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日出づる国、異世界に転移す  作者: ワイアード
第3章 ウンベカントの動乱編
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第42話 緊急会談!

多分…今年最後の投稿かと…。

ーーウンベカント



テスタニア帝国との開戦前と比べると多少規模が拡大していた。街の中央には広場が作られ、そこに中央掲示板が建てられた。


様々な求人情報やウンベカントに住まう人達への連絡事項などの紙が貼られていた。



『酒場〝ニシタニ〟よりメイド募集中!注:18歳未満は求人対象外とします。容姿によっては男性でも可。』



『〝ブルボ製鉄所〟‼︎ドワーフ族求む‼︎』



『〝エルフ薬草店〟求人募集中。薬草関係に詳しい方募集中です。』




様々な種族が国の許可を得て店を開くことも許されるようになり、ウンベカントは更に活気溢れる町となった。


時折、ウンベカントの富を狙った盗賊や海賊が現れるが、ロイメル王国の兵士達や海上保安隊によって街の平和は守られていた。



さらに日本国内の営業店も積極的にウンベカントへ集うようになり、現地人にとっては全ての店が魅力的であった。しかし、中でも高い人気を誇ったのが、あの『結果にコミットするトレーニングジム』である。



日本の雑誌に載っている細身の男女がそのトレーニングジムに通うことで、筋肉質な身体を手に入れるという内容を見た現地人達が次々と会員登録を申し出てきた。



「随分と賑やかになったなぁ〜土方。」


「そうですね親父。」



ウンベカントのパトロールをしていた近藤と土方は、今日も平和で賑やかなウンベカントの街並みを観ながら会話をしていた。




「そういえば…ここにいる人の殆どが亜人族らしいですよね?」


「ん?あぁそうだな。それがどうした?」


「自分は1度本土へ戻りましたから。また此処へ戻ってきたら、前の倍くらい亜人族が増えて…人間もいることはいるんですけど…。」


「まぁ…人間も移住に来ることは来るさ…ちゃーんと国のパスを受けてな…だか。」



この街に住む人々は大分増えたがその殆どは亜人族だった。7:3の割合くらいで亜人族が住んでいた。人族の移民希望者もいたにはいたがー



「はぁ!?何で亜人族なんかがこんなにいるんだよ?」


「ここは『楽園』って聞いたのに亜人族がいるんじゃあ居心地悪いわ。」


「せっかくトンド王国から出稼ぎに来たのに…亜人族だらけじゃあダメだな。」


「亜人族なんか追い出せよ⁉︎何で亜人族も住んでんだよ⁉︎お前らニホン人も人族だろ⁉︎」



ーっとこんな意見が多く、折角ニホン国からの許可を得た多くの商会は渋々引き返していった。



「差別意識は強いんですね…。」


「俺たちの元いた世界でもそうだろう?差別意識はそう簡単には消せない。それこそ、何百年と経っても変わりゃしないんだからよ…。『あの未遂事件』もそう言った意識から生まれたものだろ?」


