第40話 日本を欲する列強国
〜弱さや恐れを見せた時、自由あるその国家は永遠に消し去られてしまうだろう〜
byドワイト D アイゼンハワー
この言葉結構好きです。(=゜ω゜)
今回は『ニホン国』が欲しくて欲しくて堪らない列強国の様子を書きました。
ーーバーク共和国 南東ウルカーナ群島地方
バーク共和国は南東に存在する国で、1つの主島を中心に複数の群島が所々に存在する国である。
この群島にはこの地方にしか存在しない『巨龍』と呼ばれる龍が存在する。
巨龍は文字通り一般的な龍と比べて圧倒的に大きい龍である。
全長は大きい者で約150m。
翼龍の様に火炎弾を撃ち出す事は出来ないが、その巨大さを武器に活躍している。
巨龍は大砲やカタパルトから放たれる岩石ではビクともしない強固な鱗に覆われている。
そしてバーク共和国はこの巨龍を使う事で炎龍と戦わせ、そして打ち負かした炎龍を軍下に入れる。
この国の群島は大小様々であるが、1つひとつがチョットした『城郭』の役割を果たしており、侵撃して来た敵船を四方八方から攻撃を加えることが可能。また、いろんな場所に戦列艦を隠す事も出来る。敵をうまく追い込んだ所で戦列艦や巨龍を投入して叩き潰す。
無論、遠征でも大活躍をする巨龍。巨龍の背中に大量の兵を搭乗させて、敵基地の真上からの砲撃や岩石投下、そして兵を敵陣地へ降下させる『龍兵降下』などに利用される。
結局のところ、バーク共和国は『巨龍』がいたからこそ5大列強国に入る事が出来たのだ。
ーーバーク共和国 首都バルタゴ
産業革命前のイギリスを思わせる町並みと東南アジアの気候・雰囲気を感じさせる環境がマッチした賑やかな首都である。
綺麗に整備された道路、木造建築物やレンガ
建造物が立ち並んでいる。
ーー首都バルタゴから北に約25㎞の龍軍基地島
つい先ほど、エステル外務卿の乗った龍車が着港したばかりだった。龍車からはエステル外務卿が降りてくる。
「お疲れ様でした、エステル外務卿!さぁどうぞ、馬車の中へ!主席がお待ちです!」
「おう!其方は大事ねぇみたいだな。」
エステルは馬車に乗って、国家主席府へと向かった。馬車の窓から周囲を見回すと、所々にフリントロック式マスケット銃の様な物を持ちながら列を成して走る兵士達を見かける。
「……またか?」
「ハァー…えぇ、我が国近辺の諸島の原住民達がちょくちょく商船を襲撃してくる為、商船の護衛が以前の3倍にもなりました。…連中は何処から手に入れたのか分かりませんが、銃を使って激しく抵抗してきますゆえ…油断できません。」
「と言っても前世代の火縄式の銃だろ?」
「銃である事変わりありません。」
「ハァー…一体どうやって手に入れたんだか…。知識も教養もない奴が近代兵器を持っても破壊にしか使わん。まぁ確かに原住民共を追い払って占領したのが俺たちなんだけどなぁ…こうなる事は何となく分かりきっていたってのに…あの『バカ』はッ!」
ーー国家主席府
巨大な丸みを帯びた建物があった。ドームとは少し違う形をしている。その入口手前には、金で出来た銅像が複数建っていた。
内部は思った程複雑で、入り組んだ通路を進むと広い部屋へとたどり着いた。
その部屋の中央には立派なデスクがあり、そこに1人の男性が椅子に座っていた。
「おぉ!戻られたかエステル外務卿!お前が呑気に空の旅を楽しんでいた時に我々は例の蛮族相手にドンパチしていたのだぞ⁉︎」
