第131話 賢王石の力
誤字報告いつもありがとうございます!
ーーー
テベリア研究所 最下層
賢王石実験保管区域
ーーー
地下深い故に薄暗い。通路には魔電灯が等間隔に設置されてはいてもその薄暗さは殆ど変わらず、逆に不気味な雰囲気を醸し出していた。
通路の壁の内部には剥き出し状態で太いものから細いものと様々な大きさのケーブルチューブや管がビッシリだった。
時々、水蒸気か何かがフシュー! と噴き出たような音が何処からか聞こえて来る。
そんな通路を研究者や魔導技工士達が当たり前のように行き交っている。通路によっては魔電灯が点かない所もあるため、携帯用の魔灯を持ち歩くのが必須。
一階部分の清潔感は何処へやらな世界であるが、それを気にするものは此処には居ない。そんな事では此処ではやっていけないからだ。
そんな入り組んだ通路を皇帝とDr.スヴェンが歩いていると、かなり広い空間へと辿り着いた。
夥しい数のケーブルや管、チューブが張り巡られていて、層のように分けられた階には大勢の研究者達と無数の観測用魔導機器やらデータ収集用魔導機器が設置されていた。勿論、出入り口のある一層にも円状に無数の魔導機器が置かれており、研究者達がそこに映し出されているデータ画面に目を凝らしている。
そんな明らかに他とは異質な空間の中央部…そこには、此処へ辿り着いたなら先ず間違いなく目に付くであろう直径80mにもなる巨大なカプセル型の透明な容器が佇む様に置かれていた。カプセルにはどこに繋がっているのか、数え切れない程のチューブやらコードやらがつけられており、魔導技工士達が梯子や金網の足場を伝いながら入念に整備している。
そして、なによりも重要なモノがその巨大カプセルの中に入っていた。
その表面はツルツルと淡い虹色に煌めいていた光沢を放っているが自然の岩肌の様にゴツゴツとしている。カプセル内部はソレ以外は何も入ってはいない。にも関わらず、ソレはカプセル内の中央でフワフワと漂っている。そして、巨大カプセル容器中には淡い紫色の靄のようなものが立ち込めている……否、奔流しているのだ。まるで渦巻く大海のように、激流の河のように……音こそ聞こえはしないが、錯覚的にゴォォゴォォ! と滝の如き音が聞こえてくる気がした。
ソレこそ数百年前にレムリアが見つけ出したこの世界最大にして最強の巨大な魔鉱石……賢王石である。
「何度見ても……凄まじいなコレは。思わず身震いしてしまう」
賢王石が収容された巨大カプセル容器を見上げながら皇帝はポツリと呟いた。首筋には嫌な汗が数滴流れている。
「お前だけでは無い。私だってそうさ。この無限にも近い強大かつ膨大なエネルギーの暴風を間近で見てると、時折ゾッとしてしまうよ。飲み込まれそうで。他の職員だってそうだ」
魔導科学バカの彼でさえ、賢王石の前では思わずすくみ上ってしまう。それほどまでに強大なエネルギーの塊であるが故にもっと間近で見てみたいという誘惑に駆られてしまう。
皇帝は一歩、また一歩と賢王石に近付こうとする。
「友よ。そこから先は進まぬことだ……忘れたのか? アレの危険性を。あの特殊対魔容器に収容してもなお安全ではない」
友の声にハッと我に返った。
ふと足元を見ると、あと一歩踏み出しそうとした先には赤く光る大きな魔方陣の一部があった。
脈動する様に光る魔方陣をよく見れば、それは賢王石を中心に描かれていた。
まるで何かが漏れ出るのを防ぐように。
皇帝はゆっくりと片足を引き、そのまま進んだ分だけ後退した。
「すまない、スヴェン。私とした事が賢王石に魅入られて注意が疎かになっていた」
「気にするな、ルデグネス。そこから先へは特殊防護服を着替える必要がある」
「あぁ、そうだな」
皇帝が見上げるとそこには先と同じように作業している魔導技工士達がいた。彼らは魔方陣の内側で作業している。そして、彼らの服装は頭部の前面部以外、茶色のブカブカなゴム製の作業着を纏っていた。一切の隙間はなく、背中に酸素補給バックを背負い酸素の供給を受けていた。
「厄介なものだ。これほど巨大な容器に収容されているにも関わらず」
「魔導瘴気……一定量以上を身体に浴びれば忽ち深刻な臓器不全を引き起こし、徐々に内部から蝕み、死に至らしめる恐ろしいモノよ」
「アレを完全に抑え込むか、処理する方法は無し……か」
「今の人類に出来ることは身体に受ける魔導瘴気の影響を少なくさせるくらいが限界なのだ」
無限に近い可能性を秘めた強大なエネルギー物質である賢王石。その取り扱いは非常に難しく少しでも間違えれば、良くて都市の1つが完全に消滅する事態を引き起こしてしまう代物だ。
そして、賢王石の危険性はそれだけではない。
魔導瘴気。
賢王石は常時多量の魔導瘴気を周囲に放出しているのだ。それは不可視な物ではあるが特殊な装置で賢王石周辺を確認すると、ユラユラと揺らめく炎のように真っ赤な何かが賢王石から、そしてカプセルからと全体的に放出されている。
Dr.スヴェンは特殊な魔方陣をカプセルの真下に設置。発動させればカプセルから滲み出ている放出された魔導瘴気を9割以上遮断する事は出来る。
しかし、魔導瘴気の脅威が取り除けた訳ではない。
