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日出づる国、異世界に転移す  作者: ワイアード
第2章 テスタニア帝国編
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第12話 波乱の幕開け

またとんでともない事に日本は巻き込まれていきます。


今回も登場したSF兵器は、正直あまりSF兵器っぽく無いです。実用段階には至ってませんが、実在する物です。

ーー中ノ鳥半島基地 会議室


フレイヤが基地にやって来る1時間前、会議室にはロイメル王国の外務局員ザハナス、アムディス王国外務局員キルト、そして日本国外務副大臣 淡島徹(あわしま とおる)、外交官の堀内武久(ほりうち たけひさ)、舛添 香(ますぞえ かおる)である。


淡島達はこの世界の詳しい情勢をザハナス達から講義を受けていた。


「えー先ずは我々獣人族の『種類』について御教えします。」


◇獣人族

ハウンドマン

獣人族の中では1番多い獣種である。

農家や商人、使用人、兵士など様々な分野で活躍している。


ウェアウルフ

主に兵士として活躍している事が多いが、中には政務官や学者として働いている者もいる。


ケットシー

大半が農家や使用人として活躍している。

娼婦として働く者も少なくない。


ダラーナ

上半身が人族で下半身が馬の獣種。

商人や農家、物資の運送屋として働いている。

※地方によっては(ケンタウロス)と呼ぶ。


フォーゲル

兵士として活躍している者が多いが、基本的に人族の社会の中ではあまり見かけることはない。


バンディットバニー

農家や酪農、使用人として働いている。

獣人族の中で1番娼婦として働いている。

奴隷商人では定番の『商品』となっている。



ルナール

祈祷師、まじない師、使用人として活躍している。


グノン

人族に一番近い容姿をしている。

非常に器用で、様々な分野の職をこなす。

主に魔法科学者や学問に身を置く事が多い。





「他にも多数種類は存在しますが、大まかなのはこのくらいです。あと、我々獣人族に限った話ではないのですが、未だに我々亜人族は奴隷商人の的になっているのです。」



淡島達はこまめにメモを取る。異世界に来て半年近く経つがまだ日本はこの世界の事をまだ知らなすぎである為、この無知が日本の命取りとならないようにしなければならない。


「舛添さん、今の話を聞いて気になる点はありますか?」


淡島副大臣が舛添に聞いてきた。舛添は持っていたペンを机に置いて答えた。


「うーん…奴隷商人の事が気になるわねぇ…」


「舛添さんも気になりましたか。万が一日本の監視網を掻い潜って、奴隷商人達が売りに来た場合…いや、逆に日本国民を拉致することもあり得る。」


「可能性は低いがゼロでは無いからなぁ…その点も含めてより一層警戒していくか。」


「まだ暫くは異世界の人達を日本国内に入れるわけにはいかないですね…」


ザハナスは3人はコソコソと話し合っているのを見て、自分の説明がわかりづらかったのかと思い心配していた。その様子に気付いた3人は引き続き講義を続けて欲しい事を伝えた。



「コホンッ、では次に亜人族国家について説明いたします。獣人族の国『ヴェルディル王国』はホリウチ殿に話した通り、東の地『タラトラス高原』で、中ノ鳥半島から約5000㎞近くに存在してます。ヴェルディル王国の王アビジアーナ・アンプルール様はグノンです。齢800と大変高齢ですが未だ健在で、今から400年前、前国王フェンリル・ウォルフィンとの次期国王を賭けた決戦に死闘の末勝利を収め現在に至ります。」


「え?『次期国王を賭けた決戦』って…次の国王は血筋や選挙などで決めるのではないのですか⁉︎」


「はい。我が国では建国当初からずっと続いてきた決まりなのです。国民の支持が一定値まで下がると、現国王と国民が推薦した者を戦わせるのです。私はその場面を見た事は無いのですが…もし現国王が勝てば無論王位はそのままになります。しかし、敗ければ被推薦者が王位を継ぐのです。『強者だけが王になれる』、これは私達が子供の頃からずっと教えられてきました!」




淡島達は絶句した。国としての(てい)を保つ事は出来ているかもしれないが、その中身はまさに『弱肉強食』の『強者主義』である事がわかったからである。



「ハハ…何だか…その国と国交を結ぶのが怖くなってきましたよ…」



堀内が苦笑いで答えるとザハナスは必死に堀内達の不安を払おうと弁明する。



「違います!違います!、あくまで先ほどの話はヴェルディル王国国内の王族関係者に限った事なので、他国に脅威を与える様な事はございませんし、アビジアーナ様は心優しい方です!他国に対し恐怖行為をする事はありません!」



