第23話 激動の予感
本日2話目です。
相変わらずの無理やり感なストーリーです。
申し訳ありません(泣)
ーーテスタニア帝国 コロシアム 剣奴控え室
そこには多数の剣奴達とスズキ、そしてカーネギー公がいた。スズキとカーネギー公は瓦礫の上に座りながら互いに向き合って先程の話をしていた。
一通りの話した後、カーネギー公は少し考え込む。
「……ナルホドな、だが本当にそんな事が可能なのか?」
「『我々』なら可能です。それに国政の内側からも何かしら仕掛ければ間違いなく…。」
「…しかし、私にそんな力はもう…」
「あなたは孤軍奮闘で、自分が救える範囲の奴隷達を救い続けた。あなたについていかない者は居ないはずですよ。あなたは…貴方が気付かない内に大勢の味方を得ているのです。」
「…。」
「このまま何もしなければ、彼らを真に救う事は出来ないと思います。」
「……ふふ、『奴隷』によって栄えた帝国が『奴隷』によって崩壊する…実に皮肉じゃあないか。」
「……では」
「…どこまで上手くいくかは分からんが協力しよう。」
「ありがとうございます。」
「その前にひとつ頼みがある。」
「なんでしょうか?」
「その…妻と子を匿ってくれないか?この2人の安全の確保、それが協力するための条件だ。」
「承知しました。」
「では後でここへ連れてくるとしよう。はは、2人とも驚くだろうなぁ。」
スズキはカーネギー公に対し敬礼をする。その後、スズキは無線機を取って外で待機している部下に命令を出した。
「…聞こえたな…作戦決行だ。」
ーーテスタニア帝国 謁見の間 3日後
「……〝奴隷管理長官〟のロスキーニョ候よ、我が国にとっての『奴隷』とはなんだ?」
「ハッ!我が国にとっての『奴隷』は国の収入源の一角を担う存在であります。国内の『コロシアム』と『競売場』では常に多くの外国人旅行者(平民〜貴族)が参加し、高値で取引されます。国外では『出張奴隷商人』達を使って、辺境の国々への売買も行っております。」
「…ふむ、『奴隷貿易』ではどうか?」
「ハッ!ウィルシール帝国のダリストル港から出航される船には銅塊、銀塊、綿織物などを積み乗せて我が国へ、先のウィルシール帝国の品々と我が国の奴隷達を出来るだけ高値で交換します。そして、我が国の奴隷達とリルウッド王国とローナム王国の砂糖、綿花と交換し、この品々を我が国にまで運びます。…ですが、幾ら奴隷が腐るほどいるとしても流石に『奴隷売買』だけではキツイため、我が国のもう一つの特産物、鉱山地帯に眠っている豊富な魔鉱石を奴隷と一緒に売買を行っています。」
「ふむ……流石だなロスキーニョ候よ。」
「恐れ入ります…ですが、その鉱山地帯に『妙な物』が出てきまして…」
「『妙な物』…だと?」
「こちらです。」
ロスキーニョ候が手で合図を送ると奥から顔をスカーフで覆った従者が何か『黒くドロドロした液体』が入った瓶を持ってきた。
「うぐッ⁉︎な、何だこれは⁉︎」
鼻にツーンと来る独特な臭い。ベルマード皇帝の他のその瓶の近くにいた従者達が同じ様に鼻をつまむ。
「これが…魔鉱石の発掘中に出てきたのです…。ハッキリ言ってわかりません。使えるのか使えないのかも…。」
「うむぅ…これは…敵を怯ませるための『兵器』に使えるな。これの解明に急がせるようにしろ。」
「ハッ!」
黒いドロドロした液体はそのまま謁見の間を後にした。
「ふぅ…それにしてもロスキーニョ候よ。我が国は本当に『神に愛された国』なのだなぁ。」
ベルマード皇帝はニヤリと口元を歪ませながら答える。そしてロスキーニョ候もそれに答える形で同じくニヤリと笑う。
「えぇ…まさか5大列強国の一角である『ハルディーク皇国』が我が国に援軍を送るとは思いませんでしたよ。どうやら、彼の国は我が国に対し強い関心がある様ですね。」
「(きてる‼︎‼︎これは…きてるぞ‼︎ウィルシール帝国から手に入れた『大砲』と『銃』の設計図、ハルディーク皇国からの援軍…今我が国に最高のチャンスがきている‼︎‼︎)」
「失礼します!こ、皇帝陛下!」
すると突然、軍務長官のバルム公がやってきた。
「ん?どうしたのだバルム公。そんなに慌てて…」
「れ、例の兵器類の製造なのですが…」
「おぉ、その事について聞きに行こうと思っていた所だ。今はどのくらいまで製造出来ているのだ。」
「…8丁と3門です。」
「はぁ?」
「わ、我が国の技術力では大量生産は困難です。」
「な、何だと⁉︎」
「想像以上に複雑でほんの僅かな歪みも許されない構造です。作れない事はないのですが、とても2週間以内に500も作るのは不可能です。良くてせいぜい50ほどです。」
