第13話 フレイヤの『価値』
一応溜めてた分を出していきます。
2回目の投稿です。
スミマセン。
ーーウンベカント 大通り
町の人々はみな驚いていた。突然現れたテスタニア帝国の伯爵とその騎士団が大通りの真ん中を堂々と通っている。しかも誘導をしているのは額に血を流していたであろう自衛官とダリウス達。
「な、何をしているんだ?」
「何でテスタニアの連中がここに?いや、それよりもあの自衛官…血が…」
「キャッ‼︎血⁉︎」
リマーベルは町の様子を見て不機嫌になっていた。
「(何だこれは?まるで昼間の様に明るいぞ…蝋燭?…いや光魔法の類か。それにしても卑しい亜人族や下民共がウジャウジャといて気分が悪いわい!)」
あれから30分近く進んでいるだろうか…未だに司令塔と思われる建物が見えてこない、それどころか人気や明かりの少ない場所が多くなってきた。
「おい!奴隷!まだ着かぬのか⁉︎何だかますます暗いところに来ているが⁉︎」
「そうでしょうか?何分夜更けですから…足元にご注意下さい。もうすぐ目的地に到着しますので…。」
リマーベルは自衛官の言葉にどことなく不気味な雰囲気を感じた。彼の後ろに続く騎士団にも不安の表情が出てき始めた。
「(おのれェ、調子に乗っておるのかぁ?)」
ーーさらに15分後
「着きましたよ…。」
そこは建物も殆ど無い所だった。周りが暗闇に包まれている為、先導している自衛官達が何とか見えるほど。
「なっ⁉︎…」
リマーベルは声も出ないほど驚愕した。
すると騎士団の1人がついに剣を抜いて怒声をついた。
「おい貴様ら‼︎我らをバカにーー」
途端に前にいた自衛官達はバッと左右に飛び出して、リマーベル達の視界から完全に消えていった。
「「ーッ⁉︎」」
「おい!奴等どこに消えた⁉︎」
「クソッ‼︎何にも見えん!おい明かりつけろ!」
「痛って!テメェぶつかんじゃあねぇよ‼︎」
「うるせぇ!見えねぇんだよ!」
『公務執行妨害 暴行・傷害容疑ト断定。
《Green phase》ヲ《yellow phase》ニ切リ替エマス』
「「えっ?」」
リマーベル達は突然不気味な人とは違う声がした後ろを振り返る。
そこには、見た事のない複雑な甲冑の様なものを全身に纏った集団が自分達の後方を塞ぐように立っていた。真っ暗な空間にビカッと光る目のようなモノが一層恐怖を引き立たせた。
「何だアレは⁉︎」
『WALKER』はジワジワと追い込む様に迫って来る。
「おのれェ‼︎‼︎化け物が‼︎」
騎士団の隊長格の男が剣を引き抜いた。片方の手を剣に合わせる。すると、剣が火に包まれる。
「おぉ!」
「隊長がエンチャントしたぞ!」
「やっちまって下さい!」
隊長は剣を『WALKER』に向け、首元を勢いよく突いた。その瞬間『WALKER』の首回りに火が一瞬巻きあがった。
「どうだぁ!化け物が!」
しかし、隊長は絶句する。『WALKER』の首元にあった数本のコードの様なモノが切れ、装甲部分が少し焼けた程度の損傷で『WALKER』の活動には何の影響もなかった。
「ば、ば、バカな…!」
驚愕するリマーベル達と隊長、すると攻撃を受けた『WALKER』は隊長の首根っこを掴み、軽々と持ち上げる。
「…かっ!…は…」
すると『WALKER』は隊長を奥の暗闇へ放り投げる。隊長は叫び声と共に暗闇の中へと消えていった。それに続いて他の『WALKER』達も一斉に騎士団を馬から引きずり下ろし、騎士団は成す術もなく次々と暗闇の奥へと放り投げていった。無論、リマーベルも例外ではない。
「は、離せぇ…ワシを…誰だと思っー!」
ブンッ‼︎
「ギャーーッ!……」
リマーベルも他の騎士団と同様に暗闇の奥へと放り出された。
ーー
「ウワァァァァ‼︎‼︎」
ゴロゴロと転がり落ちるリマーベル、突然転がり落ちるのが強い衝撃と共に止まった。
ドサァ!
