第14話 狂気の国 テスタニア帝国
今回はテスタニア帝国の情勢を載せていきます。
異常なまでに狂ったテスタニア帝国をご覧下さい。
もしかしたら、また2話分投稿するかもしれません。
ーー日本国 首相官邸 とある一室
その部屋には2人の男がいた。広瀬総理と小清水官房長官である。2人は酒を飲んで一息ついていた。しかし、小清水の顔が妙に不機嫌であった事に気付いた広瀬が小清水に聞いてみた。
「小清水さん、どうかしたんですかい?あっ!まさかまた奥さんと喧嘩したんですか?」
小清水は変わらずムスッ!とした顔をしていた。そして、ウィスキーをグラスに並々と注ぎそれを一気にガパッと飲みほした。
「フーー…広瀬よぉ、俺ぁ納得いってねぇんだぜ…。」
小清水が尚も変わらない表情で口を開いた。
「『納得いってない』?…何がだい?」
「しらばっくれちゃって…分かってるくせによぉ。」
「?」
「マジで分かんねぇのかい…『別班』の件だよ。」
「あーー‼︎‼︎そういうことか!」
本当に気付いていなかった事に小清水は溜息をついたが話を続けた。
「そりゃあ、今は久瀬が連中の指揮を取ってる様なもんだがよぉ…何で日本の裏の『力』の象徴である彼らを簡単に出動させちまったんだ?」
「んー?」
「決して簡単な任務では無いのは分かってるさ。でもよお、ハッキリ言って『あの任務』は『特戦群』でも遂行できたんじゃあないの?」
小清水の言う『あの任務』とはアムディス王国の件である。すると広瀬はグラスに入っていたウィスキーをガパッと口に入れる。だが、むせる!
「ゲッホ!ゲッホ!」
「なに無理に対抗してんだよ〜。」
「ふーっと、小清水さん。貴方の意見は最もだ、『別班』の元指揮官の貴方のね…。でももしその時『特戦群が別の任務に就いていたら?』」
「なに⁉︎」
広瀬はポケットに入れていたクシャクシャの1枚の切り取られた半年近く前の新聞記事を小清水に渡した。小清水はそれを受け取りジッと眺める、そして驚愕した。
「ーーッ⁉︎ま、まさか『これ』に特戦群を出動させてたって⁉︎」
「ピンポーン♡‼︎」
広瀬は不気味な満面の笑みで答える。そこの記事にはー
『ー全国各地で活動していた在日外国人のデモ隊先導者全員が忽然と姿を消す‼︎ー』
ーーテスタニア帝国 帝都ロドム
ロイメルやアムディスよりも大きく発展してた帝都ロドム。あたりには豪華絢爛な装飾が施された建物がズラリと並んでいた。一見してみれば素晴らしい都市であるが、所々に異常な光景が見られる。それはー
「オラァ‼︎サッサと荷物を運べゴキブリ以下の奴隷ども‼︎」
中年の男性が怒鳴り声を上げながら鞭を振るっていた。彼の前には、ボロい布きれを着て足には錘のついた枷を付けていた獣人族の男がいた。身体中には生々しい傷があり、その殆どが化膿してハエがたかっていた。
ー『奴隷』である。この国では奴隷は当たり前の様に存在しており、重労働の全ては奴隷が担っている。帝都を見渡せば、ほとんどの人々が奴隷の首輪に紐をつけて歩いている。まるで鞄かペットの様な感覚で連れていた。
歩くのに疲れた時は、奴隷を椅子代わりに使い、友人同士でお茶をしたり、本を読んでいたりしていた。
中にはイラついていた・気に食わない、というだけで奴隷に殴る蹴るの暴行を加える。突然喉仏にナイフを突き刺して殺したりするのも珍しくない、無論殺された奴隷は何かヘマをした訳ではない、ただの『気紛れ』で殺されたのだ。そして、死んだ奴隷は道端に捨てられるがそれを片付けるのも奴隷である。
一般的な平民でこの有様なのだ、王族貴族はこれよりも更にエグい扱いをしている。王族貴族は子供の誕生日に奴隷をプレゼントするのが定番である。
そして、重労働の末、歩けないような怪我をしたり、病気で弱ったりなどまともに働けなくなった者は全員『龍舎』へ運ばれる。その理由は…言わなくても分かるであろう。
ーーテスタニア帝国 城内 謁見の間
煌びやかな広間の玉座に座る1人の男がいた。彼の名はベルマード・サルゥ・ミルガンド。テスタニア帝国の皇帝である。年齢は28歳と若く、整った顔つきをしていた。彼の後ろには、純白で生地の薄いドレスを身に纏ったエルフ族の女性が複数いた。全員が奴隷で首に枷を付けている。その中の1人は身籠っており、お腹が大きくなっていた。
「それで…リマーベルよ、例の『雌エルフ』をニホン国は渡さないというのだな?」
「ハッ!間違いありません‼︎ニホン国もあの娘の価値に気付いたのでしょう!」
「フム…では仕方がないなぁ。ニホン国も他の植民国と一緒に『奴隷産出国家』になって貰おうか…愚かな国だ、大人しく渡していれば、『属国』としてそれなりの権利は与えてやるつもりだったというのに…」
