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日出づる国、異世界に転移す  作者: ワイアード
第3章 ウンベカントの動乱編
53/161

第49話 酒場にて

お待たせしました。


話の内容は削除前と比べてだいぶ変わりました。


皆様のご期待に沿っているかどうかは分かりませんが、少しでも楽しめたら幸いです。

ーー数日後 中ノ鳥半島基地 とある格納庫



薄暗い格納庫の中央に椅子を置いて座り込んでいる別班隊長鈴木がいた。暫くすると、彼の四方八方から全身黒色装備の同じ別班達が集まっていた。



「締め括りと行くか…任務の内容は伝えた通りだ。『ウンベカントの街に潜入しスパイを見つける』狭い街じゃあないが…余裕だろ?」


「朝飯前ですね。ハッキリ言って12年3ヶ月と25日1時間54分前の任務の方がやり甲斐はありますけど。」


「歯舞諸島でGRUとやり合った時か?アレは面白かったが、ワガママ言うな。行ってこい。」



その一言と同時に隊員達は踵を返し、元来た暗闇の中へと消えて行った。続いて鈴木も立ち上がり、出口へと向かう。格納庫内電灯スイッチを押して電灯が消える。


残ったのは静寂と闇……足音すら聞こえない空間。


別班の狩りが始まる。




ーー酒場〝ニシタニ〟


数日前の警戒令がまるで嘘のように、店内は賑わっていた。



「ギャハハハッ!だっからオメェそれはー」


「おネェさーん!『ビール』お代わり!」


「ったく!ドワーフ族は頑固でよぉ〜ー」


「明日から仕事どうしよう……」



西谷達やメイドのスタッフ達も大忙しである。しかしその中に2名…見覚えのないスタッフがいた。酔っ払いの男性は、追加の注文を頼む時、その事に気付いた。



「よお!ダークエルフのネェちゃん!ビールお代わ……あれ?ネェちゃん新しく入った子?」


「はい!ル…『ラナ』と言います!」



ルナは敢えて偽名で答えた。この店のスタッフ達にもルナは自身のことを『ラナ』と答えていた。



「おぉー!そうかいそうかい!んでぇ〜そっちのお嬢ちゃんも新入りかい?」



男性客は少し離れた所で働いていたもう一人のメイドに声を掛けた。しかし、そのメイドは女性では無かった。



「ぼ、僕は…男…で……す。」


「イィ⁉︎お、男⁉︎」


男性客はまさかの男がメイド服を着ているとは思っておらずかなり驚いていた。それもそのはず、顔だけでも十分女の子と思われてもおかしくないのに、服装まで女装だともう完全に女にしか見えないからである。


すると、話を聞いていた他の客もメトのことを女だと思っていた為、まさかの事実に驚愕していた。



「はぁ〜男の子だったのか〜。」


「お、俺てっきり女の子だと…」


「やっばいなぁ〜ここまで女に見える男がいたのか〜」


「お、俺ェ声かけようかと思ったちゃったよ…」


「バカ!メイドに手を出すのはご法度だって店の前に書いてあっただろう!」



メトの周りにはいつの間にか大勢の客が興味深そうに集まっていた。そんな様子をキッチンで皿洗いをしている西谷と川口は見ていた。



「あ〜あぁ〜…やーっぱりこうなっちゃったか…。」


「なぁ西谷、なんでアレ着せちゃったの?」


「俺だって止めたさ…でも根津ちゃんがどーーーーしてもコレを着せて働いて欲しいって聞かないんだもの。」


「いや、幾ら何でもアレは可哀想だろ!根津はどこだ⁉︎…とっちめてやる!」


「根津ちゃんはあそこだ…。」



西谷が顎をくいっと向けた先には、店のカウンターの陰から鼻血を垂らして覗いていた根津がいた。



「はぁー…はぁー…た、堪らん……私の夢…ショタっ子エルフにメイド服……この夢が…まさか本当に実現するなんてッ!これ程までのぎ、ぎ、僥倖‼︎…受け止めきれなー」



「じゃあ◯ネェ‼︎」



興奮する根津の背中めがけて川口がドロップキックをお見舞いさせる。



ドガッ!


