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日出づる国、異世界に転移す  作者: ワイアード
第2章 テスタニア帝国編
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第18話 〝狂皇帝〟ベルマード・サルゥ・ミルガンド

本日2話目の投稿です。


・グロ注意

・あり得ないとは思いますが、一応トラウマ注意

・ベルマード皇帝の『常軌を逸した』性格が出てきます。

ーーコロシアム場外 皇帝専用席。


天井が無く、空が筒抜けのコロシアム会場の観客席の中で一際目立つ見晴らしの良い席があり、そこはチョット広く豪華なテラスの様な形になっている。そこには大の大人3人が寝そべれる位大きく派手なソファがあり、ソファに寝そべりながら試合を見ているベルマード皇帝の姿があった。



「いまいち盛り上がりに欠けるなぁ…。ロスキーニョ候おるかぁ?」


「ハッ!こちらに居ます。」


「うむ、早速だがロスキーニョ候よ。お主は今のコロシアムをどう思う?」


「ハッ!恐れながら申し上げます。現在我が帝国において、平民から貴族まで幅広く人気の高い娯楽場でございます。それに『高度文明圏国家』から観光で来られる王族貴族の方々にも非常に人気である為、我が帝国が誇る観光兼娯楽施設でごさいます。」


「うむ、実に良い答えだ。」


「ハッ!ありがとうございます!」


するとテスラの出入り口からヨドーク公がやって来た。


「ん?おぉ、ヨドーク公か。どうしたのだそんなに息を切らして?」


「(こ、この男は本当にもうゥッ‼︎)」


ヨドーク公は怒りを抑え、4カ国会談の報告書を渡した。暫く報告書を眺めたあと、静かに呟く。


「うむ…ニホン国やロイメル王国が逆らう事は分かっていた。が、アムディス王国も逆らってくるとは予想外だ…。」


ヨドーク公は「人選ミスだ。自業自得」と心の中で呟いた。


「だが…まぁ良い。こんなチッポケな国々、我が帝国軍で蹂躙してやろうぞ。正規兵80万、奴隷兵30万の総兵力110万でな…。」


ベルマード皇帝はニヤリと不敵な笑みで呟く。すると、ロスキーニョ候を側に呼んである命令を出した。それを受けたロスキーニョ候は従者を複数引き連れテスラを後にする。


「あ、あのぉ皇帝陛下…何を?」


「ん?フフフッ…『役立たず』はどうなるか平民に見せつけてやるのよ。まぁ少し待っておれ!」


ベルマード皇帝は笑顔でヨドーク公の問いに答えるが、その笑顔をヨドーク公は恐ろしいと感じた。



ーー30分後


『皆様にお知らせします‼︎何と!ベルマード皇帝陛下が特別試合を用意したとの報告を受けました‼︎では先ずは南の門から現れるのはッ‼︎‼︎…って、えッ⁉︎』


アナウンサーが驚愕の声を上げる。それに続いて観客からも大きなどよめきが聞こえた。

南の門から現れたのはー



『む、ムローロ・ダッチス男爵…です。』



粗末な鎧を身につけたムローロ男爵がそこに居た。ムローロ男爵は酷く怯えている様子で手に持っている所々刃が欠けた剣を腰が引けた状態で構えている。遠くからも見えるくらい、身体はガタガタと震えていた。


『つ、続きまして北の門から現れるのは…なっ⁉︎あ、えー…ゾル・ラミュレス子爵。東の門からは…と、トルーニ・コム・デンテス子爵で…す。』


2人も雑な装備で怯えながら出てくる。ラミュレス子爵に至っては、ほぼ全裸に近い格好だった。



ヨドーク公は驚愕のあまり数秒思考が止まってしまった。すると、ベルマード皇帝はスッと立ち上がり、テスラの手すりから身を乗り出す勢いで狂気の笑顔で話した。


「さぁ‼︎‼︎『役立たず』のお前達に最後のチャンスを与えてやる‼︎‼︎この場で『殺し合い』を始めろぉ‼︎‼︎最後まで生き残った者だけ、此度の失態を『赦す』‼︎‼︎」


ヨドーク公はまだ信じられないといった様子で目の前に起きている状況を見ていた。


「(な、何故こんな事を⁉︎確かにロクでもない者達ではあるが、こんな仕打ちをしなくても…ッ‼︎)」


ムローロ男爵達は自分が助かりたいが為に頼りない剣をお互い構える、3人とも怯えており、なかなか始まらなかった。3人の顔は涙と鼻水、そして恐怖によって酷く醜い顔になっていたが、3人の心情を察すれば誰もバカにしたり笑ったりする者は居なかった…皇帝を除いては。


恐怖と怯えで一向に殺し合いをしない3人にしびれを切らした皇帝は大きく手を上げて何かの合図を送った。


すると


ヒュン‼︎ …ドスゥッ!