「うげぇ!」
思ったより強い衝撃に悶絶するも何とか持ちこたえ周りを見渡す。周りには自分よりも先に放り出された騎士達がいた。幸いにも死者はいないようだが、気を失う者や悶絶している者が殆どだった。
「うぅ…ここは?…」
下に手を当てて、ここが地面の上である事がわかる。所々、草木が生えている草原の上だった。そして上を見上げると微かに光と声が聞こえる。自分達が急な丘に放り出されたと気付くのにそう時間は掛からなかった。
何人かの騎士が剣を取り、丘を登って仕返しをしようとするが中々登れず、回り込もうにも月や星の明かりで見える範囲では、ずっと先も同じ様な丘が続いていた。登れる所まで移動するには時間がかかる。
すると数人の人影が明かりを持ってこちらを覗いているのに気付いた。先ほどの自衛官達とダリウスだった。
「貴様ぁ〜こんな事をしてタダで済むと思っているのかぁーー‼︎」
リマーベルは怒鳴り声をあげる。すると先ほど殴った自衛官がこちらを見るなり口を開けた。
「貴方達の目的は分かってます。『アルフヘイム神聖国』の王女フライヤ・アルヴァーナ様を捕らえることでしょう?そして、敵国であるアルフヘイム神聖国の王女を匿ったとして日本も同罪と一方的に決めつけて日本に対し宣戦布告を行い、『オマケ』として日本を手にいれる…違いますか?」
「ーーッ⁉︎」
(バカな⁉︎何故たかが一兵士の…蛮族国家の一兵士がそのような事をッ⁉︎ハッ!『雌のエルフ』の事を知っていた…という事は)
「やはりここに居たんだなぁ‼︎あのクソエルフの雌ガキは‼︎‼︎」
「それは貴方のご想像にお任せします。既に国からの許可を得ての行動です。さぁ、早くお帰り下さい。私達は『愚か者に構うほど暇ではないので』。」
「なっ⁉︎そ、その言葉ぁ〜そのまま皇帝陛下へお伝えするぞ‼︎」
リマーベル達は泥だらけの格好のまま反対方向へと消えていった。
ーー
「いやぁ胸がスカッとしましたぞ‼︎」
ダリウスが満面の笑みでその自衛官の背中をボンっと叩いた。
「一時はどうなるかと思いましたよ。まさかあのお姫様がテスタニア帝国の連中に追われてたなんて。」
「あいつらが来る少し前から本部の人達は彼女から詳しい事情を聞いてたんだな。」
ーー
時は少し遡る。
正門では本部が彼らを基地まで案内しろと連絡した。しかし、その後すぐに「彼女(フレイヤ氏)から詳しい情報を得るまで時間稼ぎをせよ。」という連絡が本部から彼の個人無線機に連絡が入っていた。そのあとは『丁重にお帰り頂いてもらえ、やり方は任せる』との事だった。
ーー
「でも納得いかないですよね!何で最初っから通信兵の俺を通していつも通り伝えてくれなかったんですかね⁉︎」
「…お前は誤魔化すのがヘタだからなぁ、山崎。」
「うっ…そ、それと、あの裏路地に入った時は俺は何で本部とは違う所に?と思いましたよ。急にバッと逃げる時はダリウスさんに首掴まれてビックリしましたよ。」
「ああ…その…すまなかったな。」
「でもなんでダリウスさんはあの人の作戦に気付いたんですか?」
「彼が教えてくれからだ。彼は人族では聞き取りにくいが、私のような獣人族なら十分聞こえる小さな声でボソッと言ってくれたんだ。」
ーー中ノ島半島基地 応接室
「…はい、………はい分かりました。ご苦労様です。」
「あ、あのぉ…」
「ご安心下さい、テスタニア帝国の皆様には『丁重に』お帰り頂きました。」
淡島は不安な表情を見せるフレイヤに優しく微笑みながら答える。するとフレイヤは淡島の服をガッと掴み涙を浮かべながら話す。
「本当にあなた方には救われた‼︎いやぁ!本当にありがとう!助かったよ‼︎」
「えっ⁉︎…えっ⁉︎」
淡島は彼女の言葉遣いが少し荒っぽい感じになった事に驚いた。さっきまでの礼儀正しい態度が一変した。
「あ…」
その後彼女も自分のした事に気付いたのか急に顔が真っ赤になりソファにペタッと座り込んでしまう。特徴的な長い尖り耳がへなぁとしていた。
彼女いわく人前では出来るだけ高貴な態度を取っているが、興奮したり誰もいないような時は、彼女の本当の性格が出てくる。昔からおてんば娘で男勝り、少し荒っぽい言動もある。そして、王族の娘なのに子供の頃は、将来は軍の最高指揮官になることだと話していた。
淡島は苦笑いで「性格は人それぞれですから。」とフォローするも彼女は「わたしはエルフだ。あ、『です。』」とションボリと答えた。
「(ハハッそれにしてもいろんな人がいるんだなぁ…。)」
「(でもこの子が…龍人族でも不可能な…『全て』の『龍』と心を通わせる能力を持っているとは思えないな。)」
もしかしたら少し無理くり過ぎるかもしれませんが、ご了承下さい!
その都度改善していきます!