第27話 揚陸作戦
お待たせしました、続編を投稿します。
SF兵器も登場登場します。
そしてやっぱり戦闘は難しい。
ーーテスタニア帝国 ルカナ軍港
ドム大陸・アルフヘイム神聖国侵攻軍が集結し、出陣の準備が着々と進んでいた。その様子を軍港の見張り塔の頂上から見下ろしていたのはー
ドム大陸侵攻陸軍 大将
パドリック・ドゥングーム『公爵』
ドム大陸侵攻龍軍(翼龍騎士団の意)大将
ノーマン・ラウ『公爵』
ドム大陸侵攻海軍 提督(ギリガンの後釜)
フリードリヒ・ディーツェ『侯爵』
アルフヘイム神聖国侵攻陸軍 大将
ホアン・アドリツェ『侯爵』
アルフヘイム神聖国侵攻龍軍 大将
エミリオ・グラウ『公爵』
アルフヘイム神聖国侵攻海軍 提督
フェリペ・デハロ『公爵』
総軍船約7500隻
陸軍約20万
海軍約25万
翼龍騎士団約1万
予備軍も含めればあと1.5倍は存在していた。普通ならばこれほどの大軍勢がいればドム大陸は勿論、ほぼ全ての低文明国家を叩き潰すことが出来る。高度文明国家ですら油断出来ない兵力、まず敗ける事は無い…何時もならそう思っていたが、今はその逆の気持ちだった。
6人は不安な表情を表には出していないが、内心は恐怖しかなかった。
「ギリガン殿は…たった3隻のニホンの軍船に敗れてしまった。」
「殆どの奴らは信じなかったが、ギリガン殿が戯言を述べる事など…。間違いなく本当だろうな…。」
「上の奴らはどうかしている…こんな事…。」
「ギリガン殿もそう思ったのだろう。だがあの人は任務を全うした。我らが敗れれば帝国は間違いなく滅びるのだからな。」
ギリガンは彼らにとって頼もしい存在であり、帝国に仇なす敵を何度も撃退し帝国を守ってきた。そんなギリガンがたった一度の敗北で牢屋にぶち込まれ、ただ死を待つだけになってしまった。到底今の政府がまともだとは思えなかった。
しかし、それでも彼等はやるしか無いと心に決めた。ギリガン殿がした事を俺たちもやろうと…。
「失礼します。いつでも出撃可能です。」
1人の兵の言葉に彼等は互いに顔を見合わせる。次会うときは、戦争が終わった後に成るだろう、どうか無事でいてくれ…全員が同じ事を考えていた。
『全兵に告ぐ‼︎これより我がテスタニア帝国軍は、ドム大陸・アルフヘイム神聖国へ侵攻を開始する。我ら帝国軍の強さと誇りを奴らに思い知らせてやろうぞ‼︎』
「「ウォォォォォォォォォーーーー‼︎‼︎‼︎」」
50万弱の大軍勢から出てくる雄叫びは凄まじいものだった。一生に一度しか体験出来ないといってもいいだろう。
「「ギャオオオオオ‼︎‼︎」」
翼龍達も一緒に雄叫びをあげていた。翼龍達も気合が入っているのだろうと兵士達は思った。しかし、翼龍騎士達は直ぐに異常な事だと気付いた。翼龍達の雄叫びは雄叫びでは無く、危険が近づいてくる時に出す『威嚇声』だと気付いたからだ。
ーールカナ軍港 沖合部
味方の兵達の雄叫びがここまで聞こえてくる。既に軍船に乗り、いつでも出航できる準備をしていた水夫達。彼等はあの集団の中に自分達も混ざりたかったとポツリと呟いていた。
「ハァー…俺もあっちに行きたかったなぁ〜。」
「何でよ?煩いだけじゃん。」
「バカ!それが大事なんだよ!気合って言うかなんというか…とにかく気持ちの問題なんだよ。『ヨッシャ!やってやるぞ』って気になるじゃん?」
「ふーん…でも、こんな大船団を相手に戦うんなら戦う前に敵は降伏すると思うけどな。」
「そんなの…ん?」
「どしたの?」
「いや……なんか…ゴォ〜って音が聞こえた様な…。」
「え?うそ?」
ーールカナ軍港から西側120㎞ 上空
海の上をマッハ2という音速を超えるスピードで進みながら空気を裂く『それら』はいた。
『目標地点まで200㎞を切った。約5分で大船団が見えるはずだ、翼龍騎士団に注意セヨ。』
『『了解。』』
『それら』とは15機のF-2戦闘機である。青い機体と赤い日の丸模様が特徴的なそれは優雅に編隊を組みながら進んでいく。
