第41話 皇帝と苦労人
本日2話目の投稿です。
3話分くらいいま作成していますが、区切りが良かったのでもう1話分投稿します。
ーー西の大陸『ミリルース』 サヘナンティス帝国 帝都インクヴァーラ
レンガや木造建築物が入り乱れるように建ち並ぶ街並み、上空から見ると蜘蛛の巣の様な形をした帝都だった。
帝都外にも中規模な街が所々に造られており、その街にも囲うような城壁が建てられていた。
さらに郊外へ行くとまるで大きなアリ地獄の様な形状の土地が多数存在し、その中では沿革を沿うように農作業がおこなわれている。
山脈地帯には重工業や採掘場、武器製造などが山脈と一体になっているかの如く建てられていた。
この国では、重工業などの国民の生活に何かしらの悪影響を与える可能性のある施設と国民の生活する場所は別々にしていた。
一見するとそう大して列強国と呼ばれるほどのモノはあまり見られず、普通にのどかで国民達も活気溢れる良い国に見える。
しかし、このサヘナンティス帝国が列強国と呼ばれる由縁は地上ではなく『上空』にある。上を見上げると初めて見る人は誰もが驚愕する。
この国の王城は『空に浮いている』。
勿論この地域が特別なワケでは無い。下から王城を見れば大体分かるのだが、王城の真下には巨大なプロペラが取り付けられており、それによって浮いていたのだ。また、王城の至る所にも浮かせる為のプロペラが多数つけられていた。王城は少しも傾くことなく、強風に揺れることなく、嵐や台風に負けることなくその場に浮き続けていた。
王城だけでは無かった。帝都上空には至る所に大小様々なプロペラを付けた飛行船が飛んでいた。
民間人を運ぶ飛行船、宅配物や郵便物を運ぶ為の飛行船、中には列車のように繋がった飛行船に近い容姿をした乗り物もあった。
サヘナンティス帝国が列強国になりえた理由はこの『飛行船技術』である。
ーー王城内 ロラン外交長官の執務室
もう…これでもかというくらいにまで机の上に乗せられた書類の山、山、山。
広い部屋には三層に分かれて置いてある大きな本棚は最初は多分綺麗に並べていただろうが、今ではデタラメに入れ過ぎてしまったが為にいつ崩れても可笑しくなく、高い所の本を取るために置いてあるハシゴをうまく利用してその本雪崩を防いでいた。
とにかく本だの書類だのが散らかっている書斎室、そこを利用しているロラン・シェフトフ外交長官である。
「くかーー……くかーー…」
彼は恐らく読んでいた最中であろう本を顔に乗せ、椅子にもたれ掛かりながら寝息をかいていた。
開いた窓から入ってくるよそ風、なびく少し黄ばんだカーテン、暖かい日差しがポカポカと部屋を優しく包む、彼が寝てしまうのも無理は無い。
ジリリリリッ‼︎ ジリリリリッ‼︎
突然鳴り出す電話に驚くロランは椅子から転げ落ちてしまう。
「えっ‼︎わっ!わっ!」
ドシャッ‼︎
そしてその衝撃によって山のように積まれた書類が一気に崩れてしまう。
バサバサバサバサバサーーーッ‼︎‼︎
「うぅ痛ってて…うわぁ…またやっちゃったよぉ。あっ!電話!えーっと何処だ…あった!」
ガチャッ
「ハイ‼︎ロランです!」
『やぁロランくん!マティアスだがー』
「…………えッ⁉︎チョッ!あのぉ‼︎……またですか⁉︎皇帝陛下‼︎」
『大丈夫だよ、個人内線だから。』
「ハァー…3日前に国防長官のトリオンにもそうやって電話かけてましたよねぇ?…」
『あぁ、今度一緒に飲まないかってね。』
「……(まぁ今に始まった事ではない無いし)それでぇ…何か御用でしょうか?」
『ニホン国について何だけど…今亜人族国家の国々がニホン国に向かうって情報があったねぇ?…多分だけどあと1週間ぐらいで着くそうだよ?…だからさ、その亜人族国家がニホン国に着く前にお前がニホン国へ行ってさぁ…国交結んでよ。』
「は、ハハ…随分難しい事を簡単に言いますねぇ。…まぁ亜人族国家が来た後にだと後々にニホン国に対する亜人族国家の印象は悪くなる可能性がありますし、早め早めの対応が必要と存じますね。」
『まぁ…問題はそれだけじゃあないだな。』
「え?」
「ハルディーク皇国が動き出した…彼の国の港に貴族専用の蒸気機関船が現れたらしい。狙いは間違いなくニホン国…あいつら先を越されたら色々と面倒になるかも知れない。」
「そ、そんな……ん?」
ロランは違和感を覚えた。さっきまで受話器の向こうあった声が、いきなりすぐ近くで聞こえたのだ。
「後ろだよー。」
「えっ…うわっ⁉︎ビックリしましたよ‼︎」
マティアス・グラバート皇帝、サヘナンティス帝国の皇帝である。いざという時は頼りになる男だが、少しマイペースで放浪癖があるのがたまにキズ。
「話続けるぞ?…だから高速飛行艇『ロズウェル』でニホン国へ向かって欲しい‼︎なぁにたかだか東へ4800㎞程度行けば良いだけの話だ。半日で着くぞ半日で!」
「えぇ〜〜……でいつ頃向かえば…」
「早い方が良い‼︎今日!今だ‼︎」
「エーーーーッ‼︎」
すると部屋へ複数のメイドが渡航に必要な道具が入ったバックを持ってきた。
「それじゃあ…よろしく‼︎」
「しょ…しょんなぁ…」
ロランは眼鏡と一緒にその場にへたり込む。
あの胃が痛くなる様な会談からもどってからまだ暫く経ってないうちにまた向かう事になった。それも、まだ未知の国である『ニホン国』へ。
こうしてロラン外交長官は高速飛行艇『ロズウェル』へ搭乗し、急遽ニホン国へ向けて飛び立つのだった。
サヘナンティス帝国が…唯一の救い?…かな〜?