「ウベェッ‼︎」



根津はそのまま川口に店の奥へ引きずられながら運ばれる。西谷は恥ずかしくて動けないでいたメトを回収し、『執事』の格好に着替えさせる為、スタッフルームへ連れて行く。






ーー酒場〝ニシタニ〟 裏手



店の奥で川口が根津に説教、西谷とスタッフ数名はスタッフルームの衣装室でメトを着替えさせている内に店の裏手へと移動する。



「はぁ…思った以上に忙しいわネェ…これじゃあロクに任務を全うできない。」



取り敢えずルナは隠していた小さな羊皮紙を取り出し、日本について現在分かっている情報をまとめ始める。




ーー

・ニホン国は『鉄の人形兵』を有しており、その機動力・戦闘力は我が種族の精鋭達を瞬時に仕留める程…


・ニホン国の街『ウンベカント』では多種多様な種族が分け隔たりなく暮らしている。獣人族、エルフ族、ドワーフ族、少数だがスクナ族や龍人族もいる。どちらかといえば、亜人族の方が多い。


・ニホン人は他の国々と違い、亜人族だからと言って差別や迫害はしないようだ…全てを受け入れ、そして住む所と仕事を平等に与えている。


・ニホン国は国教を有していない。


・ニホン国の建築物はドワーフ族の一流職人が作ったかの様な建物ばかりである。

ーー




ルナは黙々と羊皮紙にメモを書き続ける。すると、近くの建物の陰から何かが近づいてくる気配を感じた。ルナは羊皮紙を隠し、腰に忍ばせておいた短剣に指をかけて、何時でも抜ける様にする。



「誰だ!っじゃなくて……ど、どちら様ですか?」


「怪しい者じゃない…だが、どうか食べ物を…分けてくれないか?…何でも…残飯でも構わない……ここ数日何も食べてないんだ…。」



ルナはここで違和感を感じる、何処かで聞いた事がある声だからだ。しかし、所々掠れた声をしていた為、ハッキリと分からない。


その人物はゆっくりと近づいてくる。そして、店裏手の電灯によりその正体がハッキリと分かる。



「お、お前はッ!…じ、ジウ⁉︎」


「そ、その声はッ⁉︎…ルナ戦士長…ですか⁉︎」



『鉄の化物』に殺られたとばかり思っていた部下の1人が生きていた事に嬉しく思ったが、その深い傷だらけの身体を見て驚愕する。



「ジウ⁉︎その…傷ッ⁉︎…そうか…あの『鉄の化物』にやられんだな…だが……良くぞ生きていてくれたッ!」


「戦士長こそ…その格好…いや、今はそれどころではありません…貴方様に……早く伝えなければならない…こと……が…」



ジウは壁をつたって必死に近づこうとするが、ダメージが限界を超えてしまい倒れてしまう。



「くぅッ……!」


「ジウッ!」


「す、スミマセン…」



ルナは辺りを見回した後、ジウを担ぎ上げる。



「(良し…今なら!)」


「る、ルナ戦士長⁉︎」


「大丈夫、助かるわ。私が今拠点(スタッフ達の寮)にしてる所へ連れて行く…少し離れているが、殆ど人目に付かない…」


「で、ですがー」


「今店の人達はお客さんの対応で忙しいし、ニシタニ達もまだ店の奥よ…」



ルナは自身の倍くらいの体格を持つジウを担ぎながら、人通りのない路地裏を進んでいく。




ーーウンベカント 輸出入品用荷馬車の停泊場



様々な国から船に乗せ、馬車に乗せて運ばれて来た輸入品を受け取り、日本からの輸出品を乗せる広々とした場所。


品々を補完する厳重で大きい保管所や通関業者施設では日々パソコンなどを使っての輸出入のチェックや算段、馬車・船積許可書の手続きに追われていた。



「えーっと…次はクドゥム藩王国からの小麦粉約1万tをG-3保管所へ運んで下さい!次にフラルカム王国への…ま、また大量のブランデーか…次はー」


「おーい次その荷物運んでくれぇ!」


「そーっとだぞ!ゆっくり運べ!割れ物注意だ。」


「よし!積み込んだぞ!出発してくれ!」



現地の人も大勢雇っている。この仕事は主に力仕事である為、ドワーフ族など力の強い種族に人気である。



「よいしょーッ‼︎フゥ〜…今日のノルマはコレで達成だな。…フジワラ主任!先に上がりますぜ!」


「おうよ‼︎お疲れさん‼︎」



ドワーフ族のドンパは、一通り仕事を片付けその場を後にする。そして、作業服から着替えた後、他の従業員に挨拶をしながら帰路につく。



「お疲れ‼︎ドンパさん。」


「また明日もよろしくお願いしますね!お疲れ様です。」


「おう‼︎お疲れさんでした‼︎」



ドンパは帰りながら仕事場を振り返って思う。



(『お疲れさま』…か。へへッ…俺が前に住んでた国ではそんな事言われたこと無かったなぁ…毎日毎日、ドワーフ族だからって毛嫌いされて…低賃金の重労働を課すのが当たり前だったからなぁ〜…初めてだぜ、仕事が『楽しい』って感じるのはよぉ。)



