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日出づる国、異世界に転移す  作者: ワイアード
第3章 ウンベカントの動乱編
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第50話 考察

前の50話とは内容が変わってます(当然ですが)


あまり捻り過ぎない程度でやっていきます。

ーー酒場〝ニシタニ〟



ガヤガヤと賑わっていた酒場も閉店時間が近づくにつれ、静かになって行く。



「ありがとうございましたーー!」



可愛いメイド達に見送られ上機嫌で帰る客人達、中には仲間に抱えられながらフラフラとした足取りで帰路につく者もいた。



「フゥ〜やっと終わったぁー。」


「お疲れ様です!カリーナさん!」


「お疲れさんラナちゃん!あなたまだここに来たばかりだから、慣れない事で一杯だろうけど、頑張ってね!」


「そうニャ!私達は先輩は後輩を助けるものニャ!」


「あ、ありがとうございます!」



せっせと帰り支度をするルナの所に、川口がやって来た。



「よっ!お疲れさん。」


「あっ!カワグチさん、お疲れ様です!」


「今日も頑張ってたねぇ…何か困ったことは無い?」


「い、いえ!大丈夫です。」


「そうかい…んじゃあ明日もよろしくネ!」


「は、ハイ!」



準備を終えたルナは急いで店を後にし、その姿を見つめる川口。



(うーん…やっぱりいい子だよなぁ。ラナちゃんもメト君も…あの時、西谷に言われて『通報』したのが…少し申し訳ない感じがするなぁ…)





ーーメイド達の寮 ルナとメトの部屋



少し大きめな広場の様な所の中央に建てられたコンビニ。それを中心に複数のプレハブ小屋が立ち並ぶ、整備された一帯。


此処では、酒場〝ニシタニ〟で働いている現地人の人達が生活している寮場である。



そのプレハブ小屋の1つにルナとメトが2人で1つの小屋を使用している。出来ることなら別々にしてあげたかったが、もう一つを用意するスペースが無い事と姉弟だからまず変な事にはならないだろうと言う事から2人で1つのプレハブ小屋を使用している。



ガチャッ



「戻ったわ。」


「お疲れ様です!ルナ戦士長!」


「えぇ、お疲れ様メト…あなた今日は散々だったわね。」


「ちょ、ちょっと…それはあまり…触れないで頂けませんか?」



あの出来事を思い出してか、メトの顔が真っ赤になり、トンガリ耳もヘタァと下がっている。その様子を見ていたルナはクスクスと笑っていた。



「さて…身体の調子はどう?ジウ。」



奥で治療を受け身体に包帯を巻いていたジウがゆっくりとベッドから起き上がってきた。



「る、ルナ様…えぇ大分良くなってきました…。」


「ま、まだ寝てて下さいジウさん!」


「あ、あぁ…すまんなメト、お前の寝床を取ってしまって…。」


「そ、そんな事…僕は……貴方が生きていて本当に…」



ウルウルと涙を浮かべるメトの頭をジウは優しく撫でる。



「感動の再会を堪能している所悪いんだけど…そろそろ本題に移りましょうか?……ジウ、あの時貴方は何を私に伝えたかったの?…他のみんなは?」



「はい……他の仲間は…皆死にました。」


「そう…『鉄の化物』たちに殺られたのね…。」


「違います。彼らは『鉄の化物』やニホン軍に殺されたのではありません。」


「えっ⁉︎…でもあの時はー」


「あの『鉄の化物』は我々の始末では無く、『生け捕り』が目的だったのです。実際、我々が捕まった後、特に何される訳でもなく彼らの基地へ運ばれ牢屋に入れられました。」



するとメトが床をドンッ!と殴り悔しそうな表情を見せる。



「チクショウッ!だったら大人しく捕まってれば、簡単に内部に潜り込めてたって訳ですか!」


「いや……そういう訳ではなかった。」


「え?」



ジウは少し呼吸を整えてから、ゆっくりと話し出す。



「俺たちは……『騙されていたッ‼︎』」



予想を180度裏切る答えに困惑する2人…しかし、ジウは構わず話を続ける。



「俺たちは捕まった後、1つの部屋に入れられた…俺を含めた13人…そしてあと2人がいた。」


「2人?」


「ニホン国の奴らが、取り逃がした2人だと勘違いして捕まった同族の小物盗賊だった。」


「私達だと勘違いして…」


「そうです…最初は…貴方達を上手くニホン国の追跡から逃すための時間稼ぎの積もりでした。私達は、どうやってニホン軍の目を盗んでここから抜け出し、貴方達と合流できるか考えていました。そして…事件はその時起きたのです。」


