第30話 自衛隊VS魔獣
仕事の都合上作成が遅れてしまいました。
申し訳ありません。
ーーテスタニア帝国 帝都内
帝都内の奴隷達は自分達が勝ち得た『自由』に喜んでいた。中には仲間達と一緒に肩を組んで歌を歌っている者も。そんな彼等を怯えながら縮こまるテスタニア兵達がいた。
「お、俺たちどうなるんだ?」
「殺される…殺される…。」
「何でだよ……テスタニア帝国は神に選ばれた国じゃあ無かったのかよ…。」
すると歌をうたっていた奴隷の1人が路地裏で何が蠢いているのが見えた。
「あぁ?何だアレ?」
彼は武器を持ってその場所へ近づいた。そーっと路地裏を覗くとそこには、死体があった。だが普通の死体じゃなかった、身体の半分が食い荒らされた様な酷い姿の死体がそこにはあった。
「ウッ!な、何だよこーー。」
彼が衝撃の光景を口に出す前に突然彼は意識は無くなくしてしまった。そして、彼のいた場所には、代わりに単眼の怪人『サイクロプス』が棍棒を抱え、先程の死体と彼をバリバリと貪っていた。
グルルルゥ…
突然ヌッと出てきたサイクロプスに奴隷達を始め、捕まっていたテスタニア兵や都民達は驚愕した。コロシアムの魔獣が何故こんな所にいるのかと…しかし、彼らの疑問に彼等は答えることなく、サイクロプスは持っていた棍棒を2振りほどで辺りの人間を肉塊に変えてしまう。そして、サイクロプスの後に続いて様々な魔獣が姿を現し、奴隷や都民達を次々と襲い掛かっていった。
「「グゥ…グ…グオォオオォォォォオオー‼︎」」
獣とは違う恐ろしい咆哮、魔獣達は歓喜していた。自分達も自由になったことに、そして…数え切れないほどの『ご馳走』が至る所にある事に。
ーーテスタニア帝国 帝都ロドム 大広場
「「グゥ…グ…グオォオオォォォォオオー‼︎」」
「ッ⁉︎」
突然帝都中に響き渡る咆哮、それに気付き驚く自衛隊と奴隷達。
「な、何だよ今の鳴き声?」
「向こうから聞こえたぞ。」
自衛隊達からは戸惑いと不安の表情が出ていた。無理もない、あのブルゴス達でさえ少しヤバいと思っていたのだから。その時川尻二等陸尉は、ブルゴスが何かに気付いた様に見えたため彼に問いかける。
「ブルゴスさん、今の鳴き声は何でしょうか?」
「こ、コロシアムにいた魔獣達だ。まさか逃げ出したのか⁉︎」
「ですがブルゴスさん!俺たちはコロシアムの方には誰も手ェ出してませんよ!」
「そうです!アレがどんなにヤバいのかは俺たちはよく知っている!」
「う、ウゥム…。」
川尻二尉は少し考え込んだ後呟いた。
「恐らく…皇帝達の命令で解き放ったのでは?我々を殺すために…。」
「なっ⁉︎そ、そんな事をすれば俺たちだけじゃなく、この帝都に住む人達も巻き添えになってしまいますよ!」
「それでも連中は、俺たちを殺せればそれで良いと思ってるってことだろ。」
「い、イカれてる。」
ブルゴス達は「元々狂ってる。」と言いたかったが、今はそれどころではない。
ターン…タタターン ターンターン
遠くの方で何かが破裂するような音が聞こえる。ブルゴス達は新しい魔獣の鳴き声かと思ってしまった。
「川尻二等、南と東で自衛隊と『異世界害獣』との衝突が起きた様です。」
「わかった、『八咫烏』と『アパッチ』をそっちに向かうよう知らせろ。あと、コッチと北側にも寄越してくれ。」
「了解。」
ーーテスタニア帝国 南広場
辺りは死屍累々となっていた。魔獣によって食い千切られ、踏み潰され、噛み砕かれ、元がどんな形をしてたのかよく分からないほど損傷が酷かった。
魔獣達の鳴き声、都民や奴隷達の悲鳴、その中にパパパッ!という破裂音が止め処なく響き渡ったていた。
そして、南広場へ近づくほどその音は大きくなり、魔獣達の死体が増えていった。
「撃て撃て‼︎、撃ちまくれ!」
自衛隊達は瓦礫などに隠れながら、南広場へと向かってくる魔獣達と交戦をしていた。
『20式小銃』と『12.7㎜機関銃』から撃ち出される弾丸が空を裂きながら魔獣達の身体の内部を破壊しながら貫通していく。魔獣達は、瞬く間にバタバタと血を噴き出しながら倒れていく。
「ッ⁉︎た、隊長‼︎建物の壁をかなりの速さで走って来る害獣がいます。」
『人喰い巨大蜘蛛:イビー』は映画に勝る迫力と不気味さを感じさせる動きでこちらに向かってきた。
「あの蜘蛛を狙え‼︎」
タタターン…ターンターン!
