第51話 テオドシウスの正体
先日のアンケートにご協力してくださった皆さん、ありがとうございます!
結果…『1』を番外編として作成していきたいと思います。
これからもよろしくお願いします!
ーーサヘナンティス帝国 王城 飛行船格納庫
何とか王城まで辿り着くことができたロラン達は、複数のメイド達の出迎えの元、そのまま皇帝の書斎室へと赴く。
「ろ、ロラン様⁉︎少しお部屋でお休みになられてからにした方がー」
「ゴメンよ!今は時間が無いんだ!とにかく皇帝陛下の所へ行かせてくれ、この時間帯ならまだ起きてる筈だ!」
メイド達が小走りで急ぐロランに必死について行っていた。
一方、リオルとモレッティは格納庫でロランと別れ、『ロズウェル』の整備チェックをしている。
すると、船体の4箇所に不自然なモノを見つけた。
「ん?何だこれ?…まるで何かが張り付いてたみたいだなぁ…外れた跡がある。それも…新しい。」
ーーサヘナンティス帝国 皇帝書斎室
コンコンッガチャッ!
「失礼します!ロラン・シェフトフです!たった今、ニホン国との会談から戻りました!」
ロランが少し焦り気味で、ドアを開けながら報告する。
前には、大きいデスクの上で書類作業をしていたマティアス・グラバート皇帝がいた。
マティアス皇帝は少しキョトンとした表情でロランを見ていた。
「およ?…随分心配したんだよ〜帰ってくるどころか連絡一つ寄越さないんだもん。」
「も、申し訳ありませんでした。途中色々とトラブルがありまして…」
ロランは苦笑いで何とか誤魔化し通した。するとー
「おやおや?随分と騒がしいと思ったら…ロラン殿ではありませんか。一体今まで何方に居たのですか?心配しましたよ。」
書斎室の奥から書類を持って現れた初老の男性。彼の名は、テオドシウス・レンツ。サヘナンティス帝国の参謀長官兼皇帝の側近である。
「て、テオドシウス殿ッ!…何故ここに?」
「ん?今日はいつもよりも中々書類整理が終わらなくてなぁ…このように手伝いっているということだ。お前こそ何故ここへ?」
(テオドシウス殿が居るとは予想外だったが…これはかえって都合が良い!)
「どうかなさいましたかな?ロラン殿?」
「い、いえ別に何も…。マティアス皇帝陛下!では、ご報告させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「構わん。むしろ早く聞かせてくれ!…テオドシウスは?」
「わたしの事はお気になさらず…」
「あれぇ?いつもだったら、大した事ない用事でも空気を読んで席を外すお前が残るってのはかなり珍しいなぁ。」
マティアス皇帝の発言にテオドシウスの指がビクッと動いた。しかし、彼は特に動揺する様な表情もなくそのまま書類をまとめる作業をしていた。
「まぁ今日は忙しいですから…構わずどうぞ…。」
テオドシウスは余り興味の無い素振りを見せていたがロランは、その僅かな動作を見逃さなかった。
「で、では報告します!此度の我が国とニホン国との緊急に近い極秘会談は…」
「……。」
「………。」
「…大成功に終わりました‼︎‼︎」
「ッ⁉︎」
バサバサッ!
ロランが結果報告をした時に、テオドシウスが持っていた書類の束が床に落ちてしまった。彼は、特に慌てる様子は無く自然と書類を拾っていたが、その手は微かに震えてたのが分かった。
「おぉ〜〜ッ‼︎そうだったかい‼︎いやぁやっぱりイキナリで訪問した方が相手にデカイ印象与えるでしょ⁉︎」
マティアス皇帝が嬉しそうに話していたが、その『イキナリの訪問』で殺されてもおかしく無い状況になったのは言うまでもないが、普通に掛け合っても恐らくマトモに相手にしてくれなかっただろうし、ニホン国の政務官と会うだけでもかなりの時間がかかる事になっていたかも知れない。
「(まぁ良くも悪くもニホン国に印象を与えたのは事実だなぁ…それよりも、テオドシウスは⁉︎)」
ロランが再びテオドシウスの方へ目を向けると、書類を持って何処かへと行ってしまった。
(ど、何処に行く気だ?)