『………目標集団発見。』
目標の大船団の発見を知らせると編隊の隊長から全機に対し、命令が出される。
『全機、目標補足……攻撃開始。』
15機のF-2戦闘機から撃ち出された『ASM-4(28式対艦誘導弾)』は、真っ直ぐテスタニア帝国の軍船に向かい…命中する。
ーー『ASM-4(24式対艦誘導弾)』
『ASM-3』よりも非常に強力でステルス性能も抜群、そして小型化にする事で1機につき8発を搭載する事が可能。
爆発後に半径1.0㎞以内に特殊な衝撃波を発生させる事で、目標以外のモノも大きなダメージを与える事ができる。
現代では目標となる敵艦の周囲に先ほどのウェーブを発生させることで、電子機器の一時的な停止を与える事が出来るのだが、今回のテスタニア帝国の軍船は木製であるためウェーブによるダメージだけで撃沈されてしまう。
ーー
グオォォ……ンッ‼︎‼︎
とてつも無い爆発音と爆風を巻き上げる軍船だったモノ。その爆風と爆熱は周囲の軍船も大きく巻き込み、1発で7〜8隻の軍船を一瞬で残骸にかえる。すると、直ぐに青紫色の巨大な衝撃波の波が現れてブワッ!と半径1.0㎞まで一瞬で広がる。それにより半径1.0㎞以内にある他の軍船に襲い掛かり、約20隻以上の軍船をバラバラにして沈める。
『て、敵襲ーーーーー‼︎敵襲だーー‼︎』
沖合部の軍船にいた水夫達は港側にいる他の軍船に魔伝を使って伝令を送る。しかし、彼等は敵が何処から攻撃を仕掛けてきたのか全く分からなかった。
そして伝令を送った後に沖合部にいた軍船団は次々と撃沈されてしまう。
ーールカナ軍港
「沖合部に停船していた軍船からです‼︎正体不明の敵に攻撃を受け、大半の軍船が壊滅的な被害を受けたとの伝令がッ‼︎」
「何ッ⁉︎」
将軍達が見張り塔の上へ登り、遠方の軍船団へ目を向けるとそこにはまともに動いている軍船は1隻も存在せず炎とともに海の底へと沈んでいっていた。
すると遠くから何かが近づいてくるのがわかった。かなり離れているが、あの惨劇を作ったのは『アレ』だというのが気付いた。
「ノーマン将軍!」
「おう!分かっておる‼︎…伝令兵!全ての翼龍騎士団へ魔伝だ、翼龍騎士団出動‼︎向かってくるモノ全てを撃退せよ‼︎我らも直ぐに向かう‼︎」
「ハッ!」
ーールカナ軍港 西側100㎞地点上空
F-2戦闘機が『ASM-4』を撃ち込んでいると、北西側約150㎞地点上空で待機していた『E770-改良型早期警戒機(AWACS-2)』が『改良型3次元レーダー』(半径1000㎞以内の空域をカバー)により、ルカナ軍港から約5000機の飛行物体が接近している情報を今作戦に参加しているF-2戦闘機ともう一種の『戦闘機』に伝えられた。
『隊長、敵機と思われる物体が向かってきます。』
『わかってる、『八咫烏』を向かわせろ。連中を片付けるまで我らは待機だ。』
『了解。』
F-2の後方約50㎞地点で待機していた25機の『八咫烏』が敵機と思われる飛行物体がやってくる方向へと向かっていった。
ーールカナ軍港から約40㎞地点上空
未だに敵の姿は見えない、敵は圧倒的遠方からの攻撃を仕掛け、沖合部にいた軍船団500隻以上を沈めた。
(敵の攻撃が止んだ…我らに気付いたのか?我々が出撃した途端に轟音も聞こえなくなった。)
ノーマン将軍率いる翼龍騎士団全員が困惑していた。倒すべき敵が未だに見えない事に…しかし、直ぐにその困惑は『恐怖』へと変わっていく。
「………ッ⁉︎将軍‼︎前方かーー」
ドォォーーーーンッ‼︎‼︎
1人の翼龍騎士がノーマン将軍に報告を言い切る前に突然爆発し、それにより焦げた肉片が辺りに散らばる。
「「ッ⁉︎」」
驚愕する翼龍騎士達、彼の後方を飛んでいた他の翼龍騎士達は爆散した肉片が降りかかりる。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」