「そうですね…ん?」


土方がふと病院の方へ目を向けると、病院の入り口から丁度入院していた患者が退院する所だった。


獣人族ウェアウルフの女性と人族の男性が医師と看護師達に頭を下げて病院を後にする。獣人族ウェアウルフの女性の腕には生後間もない赤ん坊が抱えられていた。



「どうやらオメデタみたいですね。」


「ははは、こりゃ昼間から縁起の良いのを見れたな!」



最近ではこの街の病院で子供を出産する現地人も増えてきた。


殆どが亜人族の妊婦である為、最初は病院の医師や看護師、助産師もどうすれば良いのか分からずにオドオドしていた。遂には獣医も呼ばれる始末。


今では特に焦ることは無いが、獣医を呼んだのは本当に黒歴史である。



「こりゃ今日もいい1日で終り……お?」



ウゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜‼︎



突然鳴り響くサイレン。街の人達は急いで建物の中へと避難し、自衛隊や『PパトロールWウォーカー』、現地の警備隊らが急いで持ち場へ移動する。



『緊急連絡 緊急連絡 ただいま、未確認飛行物体が急速に向かって来ている。各隊員は即座に持ち場につけ。第2航空小隊は早急に確認現場へと急行せよ。』



「また翼龍ですかね?」


「だといいがな…。」





ーー中ノ鳥半島から西(やや北西ぎみ)側約1500㎞地点



青い海の上空を時速400キロで飛ぶ1つの細長い物体があった。


ーー

サヘナンティス帝国 高速飛行船『ロズウェル』


肩翼単葉の複座(2人乗りまで)飛行船でプロペラ動力機は支柱で機体の上部に取り付けられた。


プロペラ動力機は流線型のナセルで覆われている。


全長:8.30m

全幅:9.75m

最大速度:450㎞/h


装備:7.85㎜機関銃を機首に2丁


サヘナンティス帝国が誇る最速の飛行船であるがまだまだ発展途上である為、操縦はかなり難しく、離着陸もパイロットの腕によって大破する事も少なくない。



因みにサヘナンティス帝国では『飛行物体機』全てを『飛行船』と呼んでいる。

ーー



「あと3分の1くらいの距離ですよー‼︎」


「はい⁉︎」


「あーとー‼︎3分の1くらいですよー‼︎」


「分かりました‼︎‼︎」



空を駆け抜ける音とプロペラ動力機の音で互いの会話が上手く聞き取れない。



「ハァー…本当に上手くいくのかな?もしニホンがオッカナイ国だったらどうしよう…。」



ロランは不安で仕方なかった。心の準備もロクに出来ないまま、半ば強引に連れてかれたのだから。ロランの表情は暗い…途轍もないプレッシャーが彼の心にのしかかる。



そんなロランの様子を遠くから気付かれない様に撮影していたもう一つの飛行物体、『八咫烏やたがらす』。



『…驚いたなぁ…この世界にもここまで文明が発達した国が存在したのか?』



八咫烏やたがらす』から送られた映像を見て驚愕するF-2の第2航空小隊たち。



『単葉機ですね…プロペラエンジン…2人乗り…機首には…機銃が2丁あります。』


『真っ直ぐ中ノ鳥半島へ向かってます。』


『『八咫烏やたがらす』を向かわせて中ノ鳥半島基地の滑走路へ誘導させろ。』


『了解。』




ロランは自身の不安を鎮めるために水平線の彼方を見ていた。



「綺麗だなぁー…ん?」



何かが近づいて来ることに気付いたロランはパイロットにその事を報せようと声を出そうとしたが、それはあっという間に距離を詰めて来た。



「わっ⁉︎な、何だ⁉︎」


「は、速い‼︎」



八咫烏やたがらすは、『ロズウェル』』と並列しながら飛行し、ロランたちに向けてスピーカーを使う。



『これより先は日本国領域である。早々に引き返しなさい。引き返さない場合は相応の措置を取ります。』



すると『ロズウェル』のパイロットは、懐からライトの様な物を取り出し、それをカシャカシャ音を出しながら、『八咫烏やたがらす』に向けて点滅させる。



『…深消灯によるモールス信号か…古いな。』