「なぁなぁロランよ。ニホン国はいつウチに使節を送って来るんだ⁉︎国交を結ぶ為の話し合いを今すぐやりたいんだけどさぁ…そうだ!各大臣達にも急いで知らせないとなぁえーっと電話…電話っと…」
「正式な訪問の発表は、後日知らせるとの事でしたので…そう事を急ぐのは……」
「あ、そうなの?…なら仕方ないけどさぁ…でもなるべく早いほうがいいねぇ。今ハルディーク皇国で問題が起きてんだよ。その問題の結果次第で、世界の流れが変わるのかも知れないんだよ。」
「えっ⁉︎…ハルディーク皇国で問題って……な、何があったんですか?」
「ほらぁ………『クアドラード連邦国家』…知ってるでしょう?」
「えぇ勿論知ってます。確かマグネイド大陸の最東端に位置する連邦国家ですよね?」
「そうなのよぉ〜その『クアドラード連邦国家』がさぁ……やる気みたいなのよぉ〜。」
「はい?…や、『やる気』?」
「ハルディーク皇国に戦争ふっかけるつもりだよ…全く何考えてんだか…。」
「え⁉︎…ちょ、本当ですか⁉︎れ、列強国に戦争を仕掛けるなどー」
「ね?ビックリでしょう?オマケにその国とハルディーク皇国の間に存在するハルディーク皇国傘下の国々…その内の半分がクアドラード連邦国家と手を組んだって話だ。」
「…流石のハルディーク皇国も今回はヤバイと思いますよ。本来であればクアドラード連邦国家は、列強国だった『アルサレム王国』や『ペリュード連邦』の後釜になるべき国……『準列強国』なのですから。」
「だから言ったでしょ?『世界の流れが変わるかも』って。」
ーーサヘナンティス帝国 テオドシウスの部屋
机の上に置かれたスタンドに組み込まれた白熱電球に照らされる部屋。その部屋に置かれた多数の本棚、その中の一つの後ろに小さな空間があった。その空間には小さな机と椅子…そして、1つの通信機が置かれていた。
その通信機を使い、顔に手を押さえながら話しているテオドシウスがいた。
「話が違うじゃないか……サヘナンティス帝国とニホン国は敵対するはずじゃあなかったか?」
『そ、それについては……ハッキリ言って予想外だった…まさかニホン国があそこまで寛容な国だったとは…否、〝お人好し〟と言うべきか?…普通なら戦争が起きるレベルだったというのに…』
「最悪な状況だ……ニホン国とサヘナンティス帝国が手を取り合う…あの皇帝の思い通りに事が進みつつある。…お前が〝大丈夫、上手くいく〟と言ったから……私は信用していたのだぞ!全く、あの皇帝から『奇襲会談作戦』を聞き出すのにどれだけ苦労したことか…。」
『分かっている!それにテオドシウスよ…お前も『母国』に尽くしたいと思うなら、もっと自分から行動を起こせ‼︎』
「言われなくとも…そうするつもりだ……」
『…何をする気だ?……』
「……そんなに我が国とお友達になりたいと言うのでアレば…『歓迎』してあげましょう。」
『ほぅ…その〝歓迎〟とは何だ?』
「それはーーーーだ。」
『クッフフフフ、良いなぁ…。』
そんな会話を密かに物陰から聞いていたリオル…彼は、話の内容に戸惑うもあの男が『黒』である事に確信を得た。
「(警備の目を盗んで追跡したが、まさか本当にこんな事になるとはッ⁉︎…タナカの言ってた通りだった…それも…まさか『そんな事』をッ⁉︎…マズイ…この事をロラン殿と皇帝陛下へ知らせなければッ!)」
リオルは直ぐにその場を離れ、ロランとマティアス皇帝の元へと急ぐ。
人通りのない廊下を窓から照らされる月明かりにすら捕らわれない様な速さで駆け抜ける。
(それにしても…『母国』とは一体…まるでテオドシウス参謀長官が、『サヘナンティス人では無い』様な言い方だったな。)
リオルがこのように考えていたその時、目の前に何かが凄いスピードで此方に飛んでくるのが見えた。それらは飛んで来る一瞬、月明かりに照らされる事で、『ナイフ』だと分かった。
「ッ⁉︎」
リオルは飛んで来る数本のナイフを避けようとするが、その内の3本が彼の胸と腹部に刺さってしまい。
ドッ!…ドッドッ‼︎……
「ぬぁッ‼︎」
思わずその場に倒れる。血が止めどなく出て来る…すると暗い廊下の奥から誰かが現れた。その人物を見たリオルは驚愕する。
「お、お前はッ⁉︎」
その人物とは、テオドシウス・レンツだった。彼は黒い衣を纏った者たちを複数連れて現れた。
「フフッバレてないとでも思ったか?リオル……次からはちゃーんと周りの安全を確認してから聞き耳をたてることだな。」
「……貴方は何をッ⁉︎」
「私は……『この時』の為に私は…長い間我慢してきた。」
「こ、『この時』ッ⁉︎」
「『敵国』であるサヘナンティス帝国の為に尽くしてきた私の苦労は正に…実ろうとしているのだ!」
「ッ⁉︎…貴方は一体⁉︎」
「私は…根っからの『ハルディーク人』だ…」
「ッ⁉︎」
驚愕の事実を聞いたリオルは、何とか立ち上がり、全てをロランとマティアス皇帝へと伝える為その場を離れようとする。
「(本当の敵は…内部にー)」
ダァーンッ!
「ッ⁉︎」
突然の衝撃と痛みに襲われ、リオルは廊下の窓へ突っ込み、天空の王城から落ちてしまう。
ガシャァァーーンッ!
テオドシウスの手にはリボルバーに似た回転式拳銃が握られ、銃口からは煙が出ていた。
「…片付けろ」
彼の言葉に反応し、黒い衣を纏った者たちは一斉にあたりの片付けを始める。
テオドシウスはニヤニヤと回転式拳銃を眺めながらその場を後にする。
「ンフフフフ〜この『リボルバー』と呼ばれる回転式の拳銃…やっぱりこの国の科学技術は凄いなぁ〜……もう少しでこれら全てが、『我が国』の物に…ンフフフフ」
『リボルバー』ではなくて『レボルバー』にしてみました…呼び方までまるっきり同じではチョット異世界感が無いかなぁ〜と思ったからです。
まぁあまり大差はないのですが…




