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日出づる国、異世界に転移す  作者: ワイアード
第2章 テスタニア帝国編
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第34話 波乱

ーー3日後 テスタニア帝国 議会広間


王城の真ん中に建てられた、一際目立つほど大きいドーム型の建物。そこでは重要な案件や法律などについての会議を行う時はこの議会広間に各官職達があつまる。


その中にはロスキーニョ侯は勿論、ヨドーク公、ギリガン侯、リマーベル伯などもいた。



「議長殿、カーネギー公は?」


「……カーネギー公はまだ姿がお見えになりません。」



この言葉を聞いてニヤリと笑うロスキーニョ侯、今の所は上手く事が進んでいる。



「うーむ…まだ姿が見えないのでえれば仕方が無いですな…会議を始めましょう。」


「カーネギー公…」


「ご家族の方々を残して何処へ…」


「ん?カーネギー公に子供っていたか?」


「息子ではないが、話によると甥っ子を1人で預かっているそうだ。まぁ見たことはないが…。」


「いや、俺は息子だと聞いたぞ!」


「えー…みなさんそれぞれの席へ御着席下さい。」




一同それぞれの席へと戻るが、未だにザワつきが収まらなかった。



「えぇー…皆さんも分かっているとは存じますが元々の代表者であるカーネギー公が事情により会談の場に現れる事が出来ない状況である為、急遽本会議を始めます。」



「本当によろしいのですか?」



「仕方無かろう…早めに代表者を決めねば…ニホン国を待たせるわけにはいかぬ。」



再びニヤリと笑うロスキーニョ侯とその息のかかった部下たち。誰も戦争の責任者にはなりたくない…そんな中でロスキーニョ侯が立候補すれば自然と全員が彼を支持する。後は、計画通りに…。



「では……先ずは立候補者をー」


(キタッ!)

「では私ー」


「ー確認する前に、議長である私から1人推薦者がいる。」



「「ッッッ⁉︎⁉︎」」


ザワザワ…



ロスキーニョ侯達は驚愕したが、周りも同じだった。推薦すること自体は別に問題ではないが、こういったケースで推薦者を上げるのは極めて稀だからである。



「私が推薦する人物は………」



ロスキーニョ侯は今にも血管がブチ切れそうだった。自身の計画を狂わせる輩は誰であろうと許さないという気持ちを抱いていた。



(どこのどいつだッ⁉︎そんな人物がこの帝国に居たのかッ⁉︎)



「…ギリガン・スウォルト侯爵を推薦したいと思っている。」


「なにっ⁉︎」


「ん?どうかしたのかねリマーベル伯?」


「い、いえ…。」


「……ギリガン侯…私からの推薦を受けてくけてくれるかな?これは強制ではない、断る権利は君にもある。」



スッと立ち上がるギリガン侯、その身なりは何時もの鎧姿の猛将からは想像できないほど綺麗に整った衣服を纏っていた。彼は静かに目を閉じ、軽く深呼吸をした後に議長の問いに答える。



「喜んで引き受けましょう‼︎」



「「オォォォーーーーーーーーー‼︎‼︎」」


パチパチパチッ!



議会が歓声と拍手に包まれる。しかし、ロスキーニョ侯達は動揺していた。自分達が望んでいたシチュエーションではない事に…。



「ちょ、ちょっとお待ち下さいッ!」


「ん?どうしたのかな、クリフトフ伯?」


「ギリガン侯はつい数年前に『侯爵』の称号を与えられたばかりで、それに先日の海戦では大敗を喫しておめおめと逃げ出した腰抜けではないですか⁉︎そんな人物がこの栄えある帝国の代表者など…納得出来ません‼︎」


「別に『侯爵』になったばかりでも良いではないですか?それに、海戦で戦った相手はニホン国…負けるのは致し方なかったでしょう、むしろ兵を悪戯に減らさずに賢明な判断力で撤退というある意味勇気のいる行動を取った。彼は十分代表者としての資格はありますよ。」


「よ、ヨドーク公…ッ⁉︎」



リマーベル伯、クリフトフ伯、ベーデル子爵達は揃ってロスキーニョ侯へ目を向け助けを求める。



(コッチを見るな!馬鹿どもが!私がお前達と繋がっている事がバレるではないか‼︎)



しかし、このままではマズイ事に変わりは無かった。そこでロスキーニョ侯は議長に対して異議を申し立てる。



「少し宜しいでしょうか議長殿?」


「何かね?」


「確かにギリガン侯は軍人としては非常に優秀なお人です。それは私も認めています。ですが、そんな根っからの軍人をこの国の代表者とするのはいかがなものかと思います。ましてや一度敗戦を喫した軍人など…納得しませんよ。」



議会内は再びザワつき出した。



「い、言われてみれば確かに…」


「軍人を国の代表者として行かせるのは…チョットなぁ。」


「あの男は、一度この国を敗北へと導いた男だ!」



「(良し‼︎流れが私に戻って来た‼︎このまま一気に‼︎)国の代表者には『知識』『教養』『統率力』『支持率』が必要だ。そしてカーネギー公にはその全てを兼ね揃えていた。だがしかし‼︎そのカーネギー公が賊徒に射られ死んだ今‼︎その代わりとなる新たな逸材人を代表者にする必要がある‼︎よって…代表者にはカーネギー・ルガー公爵の弟である……このロスキーニョ・ルガー侯爵が引き受ける‼︎」


