第28話 狂皇帝の企み
また新しい『WALKAR』が出てきます。
ーーテスタニア帝国 西方ベルナベウ陸龍軍基地
多くの木造兵舎に龍舎、石造りの司令塔、訓練用のグランドが広がるテスタニア帝国西方ベルナベウ陸軍基地。いつもなら昼夜問わず、訓練に励む兵士達の声が聞こえるのだが殆どの兵士達がドム大陸・アルフヘイム神聖国侵攻軍として出陣しているため静かである。
予備軍として控えている3000人。その内の3人の若い兵士は自分達の出番は無いだろうと思い、上官に見つからないよう基地から少し離れた茂みで談話をしていた。
「あーあ、今頃先輩達は敵地で『良い思い』してるんだろうなぁ〜。」
「バカ!戦地だぞ⁉︎何言ってんだ。」
「でも所詮は蛮族でしょ?殺し放題・女はヤり放題じゃん?」
「ハァー…お前はそんな風にしか考えられないから、上官に怒られるんだぞ…。」
「はははッ!違いねぇ!」
「な、何だよ!本当のことだろ⁉︎」
彼等がくだらない話で盛り上がっていると突然、龍舎の翼龍達の威嚇声が聞こえてきた。
ギャオオオオオ‼︎‼︎
「ん?何だ?さっき餌与えたばっかだろ?」
「また腹減ったのか?」
2人は翼龍がお腹を空かせていると思い呆れていたが、もう1人は顔が真っ青になって呟いた。彼は翼龍騎士団の1人だった為、わかったのである。
「違う…これは…敵が来た時に出す鳴き声だ‼︎」
「「ッ⁉︎」」
3人は急いで基地へと戻るが、その途中で何かが上空を轟音と共に通り過ぎるのが聞こえた。
ゴォォォォォォォォォォォォォォォーー‼︎‼︎
(何だ今のは⁉︎翼龍の鳴き声でもない‼︎)
3人が疑問に思いながらも再び基地へと急いで戻ろうとした。その時ーー
グワァァァァァァァン‼︎
ドドドドォーーー…ドドーーーーン‼︎……
突然の大きな地響きと地揺れ、そして衝撃波により3人は数メートル後方へと飛ばされるる。
数分後、気絶していた3人は所々に傷が見られるが大したことはなかった。互いの無事を確認した後、周りを見渡した。そして、驚愕する。
辺りの木々は薙ぎ倒され開けたような景色が見えた。すると、その先で大きな黒い煙と炎が立ち昇っている。
「おい…あっちは…。」
「基地の方角だ‼︎」
3人が基地へ到着するとそこはさっきまでここが基地であったとは思えない様な惨劇が広がっていた。
倒壊し業火に飲まれる建物、人と龍が焼けた臭いが辺りに立ち込める。地獄…まさにそう呼ぶにふさわしい光景だった。
3人は、基地にいた仲間や後輩、上官の名を呼んだが返事は聞こえなかった。いや、聞こえる方が不思議だとも思える。生存者は…絶望的だった。
「ひでぇ…あんまりだ…。」
「…これ誰がやったんだ?翼龍の火炎弾でもこんな風にはならねぇぞ⁉︎」
「まさか…炎龍?」
3人が呆然となっていると、再び西側上空から何かが近づいてきた。『それ』は聞いた事の無い音をだしながら近づいて来る。
バタバタバタバタバタバタッ!!
「こ、今度は何だよ…。」
ーー同時刻 AH-64D内
『OH-1の報告通り、敵勢力基地の破壊確認。…ん?敵勢力基地に3人の生存者がいる。怪我をしているが軽傷の模様、格好からしてテスタニア帝国兵と思われる。』
『降伏するよう勧告せよ。勧告に応じなければ、《WALKAR》を降下させて制圧せよ。以上。』
『了解。』
アパッチは3人にゆっくりと近付く、3人は剣を抜いて構えるが足が震えていて全く動けない。
「あの…『空飛ぶ甲蟲』が基地を…⁉︎」
「あ、あ、あぁ…!」
「ヤベェ…ビビって動けねぇ…。」
するとアパッチのスピーカーを通して音声が聞こてる。
『我々は日本国陸上自衛隊である。貴方達は今、完全に包囲されています。速やかに武器を捨てて投降しなさい。繰り返す、速やかに武器を捨てて投降しなさい。』
3人は目の前の事で頭が一杯だが、大音量で話してくる『空飛ぶ甲蟲』の言葉で何となく理解ができた。
「つまり…武器を捨てればいいってことか?」
「だ、だよな…」
「す、捨てよう…か?…」
3人は同時に持っていた剣を地面に落とし降伏を示した。すると、アパッチから何か人の形をしたモノが落ちてきた。それは20m以上の高さから降りて地面に着地するとスタスタと此方に向かって歩き話しかけてきた。
『ご協力に感謝します。』
「「は、はい…。」」
ーー
『COMBAT・FORCE・WALKER』
第4世代の『WALKER』である。高度AIシステムと対話interfaceを搭載し、個人としてだけでなく『チーム』としても十分に活用でき、広範囲の脅威に対処する事が可能。ウンベカントの『PATROL WALKER』とは違い、戦闘に特化した設計となっている。
高さ…200㎝
重量…158kg
走行速度…45㎞/h
握力…90㎏
パワー…新型の充電式リチウムイオン電池