『ダメだな、解読出来ない。世界が違えば、当然か。でも、航空機を持ってる辺り列強国のどれかだろう。』


『敵意は感じませんし……どうしますか?』


『中ノ鳥半島基地まで誘導しろ。』


『了解』



こうしてロラン達は第2航空隊の誘導の元、中ノ鳥半島基地へ向かう事となった。



「あのニホン国の飛行機…どうやって飛んでいるのだ⁉︎プロペラの類は何一つ見られなかったぞ…!」


「機体のフォルムも…翼の形も…恐らく、いや間違いなく動力機も…我らの物とは明らかに違う…全くの別次元だ‼︎…それも彼らの方が圧倒的に高い…。」



ロランとパイロットは驚愕していた。ニホン国はそれなりに高い文明力を持った国だとは聞いていたが、予想を遥かに凌駕するほどの文明力に驚きを隠せないでいた。



「浮力までは不明だが…プロペラ動力機を使わずに飛行出来るなんて…ニホン国は…ヴァルキア大帝国と渡り合える程の『力』を…?」


「ろ、ロラン外交長官…俺吐きそうです…。」




ーー中ノ鳥半島航空基地 滑走路



滑走路には自衛隊員や『WALKARウォーカー』、30式戦車などが待機していた。それもそのはず、5大列強国の一角が突然武装付きの航空機に乗ってやって来たのだから。



そして、滑走路へと降り立つ『ロズウェル』は、かなりの勢いで上下に揺れながらギリギリ着陸出来た。



そして、『ロズウェル』のコクピットから現れた2人の男性。1人は明らかに操縦士の服装をしていたが、もう一人は操縦士とは程遠い…ボサボサの髪、傾いた眼鏡、縦縞のスーツ?の様な…学者の様な服装だった。



(あの…緑色のまだら模様の服装をしたのが、ニホン国の軍隊か?…あの手に持っているのは…形も色も自分達のとはだいぶ違うが…アレは間違いなく『銃』‼︎ニホン国は自国で銃を造る技術を持っている‼︎)



さらにロランは周りに目をやると、10式戦車を見てさらに驚愕する。



(え…えっ⁉︎嘘だろ⁉︎…ニホンは『戦車』も造れるのか⁉︎…)



「貴方はどこから来て何を目的に日本へ?」



1人の自衛官の指揮官がロラン達に問いかける。ロランはハッと我に帰ると、動揺しながら質問に答える。



「え…と…あの、えっと…わ、私はロラン・シェフトフと言います!さ、サヘナンティス帝国の…が、が、外交長官で…す。」


「…もう一人は?」


「わ、私はサヘナンティス帝国ガナーベル戦闘飛行隊のリオル・ペンジ二等飛行兵です‼︎ど、どうか撃たないで下さい‼︎」



自衛官は数人の部下とコソコソと話し合いをしていたが、他は相変わらず警戒を解かずロラン達を睨んでいた。


ロラン達は下手をすれば撃ち殺されても可笑しくない状況に冷や汗が止まらない。するとー



「今ちょうどこの基地にいる新堀外交官がおります。貴方を新堀外交官の所まで案内いたします。」


「あ、ありがとうございます!」


「その代わり…一切の銃刀類は預かりますが…宜しいですか?」


「は…はい! はい! はい‼︎大丈夫です‼︎」



ロラン達は護身用の拳銃を自衛官達に預け、中ノ鳥半島基地本部へと案内される。




ーー中ノ鳥半島基地 応接室



応接室のソファに緊張した面立ちで座るロラン外交長官とリオル二等飛行兵がいた。差し出された紅茶を手に取って飲もうとするも、手が震えて上手く口まで運べない。



「(な、何とか政務官との接触が出来そうだ…ここからだ…ここから…)」


「(俺は…ただの二等飛行兵だぞ…外交官でも何でもないのに…な、何で俺まで?…もしかして…『補佐官』か何かと勘違いされてる?…俺…ちゃんと自己紹介したよねぇ…?)」



ガチャッ



「どうもお待たせしました。日本国外交官の新堀にいぼり克己かつみと申します。遠路はるばる良く御出で下さいました。」



扉を開けて出てきたのは、自分達が想像したよりずっと爽やかな印象を受ける中年男性だった。


キッチリと整った黒いスーツ姿で現れたニイボリと呼ばれる彼を見て、ロランはハッと思った。



(ヤバい…こんなシワくちゃな格好じゃあ…)