「これはこれは、申し訳ありませんタンクレート主席。」
彼はバーク共和国の国家主席、タンクレート・エスマルヒである。ポッコリ出たお腹とボーボーに生えた髭が特徴の彼は、かなり苛立っていた。
「全く!我がバーク共和国傘下の国々は、クソッタレ原住民共のゲリラ攻撃にヘトヘトだそうだぞ⁉︎全くもってだらしない‼︎だから言ってやったぞ、『我が国の求めに応じなければ、貴国を攻め滅ぼす』とな!そしたらどうだ?奴ら自国の守りは御構い無しにドンドン兵を寄越してくれたぞ‼︎ガーッハッハッハッハ‼︎」
「……それは良かったですねぇ。」
「『力』とはこう言う事だ……圧倒的軍事力!圧倒的財力!この2つさえあれば……世界を統べることが出来る。…そうだ!ニホン国強襲作戦の件ッ!いつ決行予定だ⁉︎」
「…ニホン国は強敵です、先ず国内で起きている問題をある程度鎮めてからでないとかなり難しいです。」
「ならば早くなんとかしろ!お主それでも元バーク共和国軍総参謀長官か⁉︎」
「(…はぁ…こんなデブが何でこの国の実権を握ってるんだ?ここは共和制だぞ?)」
元々バーク共和国の『国家主席』は、『国家主席』とは名ばかりの国のまとめ役・代表程度の存在でしかなかった。
しかし、国民投票の結果、次の国家主席は彼となった。しかし、運が悪かったのは、彼がこの国の財力の4割を占める鉱山の開発者だという事だった。
それ以降彼の財力に目が眩んだ有権者、国家官僚達は彼の言いなりとなり、独裁的政権が続いていた。無論、反体制派の組織も存在してたが、タンクレート主席は自身の配下の者を使い、あらゆる方法で徹底的に排除してきた。
共和制とは程遠い国と化してきている。
「ん?どうかしたか?」
「いえ…なにも。」
「とにかく!あの『蛮族』どもを何としてでも根絶やしー」
ズゥゥ……ンッ‼︎‼︎
突然の衝撃と地響きが起こり、部屋の棚に置いてある壷やら花瓶やらが大きく揺れる。
「オワッ!とっとッ⁉︎…な、何が起きた!」
全員で窓の方を見てみると、主島から少し離れた島から大量の煙が上がっていた。
「お、おい…あそこはッ⁉︎」
バターーンッ!
「し、失礼します‼︎一大事です!第3武器製造工場が原住民達が仕掛けた爆発物により壊滅的被害がッ‼︎」
「なっ⁉︎…急いで火を消せ‼︎」
「やってます!しかし火の勢いが強くてー」
「海水でもなんでも良い!早く消せ‼︎」
ーーバーク共和国 第3武器製造工場島
燃え盛る業火、爆破により大きく倒壊した工場の建物、所々では火に引火した火薬による中規模の爆発が起きていた。
周辺には損傷が激しく、熱により焼けただれた工場員の死体が至る所にあった。
そんな地獄の様な場所に複数人の男達が火縄式の銃を持って歩いていた。
頭には赤いバンダナと口を覆う布を付けてあたりを探っていた。すると、1人の生存者が地面を這っていた。かなりの重傷である。
「ウゥ……一体…何が…?」
男達は生存者のところへ行き、彼の目の前に立ちはだかった。
「ッ⁉︎何だ…お前たち⁉︎……まさかゲリラ⁉︎」
その内の一人が出来るだけ彼と同じ目線になるようにしゃがんだ。男は口を覆っていた布を取って口を開く。
「………故郷を…家族を…友を…仲間を奪った『罰』だ。」
男は再び立ち上がり、銃口を彼に向ける。
「よ…よせ!…頼むぅッ‼︎」
「死ね」
ダァーーーーンッ!