「そうだ‼︎今回の会談の代表者はロスキーニョ侯以外考えられません‼︎」



「「オォォーーーーーーーーー‼︎‼︎‼︎」」


パチパチパチパチパチパチパチパチパチ‼︎‼︎



議会はさっきよりも大きな歓声と拍手喝采に包まれた。ロスキーニョ侯の顔からは笑みがこぼれる。



(決まった…決まったゾ‼︎これで私がー)



「それは……少し可笑しな話ですなぁ。」


「…それは…一体どういうことでしょうか?」



議長は髭を何回か撫でた後、ロスキーニョ侯の方に威圧的な目を向けながら答える。



「ロスキーニョ侯……私は…カーネギー公が『死んだ』などとは一言も言っていませんが?」


「なっ⁉︎」


「フゥム、実に可笑しな話だ。私は、カーネギー公は『不在』と言った。だが、貴方は『死んだ』と答えた…それも『賊徒に射られた』という理由も付けて…。」



周りの官職達もその事に気付き、ロスキーニョ侯に対し強い不審な眼差しを向ける。



「な、何を馬鹿なッ!…ただの間違いー」


「自身の兄を簡単に『死んだ』という人がいるのですかな?」


「そ、それは…」


「もう苦しい言い逃れはよせロスキーニョ侯。」


「「ッ⁉︎」」



何処かで聞きなれた声…その声がする方向へ一同が一斉に目を向けるとそこにはー



「あ、兄上ッ⁉︎」


「幽霊ではない…ホラッ!足もちゃんとあるぞ。」



カーネギー公がいた。頭には包帯と松葉杖をついていたが、体調は良さそうだった。



「一体どうや…何故…あ、えっと…え?」



ロスキーニョ侯の額からは大量の冷や汗と動揺が見られる。カーネギー公は哀れむように彼を見つめながら答える。



「確かに私はあの時…ファムスの丘の高台でお前に射られ…川へと落ちていった。私も流石に死を覚悟したさ、だが『この子』が私を見つけて救ってくれた。」



「なに⁉︎」



そう言ってカーネギー公が少し横に動くと、彼の背後には、バンディットバニーの獣人族の子供であるカリムがいた。カリムはカーネギー公の裾を掴み怯えた表情をしていたが、カーネギー公がカリムの頭を優しく撫でると少し緊張がほぐれたのか何とか落ち着いて説明しようとした。



「戦争が終わって……母さんと父さんと一緒に国へ帰ったんだ…。その後すぐに父さんは「大事な用があるから」って言って、直ぐにお城へ行ったんだ。僕は人目のつかない川沿いの森で一人で遊んでたら……聞こえたんだ。だんだん弱くなってくる…父さんの心臓の音が…。」



「し、心臓の音だと?」



バンディットバニーの聴覚は非常に鋭く、数㎞離れた物と音を捕らえる事が出来る。


カリムは毎日カーネギー公に抱き着き心臓の音を聞くのが大好きだったのだ。そして、あの時の心臓の音も父であるカーネギー公の心音だと瞬時に識別できた。



「最初は…何でこんな所に父さんが?って思ったけど……確かに父さんの心臓の音だったから…だからその場所へ行ったら…矢の刺さった父さんが流れてきたんだ。」


「だから…私はここに居る。」



ロスキーニョ侯は絶望に呑まれていた。自身の野望がこんな形で終わる事に、目は虚ろでもはやまともな状態ではなかった。



「まさかそのような事が…」


「わ、私は最初からロスキーニョ侯は何処か胡散臭いと思っていたのだ。」


「それよりも…カーネギー公の息子が…亜人族などとは…。」


「まさか議長とギリガン侯はこの事を知っててあの様な芝居をしたのか?」


「なるほど…ロスキーニョ侯の悪事を暴く為に…そうなるとすれば…」



ロスキーニョ侯の周りには数人の警備兵が取り囲んでいた。ロスキーニョ侯は議会席にいたリマーベル伯達に助けを求める目を向ける。


(リマーベル伯!クリフトフ伯!ベーデル子爵!助けてくれ!頼む…)


しかし、彼らはシラを切るような素振りを見せ、目立たないようその場を後にした。


(はぁッ⁉︎…あ……あぁ……)



これにより彼の精神は一気に崩壊した。ロスキーニョ侯は突然身体をデタラメに動かしながらゲラゲラと狂った様に笑っていた。



「ヒィ〜ヒヒヒヒッ!アヒャッ!アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャー!ケヒィーッ!」



全員がその様子にギョッとする。すると、ロスキーニョ侯は突然ピタっと動きと笑い声を止めて真顔になると静かに呟く。



「短けぇ夢だったか…もう………いらねぇや…こんな国ッ‼︎‼︎」


「ッ⁉︎」



この時、カーネギー公は何かヤバいと直感が働き、警備兵に対し直ぐにロスキーニョ侯を取り押さえるよう命令を出す。



「早く彼を押さえつけろ‼︎」



カーネギー公の指示により警備兵達が一斉にロスキーニョ侯へ飛び掛かり、床に押さえつける。



ドサァッ!



数人の警備兵が彼に覆い被さるように押さえつける。最早まともに動かせるのは首から上だけだった。しかし、ロスキーニョ侯は口をモゴモゴうごかした後、何かを咥えていた。



「ッ⁉︎あれは…携帯用魔伝石‼︎」



そしてロスキーニョ侯は不気味な笑みを浮かべ…魔伝石の『向こう』にいる人物に命令を出す。



「聞こえるな?………『門』を開けろッ‼︎」


気付いている人もいるかも知れませんが、一部某ゲームのワンシーンを参考にしました。

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