第44話 狩る者と狩られる者
お正月は本当に忙しいです…
遅くなって申し訳ありませんm(_ _)m
また新しい『WALKAR』が出てきます。
また、ミリタリー知識は本当に余り無いので、「こんな命令出さねぇよ」と思われてしまうかも知れません。それでも構わないという方はどうぞ!
平原を駆け抜けるダークエルフ族の隠密部隊達、彼らは互いに距離を取ってバラバラの間隔でウンベカントの街へと向かう。
「あと1.5㎞ってところか…城壁も無い…見張りはいないと言ってもいいほど手薄…楽勝すぎる。」
彼は草陰から遠くのウンベカントを見つめながら呟く。そして、何時もの任務よりも楽勝に終わる事を予感し笑みを浮かべる。
「ちゃっちゃと終わらせー」
バチィ‼︎
何が弾けるような音がしたと同時に、彼の意識は彼が気付かないうちに遠くへと行ってしまった。
ーー
別の方では、2人一組で行動しているダークエルフ族がいた。1人は前方、もう1人は後方を警戒しながら進んでいく。
「ん?」
「おい、どうした?ジウ。」
「いや…デュマのいたところから何か光ったような…ドナ、お前は気付かなかったか?」
「いや、なーんも。ほらあと1㎞だ、さっさと行ー」
バチィ!
突然何かが弾ける音が聴こえた。それと同時にドナの会話が途切れた。
「ん?」
ジウとよばれるダークエルフ族の男性が音のした前方へ目を向けると、さっきまで前にいたドナの姿が無くなっていた。
「な、何だ…何処にー」
ドッ‼︎
突然近くの草むらから何かが飛び出してきた。そして、ジウの横から強い衝撃が襲い掛かり、少し離れた草むらの中へ押し飛ばされ倒されてしまう。
「こ、『こいつ』⁉︎なんー」
見たこと無い『鉄人』に地面に組み押さえ込まれる。身動きが出来ない中、何とか解こうと腰のナイフに手を伸ばすがー
バチィ‼︎
「ーッ⁉︎」
弾ける音とともに全身を駆け抜ける激痛と強い衝撃、ジウの意識は遠くへ消えて行った。
ーーウンベカント 正門
正門では複数の自衛隊員と現地警備隊が配備され、全員がウンベカントの外側に目を光らせ、警戒していた。
正門の監視センターではモニターに目を光らせながら無線を使いながら随時指示を出していた。
「B地点2-3-8にて『ASSASSIN・WALKER09』が目標04を捕捉…捕獲。」
「A地点5-8-3にて『A・W』が目標12を捕捉ー」
「H地点4-8-8にて目標捕獲」
「ーー目標捕獲」
「D地点にてー」
「ーー捕獲」
「ー目標捕獲」
正門詰所室から聞こえてくるのは目標を捕獲したと言う報告のみだった。モニターを見ると三角マークと丸マークが点滅しており、三角マークが丸マークに近づくと、丸マークはパッと消えて、次へと消えていく。
「数は15人…少数だが精鋭だな、動きに無駄が無い。」
「ですが…可哀想ですねぇ。まさか『A・W』に襲われるとは夢にも思わないでしょう…まぁ、このまま上手くいけば良いんですけどね…。」
ーー
『ASSASSIN・WALKER』
第4世代型の『WALKER』である。
特殊作戦を遂行させる為に開発されたモノで、スラッとしたフォルムと特殊機械型人工筋肉を取り入れた事により、通常の『WALKER』よりも柔軟かつ機動力が高いが重火器に対する耐久力はやや劣ってしまう。
重要施設の夜間警備などに利用させる事が多く、今回は『ウンベカント』の周囲に多数の『A・W』が配置されていた。
高さ…170㎝
重量…85kg
走行速度…65㎞
握力…52㎏
パワー…新型の充電式リチウムイオン電池
装備…組込み式6.5㎜機関銃、電気ショッカー、マチェット
ーー
身をかがめながら草原を駆け抜けるルナ戦士長。ウンベカントまでの距離が約800mを切ったところで、彼女の魔伝石に連絡が来た。
彼女は、近くの隠れることが出来る草むらにうつ伏せになり連絡にでる。
「私だ…」
『ルナ戦士長、マトです。少し気になることが…』
「どうした?」
『他の同胞達との連絡が急につかなくなりました。姿も見えません…』
「なに?」
『一応引き続き連絡を取ってみますが…ルナ戦士長、くれぐれもお気を付けー《バチィッ‼︎》ーーー』
「ん?…おいマト…マト!」
突然マトとの連絡が途絶えた事に、ルナは不安を覚える。
(まさか敵が⁉︎…いやあり得ない…街の方にはその様な動きは特にー)