「ギャアアアアア‼︎」


突然、トルーニ子爵が地面にのたうち回った。彼の背中には矢が深々と刺さっている。


「ヒィッ!」


他の2人は益々恐怖してしまう。しかし、それ以上に自分だけは助かりたいといった思いが強くなる。


「(闘えば殺されるかもしれない!でも何もしなければ間違いなく殺されるッ‼︎だったら…少しでも助かる可能性のある方をッ‼︎)」


「う、ウワァァァァ‼︎‼︎」


ラミュレス子爵は剣をデタラメに振り回しながらムローロ男爵へと向かい走っていく。


「ひッ!く、来るな!来るんじゃあねぇーよ‼︎‼︎このクソアマアァーー‼︎」


ムローロ男爵はおもむろに地面に落ちていた石を拾い、それをラミュレス子爵に向けて投げた。石はラミュレス子爵の右眼に当たる。ラミュレス子爵は痛みのあまり、走る勢いそのままで地面に転けてしまう。


ラミュレス子爵はドクドクと血が流れる右眼を押さえながら地面に蹲る。


「痛い…痛い痛い………痛いよぉ…もぅヤダァ……助けてよ…誰か…助けてよ…。」


ラミュレス子爵は咳き込みながら血と一緒に涙を流し、必死に助けを求める。


観光席からは誰一人声を出すものはいない、全員が引いていた。そして、ただ見ているだけだった。中には目を瞑り、耳を塞ぐ人や神に祈りを捧げる人もいた。


背中に矢を受けていたトルーニ子爵は身体を引きずりながらコロシアムの門へ向かおうとする。



「い、イヤだぁ…し、死にたくない…死にたくない…。」



しかしムローロ男爵は彼に走って近づくとすかさず剣を彼の背中から深々と突き刺す。



「あ、がぁ…あ…。」



トルーニ子爵はそのまま絶命してしまう。

ムローロ男爵は汗だくになりながら、次に蹲っているラミュレス子爵の元へ向かう、その時のムローロ男爵の顔は正気では無かった。



「他の奴らなど知ったことか…俺は死にたくないんだ…俺は……こんなヤツらとは違うんだ…俺は…優秀なんだ…優秀な人間だけが助かればいいんだ……だから俺は生き残る……俺はー」



ムローロ男爵は虚ろな目でブツブツと喋りながらラミュレス子爵の元へ近づく。それに気付いた彼女は右眼の事など忘れてフラフラな足取りで立ち上がり逃げようとする。



「いやぁ…来ないで……来ないでよ…。」



ラミュレス子爵は地面の砂に足を取られまた転んでしまう。その瞬間、ムローロ男爵はそこをチャンスと言わんばかりに一気近づき、ラミュレス子爵の背中から跨り押さえ込む。



「そうだ…俺は…生きるんだ…俺は生きるべき人間なんだ…」



「い、いやぁ…やめて……離して…お願い…お願いだからぁ…やめー」



ドスッ!



ムローロ男爵は剣をラミュレス子爵の背中に深く突き刺す。ラミュレス子爵は声にならない叫びを上げながら絶命した。


「お、お、ウオォォォォォォォォ‼︎‼︎‼︎‼︎」


最後に生き残ったのはムローロ男爵だった。

ムローロ男爵は歓喜の雄叫びを上げて跪く。


「こ、皇帝陛下ぁーー‼︎わ、わ、私が生き残りましたーー‼︎勝ったのは私ですぅ!!こ、こ、これで許して頂けるのですね‼︎‼︎」


ベルマード皇帝はニコッと笑い語りかける。


「あぁ、勿論だともムローロ男爵。此度の失態の件を許そう。」


「は、ハイッ!ありがとうござー」


「だが…お主はまた失態を犯してしまった。」


「へ?」


「この国の象徴とも言える『コロシアム』、その会場内の空気を『湿らせた』。という失態だ…。」


「え…いやぁ…それは…。」


「この国の『財』を潤す行事を潰したのだ…その罪は重い。」


ベルマード皇帝は手をスッと上げる。


「こ、皇帝陛下‼︎お待ちくださー」


ヒュンッ…ドスゥ!


飛んできた矢がムローロ男爵の眉間を撃ち抜く。その後、ムローロ男爵は眉間から脳髄液と血が混ざった液体を風穴の空いた眉間から垂れ流しながら崩れ落ちる様に倒れる。



「クックック…ハーーッハッハッハッハッハー‼︎‼︎見たか⁉︎今の最後の顔ぉ、醜かっただろう⁉︎ハーーッハッハッハー‼︎‼︎」


ベルマード皇帝の笑い声だけが静寂に包まれたコロシアムを響き渡らせる。


「ハァーーーー……拍手は?」


突然の静かな怒りの声に皇帝陛下の周りに居た従者達を始め、観客達も拍手をする。そして、コロシアム会場内が大きな拍手喝采に包まれた。


するとベルマード皇帝はその場で立ったまま天を仰ぐ様な動きを見せる。その表情はウットリとしていた。


「これだぁ…これこそが権力者、これこそが皇帝、これこそが覇者、私はいずれ…この世界中の全ての者を我が支配下に置き…これよりもずーーーーーッと大きい拍手喝采を…全身で受けたい…。」


ヨドーク公はこの時改めて思った。


「(もう…今に起きた事ではないが…我が国はとんでもない人を皇帝にしてしまった…。)」



コロシアム内の物陰からその様子を見ていたカーネギー公もヨドーク公と同じ事を思う。



「もはや皇帝は『人』でも『亜人族』でも無い…『狂気』そのものを具現化させた…『怪物』だッ‼︎」



未だ鳴り止む気配のない大喝采。その余韻に浸りながら、手をだらりと下げて呟く。



「さぁ…軍を集めよ…そして、ニホン国を始めとしたドム大陸の弱小蛮族国家に、我がテスタニア帝国の力を見せつけてやろうぞ…。私はいずれ…全ての5大列強国を叩き潰し、この世界の『頂点』に君臨する…。」


今回の話は洋画の某サスペンス・ホラー映画のワンシーンをモデルにしました。

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[気になる点] ばかのひとつ覚えのように、感嘆符ばっかり使いやがてアホじゃんwww
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