「それが…サヘナンティス帝国の正装なのですか?」


「あ、いやぁこれはー」


「あ、言わなくても結構です。私達は様々な国の正装や礼儀を体験してきましたから、変に気を遣わなくても結構ですので。」


「は、はい…。」



ロランは訂正出来なかった。緊張と動揺で上手く説明出来そうにもなく、それにこれが正装ではなく私服だと言った暁には、「なんと無礼な国なんだ…」と思われるに違いない。



「それで…此度はどの様な用事で?」


「あ!はい!そのぉ…我がサヘナンティス帝国とニホン国との友好的関係を築くため、国交を結びたいと思い参りました‼︎突然と来訪と無礼なのは承知上です!今すぐでなくとも、その一端となれるような礎を、今回の会談で実現したく思います!」


「こ、国交…ですか。」



新堀の顔が少し難しくなる。

その顔を見たロランはドキッとする。

無理もないだろう。仕方がないとは言え武装した飛行機で突然の領空侵犯。相手のことをよく知りもせず、友好関係を結ぼうなど…何処にそんな国があるものか。


自国である。


ロランは半ば諦めた気持ちで、これからニホンが自国に対して行う抗議とその対処を考えながら胃を痛める。



「国と国との発展を願う……その為に、危険を顧みず…実に素晴らしい。ですが…国交を結びたいと言う貴国を信用する事は今現在のところ出来ません。日本は、このドム大陸以外の国で我が国と国交を結びたいと言ってきたのは、実は貴国で3カ国目なのです。」


(ま、まさかハルディーク皇国⁉︎いや、まだ時間は掛かるはず!…では、ヴァルキア大帝国⁉︎あの秘密主義の鎖国国家がもうここまで行動を!?)



思ったよりも抗議の声が無かったことにも驚いたが、それよりも気になったのが、既にニホンとコンタクトを取ってきた国が2カ国もいたと言う事実である。


ロランの頭の中に最悪のシナリオが浮かび上がる。

もしその通りならばマズイ事になる。



「ドム大陸から西へ570㎞地点の島国『ウルク王国』、南東へ400㎞地点の中陸国『フォン王国』…この国と一時的ではありましたが、ウンベカントを通じて国交を結ぶ為の準備をしていました。」


「そ、そうだったのですか…。(良かった…あの2ヶ国じゃなかったか…)」



ロランはハルディーク皇国とヴァルキア大帝国が、まだここまで動いていない事に安堵した。しかし、自国から兎も角、日本が他国との国交をそこまで拒む理由が何なのか疑問に思った。


確かにその2カ国は低文明国家ではあるが、日本ならそんな国を捩じ伏せるくらいは出来るはずだ。



「最初は我々も前向きに検討していましたが…その準備期間であることが分かったのです。両国から来た派遣隊がウンベカントの住民を拉致していたのです。幸い未遂に終わってましたが、国の使者という立場を利用しての部下を使った堂々とした犯行…後の調べで、両国の犯人は国からの指示で行動していた事が判明しました。」


「えっ⁉︎」


「どうやら…ここには多種多様な亜人族が多いようで…『高価な商品がウンベカントに沢山集まっている。国を挙げてその『商品』を売ればかなりの富を得られる、ニホン国には後から説明する…売上金を山分すると言えば必ず了承する筈だ』…との事でしたよ。」


「……。」



奴隷売買を生業とする国は多く存在する事はロランも知っていたが、この様な陰湿なやり方をすればどんな国でもその国と国交断絶したくなるのは同然だと思った。


そして、その様な国々の所為で、これから行う自分たちの提案をニホン国が承諾し難くなる事に苛立ちを覚える。



「無論、その両国との国交設立は白紙となり、一切の断交を一方的に突き付けました。まぁ、相手もかなり焦ってましたね…後から両国の使者が血相変えてやって来ましたよ。『その犯人達は奴隷にしても構わない。しかし、貴国との国交設立は続けたい』。冗談じゃない…門前払いさせましたよ。」