するとまた別の同胞から魔伝が来た。
「ッ⁉︎わ、私だ。どうした?」
『る、ルナ戦士長!た、助けー《バチィ‼︎》』
「今の声は…リコか…」
するとまた別の魔伝石から連絡があった。戦士長以外の隊員の中では唯一の女性であるラサからである。
「ラサ!…ラサか⁉︎一体どうしー」
『戦士長ッ!……何か…『鉄の化物』がッ!…はっ⁉︎ー《ドガッ‼︎…バチィ‼︎》ーー』
(『鉄の化物』⁉︎…私の同胞達がそいつに⁉︎)
するとラサの魔伝石を通して、ラサとは違う別の何かの声が聞こえた。
『ー《目標捕獲……左前方に未確認人物確認…距離700m……500…400ーー》』
魔伝石の通信は途中で切れてしまった。だが、彼女の脳裏に『任務失敗』という言葉がよぎったがすぐ後方で『何か』が近づいて来るのに気付いた。
(来る……来る…来る⁉︎)
ルナは弓を構え何時でも撃てる準備をするが、同胞を瞬く間に仕留めた『鉄の化物』の事を考えると、手先が震えてしまう…こんなに怯えたのは、初めての任務以来だった。
しかし、草むらの向こうから現れたのは、同胞のメトであった。ルナの率いる隠密部隊の中では1番の新参者でまだ80歳と若く幼顔の青年であった。
そんな彼は身体中ボロボロの状態で現れた。
「ッ⁉︎…め、メト⁉︎…どうしたのだその怪我は?…まさか、『鉄の化物』にー」
「はぁ…はぁ…はぁ…今はとにかく逃げましょう!、ウンベカントへ!…『あいつら』が来ます!」
メトの指差す後方を見てみると、少し離れた所から何かが猛スピードで此方に向かって来るのが分かった。
言わずもがな『A・W』である。ルナたちの背後から約500m地点、3体の『A・W』達がそれぞれ別方向から走ってきた。
その姿は、まるで一流の陸上アスリートのスタートダッシュの様な姿だった。しかし、そのフォルムが独特で、顔が地面スレスレなほどの前傾姿勢、両腕を大きく振り、またその両腕の振りに比例するように脚の動きも速く、そして強力なキックバックで大地を蹴って向かって来る。
特殊合金と機械型人工筋肉が月夜に照らされ怪しく光る。そして、その身体部分は激しく動いているのに対し、頭部に光る小さな赤い目が目標を静かに見つめる。その姿はまさに『鉄の化物』。
「ッ⁉︎は、走れ‼︎」
2人は一斉にウンベカントへ向けて走り出した。得意の脚力と俊敏な動きで何とか撒こうとするが、『A・W』の方が圧倒的に速く、どんどん距離を縮められてしまう。さらにメトは怪我をしていた為に上手く走る事が出来なかった。
「おいメト‼︎走れ!走るんだ‼︎」
「す、スミマセン戦士長…先に行ってください…」
「…ッチィ!」
するとルナはメトを担ぎ上げた。
「ッ⁉︎る、ルナ戦士長⁉︎」
「同胞を見捨てられるか‼︎」
ルナはメトを担ぎながら走るが当然逃げ切れる事など出来るはずもなく、『A・W』との差がますます縮まっていく。
「くっ!このままじゃ…」
「ルナ戦士長…ダメです……俺を捨ててください…」
「諦めるなッ!」
ルナに担ぎ上げられる事で、背後から徐々に迫ってくる『A・W』達の姿が見える。すると1体の『A・W』が右腕を此方に突き出してきた。その右腕の先がバチバチと電気を帯びていた。
「ッ⁉︎る、ルナ戦士長!何か『撃ち出してきます』‼︎」
「ッ⁉︎」
メトは直感的に何かを撃ち出して来ると分かった。そして、ルナ戦士長はその言葉聞いて瞬時に右へ方向展開をした。
バチィ‼︎ーピュンッ‼︎
『A・W』の右腕から何かが目にも留まらぬ速さで飛び出し、それがルナの左腕を擦る。
右方向へ移動しなければ確実に当たっていた。
「なんだ⁉︎今の⁉︎」
しかし驚いている暇はない、『A・W』達はもうすぐそこまで来ていた。
(ここまでか……クソ…)
するとメトが突然、ルナから離れた。
ドサッと地面に落ちてしまったが、彼は首に掛けていた先端が少し尖った『魔鉱石のアクセサリー』を引きちぎり、手に握りしめる。
突然の出来事にルナは困惑したが、メトの行動を見て直ぐに理解する。
「ッ⁉︎ば、馬鹿者‼︎それはー」
メトはその『魔鉱石のアクセサリー』を地面に思い切り突き刺し、静かに何かを唱えた。
「大地よ…『穿て』‼︎」
すると突然『A・W』達の目の前に、『大きな棘のような形をした岩』が突き出て来た。
『ッ⁉︎』
ドスッ!