「なら…いいのですが…では次をお願いします。」


「あ、ハイ!次に龍人族の国『ドラグノフ帝国』です。彼らの国は東の大陸『イーリアス』にあります。この国の王『バハムート』殿は歴代龍人族史上最強の王であり戦士です。タダでさえプライドの高い龍人族ですが、彼のプライドの高さは常軌を逸しています。少しでも龍人族を貶すような事を聞けばその国を攻め滅ぼすほどです。約50年前に、そのような事があったのを聞いたことがあります。」


「…(その国と関わるのは危険か。)」


「あの龍と対話が出来るのも龍人族だけですが、炎龍に対してだけは上手く関わる事が出来ないのです。理由は異常なまでの気性の荒さ。龍人族も同じ龍でもまず関わろうとはしないでしょう。」


「…。」



「次にドワーフ族の国『ドルキン王国』は北の地に存在する『ウルノス山脈』に囲われた国です。ウルノス山脈は中ノ鳥半島からやや北西8000㎞近くにあります。高く険しい山々で、ドワーフ族は長い年月をかけてその山脈に坑道を作り天然の要塞として利用しています。ドルキン王国の国王は『ドヴェルグ・ドルキン』殿です。1500年前に建国されたこの国は最初はダークエルフ族の里だったそうですが、安息の地を求めていたドワーフ族は、ウルノス山脈を見つけたのです。そして、ダークエルフ族との戦争の末、勝利して手に入れたのです。その時、軍を率いてドワーフ族を勝利に導いたのがドヴェルグ殿のご先祖様なのです。」



「その…ドヴェルグ国王はどういった方なのですか?」



「そのぉ…悪くいえば『傲慢』ですが、非常に真っ直ぐな方です。会談を行う際は、多少礼儀が欠けているとは思いますが、そこはご了承下さい。」



「わ、分かりました。」



「ドヴェルグ殿は珍しい鉱物や建築物に目がないのですよ。あと大の酒好きで…」


淡島達は「これはいい情報を聞いた」と思った。そこを上手く利用すれば彼らとの国交もスムーズにいくと考えたからである。





「次に水人族の国『バルフォール海底国』についてです。実際に見た事は無いのですが、話によるとこの国は常に『移動』しているのです。」



「い、『移動』している⁉︎国がですか⁉︎」



「え、ええ…しかし、一体どうやってその様になっているのかは分からないのです。彼らが我々の国に輸出入の為やって来ることはあっても、此方から彼の国へ行く事は一度も無いのですよ。あ、国王の名は『サリヴァーン・オルカフ』という方ですが、どの様な人物なのかは分かりません、申し訳ないのですが…」


「いえいえ!大丈夫ですよ。」


「ほ、本当ですか⁉︎(ホッ)では次にドリアード族の『リリスティーグ国』についてです。この国は西に約14000㎞先に存在する花の島『フラントラン』という島にあります。この国を治めているのは『シャロン・テオ』女王という方です。ハッキリ言いましょう、この国では騙される方が悪い…詐欺国家と言っても過言ではないです。ロクでもない国ですよ!全く本当に…」



淡島達はザハナスが、かなり怒っている事に気付いた。何故あそこまで怒っているのか堀内に聞いたところ、以前リリスティーグ国で詐欺に引っかかり多額の金を騙し取られた事があった事を聞いた淡島達は納得した。その後も彼の国に対する不平不満を話すだけだった。


5分後、冷静を取り戻したザハナスは申し訳無さそうに説明を続けた。


「スミマセン…では最後にエルフ族の国『アルフヘイム神聖国』についてです。北西の『ユーリスの森』にある国で国王は『ウェンドゥイル・アルヴァーナ』王と言う方です。あと、この国なんですが…」


「ん?」


「この国は現在…『奴隷産出国家化』の危機にあるのです。」


「何ですと⁉︎」


淡島達とキルト外務局員も驚愕していた。

何故その様な事になっているのか⁉︎周りは困惑していた。その時ー


コンコンッ

ガチャッ!


「失礼します。淡島副大臣、酒井陸将からで、何やら『とんでもない来客』がこの基地に来ているとの報告が出ているのですが…。」


「『とんでもない来客』?」



ーー中ノ鳥基地内 応接室



フレイヤは救護班に基地まで送られ、「この部屋で少しお待ち下さい。」と言われ現在に至った。豪華絢爛な部屋…という訳ではないが、非常に清潔感があり、フカフカのソファ、蟲甲素材を加工した様な滑らかなテーブル。全てがまるでドワーフの一流加工職人によって造られたような物ばかりだった。



「スッゲェ…」


あまりの素晴らしさにフレイヤは思わず口に出してしまった。


コンコンッ

ガチャッ!