この時、ロランは決心した。

生半可なやり方ではニホン国はマトモに取り合わない…そう気付いたロランは、ならば包み隠さず話すこと決めた。



「…では我が国は包み隠さず言いましょう。」



突然ロラン外交長官は真剣な表情で新堀を見つめる。新堀はこの時のロランの目から何か強い意志を感じそれを受け止める。



「我が国がニホン国と国交を結びたいと願う理由は…『この世界の自滅を止める』為、貴国と国交…願わくば同盟を結びたい。」


「『この世界の自滅』…ですか?」



新堀は予想を超えたロランの発言に困惑する。5大列強国は世界の均衡を保つ為の存在みたいなものでは無いのかと思っていた。



「貴国も知っているかどうかは分かりませんが、今の5大列強国は嘗ての均衡を維持出来なくなっている状況です。下手すれば『世界大戦』が起きます。」



『世界大戦』という言葉を聞いて、新堀の眉がピクリと動く。その動作を見逃さなかったロランは更に言葉を続ける。



「『世界大戦』が起きれば、世界中で大勢の人々が戦火に飲まれ死んでしまいます。勝てば生き残れる、負ければ滅ぶ…だから5大列強国の国々は自国の味方…と言うよりは『手駒』を増やして他の列強国に対し牽制し合っているのです。まぁそれ自体は元々だったのですが、近年は特に緊張感が高まっているのです…。」


「…何故…その様な事態に?」


「…それは…5大列強国の一角であるヴァルキア大帝国で『新型の大量破壊兵器』が造られているとの情報が出てきたからなんです。確証はありませんが…前々からヴァルキア大帝国内で不審な動きがあったとの報告はありましたから…」


「大量破壊兵器…!」


「その事は、6年前の5大列強国会談でも上がりました。『このことについて何か弁明はありますか?』と聞いたところ『あなた方のご想像にお任せします。ですが、もし我が国に何かしらの措置を与えるというのなら…その時は容赦しません。』っと答えましたよ。」


「…ヴァルキア大帝国」


「…これ以降、年に1回開かれるはずだった5大列強国会談も今年まで1度も開かれる事はありませんでした。理由は様々ですが本当の理由は、ヴァルキア大帝国に対抗する準備をし、それどころではなかった…と言ったところです。」



すると新堀はここである疑問に気が付く。



「では何故今年は5大列強国会談を開いたのですか?」


「それなんですが、ヴァルキア大帝国からの提案だったんですよ。『そろそろ元に戻りましょう』…と。」


「なるほど…ヴァルキア大帝国は他の列強国が自国に対抗する為に『力』を蓄えようとしていた事に気付いたワケですね…そして、5大列強国会談再開を提案した理由は…他の列強国がいくら数を揃えても『勝てる』という確固たる自信があるからっと言った所ですかな?」


「ご、ご明察だと思います。」


「ではもう一つ…世界共通の敵がヴァルキア大帝国なら何故他の列強国同士がいがみ合っているのですか?普通なら協力して戦うのが筋だと思いますが?」



新堀は我ながら「なに言ってんだ…」と思った。

こんなの答えを聞くまでも無い…理由は明白だった。しかし、あくまで確認の為の質問である、コッチ側の価値観で物事を決めてはまたエライことになる。



「…みんな自国の事しか考えていないのです…例え互いに手を取って協力しようとしても、その内裏切られてしまい逆にその国に呑み込まれてしまうかも知れない。…その為、みんなが『敵』だと認識しているのです。今この時でさえ、各国は他国を牽制する為、どこの国を傘下に入れれば自国の利益にかなうかを考えている事でしょう。」