「何が…あったんですか?」


「その小物盗賊の内の1人が…近づいてきた途端…見た事の無い魔法を使って……大爆発を起こした…そして…みんな死んだ…俺は『身体硬質化』の上級魔法が入った魔石で何とか生き延びることが出来たが……」



ジウは俯きながら肩を震わせていた、ルナはそんなジウの背中を優しくさすって落ち着かせる。



「そうか……でも…お前だけでも良く…無事ていてくれたッ」


「……でも…そいつは何でそんなことを?」



少し落ち着きを取り戻したジウは、軽く深呼吸をした後再び口を開く。



「ハァー……そいつはこう言った、『悪いが下手に情報を流させるわけにはいかない…』っと…『任務は遂行出来ている』っと…」


「ど、どういう事だ?」


「更にあいつは…最後に、『ヴァルキニア語』で話していた…このことから察するに…」


「「ッ⁉︎」」



2人は再び驚愕した。今回の任務の雇い主であるヴァルキア大帝国が、何故この様な行動を取るのかサッパリ分からなかったからである。



「ヴァルキア大帝国ッ⁉︎……何故だ!…先日、我々と友好関係を築こうと言った彼の国が何故この様な事をッ⁉︎」


「……まだこれは予想でしかありませんが…恐らくその友好関係も…この任務も…全ては我が種族を根絶やしにする為の『嘘』であるかと…」


「『根絶やし』…だと⁉︎」


「ヴァルキア大帝国は……何を企んでー」



ジウは少し考えてから、何かを思い出したかのようにハッとする。



「そういえば……」


「ん?どうした?」


「えぇ…実は今回の任務が与えられる数日前に、他国へ潜入していた同胞からある情報が入ったのです。」


「何なんですかそれはっ⁉︎」


「それは…亜人族国家の外務官達が、ニホン国との会談に向けて出発の準備をしているとの情報です。…アルフヘイム神聖国はその国々との架け橋を担う仲介役の役割で出席するとか…あの時はまだ半信半疑で何か別の目的があるのではないかと思っていたのだが…」


「……まさかッ!」



ルナは何かに気付き咄嗟に大きな声を出す。

しかしメトは何がそういう事なのかサッパリだった。



「え?…一体どういう…」


「ヴァルキア大帝国の狙いは、『ニホン国と亜人族国家との友好関係を壊す事』にあるかもしれない…」


「なッ⁉︎だとしても何故我々をッ⁉︎」


「今ニホン国が数ある亜人族国家の中で唯一友好関係を結んでいる国が『アルフヘイム神聖国』だからだ…我らダークエルフは言わずもがな『アルフヘイム神聖国』の民。その国の隠密部隊が送り込まれれば、ニホン国は我が国に対し不信感を抱く…」



「な、なるほど…それに今回の亜人族国家の代表者達とニホン国との会談の仲介役が、我が国なんですよね?…それでは、ニホン国は他の亜人族国家に対しても大きな不信感を抱く事になっても可笑しくない…。」



「我らダークエルフ族とハイエルフ族との間に続く数千年の敵対感をヴァルキア大帝国にまんまと利用された…ウェンドゥイル聖王がニホン国に援軍を申請し、我が種族達を滅ぼそうとしていると言う情報は嘘だったのだ…。」



「ヴァルキア大帝国は…自国との関わりを知る我々を口封じする為に同胞達を……クソッ!」



メトが悔しそうに床をドンッと叩き、ジウも同じように下唇を噛みながら肩を震わせる。

しかしその中で1人、ルナは考え込んでいた。



「(……本当にヴァルキア大帝国なのだろうか?いや、しかし…)」







ーーヴァルキア大帝国 皇城



皇城の大廊下をノッシノッシと歩く大柄な軍服姿の男がいた。左胸元には多数のキラキラとした勲章を着けている。


男はとある部屋の前で立ち止まり、その部屋のドアを勢いよく開けて入って行った。



バタァーンッ!



