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日出づる国、異世界に転移す  作者: ワイアード
第2章 テスタニア帝国編
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第24話 リノーロ大監獄 その1

今回は『別班』が活躍します。


ーーテスタニア帝国 兵器・錬金術工場


そこには軍務副長官アルビ侯と多数のドワーフ族の奴隷達がいた。アルビ侯は高台に上がり工場の広場にいるドワーフ族の奴隷達に命令を出した。



『あー…あー…聞こえるかな?えー…貴様らには皇帝陛下直々の命を与える。これから配る資料の通りに『ある物』を作ってもらう。一体どんな物を作るのかは詮索不要だ。良いな。』



おそらくは5000人ほどいるドワーフ族の奴隷達に模写した十数枚の『大砲』と『銃』の設計図(下手に悟られないよう上手く誤魔化している)を渡す。


ドワーフ族達は暫く眺めた後、1人がアルビ侯に質問をする。



「んで、これを何時までにどのくらい作るんですかい?」



『あと12日以内にそれぞれ500だ!』



「ハッ!話にならねぇな、そんなの俺たちの腕でも不可能だ!」



『なっ⁉︎』



すると他のドワーフ族からも「無理だ無理だ」との声が聞こえてくる。この言葉を聞いたアルビ侯は怒鳴りながら話す。



『良いかぁ⁉︎お前達の家族の命はコッチが握っている‼︎貴様ら奴隷共は黙って我々の言うことを聞いてればよいのだ‼︎』



これを聞いたドワーフ族達に冷や汗がでる。自分達がどうにかしなければ家族が殺される。するとその中でも数人のリーダー格のドワーフ族の奴隷達がコソコソと話をする。



「(おい、どうする?)」


「(取り敢えず奴等の言う通りにやろう。まず希望通りの数はどうやっても揃えらんねぇがな。)」


「(……このままじゃあ俺たちはもちろん、家族が危ない。…でもッ!)」


「(あぁ、カーネギーの旦那が言ってたニホン人達が人質を助けてくれるまでの辛抱だ。本当に出来るかどうかは分からんが賭けるしかねぇよ。)」


「(人質さえ無事ならあんな奴等の言う事を聞く義理はねぇ。)」



こうしてドワーフ族達は彼らの作戦が成功する事を祈りながら、工場の中へと入っていった。




ーーテスタニア帝国 リノーロ大監獄


岩壁をそのまま削り出して作り出した見張り台。その上に立って辺りを見渡すテスタニア兵2人がいた。



「ウゥ〜〜…さみぃ‼︎」


「おい!ちゃんと外見張れよ!」


「あぁ?別にいいだろう?どうせ誰も来やしねぇよ!」


「……それもそうだな!んじゃ寒さを忘れる為に一杯どうだ⁉︎」


「お⁉︎気が利くじゃあねぇか!」


「ん?おいお前ら!俺たちにも寄越せ‼︎」



こんな所に誰も来ないと踏んで勝手に酒盛りを始める見張りの兵達。それに吊られて見回りの途中なのか数人の兵達も混ざり酒を飲む。



「……俺たちの世界じゃあ直ぐにぶん殴られる状況ですね。」


「…それで済めばいい良いけどな。」



そんな彼らの様子を見ている2人の隊員。そして、問題が無いことを確認すると『下にいる』他の隊員たちに合図を出す。


すると山脈の垂直な岩壁をまるで緩やかな傾斜を登るかのようにサクサク登ってくる隊員たちがいた。


普段の訓練の一環でアイガーの北壁を往復2時間半で登り下りするという人間離れした訓練を行っていた。これは『エクソスーツ』を装着していても決して簡単に出来るものではなかった。(因みにアメリカの某隠密組織は2時間弱で往復する訓練をしている…らしい)