人通りの多い大通りを歩いといると、薄暗い路地裏にある自動販売機が目に入った。



「オッ!こんなトコにもあったんだな!…どれどれ。」



ドンパはトコトコと路地裏に入り、自動販売機の商品に目を通す。



「えーと…あった‼︎『缶コーヒー 親分』‼︎へへへッ!仕事帰りのこの一杯が格別なんだよなぁ〜」



ドンパはカバンの中にある財布を出して、そこから小銭を幾つか取り出す。選ぶのは勿論…『缶コーヒー 親分』。



チャリンチャリンッ!


ピッ……ガタンッ!



「へへッ…さてと…(カシュッ!)、ゴクッゴク…」



大好きな缶コーヒーをゴクゴクと飲むドンパ、そしてあっという間に飲み干してしまった。



「ブッハァーーーッ!美味い‼︎…ニホンはこんな便利な物を作っちまうんだからスゲーよなぁ〜、ドワーフ族でもこんな物は流石に作れんよ……ん?」



彼はふと路地裏の奥の方へ目を向けると、そこにはボロボロのダークエルフ族を誰かが運んでいる姿が見えた。



「何だ?」



興味本位でその後を付けて行くが、角を曲がった後すぐに見失ってしまう。



「あっれぇ〜?今確かに…コッチに…うーん?」



ドンパは辺りをキョロキョロと見渡すも、特に変わったものが見られなかった為、あまり深く考えずその場を後にする。



「さっき…ボロボロのダークエルフを運んでたヤツ……メイド服?…着てたような気が…う〜〜ん?」





ーー中ノ鳥半島基地 事務室



多くの資料やファイル、パソコンなどの機材が多数の机の上に並べられた事務室。


そこに女性自衛官と巌城副大臣がいた。



「え?…あの警戒令が出ていた時に来た不審人物の通報内容について…ですか?」


「はい…どうしてもその情報が欲しいのですが?よろしいでしょうか?」


「ちょ、ちょっとお待ち下さい。上官に確認を取ります。」



女性自衛官は机の上にある電話機で上官に連絡を取り始める。巌城はその場で立って待っていた。



「………はい……はい…了解しました!」



ガチャッ



「どうですか?」


「は、ハイ!了解は得ているとの事でした!申し訳ありません!直ぐに用意します!」


「いえいえ…お気になさらず」



巌城は顔に似合わない笑顔で答えるが、女性自衛官の若干怯えた表情に気付き、慌ててさりげなく顔をそらす。



(ま、こんな顔されちゃあな。)



「お、お待たせしました!」



女性自衛官は小走りで少し厚い資料の束を持って来た。



「此方が、あの日の通報内容をまとめた資料になります。」


「少し多いですなぁ…通報件数は?」


「は、ハイ!246件になります。」


「そうかぁ…」


「で、ですがその内の120件はもう調査済みです!その時の報告書も一緒に挟まってあります!」


「そうですか…いやぁどうもありがとうございました。」


「残りの126件は…まだ調査中ですが…?」


「それは…一度中止にさせてもけっこうです。どうも、ありがとうございます!」



巌城は満面の笑みでお礼を言うが、明らかに少し泣きそうな表情で怯える女性自衛官を見てギクリとなり、そそくさとその場を後にした。



「…まぁいい。さてと、たまには正攻法でやるのもいいかな?」



巌城はその場を後にする。

それに正直安堵のため息を吐く女性自衛官は、悪い人ではないのに、と勝手な自責の念に胸を痛めながら作業を開始する。



「今日もお疲れ様。ちょっとそこのトイレ借りますね。」



その時、部屋に入って来たのは巌城副大臣だった。

その口調はまるで今日初めて会ったかのような口振りに女性自衛官は頭を傾げる。



「え?なん…で?」


「え、なんでって……?よ、用を足したい…から。」

皆様のご意見のおかげで多少は話の内容が良くなったかなと思います!


本当にありがとうございます‼︎



今は5話分作成していますが、ゆっくりと見直してから投稿していきます。

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