「…なるほど…それで貴方が我が国へ来た理由は、日本を貴国の傘下へ入れる為ですかな?」


「…いえ、違います。我々はニホン国に…『5大列強国の一角になって欲しいと思い』来た所存です。」



またまた予想を裏切る回答に新堀はギョッとするが、なんとか平然を装い話を続ける。



「…驚きましたねぇ、その様な目的で…しかし…万が一、我が国が5大列強国に入るとしてもその時点で5大列強国の意味を成さないのでは?」


「ご心配無く、元々は7大列強国でしたから。」


「…突然新参者が列強国に入っても他の列強国が認めないのでは?」


「その様な常識は『30年前』に無くなりましたよ。」


「…そもそも日本がその列強国に入ることで何の利益が?」


「まず、戦争を仕掛けられる事は無くなるでしょう。列強国に戦争を仕掛ける様な国はまず存在しないと言っても過言ではありません。無論、『列強国という名の傘』を目的に様々な国々がニホン国の傘下に入りたいと願って来るはずです。ご心配無く、以前の様な奴隷密売組織が絡む様な事は、貴国が列強国になればありません。そんな事をすれば、直ぐにでもその国は滅ぼされてしまうと恐れているからです。」


「我が国はその様な事はー」


「無論、分かってますが傘下国にとってはそう思うものなのです。つまり、列強国になれば、『他国との有利な関係が築ける』、『経済が発展する』、『国を戦争の脅威から自動的に守ってくれる』。最低でもこの位のメリットがあります。」



『戦争を仕掛けられなくなる』…実に魅力的な言葉であるが、この様な甘い言葉には何かしら大きいデメリットが存在する。



「なるほど…列強国に入ることでのメリットは分かりました。しかし、デメリットと貴国の狙いが分かりません。」


「デメリットは、常にその力を維持していかなければたちまち他の傘下国や列強国から狙われてしまうという事です。」


「……ウゥム…それで、貴国が日本を推薦する理由は?」


「ニホン国には、5大列強国を根本から造り直す為、協力して欲しいのです。」


「つまり…日本を列強国に入れて、その列強国内で起きている問題を鎮めて欲しいと?」


「早い話……そうなります…ね。」



新堀は少しでも戦争が起きる可能性があるならば、それを回避する必要性がある。…彼の提案もそれに当てはまる。



「ハァー…しかし、それこそ日本を戦争の危機に立たせるようなもの…到底承諾しかねます。」


「ですが…貴国は遅かれ早かれ列強国と戦争する運命にあるのですよ。」


「それは…どう言うことでしょうか?」


「他の列強国はニホン国の全てが『宝の山』に見えているのです。今殆どの列強国がニホン国を配下に置こうと企んでいます。」


「なんと…そんな事が…」


「信じられないのは分かります。以前の列強国ならこの様な事はしなかったでしょう…その位今の列強国達はマトモじゃあ無いんです。」



新堀は目頭を押さえながら溜息をつく。せっかくテスタニア帝国からの脅威が去ったと思ったら今度は、この世界最強の5大国が日本を狙ってる…それを回避する為にも『日本は列強国に入るしか無い』…かなり難しい…この世界情勢を考えると非常に…まるで戦国時代だ。



「ハァー…貴方の言いたい事は分かりました。ですが…この件は私一人で決められるモノではありません。1度内閣へこの事を知らせて、最終的な決定は後日伝えます。」


「は、ハイ!それで構いません。」


「それにしても…貴方は若いのにしっかりしていらっしゃいますなぁ。」


「えっ⁉︎いや…わたしも必死でしたから。」


「……あのぉ…単刀直入に聞きますが、その5大列強国の中で一番危険なのは…」


「『ヴァルキア大帝国』ですね…あと『ハルディーク皇国』も危険です。あの国は5大列強国の中では一番傘下国が多いですから、その傘下国を使って何かしらの行動を起こすはずです。」


「なるほど…肝に銘じておきます。」



こうして2人は互いに握手を交わした。お互い相手に対し感謝していた。命を懸けてまで自国に迫る危機知らせてくれた事に、普通なら取り合ってくれない事を真に受け止めてくれた事に、2人は感謝していた。