そんな彼らにしたら、凹凸だらけなリノーロ山脈の岩壁を登るのは階段を登るに等しい行為だった。


難なく登り、辺りの安全を確認した後見張りの兵士達が出入りしている場所まで移動し、中に入っていく。


中は想像通りに広く薄暗い。所々に松明を備えた灯りが見えていた。


何層にもなっており階段はないが梯子が付いていた。一番下の階までは100m以上はある。地上25階程のビルの様だった。



チラホラと見回りをしている兵がいるが、全員が松明を持っている為何処にいるのかは非常に分かりやすかった。


「半数は人質の探索と救出だ、残りは脱出ルートの確保。良いな?作戦開始。」


別班達は素早く動き出し、それぞれの役割を行っていく。



ーー救出班


1階…また1階へと降っていく。しかし、一つ一つのフロアを調べても人質がいる様子はなかった。


見過ごしたか?いや、隅から隅まで調べた筈だ。


そしてまた1階…1階へと降っていく。降る際は、わざわざ梯子を使わずに岩壁を使って降りていく。


すると途中で見張り兵達が廊下で話している場を見つけた。コッソリと近づき物陰から話を盗み聞きする。



「そっちはどうだ?」


「異常無しだ。てか有るわけねぇよ。」


「だなぁ。こんな所まで侵入する奴なんかいる訳がない、早く帝都にいる奴等と交代にならねぇかな…ずっと洞窟に入ると気が滅入っちまう。」


「まぁまぁ、それは地下にいる奴等も同じだろう?てかそいつらの方がヤベェだろ?」


「あぁ、人質たちか?」



物陰から聞いていた隊員達はニヤリと笑う。



そうか…人質は地下にいたのか…これで無駄に1階1階を探索せずに済んだ。



その後も話を聞いてみるが下品な会話しか聞けなかった。人質を連れて行く際にはどのみちルートの安全を確認しなければならない為、彼らには覚めることない夢を見てもらう必要があった。



彼等はサプレッサー付きM4カービンを構え照準を見張りの兵達に合わせる。



『3人同時射撃…残りは撃ちこぼしを狙え。』


『『了解』』


『3…2…1…撃て。』


プシュっ‼︎


3つの銃身から弾丸を打ち出した時に出るサプレッサー特有の音が聞こえると同時に3人の見張り兵は頭部を貫かれ、脳をグチャグチャにミックスさせたドロドロの液体を撒き散らす。



ドサァッ!



3人が倒れた後、周りを警戒しながらすかさず死体を隠せる位置に移動させる。



「…撃ちこぼし無えのかよ。」


「一回で済むならそれで良いさ。それよりも、ここは広い割には見張りの兵士があんまり多く無いんだな…3階〜4階を3〜4人くらいで担当してんのか?」


「多分、ここが天然の要塞みたいな所だってのが理由だろ。ここに侵入して来る奴なんかいる訳がないってな。あとは…『あいつら』がいるのが最大の理由だろ。」




ーー脱出班 同時刻


ドサァッ!


『目標4名死亡。』


彼らも同じ様に脱出ルートと安全確保をしていた。そして仕留めた見張り兵を隠せる場所まで移動させる。



「ふぅ…これで18人くらいは殺ったな。」


「だな…ん?斎藤(仮)隊長何を?」



斎藤隊長は敵兵の腰袋辺りをゴソゴソと漁り始めた…すると。



「見つけた…これだな。」



隊長の手には携帯型の魔伝石があった。そしてそれを1人の隊員に渡す。



「隊長…これですね?」


「あぁ、頼むぞ粕谷かすや…。」



粕谷と呼ばれる隊員はそれをポケットに入れる。そして、隊は再び危険分子の排除を行いながら脱出ルートの確保を行う。



隊長率いる脱出班は少しずつ着実に上へと目指していった。すると頂上と思われるところが見えてきた。そこには外への出入り口もある。その時だったーー


隊長は隊に止まるよう指示を出す。


辺りを警戒する…が何も見当たらない、あるのはゴツゴツした岩肌のみ。



「…隊長?」


「…サーマル。」


隊長の指示で隊員達は暗視装置付きゴーグルを装着する。するとー



少し離れた岩肌の所が人の形をして赤くなっている。肉眼で見るとそこは普通の岩肌に見える。しかし、そこには確かに『誰か』がいた。少なくとも彼等が見える範囲に6人は居た。


『…6人同時射撃だ。残りは撃ちこぼしを狙え。』


『『了解。』』


6人の隊員達がサプレッサー付きのM4カービンを構え、合図と同時にー



ブシュッ!