「コンラーーードォーー‼︎‼︎貴様ァーー‼︎コレは一体どういう事だぁーーー‼︎‼︎」



「えっ‼︎ちょ、ちょ、うわぁッ⁉︎」



ガシャーーン!



突然ノックもせずに勢いよく開けられたドアと怒鳴り声に驚き、紅茶の入ったティーカップを床に落としてしまった細身の男性がいた。



「あっ⁉︎…あーあー…親戚から貰った高級ティーセットのカップが…」


「あぁ⁉︎それがどうした‼︎お前は貴婦人か⁉︎」



耳にキンキンと響く怒鳴り声に思わず顔を歪めてしまう。この男性はコンラード・ベルグラード。ヴァルキア大帝国の環境保護大臣である。



「はぁ…それで?ガドリン中将…何か御用ですか?」



部屋に怒鳴り込んで来たのは、アラン・ガドリン航空軍中将、ヴァルキア大帝国第7航空軍軍団長にして『ラヤール』航空艦隊の指揮官である。



「コレだコレ‼︎‼︎」



ガドリン中将がそう言って突きつけてきた紙切れにはこう書かれていた。



『第594回政義会議は8時間17分に及ぶ話し合いの末、第5〜12航空軍航空艦の《リヴェット(浮動器官原動機)》を精密に検査した後、使い回す事を決定‼︎ この決定に第5航空軍軍団長のレアンドロ・コロミナス中将は、〝納得がいかない、断固反対する。〟事をマスコミの前で表明しました。』



「あぁ〜昨日のアレでしたか。貴方も納得いかないと?」


「当たり前だ‼︎いつの世も航空戦はパイロットの腕もそうだが、リヴェットの性能も重要なのだぞ‼︎それをお前達は…本来であれば、『寿命期間』を過ぎたリヴェットは、新しいリヴェットに付け替える事が鉄則‼︎そうしなければ、いざという時に使い物にならなくなる‼︎例え、艦の性能が良くともリヴェットが老朽化してたら意味が無い‼︎」



ズンズンと詰め寄る様に抗議してくるガドリン中将にベルグラード大臣は壁際まで追い詰められてしまう。



「で、ですがねガドリン中将。そのリヴェットの核にして原材料である『オルフィクトン(巨大浮遊生物)』は希少中の希少ッ!これ以上乱獲をしては、航空軍の存続の危機になりますぞ‼︎」


「うぐっ⁉︎…うーん」



意外とアッサリ根負けしたガドリン中将。それもそのはず、ベルグラード大臣が言っていた事は最もだからだ。



このヴァルキア大帝国の軍用、公共用、職場用などに使われる航空機の全てが、約200年前に開発された『リヴェット』と呼ばれる原動機があるからである。



『リヴェット』とは『浮動器官原動機』という意味で、この大陸のみ生息している巨大浮遊生物『オルフィクトン』の『浮動器官』と呼ばれる特殊な臓器を利用した原動機…エンジンである。


この『浮動器官』の発見により、実用化は不可能と呼ばれた夢の動力機関『ラヴァー』を飛躍的に進歩させ、遂に実用化に成功させることが出来た。…それが『リヴェット』である。(『ラヴァー』は此方で言う『ジェットエンジン』のこと)



しかし、『リヴェット』には弱点がある…それは『寿命』が短い事である。『リヴェット』の寿命は約5〜6年ほどが良いところであり、モノによっては1年で使えなくなるという。



そして、最近の問題はそのリヴェットの原材料である『オルフィクトン』が、約120年前から始まった軍事力増強を目的とした乱獲により、急激に数を減らしている。


最初は、捕獲数の大幅な制限や『オルフィクトン』の繁殖計画を立ち上げて実行し、大きく数を増やす事に成功した…しかし、軍上層部と軍民党幹部がこの成果を見るや否や、さらなる乱獲を行ってきた。


これにより繁殖計画でも補えない状況になっただけで無く、人工繁殖させた『オルフィクトン』が原因不明の大量死をきっかけに、近年、深刻な『リヴェット』不足が続いていた。