ベルマード皇帝は驚愕していた。確かに、強力な兵器には今までとは未知の技術・魔法科学の領域。そう簡単に出来るものではない事は何となく理解はしていた。だが、我が国の力を持ってしても製造が困難な兵器とは思わなかった。
「……そうだ、ドワーフ族の奴隷はおるか⁉︎ドワーフ族の奴隷を掻き集めよ。特に加工・製造技術に長けた者を集めるのだ!」
「ハッ!ですが…本当に出来るのかどうかも。」
「さっさとしろ‼︎‼︎」
「は、ハイ‼︎」
ロスキーニョ候達は急いでその場を離れ、すぐにドワーフ族の奴隷収集に取り掛かった。
「(もう一度ウィルシール帝国の者に頼んで製造者を呼ぶか?…いや、そこをつけ込んで何かしら無理な要求をしてくるはずだ!それに、自国での製造が困難である事がバレたら…)」
ベルマード皇帝は焦っていた。折角訪れたチャンスをこんな間抜けな原因で潰されたくないからである。
「おやぁ?…何やらお困りの様ですねぇベルマード皇帝殿ぉ。」
「ッ⁉︎こ、これはこれは…シリウス殿…別に何も問題はありません。」
ハルディーク皇国外務副局長シリウス・マルクッチ。30代半ばでしっかりと伸びた顎髭が特徴な男性である。
「『問題無し』…ですか?ふむ…私的には、切り札である『兵器製造』が上手くできず、他の『高度文明国家』の方々への示し…威厳が保てなくなる…その様に聞こえましたが?」
この言葉にギクっとなる。実際そうである事にベルマード皇帝は更に苛立ちが立ち込める。
「はは…まさかそのような事はッ!」
「うーん…ならば…良いのですが。我が国は貴国が将来的に有望な国であると見込んで今回の援軍派遣を決めたのです。まぁそれも今回の戦で分かること…我々を失望させない様にお願いしますよ。」
「も、勿論ですとも。(このぉぉ…いずれはこの世界の頂点に君臨する私に向かってぇぇぇ…ッ‼︎)」
「ふふふ…おっと失礼しました。では、出撃の際はお声を掛けてくださいね。観戦武官として私の部下を数名送りますゆえ。」
シリウスは手を後ろに組みながらその場を後にする。ベルマード皇帝の『プライド』は傷つけられ苛立ちを露わにしていた。
ーーテスタニア帝国 客室
「シリウス殿…本当に宜しいのですか?」
「ん?何がだパイアス?」
テスタニア帝国の客室にてシリウスと彼の部下である。若い外務局員のパイアス・ハバードが彼に疑問を投げ掛ける。
「テスタニア帝国への援軍の派遣ですよ。こんな碌でもない国の為に我が国の兵達を危険な目に合わせるなど!」
「ははははっ!そうかそうか!お前は知らなんだか?」
「えっ⁉︎」
「皇帝陛下は…テスタニア帝国へ援軍を送るつもりは恐らくないだろう。『狂気』に呑まれた国ほど簡単に崩壊する国は無い。」
「で、では何故今回の戦で観戦武官を送り、その後に援軍を⁉︎」
「…此度の観戦武官派遣はテスタニア帝国を観るためではない。あの…新興国『ニホン国』の力を観る事が今回の目的だ。」
「あのぉ…南西地方約35000㎞に現れた新興国ですか?またいつもの様に野蛮人しかいないと思いますが…。」
「ふふふ…ニホン国が強い力を持った『高度文明国家』レベルなのか…小細工を使わなければ他国に勝てない『発展途上国家』なのか…楽しみだ。」
ーーテスタニア帝国 北の山脈リノーロ大監獄 深夜帯
猛烈な吹雪が吹く極寒地帯の北の山脈リノーロ。ここでは年中『真冬』である。原因としてはこの山脈には氷雪系の魔鉱石が大量に埋蔵されている。互いの魔鉱石同士の魔力のぶつかり合いによりこの様になっていると考えられている。
テスタニア帝国の政務官達はこれを利用して天然の大監獄を作ることを決め、今のリノーロ大監獄が完成したのである。
その極寒の世界を歩く、『それら』がいた。
『それら』はー
全てが『白』だった。
ーーー顔。服装。履物。そして、眼光と呼吸は、見た目が『白』だが実際そうだと言うのでは無く、雰囲気や気配までもが『黒』だと感じる。
「…おっ、みーっけた。」
「…ほぅ…話の通り一つの山が丸々大監獄になってるのか…デカイな。」
「……隊長、たった今『特戦群』も作戦開始した様です。」
「…どうしますか隊長?」
「カーネギー殿の話では二次侵攻軍が再建するまで後12日弱…それまでに何としても『人質』を全て救出する。」
「あの何十万といる奴隷達の『家族』全てのとなると…少し時間がかかりますね。…でもやるんでしょ?」
「無論だ…普通だと出来ない作戦を実行する…それが俺たち『別班』の仕事だ。」
こうして『別班』と『特戦群』の合同任務が開始となった。
再び登場『別班』。今回は『特戦群』との同時進行の合同任務です。