3体の内2体は、棘の岩に胴体部を貫かれてそのまま動かなくなる。残りの1体は下半身を抉られしまい、上半身のみとなってしまった。
しかし、ルナ戦士長は迫り来る『脅威』を止めた事よりもメトの事に気を向いていた。
「馬鹿者が‼︎そんなボロボロの傷で、上級魔法を使う奴がいるか⁉︎…死ぬぞ。」
「うぅ……でも…生きてます…よ?」
「〜〜〜〜ッ!……馬鹿者。」
しかしルナ達が安心したのもつかの間、上半身のみとなった『A・W』が這いずりながら此方へ向かってきたのだった。
『捕獲……捕獲…捕獲』
(まだ生きていたのか⁉︎いや…アレは生き物なのか⁉︎)
ルナはメトを再び担ぎ出し逃げようとするが、上半身だけとなっても『A・W』は十分に速かった。
少しずつではあるが距離が縮まる。するとルナは弓矢を構えて『A・W』へと狙いを定める。
「喰らえ…化け物め。」
ヒュンッ!…ガッ‼︎
放たれた矢が『A・W』に突き刺さる。すると『A・W』の動きが鈍くなり始めた。
彼女が放った矢は、偶然にも頭内部の高感度センサーシステムに僅かながら当たっていた。
「良し!」
この隙に2人は街へと向かう。
ーー正門管制室
「目標を追跡していた『A・W05 06 』が破壊されました。…残っていた『03』も高感度センサーに損傷をきたし追跡不可能となりました。」
「目標2名…ロストしました。」
「至急他の『A・W』にロスト地点へ向かう様命令を送れ。ウンベカント東口付近の自衛隊員は警戒を『厳』とせよ。」
ーーウンベカント東口付近
そこには『暗視装置』を付けた複数の自衛隊員達が、未確認人物2名が近づいている事を知らされ警戒に当たっていた。全員がウンベカントの外へと目を光らせる。
「……ッ⁉︎…11時の方向から何かが近づいて来ます…。」
全員が銃口を向け、『サーマル』にその姿がハッキリ見える位置まで来ると隊員の1人が声を上げる。
『そこで止まりなさー』
ボフッ‼︎
「「ッ⁉︎」」
突然、煙が現れその姿が一瞬にして見えなくなった。煙は思ったよりも大きく、それは離れていた場所に配置していた他の隊員にも見えるほどだった。
「な、何だこれは…うぅ!ゴッホ!ゴッホ、目に…染みる!」
「うわっ‼︎目に染みて…開けられない‼︎」
「さ、催涙ガスの類か⁉︎」
煙が鼻から入る事で、一気にツーンと沁みてくる。前方にいた自衛隊員達はかなり煙を吸ってしまい、大変な事になっていた。
先ほどの煙はルナが持っていた『煙幕玉』である。特殊な薬草と発火用魔鉱石を組み合わせて作られた護身用具の1つである。
「け、煙が晴れるぞ!気を付けろ!」
「さ、サーマル!」
何とか目が見える隊員達がサーマルを付け、警戒する。煙幕が晴れ、辺りがハッキリと見え始める。しかし、そこには誰もいなかった。そして、後から追跡に来た『A・W』が現れ、周囲を索敵するが捉える事は出来なかった。
「〜ッ!い、居ない…。」
「マズイ…街に進入された……至急本部へ連絡しろ!」
何か日本側が悪役っぽいですね。
挿絵も入れたいな〜と思いますが、その為の道具や方法がよく分からない…何より絵心が皆無である事を思い出し涙する今日この頃…。