響き渡る銃声…これにより何が起きたのかハッキリと理解する事が出来たタンクレート主席。彼は顔面蒼白になりながらも部下に命令を下す。
「よくもやりおったなぁ〜…原住民共は皆殺しだ‼︎『巨龍』を使え!もう遠慮する事はない‼︎」
慌ただしくなる主席府、エステルはその様子を見ながら静かに思う。
(……こんなんでどうやって他の列強国と渡り合うつもりだよ⁉︎)
第3武器製造工場島が見える他の島の高台からは多くの野次馬が心配そうな表情で眺めていた。その中に1人、僅かに笑窪を上げてニヤついている男がいた。
「(上手くいってるなぁ……フフフフ…その調子だ…もっとかき乱せ!我がハルディーク皇国の為にッ‼︎)」
ーー西方大陸『ゴタ』 レイス王国
この国に『四季』は存在しない。1年を通して『春』のみが続く。
常にポカポカと暖かい気候、青々とした草原と森、舞い散る花びら、どこを見てものどかな雰囲気があふれる国だった。
建物も基本的に木造建築で、煉瓦造りの建物は軍の詰所が市役所程度だった。
まさに自然と調和した国。
ーーレイス王国 王都テラサス
湖…途轍もなく巨大な湖。その上にレイス王国の王都があった。
辺り一面真っ白な石造りの建物ばかりが立ち並んでいた。民家は勿論のこと、商店、集会所、教会、兵舎、見張り塔etc…全てが真っ白だった。
その光景はギリシャのサントリーニ島を思わせるが、スケールの差が余りにも高い。広大な王都全てが『白』、そして太陽の光に照らされる美しい湖『ゼーゲ海』の『青』がより一層美しくさせる。
遥か昔、この『ゼーゲ海』と呼ばれる湖には1つの巨大な白い岩石があった。それは湖底から突出した物なのか、或いは何処からか此処まで移動してきた物なのかは不明だったが、当時の人々はその白い岩石を削る事で1つの都市を作ったのだった。
つまりこの王都の白い建物全てが、元は1つの巨大な岩石だったということである。
そんな王都テラサスの上空を飛ぶグリフォンがいた。そのグリフォンの背中には1つの翼車が乗せられていた。
「ん?おいおいアレって…リオネロ外務局長のグリフォンじゃあ?」
「本当だ…てことは会談は終わったんだな。」
「今回の会談で、レイス王国はどうなるんだなぁ。」
「バーカ!世界一美しく強い国『レイス王国』の脅威になる様な事はねぇよ。」
「それもそうだなぁ。」
ーーレイス王国 鷹軍基地『ナイガ』
多数のグリフォン達が飛び交う鷹軍基地に向かってやって来る他のグリフォンよりも一際大きいグリフォン。
『ー全鷹軍は周囲の警戒の厳となせ!もうすぐリオネロ外務局長が到着される!ー』
ゆっくりと滑走場へ降りる『グリフォン・チーフ』、その背中にある鷹車の入り口に向かって整列する兵士たち。
「お疲れ様です‼︎リオネロ外務局長!」
「フフ…やっぱり母国はいいわぁ〜。」
「リオネロ様、お疲れのところ申し訳ありませんが、クレメンティナ女王様がお呼びです。」
「分かったわ…で?今どこに?」
「えぇ〜っと…大浴場です。」
「…………上がるまで待つわ。」
「『今すぐ』報告を求めています。」
「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜…………」
リオネロは深く長い溜息を吐いた後、渋々王城内の大浴場へと向かって行った。
ーーレイス王国 王城内 王族専用大浴場
大量の湯気に大理石で出来た巨大な浴場、お湯が出て来るところにはグリフォンの装飾、湯の上には大量の花びらが漂う。
所々には湯浴みの女性世話係が水瓶を持って立っていた。
そこへ不機嫌な顔つきでリオネロ外務局長がやって来た。
「なーんで今なのよぉ?湯浴みが終わってからではダメなのぉ?嫌がらせ?ねぇ嫌がらせなの?」
リオネロが不満タラタラな口調で話す方向には、1人の女性が湯船から立ち上がる。
「随分と……生意気な口を利くのねぇ…それがこの国の女王に対する態度かしらぁ?」
「裸の女王様なんて何処にも居ないわよ…義姉さん。」
長く伸びた金髪をなびかせ、能満な胸とスレンダーな身体つきをした高身長の女性がいた。
彼女の名は『クレメンティナ・フリュクレフ』。レイス王国の女王である。そして、リオネロ・ネリスとは異母姉妹である。
