く、まだ未調査の126件は今の所ハズレばかりだった。
「まぁ息抜きだと思って気楽にやればいい…」
鈴木がまだ目を通していない未調査の通報書類を見ていると、少し違和感を感じる報告書が目に入った。
『酒場〝ニシタニ〟でダークエルフ族の姉弟が突然働かせて欲しいとやって来た。2人はかなりボロボロの状態だった。』
「当たりか?短い息抜きだったな。」
早速、鈴木は街にいる部下達に連絡をしようとした時、街にいる部下の1人から連絡が来た。
ピーッピーッ
ピピッ
「月光……」
『月輪……。隊長、蝙蝠が有力な情報を得たとの報せがありました。』
「ほう。」
『花鳥大通りの裏路地にて怪我をしたダークエルフを運ぶメイドを見たと。』
「分かった。後は手筈通りだ。」
すると部屋のドアをノックする音が聞こえた。ドアが開かれると先ほどの黒スーツの2人が入ってくる鈴木は手で「少し待て」の合図を出す。
『了解しました』
鈴木は通信を切る。
「何か分かったか?」
「爆破事故の生き残りを見つけました。」
「それで…そいつは?」
2人は先ほどの自衛官から貰ったそのダークエルフの画像を鈴木に見せる。
「コイツです。恐らくですが、魔石のアクセサリーを使用して生き残ったものと思われます。ほら、ここの首元が…。」
「なるほど。可能性はある…コレを他の連中に送れ。」
「はい。」
読唇術って、凄い人は荒い映像でも読み取れるそうです。