ドドドドッ!
弾丸の雨に撃たれ、『イビー』達は次々と壁から落ちていく。しかし、中には多少の弾丸をくらうもギリギリ避けながらまだ向かってくるヤツもいた。
「仕留めろ!近付けさせるな!」
自衛隊達が『イビー』に気を取られている隙に、『グリム』と『リザードマン』達は一気に攻め込んでくる。無論、自衛隊側もそれに備え再び奴等に弾丸の雨を浴びせるが、魔獣の数は一向に減らない。
「チッ!参ったな…このままじゃラチがあかねぇ。」
「二時の方向から『単眼の巨人』が接近中!」
自衛隊達のいる南広場から約400m程先に、魔獣達の死体を掻き分けて進む『サイクロプス』がいた。『サイクロプス』達は血がベットリとついた棍棒を担ぎ上げながらこちらに向かってくる。
「撃て撃て‼︎」
タタタッ!タタターンッ!ドドドドッ‼︎
ドンドンッ!
『サイクロプス』達は、呻き声を上げながらその場にゆっくりと倒れこむ。しかし、その内の半分以上が再び立ち上がり始める。
「はぁッ⁉︎」
「なんちゅうタフな奴や…。」
「構うな撃て‼︎」
自衛隊達は尚も撃ち続けるがなかなか死なない。弾丸を撃ち込まれると『サイクロプス』達は大きく怯みはする。身体からは血と思われる緑の液体が止め処なく滴り落ちる。しかし、殆どが倒れずに向かってくる。
すると、『16式機動戦闘車』の52口径105㎜ライフル砲が火を噴いた。
ドォンッ!
激しい衝撃共に目標となった『サイクロプス』の上半身はバラバラに粉砕しその場に崩れる様に倒れる。
ドォン! ドォン!
轟音と共に次々と無残な姿になって倒れる『サイクロプス』達。他の『サイクロプス』達が突然の出来事に戸惑っていると、上空に何かが飛んでいるのに気付いた。
『こちら『アパッチ06』遅れてすまない。だが、道中にいた害獣達は片付けてきた。あと、南広場付近にいる害獣はこいつらだけだ。』
「いや、助かった。早速片付けてくれ。」
『了解。』
害獣達は、空に浮かぶ数機の『アパッチ』に対し威嚇をするも効くはずもない。すぐさま『アパッチ』の機銃と空対地ミサイルを浴びせる。
ドシュッ!ドシュッ!ドシュッ!
ヴゥゥゥーーーーッ!
「「グルゥアアアアアアッ!………。」」
『アパッチ』の攻撃が止むとあたりは静寂と化した。魔獣達のうめき声一つ聞こえない。
そんな光景をただポカーンと眺めていた奴隷達と帝都の民達。さっきまで起きていた事が未だに信じられなかった。
「なんだったんだよ…あいつらどうやってあの魔獣達を…。」
「さっぱりと分かんねぇよ…」
「俺、怖かったからずっと目と耳塞いでたから…。」
「とんでもねぇ音出しながらなんかやってたよな?…戦ってたん…だよ…な?」
「あ、あぁそうだよな、そうじゃなきゃ魔獣達は死んでないしな…。」
誰一人として理解できていなかった、戦っていたのかどうかも分からなかった。考えれば考えるほど頭が混乱する。自分達は、夢を見ているのかと思う程に…とてもリアリティだが現実的ではない夢を…。
「あのぉ…大丈夫ですか?ケガは…ありませんか?」
「は、えっ?…そのぉ…ハイッ!大丈夫です…ハイ…。」
「その割には皆さん顔色があまり優れませんが…。」
それはあんなのを見れば誰だってそうなると全員が思っていたが、誰も口に出さずただ不自然な苦笑いで返すしかなかった。
「良し!辺りを警戒しつつ、民間人の救助を行う!」
ーーテスタニア帝国 東広場
この場所では未だに魔獣達と交戦をしていた。上空からの支援も要請しようにも、民間人を避難・誘導している最中に突然襲い掛かってきた為、最低限『アパッチ』達の攻撃範囲内にいる民間人を避難させるまでは、上空支援はできなかった。
「クソっ!数が多すぎる!」
「おい!弾くれ弾!」
「『16式機動戦闘車』の砲弾も底がつきそうだ!」
「民間人の避難誘導はまだか⁉︎」
「少なくともあと30分は…」
魔獣達の数が多すぎる為、いつ前線を突破されるのも時間の問題だった。
「『アパッチ04』聞こえるか?『CFW』を民家の屋根に配置してくれ!全機すべてを降ろすんだ!」
『了解!』
このやり取りの後に付近にいた『アパッチ』から無数の『CFW』が落ちて来た。それらは30m以上の高さ落ちても何の支障もなく、素早く配置について屋根の上から支援攻撃を開始する。
『敵勢力多数確認、攻撃開始します。』
連なるレンガ造りの民家の屋根にいた無数の『CFW』は屋上から弾丸の雨を降らせて少しでも魔獣達の進撃を削いでいた。中には、『M24狙撃銃』や『バレットM82対物狙撃銃』を使って遠くにいる『サイクロプス』を1発1発確実に頭部を狙って撃ち抜いていた。
ドン!……ドン!…ドン!