「ふぅー、では私達はこれでー」


「お、お待ち下さい!折角ここまで来たのですかは、少し『ウンベカント』の街を観光していかれては?案内いたしますので。」


「で、では!お言葉に甘えて!」



こうして2人は部屋を後にし、護衛を付けてのウンベカント観光を行うのだった。そして、応接室に残された1人のパイロットは、終始誰からも声をかけられることなくタダその場にポツンと1人座っていた。



「………お、俺は?」





ーー数時間後 アルフヘイム神聖国 北の海岸 午前2時



真っ暗な海岸、美しい星空、聞こえるのは波が海岸に打ちつく音のみ。


そんな場所に佇む複数の人影…『ダークエルフ』である。とんがった長い耳と美しい容姿は『ハイエルフ』と同じではあるが、肌の色は褐色で露出度の高い服装を男女ともにしていた。


そんな彼らの目の前には、また別の人影が服装見えていた。



「何の用で参った…我ら『ダークエルフ』と『貴国』の関係は30年前に終わったであろう?」



女性のダークエルフが、目の前の集団に問いかける。彼女は手をスッとあげると他のダークエルフは弓矢を構え相手に狙いを定める。どうやら彼女がリーダーの様だ。



「まぁまぁ…そう敵意を向けないでくださいよ…一応あなた方とは1度協力的関係を築いたではありませんか?」


「あの時は互いの利害が一致しただけだ…別に貴国が気に入ったからでは無い。調子に乗るなよ人間風情がッ‼︎」


「…まぁ落ち着いて…先ずは族長に合わせて欲しい…分かってるよ、武器は預ける。それにぃ…ほらっ手付金だ。」



彼はそう言うと懐にあった銃と金貨が沢山入った小袋を投げる。



それを受け取ったダークエルフのリーダーは舌打ちを打つ。



「チッ!…付いて来な。」




ーーダークエルフ族の集落 族長の家



ダークエルフ族の集落の中で一番大きい木の中を切り抜いて作られた家である。その中にいたのは杖を付いて歩くダークエルフ族の老人男性だった。



「…既にお前達とは手を切ってある筈だが?」


「族長さん…貴方もそう不快感を出さないで下さいよ…今日は折り入って聞いて欲しい事がありましてねぇ?」


「…お主達から話を聞く筋合いはー」


「ウェンドゥイル聖王はあなた方ダークエルフ族を根絶やしにする為に、ニホン国へ協力を求めに行きます。」


「ッ⁉︎」



族長を始め、その場にいたダークエルフ族全員が驚愕した。



「な、何を根拠にそんな…」


「我が国の偵察隊からの情報です…信じられないのであれば確認してみて下さい。早けれ明日にでもこの国を発って、ニホン国へ向かうはずですよ。」


「……」


「ダークエルフ族は…ハイエルフ族が次々と奴隷にされるのを見てみぬフリをしてきたじゃあないですか?ウェンドゥイル聖王が頭を下げてまで助けを…協力を求めたのに、貴方は断ったそうじゃないですか?そりゃ、ハイエルフ族とダークエルフ族が犬猿の仲である事は承知してますよ?ですが…それを承知した上で助けを求めに来たウェンドゥイル聖王に応じることなく、タダ傍観者の立場を取ってきたあなた方を…ウェンドゥイル聖王は許してくれるでしょうかな?」


「……。」


「ウェンドゥイル聖王は…あの時の屈辱を…決っして忘れはしないでしょうねぇ〜?だからこそ…あのテスタニア帝国を破ったニホン国へ…ご心配なく我々の要望を聞いて頂ければ…『助けてあげましょう』。」



男はニヤリと笑い掛ける。族長は目を閉じて考え込んだ。


部屋がザワつきに包まれる。すると、族長がスッと手を上げてそのザワつきを鎮め、口を開く。



「……要望を聞こう…ヴァルキア大帝国の使者よ。」


アルマスキートゥ(ありがとうございます)…族長殿。」

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― 新着の感想 ―
[一言] ライザップはねぇ 食事も自由に出来なくなるからやんない方がいいって聞いたんだよねぇ
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