「失礼します、大変お待たせ致しました。どうも、日本国外務副大臣の淡島徹と申します。」


フレイヤはスッと立ち上がり挨拶を返す。


「『アルフヘイム神聖国』王女のフレイヤ・アルヴァーナです。此方こそ、貴重なお時間を割いていただき、感謝に絶えません。」


淡島は右手をスッと出して握手を求める。しかし、フレイヤは握手をせずにその手を取って淡島の手の甲にキスをした。


「ッッッ⁉︎」


淡島は表にこそ出さなかったが、フレイヤの行動に驚愕した。実はエルフ族では手の甲にキスをするのが相手に対し最大の敬意を払う意味を持っていた。淡島は偶然にもエルフ式の挨拶をした事になる。フレイヤは手の甲にキスをした後、今度はフレイヤが右手をスッと淡島に差し出した。一瞬淡島は戸惑ったが、これがエルフ式の挨拶だと言う事に気付き、緊張はしたがフレイヤの手の甲にキスをした。


「き、恐縮です。」


「フフフ、エルフ族の挨拶を知っていたのですね。非常に嬉しく思います。」


いきなりの予想外だったが、幸いにも好印象でスタート出来たことに内心ホッとしていた。


「では早速お聞きしますが、本日はどういったご用件で?見たところ護衛の方も見られませんが…。」


「それは…」


フレイヤは再び目に涙を浮かべながら話を続ける。


「我が国を…助けて頂きたいと思い参りました。」


淡島は先ほどのザハナスの話を思い出した。


(「この国(アルフヘイム神聖国)は現在、『奴隷産出国家化』の危機にあるのです」)



「…詳しくお聞かせ頂けますか?」






ーー同時刻 ウンベカント正門


「にしてもなぁ〜まさかエルフ族の王女様が来てるとは思わなんだよ。」


「本当にな。にしても何でここに来たんだろうな?しかもたった一人で。ダリウスさんはどう思いますか?」


2人の自衛官と一緒に正門の警備をしていたケットシーのダリウス。彼は虎のケットシーで非常におっかない顔をしており元は傭兵だったとの事。


「もしや…助けを求めに来たのかも知れません」


「助け…ですか?」


2人がダリウスに詳しく話を聞こうとした時だった。ダリウスが何かに気付き警戒した。



「…お二方、向こうから何かが来ます。」


耳をピクピクと動かして唸り声を上げていた。2人もすぐに薄暗い平原に目を向けて警戒する。1人がケースから何かを取り出し、『それ』を空中に向かって投げた。すると『それ』は羽ばたいて薄暗闇の中へと飛んで行った。


ーー

小型偵察機『蜂鳥はちどり

日本の防衛開発局が作った日本独自の技術で作り出した携帯式小型偵察機である。大きさ7㎝、持続飛行時間18時間、ホバリング機能も付いており上空からの目標偵察に長けている。

ーー


腕に備え付けられた小型のパネルとモニターを通して操作し確認する。ダリウスはその光景を気になる様子でチラチラと見てくる。



するとモニターに騎馬集団が確認できた。フードを被ってはいるが全員武装しており、中には少し品のある服装をした人が1人いた。



「なんだこいつらは?」


「本部には伝えた。警戒を厳とせよとの事だ!」


数分後、更に5人の自衛官と人族と獣人族ハウンドマンの警備員2人、『WALKERウォーカー』1機がやって来た。そして、謎の騎馬集団はゆっくりとウンベカントへ向かってきた。




ーー謎の騎馬集団


「リマーベル伯、あれが例の町です。」


謎の騎馬集団の隊長格と思われる男が鎧甲冑を着けた集団の中で明らかに浮いた服装をしている人物に声をかける。


「ふむ…やっと着いたか。えらい時間がかかったわい!あの工作員(役立たず)どもめ!」


リマーベル伯と呼ばれる初老の男性は文句を垂れた後、装飾が施された携帯用酒瓶をグイッと飲んだ。


「仕方ありませんよ、かなり手間取っていた様ですがロイメル王国に潜伏していた工作員の情報があったからこそ、『雌エルフ』の居場所が分かり、監視が緩い場所を通ってここまで気付かれずに着いたのです。先ず良しとしましょう。」