装備…F-2020、21式手榴弾、9㎜拳銃
特殊合金素材で作られた装甲板を使用しており、至近距離から放たれた12.7㎜機関銃にも耐えられる様になっている。
ーー
3人が呆然としていると、前方から緑色のまだら模様の服を着た男達と緑色の『鉄の甲獣』達が現れた。
「こ、これが…ニホン軍…。」
『CFW』はこう言った兵士に対し言葉を掛けた。
『違います。我々は自衛隊です。』
「じ、ジエイタイ?」
テスタニア帝国は1時間以内に東西南北全ての陸海軍龍基地を破壊されてしまい、各地で起きている奴隷達の暴動に対処出来なくなることとなった。
ーーテスタニア帝国 東方ガリメト陸龍軍基地
このガリメト基地は他の基地と違い地下を本拠地としている為、F-2の空爆にも壊滅的と言えるほどの被害は受けなかった。しかし、基地の司令官の素早い降伏宣言により、少数の被害で済んだ。
次々とトラックやチヌークなどで運ばれるテスタニア帝国兵達、その中には翼龍、鈍重な鎧に覆われた土龍がいた。翼龍は普通に翼龍騎士として利用されるが、土龍は背中に投石機を乗せて移動したり荷物を運んだりするのが主である。
「ふぅ〜…何とかここの基地は無力化出来たな。」
「姉帯二佐!全てのテスタニア帝国軍の主要基地を制圧したとの報告が上がりました!また、テスタニア帝国に奴隷産出国とされた国々の反乱軍が各国のテスタニア帝国駐留軍を制圧しているとのことです!」
「お!意外と上手くいくもんだな。反乱軍ともカーネギー公が根を回してくれたおかげだな。良し!もう一息だ!帝都ロドムへ向けて前進!」
ーーテスタニア帝国内植民国 ラタナキア民国
「テスタニア帝国は終わりだ‼︎同志カーネギー公とニホン国ジエイタイが我らの助けとなってくれている‼︎この機を逃すな‼︎」
ーーテスタニア帝国内植民国 ゾハン公国
「アンディ大公の仇を取るぞ‼︎立ち上がれ、ゾハン公国軍よ‼︎」
ーーテスタニア帝国内植民国 ブラギニア王国
「〈テスタニア帝国を滅ぼせ‼︎我らと同じ苦しみを味合わせてやれ‼︎〉」
ーーテスタニア帝国 王城 会議室内 半日後
「ーーであるからして、まず各地に残存している兵士達を1度帝都へ集めて事の収束に全力を注ぎます。」
バァーーンッ!
「失礼します‼︎一大事です!我がテスタニア帝国主力基地全てが壊滅的被害により再起不能になりました‼︎」
「「ッ⁉︎」」
ベルマード皇帝を始め、全ての官職達が驚愕した。今まさにその主力基地に残っている兵たちを掻き集めてギリギリ抑えている奴隷達を一気に畳み掛ける作戦を考えていたからだ。
「そ、それでは…もうどうしようも…」
「失礼します‼︎各植民国で大規模な反乱が起きています‼︎駐留軍は全滅、このまま帝都まで攻めてくる勢いです‼︎」
「…。」
ベルマード皇帝は現実を受け止められなかった、受け止めたくなかった。本当だったら今頃は、我が国は祝勝ムードになっていたはずなのに…。
「未開な蛮族風情にこのザマ…頼みの綱のハルディーク皇国にも見限られてしまった…。」
「ほ、報告します‼︎」
「今度は…何だ…。」
「ニホン国のジエイタイなる軍隊が我が帝都の周りを覆う様にやってきました‼︎」
「なっ⁉︎は、早すぎるぞ⁉︎」
「ニホン国は我が国に対し降伏を勧めていますが…。」
官職達は混乱している。長年強力な軍事国家として栄えて来た我が国がこうもアッサリと降伏を迫られる事態になってしまった事に。
だがベルマード皇帝はニヤリと笑い言葉をかける。
「そうか……では来たものはしょうがない…門を開けてやろうぞ…。」
「し、しかしー」
「構わん…早よ門を開けよ。」
「こ、皇帝陛下!では我が国は降伏をッ⁉︎」
「ん〜〜〜〜?…はははっ!誰が『降伏』すると言った?私は『門を開けろ』と言ったのだ。」
「え?つ、つまりどういう…。」
「とにかく、ジエイタイ共を帝都へ入れてやれ、そして恐らく仲間である奴隷達と合流させて1度事態を鎮めて貰おう。その時が来たら…『赤門』と『黒門』を解放するのだ…。」
「「ッ⁉︎」」
「「?」」
大半の官職達達は『赤門』『黒門』とは何なのかサッパリわからなかった。しかし、一部の高い地位の官職達は皆が恐怖で引きつった顔をしていた。
「こ、皇帝陛下‼︎アレは…アレはまだ早すぎます!『黒門』はともかく、『赤門』だけはッ!『アレ』はまだ我々の手におえる状態ではーー」
「今使わずいつ使うのだ?まぁ我が国の民も大勢の死者が出るのは確実だが…ふふふ、私がこの世界の頂点に君臨する為の尊い犠牲と考えれば…。」
『COMBAT・FORCE・WALKAR』は最初は『COMBAT WALKAR』にする予定でしたが略語が『CW』と『CARE WALKAR』と被ったため、チョット長めの名前になりました。