「裸の女王?…ここに居るじゃない?さぁ早く報告して頂戴。」
クレメンティナ女王はこれ見よがしに自慢の胸を見せつける。リオネロは眉間をピクピクと動かして苛立ちを露わにし、レメンティナ女王はドヤ顔で見下す。
「………やっぱり嫌がらせじゃないの。」
「あらぁ?何のことかしら?…あ〜そういう事ねぇ…。自分の胸を『悲劇』みたいに捉える必要ないよぉ。」
「………もう帰ってもいい?」
「全く…冗談の通じない義妹ね。早く報告しなさいな。」
ーー10分後
「…成る程ねぇ……取り敢えずハルディーク皇国の『狙い』がハッキリした事は良しとするわ。今回の会談ではあの『新興国』が議題に上ることは何と無く分かってたから…。」
「…『新興国の対応に関する議題が上がったら、その国を攻め込む様な素振りを見せてハルディーク皇国の出方を探れ』…取り合えず命令通りにしたけど、傘下の国々が寄越した報告書も見たでしょ?…ニホン国は『高い文明を持つ国』よ、多分だけど他の高度文明国家じゃあ太刀打ち出来ない程にね。」
「…つまりあなたはニホン国を傘下に入れるつもりなのねぇ?」
「当たり前でしょ⁉︎…まぁ確かに一筋縄ではいかないでしょうけど、上手く傘下に入れれば間違いなくハルディーク皇国やサヘナンティス帝国にも互角に渡り合えるわ。」
「ハァー…『胸』だけじゃ無くて、考え方も子供ねぇ…そんなんじゃあ外務局長の地位を降ろすわよ?」
「な、何でよ⁉︎」
「そんなことをすればハルディーク皇国の思う壺よ?…ニホン国と戦って…まぁ敗ける事はないでしょうけど間違いなく大打撃を受けるわ。そして、その隙をついてハルディーク皇国が仕掛けてくる。…もしかして気付かなかったの?」
「ウッ⁉︎」
「何のために貴女に命令出したと思ってるのよォ?きっと、ニホン国というの名の『財宝』に目が眩んで、当初の目的を忘れちゃったのねぇ。」
「……言われてみれば確かに…も、申し訳ありません…。」
「まぁ良いわ…そんな所が貴女の可愛いところだし♡」
「……じゃあどうするの?」
「…多分先に動き出すのは…間違いなく『ハルディーク皇国』よ。でも直接ではない…自国の傘下国を使ってネチっこくていやらしい戦略で動き出すはず…」
「バーク共和国は?あの『ヒゲデブ』は力で物を言うヤツだから、何かしら動き出すと思うけど…。」
「あの国は今、他国に関わるほど余裕じゃあ無いわ…『ゲリラ』の対応で忙しから。」
「あぁ〜そういう事ね。フンッ!いい気味よ、四方八方に戦争ふっかけたツケね!」
「だからぁ、バーク共和国が出てくる心配は無いわぁ。」
「…じゃあ私達は何もしないで待つの?」
「ウフフ…まさかぁ?」
クレメンティナ女王はさっきまでのふざけた態度から、国を率いる『女王』の目へと変わり指示を出す。
「将軍達に連絡して、何時でも出撃出来る用意を‼︎『闘龍騎士団』と『鷹翼騎士団』にもよ!」
「え?…あ、ハイ‼︎」
リオネロは急いで大浴場を後にする。その様子を見送ったクレメンティナ女王は舌舐めずりをしながら企み顏で呟く。
「ハルディーク皇国…ニホン国…どっちが敗けても…美味しそうねぇ。」
ーー北東の大陸『マグネイド』
この大陸はハッキリ言って『汚染』されていた。自然の摂理でそうなったのではない……『人為的』によりこうなったのだ。
その国は発達した機械化文明により綿工業、武器製造、重工業で大きく発展する事が出来た。しかし、その代わりに失った美しい自然環境。
大規模な鉱山地帯の採掘、森林伐採、石炭の燃焼エネルギーを利用した蒸気機関による大気汚染…長い年月によりようやく自国の環境問題に気付くことが出来たその国は、今その環境改善に向け取り組んでいる。しかし、自国の経済発展を優先している官僚達による猛反対により、その進歩は全くと言っていいほど無かった。
緑豊かな場所など国境ギリギリの場所まで移動しないと見られない。マトモに飲める水や安全に食べる事が出来る食糧もほんの僅かしかない為、食糧の9割を傘下の国からの輸入に頼っていた。
昔は、傘下の国がその弱味を握ってハルディーク皇国に対し強気で出た国も存在していた。しかし、そういった国に対しハルディーク皇国は圧倒的軍事力により攻め滅ぼしてしまった。これ以降、ハルディーク皇国に逆らう様な国は一つとして存在しなかった。