幾ら高いタフさを持つ『サイクロプス』でも、頭部を撃ち抜かれれば絶命する。特に『バレットM82』に撃ち抜かれれば、その背後にいた者も巻き込んでしまうため、上手くいけば1度に2体倒せた。
「な、何とかなりそうですね。」
「あぁ、まだ『CFW』投下前の『アパッチ』がいて助かったわい。」
『こちらアパッチ08聞こえるか?残る害獣はあと少しだ、残りはこちらで対処する。』
「了解した、頼んます。」
こうして東西南北の広間付近にて行われた魔獣との戦闘は奇跡的に自衛隊側の死傷者は出ずに終わり、このまま一気に王城まで進もうとした。その時だったー
『こちらアパッチ02!コロシアムから1体の害獣が現れた。かなりデカい双頭の真黒な狼だ。』
「ん?『真黒で双頭の大きい狼』?それはさっき聞いた『グリム』じゃあないか?」
『いや、違うな…そもそも『グリム』の頭は一つだ。ここらでも獰猛さが伝わってくる。』
自衛隊達は多少大きさや見た目が違くても同じ『グリム』だと思っていた。確かにアレは危険だが、しっかりと対処をすれば問題はない。
しかし、テハムはその言葉を聞いて少し考え込んだ後静かに呟いた。
「まさか…『オルトロス』か?。」
ーーテスタニア帝国 帝都 コロシアム内
(………ヤケに周りが静かだと思ったら、誰もいやしない…どうなってる?)
スン…スン…
(ん?……何時ものカビとホコリが混じった匂いの他に何か別の匂いがあるな…これは…外の空気だ…。何だ?…門が開いてるのか?だがこの匂いの方向は、闘技場の方じゃないな……まさか…『あの門』か?)
黒い塊のような双頭の大狼はスタスタと出口に向かって歩く。
スンスン…スン…
(お?…血の匂いが強くなったぞ?あぁ久しぶりの血の匂いだ…そういえば、暫く大したモノを食べてない。今まで食べてきたのは…小さなネズミや虫ぐらいだ…腹が減りすぎて、腹が減ってる事も分からなくなったが…この匂いのお陰で…思い出したよ…『空腹』を。)
外に出た双頭の黒い大狼は、辺りをキョロキョロと見渡す。
(なんだぁこれは?…まるで戦じゃあないか。辺りにあるのは…死体だけか。新鮮な…生きてるのが良い。)
大狼は数ヶ月前の生きた獲物の味を思い出すと、ダラダラとヨダレを垂らしていた。対魔獣用のコロシアムに出てくる魔獣達は、最低半年間はロクな餌を与えずにおく。空腹時の方がベストコンディションだからである。己の食欲を満たすためなら、どんな生き物も獰猛な化け物になる。
(死肉はいらん…生きたヤツが良い…。内臓や骨肉がいっぱいで………新鮮な血が滴って…すっごく美味しいヤツが……良いっ!)
すると大狼は上空にいる『アパッチ』と『八咫烏』に気付いた。
(なんだいありゃ?…食えるのか?……でも高いな…届かねぇ。)
大狼はスタスタとその場を離れ、西広場にいる自衛隊と奴隷たちのいる場所へと向かった。
ーーテスタニア帝国 西広場
「テハムさん…何ですかそのぉ…『オルトロス』ていうのは?」
「双頭の大狼で、トンデモなくおっかねぇ化け物さ。『グリム』なんかアレと比べればかわいいもんさ。」
「……全員止まれ、その場で周囲を警戒しろ。狼のような姿をした何かがいればすぐに攻撃をくわえろ!『アパッチ』達はどうだ?見つけているか?」
「いえ、どうやら途中で見失ったようです。途轍もなく素早かったとの事で…。」
「しょうがねぇ…一応警戒はしてるだろうが気を抜ーー」
突然目の前に何かが黒い風と共に川尻二尉の前に現れた。それは先程の連絡あった『オルトロス』だった。
「あー…クソっ。」
『オルトロス』は大量のヨダレと牙を剥き出しにしながら川尻ニ尉の方を見つめていた。
(見ーーつけた。)
敢えて『ケルベロス』の兄弟分と呼ばれる『オルトロス』にしてみました。