ベルマード皇帝とリマーベルは共に不気味な笑みを浮かべていた。すると、1人の側近が皇帝に近づいてきた。
「しかし皇帝陛下、ニホンについて少し気になる事が…」
「ん?どうしたのだカーネギー公。」
カーネギー・ルガー公爵。51歳。皇帝の側近の一人にして作戦参謀長官を担う男である。
「ハッ!ロイメル王国とアムディス王国に送った工作員からの情報では、ニホンのインフラ設備の技術力の高さが報告に上がっています。もし、この技術力の高さが軍事力と比例するのであればー」
皇帝は手を軽く上げてカーネギー公の話を途中で止めた。
「ハハハッ!カーネギー公よ、お主は随分と心配性だなぁ。良いか?我々は今までも農作物の栽培に長けた国や精巧な建築技術を持った国を何度も見てきた。だがしかし、その高い技術力が軍事力と比例した国は1つも無い‼︎もう…わかっておるな?」
「ハァ…」
「話に聞けばニホン国は魔法はおろか翼龍1匹も存在しないそうではないか?そんな未開な低文明の蛮族国家に我が国が敗けるとでも思っているのか?」
「い、いえ!断じてその様なことは!」
「そうであろう、そうであろう。この世は支配するかされるかだ、我が国は『支配する』側の人間だ。無論、亜人族は『支配される』側だ!ハーッハッハッハ。」
「(皇帝陛下…あなたの眼は節穴か⁉︎)」
「カーネギー公よ、お主はちと働きすぎだ。暫しの休暇を与えても良いのだぞ?…そうだ‼︎」
皇帝は後ろにいた奴隷のエルフ族女性の髪を引っ張り床に叩き伏せた。エルフの女性は痛みで思わず悲鳴をあげる。
ドサァ!
「あぁ‼︎…」
「この雌エルフをお前にやろう‼︎気にするな、お前にはいつも苦労をかけていたからな!この雌エルフ…なかなか『感度』が良いぞぉ…身体をナイフで少しづつ斬りつけながら『犯す』時の悲鳴はもう格別だ!どうだ!」
「な…⁉︎」
立っていた時では気付かなかったが、床に倒れていた彼女の身体をよく見ると背中のあたりに血が滲んでいるのが分かる。
「い、いえ…私には…そのぉ…」
「ん?いらんのか?あぁ!そうか!お主はもっと上質な奴隷を飼っているのか⁉︎なるほどなぁ、いらん世話をしてしまったな。ハハハ!」
「……お心遣い感謝します。では、私はまだ執務室で作業がありますので…」
「うむ!ではまたな、カーネギー公!」
ーーテスタニア帝国 城内 廊下
城内の人気の無い廊下をカーネギー公は歩いていた。その表情はとても暗く、絶望に包まれていた。
「(……違う…違うのだ…私は…血の滲む努力の末、手に入れたこの地位は…こんな国の為に尽くすためでは…)。」
廊下の大窓から見える帝都の景色、どこを見ても、過酷な労働に苦しむ奴隷、飼い主の暴力に苦しむ奴隷、飢えに苦しむ奴隷、無残に捨てられた奴隷、奴隷…奴隷…奴隷…。
「いくら奴隷制度が当たり前だとしても…これは幾らなんでも異常すぎるッ!」
王族貴族は、国民はこの現実に対しなんとも思っていない。これが普通だと、日常だと、当然だと考えている。それが『怖くて』…『恐くて』堪らない。
ーー
ガチャッ!
「おかえりなさい、あなた。」
「ただいま、カーラ。」
カーネギー公は自身の屋敷へと帰ってきた。彼が唯一生きていると実感できる場所である。そして彼の屋敷には、奴隷はひとりもいない。テスタニア帝国の王族貴族の中で…いや、テスタニア人の中で奴隷を持っていないのはカーネギー公だけと言っても過言ではない。この屋敷に居るのは数人のメイドと妻のカーラ、カーネギー、そしてあと1人がいる。
カーネギー公は自室に入り、早速執務に取り掛かろうとした時、部屋の陰からコッソリと覗く人影が見えた。
「ん?はっはっ…ほら!そんな所にいないで、こっちにおいで。」
すると兎の耳がついた子供がカーネギー公の胸元に飛び込んできた。
ボフッ‼︎
「おかえりなさい‼︎父さん‼︎」
「…ただいま、カリム。」
彼の名前はカリム。11歳。この子は人族と獣人族のハーフである。無論カーネギー公の子供ではない。
カリムは満面の笑みでカーネギー公の胸元にうずくまる。カーネギー公はカリムの頭を優しく撫でる。
コンコンッ
ガチャッ!
「あなた、お茶をお持ちしましたよ。あら?ダメじゃないカリム、お父さんの仕事の邪魔しちゃあ。いい子だから、早く寝なさい。」
「はーい…」
「いや、良いよ。」
「あら?」
「ここに居ていいよ、おいでカリム。」
その言葉を聞いたカリムは耳をピクピク動かし、再び笑顔でカーネギー公の胸元に飛び込む。
「おっと、甘えん坊だなぁカリムは…」
カーネギー公はカリムを優しく抱き締めて頭を撫でる。その様子を側で見ていた夫人はクスッとわらう。
「甘えん坊さんはどちら何だか…」
テスタニア帝国の異常性・狂気がうまく伝われるかどうか不安です。