「全く…環境保護大臣である私の身にもなって下さいよ……私だって、我が国の未来永劫の繁栄を願っているのです。」


「そうか……それにしてもどうしたものか…どうにかして『リヴェット』に変わる新しい原動機開発を急がねばな…」


「デルモンテ技術開発大臣は何と?…新型原動機開発計画からもう25年近く経ちますが…。」



ベルグラード大臣の質問にガドリン中将は大きく溜息を吐いた後に答える。



「ハァー……『浮動器官』に頼らない『ラヴァー』の開発を急がせているが……全く進歩が無いらしい。」


「もしこの事が他の列強国に知られたら…」


「その心配はいらんだろう、他の列強国は我が国の恐ろしさは十分に分かっているはずだ……チョット(結構深刻だが…)資源不足問題が起きたくらいでは、奴らは動かん。……『まだな』。」



「………例のニホン国は…どうなのですか?」


「それについては、今ダークエルフ達を向かわせて調べさせている。なぁに、30年前も期待以上の成果を見せてくれたのだ……何かとびっきりの『手土産』を持ってきてくれるだろう。俺としては、新型原動機開発の進歩に繋がる情報があれば最高なんだがなぁ!」


「ですが…流石にそれは難しいのではありませんか?…そもそも、ニホン国に我が国と同等の科学技術力があるかどうかもよく分かって無いのです…サヘナンティス帝国ぐらいの文明力が良いところじゃないでしょうか?」



「もしかしたら…ニホン国はとっくに『ラヴァー』を実用化レベルまで開発させた国かも知れぬぞ?」


「ハハッ!まさか。」


「意外とそんじゃそこらの書店に、ニホン国の軍事力関係の本が売ってあるかもなぁ。」


「ハハハハッ‼︎まさか。」






ーーウンベカント コンビニ『テンクス』



深夜のコンビニの雑誌コーナーで立ち読みをしている現地人2人がいた。その内の1人が持ってたのが、日本の自衛隊装備などについて書かれた雑誌である。


「なぁなぁ〜コレってニホン軍の武器ってこと?」



その1人が隣のやつに質問にしているが、彼はアダルト雑誌に夢中になっていた。



「そうなんじゃね?」


「俺たちの知ってるのと全然違くない?ってか鎧脆そうだし、剣無いし、鉄の杖?だけだし。」


「うーん?」


「この『とうじょうがたたもくてきぱわーどすーつ』ってなんだ?絵見てもゴチャゴチャしてよくわかんねぇよ。」


「うーん?」


「ねぇ話聞いてる?」


「うーん?」


「聞いてねぇのかよ…もう帰ろうぜ?」


「うーん?」






ーーハルディーク皇国 大皇城地下



暗く狭い空間……その奥にある唯一の部屋から淡い光が漏れ出していた。そして、そこから話し声が聞こえる。



「………ふむ、そうか…始末したか…無論奴等には気付かれてはいないだろうなぁ?」


『……………、………………。』


「そうか…そうか…ならば良い……これで奴等があの国がやったと思うだろう……して?ニホン国は?」


『…………。』


「まだ、何も声明を出してこんか……汚らわしい亜人族国家の国々は?」


『……。……………、……。』


「そうか…ならまだ到着まで時間はあるな……だが、今はまだ行動を起こすな。引き続き、待機していろ。」


『………。』


「なに?…もし生き残りがいたらだと?……その時は勿論……殺せ。」


『…。』



誰かとの通信を終えた男は、立ち上がりその部屋を後にする。



「クックック……順調順調。それにしてもあの男……『リヌート・テュメル』の次は、獣人族になるとは…なかなか根性あるじゃあないか。」





ーーとある海の上空



月明かり照らされる海の上を猛スピードで飛んでいく紺色の物体…『ロズウェル』である。


途中、エンジントラブルがあり帰国までに随分時間が掛かったが、何とか無事に飛んでいた。



「もうすぐ国に着きますよ‼︎」



今度は一回でリオルの声に気付いたロランが前を見ると、微かだがミリルース大陸が見えてきた。


すると彼のお腹がギュルギュルと鳴り出し、ロランはお腹を優しく摩る。



「ウゥ…お腹痛い……緊張して来た。」





チラリと次のSF兵器登場フラグが立ちました。


あと、ヴァルキア大帝国の


120年前うんたらかんたら


200年前なんとかかんとか


というくだりで「アレ?」と思う方もいたと思いますが、そこは『敢えて』詳しく説明は伏せておきました。


下手に詳しく書くとネタバレになってしまいますので…

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