ーーハルディーク皇国 皇都ハル=ハンディア
赤レンガ造りの建物が建ち並ぶ街並み。所々にある巨大な工場が見え、そこから伸びる煙突からは真っ黒い煙がモクモクと出ていた。ヨーロッパの産業革命時代の街並みを思わせる。
皇都の中を走る蒸気機関車の荷台には大量の石炭がつぎ込まれており、そのまま工場へと入っていく。
皇都の通りには多くの商店が存在し、多くの人で賑わっていた。しかし、違和感を感じる。それもそのはず、皇都に住む人々全員がマスクの様な物を口元に当てていたからである。老若男女問わず、赤ん坊もマスクをつけていた。普通の布マスクではない、口元のみを覆うガスマスクの様な物だった。
大気汚染はかなり深刻だったが、衛生面でも大きな問題を抱えていた。通りに大量のし尿や生ゴミを捨てるのは勿論、時には人通りの少ない場所にペットや家畜の死体を遺棄するの珍しくなかった。
また、急速な経済発展による皇都拡大・増築で下水道設備が間に合わなくなってしまったがために、簡略的にすませるよう皇都の真ん中を横切るように流れる大きな川に、生活水そのまま流していた。
それにより川からは悪臭が漂い、そんな川の水を風呂や洗濯にも使用している為、衛生面はさらに悪化、ペストや伝染病が広く蔓延した。
流石に飲料水として利用してはいないが、この国の水は酒よりも貴重で、多少お金に余裕のある家庭しか買うことが出来なかった。しかし、あの川の水は飲めないため、貧困層の国民達は雨水を大きな瓶に貯めてそれを飲料水として利用していたが、ひどく淀んだ大気から降る雨水は無論身体に問題無いわけはなく、体調不良を訴えて病院へ入院する人は増える一方である。
産業革命時代の良いところと悪い所を最大限に引き出した様な国が『ハルディーク皇国』である。
そんな皇都の上空を飛ぶ龍車を引いた『真龍』、その龍車の窓から皇都を見下ろすネイハム外務局長とシリウス副局長。
「ふんッ……全く汚らしい国になったものだな我が国は!」
「それもこれも全て、ハルディーク皇国の政府に蔓延る老害達の仕業…いっそのこと、国をどこか新しい場所へ移動しますか?」
シリウスの提案にネイハムは呆れ口調で答える。
「簡単に言ってくれるなぁ…そうしたくても丁度良い場所がまだ見つからんのだ。豊富な資源が眠っている場所でなければならぬのだが、生憎まだそんな土地は見つかっていない。そもそも、地下資源調査をするにしても早くて1年半も掛かる。」
「……傘下国の地下資源はどうでしょうか?」
「いや、ダメだ。低文明の弱小国家ゆえ大した地下資源や鉱山も無い。それに無理に『民族浄化』をするわけにもいかぬ、今は手駒は多い方が良い。」
「次に狙うとするなら……やはり『バーク共和国』ですか?」
「あぁ…望み薄だが、そこそこの資源が眠っているとのことだそうだ。だが、相手は5大列強国の一角…簡単ではない…ヘタをすれば我が国に大きな損害をもたらす。」
しかしシリウスは鼻で笑った後に口を開く。
「フッ……『まともに戦えば』…でしょ?」
シリウスの言葉にネイハムはニヤリと笑う。
「あぁ…そうだ…だからあの国近辺の原住民共に旧式の武器を密売した。」
「…そして、バーク共和国がゲリラとの戦いで疲弊しきった所を一気にッ!」
ネイハムは両手を使って動物が捕食する時の動きを見せる。
「ふふふふふ…我が国の皇王陛下は…既に来たるべき日の為の『国家大移動計画』の準備を始めておる。」
「流石はヴァルゴ・ガピオラ皇王陛下…仕事が早い。……そうでした、実はもう一つその移転先候補の国がありました。」
「フッ…分かっておる…『ニホン国』だろ?…バーク共和国の次はニホン国だ。ニホン国にはそうだなぁ……先ずは使節を送ろう…」
「ん?レイス王国とバーク共和国が攻め込む事を知らせるのですか?流石にまだ決定的な証拠も無しに行くのは…」
「ハハハッ!いや、恐らく両国は動かん…作戦変更…というやつだ。」
「で、ではどの様に?」
「……あの国は…『平和』を愛する国と聞いた…『平和』は良い…その為にも互いに『交流を深め』なければなぁ……」
日本を狙う国が全部女の子だったらどんなに良いか…(´・ω・`)