「まぁ良い、仮にロイメルの者が今頃我々の存在に気付いたとしてももう手遅れよ。ここは既にニホン国の領土なのだからな。」


「…ですがどのみち密入国をした事に変わりは…」


「分かっておる!だからこそワシがおるのではないか!外務官のワシがな!お主達のような汚らしい格好をした者たちならともかく、ワシのような高貴な貴族がいればニホン国もそうやすやすと追い出したりはせぬだろう。」


「…。」


「それにしてもこんな広大な土地を手にいれるとは…北東の蛮族国家が偉そうにしおってッ!」


こうして騎馬集団は少しずつウンベカント正門前まで近づいてきた。



ーーウンベカント 正門


「来たぞ、警戒怠るな。」


騎馬集団が目と鼻の先まで近づいてきた。すると2人が騎馬から降り、1人は騎馬に乗ったまま近づいてきた。騎馬に乗っているのは先ほどの派手な服の男だった。


「そこで止まって下さい!」


自衛官の一人が声をかけて静止する。


「こんな夜更けにどういったご用件でしょうか?」


すると騎士の一人が目をキッと向けて身を乗り出す勢いで怒鳴った。


「無礼者が‼︎‼︎この方はテスタニア帝国の外交官にして『伯』の称号を持つ、リマーベル・サナル様であるぞ‼︎」


この様に説明すると馬に乗った初老の男が、見下す様な目で此方を見て踏ん反り返っていた。リマーベルは手を軽く上げて、騎士を引き下げる。そして、馬を少し進めた後口を開ける。


「苦しゅうない、ワシをこの町の責任者の所までさっさと案内せよ。ん?そこの緑色の服を来た兵よ、随分と変わった服をしているな?」


自衛官達はこの者たちの無礼な態度にイラっとしていたが、問題を起こさなすよう態度に気を付けて一応名乗った。


「ハッ!私は日本国陸上自衛隊所属のー」


しかしリマーベルは自衛官達の自己紹介など微塵も聞いていなかった。彼は自衛官達の下品な服装、亜人族と馴れ合っているのを見て軽蔑的な言葉を口に出した。



「ハッ汚れた動物達と馴れ合うとは、やはりニホン国は未開で汚らしい野蛮国家の様だな。サッサと案内しろ奴隷どもが!」



後ろにいる騎馬集団からゲラケラと笑い声が聞こえる。自衛官達は今にもブチ切れ寸前だったが、ダリウスに至っては飛び掛かってもおかしくない様子だった。


「(本部には連絡を入れてます。基地まで案内するようにとのことです、決して問題は起こすなと!)」


「(了解した。『WALKERウォーカー』のphaseをGreenまでに抑えとけ。)」


「おい奴隷!何をコソコソしてやがる!」


1人の騎士が声を荒げる。この言葉を聞いた自衛官はこめかみの辺りがピクついて怒り爆発寸前だったが何とか堪えた。


「申し訳ありませんでした!ではご案内致します。」


「頼むぞ奴隷。」


「…我々は奴隷ではございません。」


「はぁ?何を言うとるのだキサマ?遅かれ早かれ我が国の植民地となる国の民を『奴隷』と呼んで何がおかしい?」


リマーベルはほくそ笑みながら答えた。そして持っていた馬用の短鞭を振り上げた。


「あと貴様ぁ…誰に向かって口答えして…おるのだ‼︎‼︎」


リマーベルは振り上げた短鞭をその自衛官に向かって振り下ろす。すると狙ってたかどうかはわからないが、自衛官の眉間に当たった。鉄帽をしていた為直撃は免れたが自衛官の額からは血が滴り落ちた。


ダリウス達は驚き声を荒げるが、自衛官は手を出し彼らを制止させる。



「ふん!本来ならこの場で斬り殺していたところだがワシは優しいのでな、その傷で済ませてやるわ!ワシに感謝するんだなぁ〜。」


「申し訳ありませんでした…」


自衛官は軽く礼をしたが、その後すぐに近くの騎士が彼の背中を突き飛ばす。


「早く行け‼︎クズが!」

ドンッ!


ダリウス達は彼の怪我を心配していたが、決して声を上げず、取り乱さずに彼の後に続いた。自衛官は呻き声一つ上げずそのままリマーベル達を基地まで案内する。




地味な注目点としてフレイヤの喋り口調です。あまり重要ではありませんが…。

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[一言] 蜂鳥のモデルはアメリカ陸軍が採用している、「Black Hornet」ですかね。一機約30万円お買得‼️
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