突然の惨劇に発狂する翼龍騎士達の声が聞こえてくる。今までの戦いでこの様に仲間が殺される事は無かった。
ノーマン将軍は何が起こったのかサッパリ分からなかったが、とにかく前に進むしかないと思い前方に注意を向けるが、直ぐに自分の周りにいた他の翼龍騎士達が彼と同じ様に爆散して落ちていく。
「い、一体何を…何をしたと言うんだー⁉︎」
彼の疑問に答える代わりに一瞬槍のような形をした何かがこちらに近づくなり…また他の翼龍騎士に直撃して爆発する。何とか避けようとするも『火を吹く槍』は避けた方向へ追い掛けて来る。
「何でコッチにッ‼︎」
ドォォーーンッ‼︎…ドドォォォーンッ‼︎
次々と羽虫の様に撃ち落とされる仲間達を見て、敵が何をしてきたのか必死に考えようとするが全く分からなかった。
(さっきの『火を吹く槍』一発で5騎近くの翼龍騎士がやられた。だが…一体何処から⁉︎)
すると前方からまた何かが見えてきた。かなりのスピードだが、さっきの『火を吹く槍』とは違うというのが直感で分かった。
「て、敵が来るぞ‼︎火炎弾用意‼︎」
翼龍達が一斉に火球を口の中で造り、撃ち出す準備を始める。すると、『八咫烏』が編隊を組んで向かってくる。
「来たぞぉーーーー‼︎」
翼龍達は何時でも撃てる構えになっている。
(さぁ来い‼︎仲間たちの仇を取ってやる!)
すると『八咫烏』から再び何が撃ち出されるが、先程の『AAM-8(20式空対空誘導弾)』よりも遅く見えた。
「敵の魔導攻撃だ‼︎避けろ‼︎」
翼龍騎士団は何とか左右に移動して避けようとするが、『それら』は突然目の前で破裂する。すると破裂した所から無数の火の欠片が広範囲に飛び散り翼龍と鱗もろとも翼龍騎士達の五体を貫通し引き裂いていく。
パァーーーン……シュパパパァーーーーッ!
「ぐわぁぁぁぁ‼︎」
「ギャーーッ‼︎」
「うぐっ‼︎」
異世界に生息するドラゴンを始めとした害獣対策として最近製造された『対異世界害獣特殊無誘導散弾(通称:ブレイカー)』。これによりさらに多数の翼龍騎士団が撃墜される。
「く、クソが‼︎撃ち込め‼︎‼︎」
翼龍達が一斉に『八咫烏』へ向けて多数の火炎弾を撃ち出す。しかし、殆どの火炎弾は射程距離に届くまえに、消失してしまう。
(こ、これ程までにッ⁉︎)
『八咫烏』は再び『ブレイカー』を撃ち出し、多数の翼龍騎士を撃墜させていく。気がついたら残った翼龍騎士は100騎足らずとなっていた。
翼龍騎士達が『八咫烏』を追い背後を取ろうするがいとも容易く逆に背後を取られてしまう。
ヴゥーーーーーーッ‼︎
機銃の轟音と共に背後を取られた翼龍騎士達はバラバラとなって落ちていく。
「おのれぇぇぇぇぇーーーッ‼︎‼︎」
ノーマン将軍は捨て身の攻撃で『八咫烏』へ向けて突撃を行う。しかし、構えた長槍が届く前に機銃の餌食となる。
強い衝撃と薄れゆく意識の中で彼は自分達が戦っている相手は神そのものではないかと思いながら海の底へと落ちていった…。
ーールカナ軍港
少しではあるがここからでもノーマン将軍が率いる翼龍騎士団が殲滅されていくのが見えてくる。
少し前にルカナ軍港で待機していたエミリオ将軍も自身の翼龍騎士団を率いて出撃し、南方から攻め込んで行こうとしていたが、未だに連絡がつかない。恐らくは既に敵に殺られたのだろうとあり得ないことだが他の将軍達は思った。
(我が帝国が誇る翼龍騎士団達が…いとも容易く…敵は一体…。)
すると西側から何かが猛スピードでこちらに近づいて来るのが見えた。将軍達は兵達にバリスタと弓の用意をするよう指示を出すが、兵達が準備をしている間に『八咫烏』はルカナ軍港上空を猛スピードで飛んで行った。『八咫烏』を見た兵士達は完全に動揺していた。
「な、なんだアレは⁉︎」
「うわぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」
「怪物だ…。」