ー撃った。すると、岩肌からドサドサと人が落ちてくる。


岩肌に見事に同化したコートとマスクを着けていた。しかしそれだけではなかった、一人ひとりが小さな杖のようなモノを装備していたのだ。



「…なるほどな、コレが『擬態魔法』って奴か。」



すると突然目の前に複数の影が現れた。それらは先程のコートを着た集団だった。



「き、貴様らッ!一体どうやって我らの擬態をッ⁉︎」



コートを羽織った男の1人が睨みつけながら問いかける。



「…それはお答え出来ません。」


「…隊長、こいつらがそのぉ…」


「あぁ、『ヌル』だ。」



ーー救出班


彼等はリノーロ大監獄の地下二階付近まで辿り着いた、するとそこは今までとは比べ物にならないくらいの広い空間だった。


そして、壁の至る所に岩肌をそのまま削って穴を作り、出入り口に鉄格子を取り付けた様な檻が数え切れないほど存在していた。見つけたー



「人質達だ…。」



全員が所々傷だらけで弱りきっていた。この中には子供もいる筈…だとしたら事は一刻を争う。



するとその広い空間の中に取って付けたような木製二階建ての小屋があった。そこの小窓を覗くと見張り兵達が酒やら食物やらを飲んで食って馬鹿騒ぎをしていた。



「ここは見張り兵の詰所みたいな所か…。全員サーマルとマスクを付けろ、スモークグレネードの用意。」



全員がサーマルとマスクを装着し、確認した後1人がスモークグレネードを小屋の中に投げ込む。1階と2階に一つずつー



プシュゥゥゥゥーーッ!



「ッ⁉︎」


「な、何だ⁉︎」


「ウゥッ‼︎ゲッホゲッホ!」


「煙か⁉︎何で⁉︎」



二階でも同じような事になっていた。そこへ隊員達が侵入して来る。



『各個射撃…。』



プシュッ!プシュプシュ!プシュッ!




掠れたような空気音が小さく響く事にドサァッ、ドサァッと見張り兵が血を流して倒れる。



『…1階制圧完了。』


『………2階制圧完了。牢屋の鍵と思われる束を発見。』


『良し、これより人質達を救出する。』




ーー脱出班


ヌル』と呼ばれるテスタニア帝国の抹殺部隊。主に暗殺や重要施設の警護、他国へ侵入し工作行為を任務とする。


テスタニア帝国独特の魔法科学によって生み出された『擬態魔法』。これは特殊なコートに加工し自身の魔力を練ることで周りの背景と同化できる魔法である。彼等はこれを体得し、様々な任務を遂行する。


脱出班の目の前には既に20人以上はいた。全員が両手に大小の剣を構え今にも飛び掛かる寸前の状態だった。



「は、ハハハハハッ!何を使ったのかは知らぬが、我らテスタニア帝国の『影』がお前達蛮族共に敗けるわけがない!見ろ!既に我らの仲間が20人は集まっている!多勢に無勢、敵うはずがなかろう⁉︎」


「……。」



別班の隊員達はやれやれと言った様子で取り敢えず黙って話を聞いていた。



「まぁ貴様ら蛮族風情がここまで来れたことは褒めてやろう。だが、我々がーー」



ヌル』の1人が会話の途中で突然、胸から血を吹き出しながら後ろへ倒れる。



「「ッ⁉︎」」



別班の斎藤が引き金を引いていたのだった。

彼らの長話にうんざりしていたのだろうと隊員達は思った。



「あ、隊長。」


「こんなヤツらの話に付き合う必要はない。サッサと片付けるぞ。『連発』に変えろ。」



ヌル』達は全員何が起きたのか分からなかった。


(一体何の魔法を使ったんだ⁉︎ま、まさか『高度文明国家』の魔道兵器か⁉︎いや、蛮族どもがそんなモノを作れるはずがない‼︎)



「き、貴様らぁ!全員でかかれ‼︎」



殺気立った『ヌル』達が一斉に飛びかかって来る。



「……接近戦はオススメしないな、各個射撃。」



隊員達がM4カービンをフルオートで『ヌル』達にばら撒く。それから数秒後、辺りは『ヌル』達の血の池地獄と化した。



ヒュー………ヒュー………。



「1名まだ生きてます。」



生き残った『ヌル』の1人がコートを真っ赤に染めながら大の字で倒れていた。呼吸するだけで苦しそうな表情を見せていた。



隊長はその男のマスクをゆっくりと剥ぎ取る。そこにいたのは、まだ20代前半と思われる若者だった。男は目に涙を浮かべながら必死に何かを伝えようとしていた。



「死……い、死に…ない……死にたく…ない。」



隊長はゆっくりと銃口を男の眉間に合わせて引き金を引く。



ブシュッ!



辺りの血の池地獄に男の脳髄と血が混ざり合う。



「……危険分子確認出来ず…作戦再開。」



隊員達は何事も無かったかの様に先へ進む。

その中で隊長は少し足を止めて、さっきの男の骸へ目を向け呟く。



「…今まで…そう言って命乞いをした『奴隷』達に…耳を傾けた事はあるか?無ぇよな?」


できれば今日中に「その2」を投稿したいと思います。

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