『八咫烏』はルカナ軍港の様子を空撮しそれを『AWACS-2』へ送信した。
ーールカナ軍港から北西側150㎞地点上空
「『八咫烏04』からルカナ軍港の空撮映像の受信を確認しました。敵の大半はまだ軍船に乗船せずにいます。」
「了解。全『八咫烏』へ指令、敵の航空戦力に注意しつつルカナ軍港にいる敵勢力を無力化せよ。」
「了解。『八咫烏』へ指示を出します。」
「隊長、F-2部隊が指示を求めています。」
「了解。F-2部隊は敵勢力の軍船の除去を再開せよ。」
「了解。F-2部隊へ指示を出します。」
ーー1時間後 ルカナ軍港沖合部
「おい、リック!無事か!」
同じ水夫で親友のエディの声で意識を取り戻すリックと呼ばれる男。この2人は先ほど船で雑談をしていた2人だった。
「エディ…ハッ!そうだ、俺たちさっきの青紫色の衝撃波に巻き込まれて!」
リックがガバッと起き上がりあたりを見ると、バラバラとなって大きな火柱を上げながらゆっくりと沈んでいく多数の軍船がそこにはあった。リック達が乗船していた軍船も真っ二つに割かれ沈みかけていた。2人はギリギリ沈んでいない場所に居たのだ。
「何があったんだよ…。」
「わ、分かんねぇ…ン?おいアレ‼︎」
エディが何かを見つけて指を指す。すると、青色の鏃の様な物体が物凄いスピードであたりを旋回しながら何かを撃ち出して…味方の軍船を破壊していった。
「「か、怪物ッ⁉︎」」
2人は『空飛ぶ青色の鏃』に怯え、タダうずくまる事しか出来なかった。
その時、ふと軍港へ目を向けるとそこも想像を絶する悲惨な光景が広がっていた。
「軍港が…火の海だ…。」
軍船団は文字通り壊滅、軍港は元の面影が残らないほど崩壊し火の海が広がっていた。生き残りなどいるのか⁉︎…そう思わせるほどに。
「みんな殺られちまった…将軍達も…翼龍騎士団も…。」
「俺たちが生きてるのって…」
「奇跡だな…」
軍港の見張り塔の頂上で横たわる1つの死体、その死体の右手には淡い光を出してた魔伝石が握られており、そこから声が聞こえる。
『ーーおい!聞こえるなら応答願う!もう1度言うぞ!、奴隷たちが反乱を起こし帝都ロドムを始めとしたあらゆる町や村が壊滅的被害を受けている!至急軍を率いて引き返してくれ!繰り返すーー』
ーールカナ軍港 北西側150㎞地点上空
「隊長。『八咫烏』及びF-2部隊から報告です。敵勢力除去を確認したとの事です。」
「了解。F-2部隊は1度帰投し、弾薬補充を行った後すぐに敵勢力基地への空爆をせよ。『八咫烏』部隊はその場で待機、残った敵勢力を発見次第即除去を行え。」
「了解。」
「次に強襲揚陸艦『ひご』『しもきた』『にしきぎ』へ、ルカナ軍港への揚陸可能と報告しろ。」
「了解。」
ーールカナ軍港から西側10㎞地点海上
揚陸可能との指示が出てから1時間弱、数隻の護衛艦のもと3隻の強襲揚陸艦『ひご』『しもきた』『にしきぎ』が現れる。
テスタニア帝国海軍の軍船だったものを掻き分けて進んで行く。そして、沿岸部まであと2㎞地点で停艦、その後『エアクッション揚陸艇(LCAC)』と『多用途ヘリUH60』、『大型輸送ヘリCH47』が兵員・車両輸送を行う。
次々と上陸する陸上自衛隊第17師団の兵員・車輌、上空には『八咫烏』の他に『AH-64D』が飛び回りあたりを警戒している。
「谷藤一佐!全隊揚陸完了しました!」
「谷藤一佐!他7つの軍港へ向かった他の隊も揚陸完了です!」
「良し、周囲を十分警戒しつつ前進‼︎目標は帝都ロドム!一般市民はもちろん、敵意がない者へ危害を与える事は正当防衛以外認めん!」
ルカナ軍港を始め他の軍港へも揚陸を開始していた第17師団。彼等は帝都ロドムを包囲する形を目的として進んで行く。無論、その間の敵勢力施設の破壊も行いながら。
彼らの上空をF-2部隊が再び飛んで行く。目標は敵勢力施設破壊の上空からの援護…空爆である。
自衛隊の兵器類の名前が覚えられない…(泣)