必ず決められた時間に退室し、特殊除染室にて身体を隅々まで洗わなければならない。無論、衣服なども含めてである。皇帝もDr.スヴェンもこの部屋を出る際に特殊除染室へと向かう必要がある。
「犠牲者の数は増えるばかりか。後でリストを持ってきてくれ。汚染者とその家族らに支援金を贈る算段をする」
「分かった。だが良いのか? かなりの数がいるぞ?」
「百も承知だ。だが彼ら国の発展のために己が身を犠牲にした勇士達だ。これくらいの支援はするさ」
そう伝えると2人は保管区域を後にした。
魔導瘴気は賢王石によって初めてその存在が確認され、浴びると原理は不明だが人体に多大な悪影響を与えるモノである。魔導瘴気放出を防ぐ意味で特殊対魔容器を用いていても外部への放出は止め切れていない。
多量に浴びれば重度の臓器不全、皮内火傷などの症状が出現し、10日から2週間以内に死に至る。少量でもその恐ろしさは無視出来ない。症状の出現が遅延するだけでいつかは発症するのだ。期間は1年から2年半の間。
今現在、レムリアの医学術では対症療法すら困難を極める……深刻な問題の1つでもある。
そして、この魔導瘴気が持つもう1つの恐ろしい特徴がある。
それは『急性結晶化症候群』と言い、被害者の症状が進むにつれ、身体が徐々に結晶化するという病気である。その結晶化した組織は無機質である魔鉱石と限りなく近い組織へと変態化するのだ。そして、最終的には人の形をした魔鉱石へと成り果ててしまう。更に恐ろしい事に魔鉱石化した遺体からも魔導瘴気が放出するのだ。
無論、そんなモノは資源として活用出来るはずもない。そもそも魔鉱石としてのエネルギー量は粗悪な魔鉱石よりも少ないのだ。
こんな恐ろしい事が起きてもなお、レムリアは実験と研究を続けている。続けなければならないのだ。それで初めて、亡くなった者達が救われる。彼らの為にもやり遂げなければならない。
「後戻りは出来ぬ……」
皇帝は踵を返した際、カプセル内に以前は存在しなかった装置が組み込まれている事に気付いたが、そこでは敢えて触れず、案内されるがままDr.スヴェンに続いて地上へと戻って行った。
ーーー
テベリア研究所
遠方型魔導モニタールーム
ーーー
薄気味悪い地下フロアから一変して清潔感溢れる地上フロアへと戻ってきた2人は、最上階のとある一室にいた。
天窓オープンの部屋は加工された魔鉱石を装飾としたシャンデリアが吊り下げられていた。多くの光源からは美しい灯が2人を照らす。
部屋の一画には壁一杯に菱形の魔導モニターが設置されていた。
2人はそのモニター画面に向かい合う様に椅子に腰掛ける。
「丁度、時間だな。さてさて……ノスウーラの力をとくとご覧あれ」
「そうさせてもらう」
ウキウキと上機嫌に板状の水晶端末を操作するスヴェンを苦笑いで眺めながら、皇帝はいくつかの質問をした。
「試験場所はディエナ荒野か?」
「あぁそうだ。第2世界最大の軍事兵器実験場、ディエナ荒野。面積約7000平方㎞の土地で大半が砂漠と荒れ果てた山岳地帯となっている土地だ。もともと不毛の地が度重なる兵器実験で文字通り、死の大地となっている」
「ディエナ荒野のある第8領国には感謝せねばな」
「ははは! 感謝など勿体無い。そもそもディエナ荒野を実験場として推してきたのは第8領国からだ。王侯貴族を一等レムリア人にする代わりとして提供してきたのだ。まぁ此方としては実験場が多い事に越したことはないからな」
「その王侯貴族も今では汚職が原因で一族郎党、獄中暮らし。愚かなものよ」
そんな話をしているうちに、大きな菱形の魔導モニターからボンヤリと何かが映り始めた。所々荒くなる見難い映像ではあるが、何が映し出されているのかは見て取れた。
そこは荒れ果てた荒野にゴツゴツした山岳地帯。少し離れた所からは砂漠の様なものも見受けられた。地球で言えばアメリカの西部に近い世界が画面から映っている。
その映し出されている場所こそ第8領国内にある第2世界最大の軍事兵器実験場……ディエナ荒野である。
「相変わらずの見辛さだな。もう少し高画質な映像を見たいものだ」
「勘弁してくれ。これでも最新鋭の魔導映像機器だぞ。等間隔に設置している映像魔波塔を通して現地から送られてくる映像に多少の粗さは仕方がないのだ。それと遠ければ遠いほど映像は酷いものだが、これでも良質化した方なのだぞ」
「ハハ、冗談だ。さて、早速解説を頼む」
軽いじゃれ合いを済ませた皇帝は映像の解説をスヴェンに求めた。
「あぁ、そうだな。現地と多少の時間誤差はあるが……もうそろそろ見えて……お!? アレがそうだぞ!」
スヴェンが目をキラキラさせて指差した所から何かが映像機に向かって飛んでくるのが分かった。距離はかなり離れている筈だが、それでもこの粗い映像から伝わるその姿形から相当な大きさだった。
「おぉ、アレがそうなのか?」
「そうだとも! アレこそ、レムリア最強にして最大の軍用飛空艇! ノスウーラ級殲滅型特殊大戦艦だ!!」
それはあまりにも、あまりにも巨大な戦艦だった。
現段階においてレムリア帝国最大の戦艦は、ドロローサ級戦艦空母の520mだが、ノスウーラはそれよりも一回り以上の大きさを持っていた。
ノスウーラ級殲滅型大戦艦ーー
全長…750m
動力…8式魔導出力型エリクシル機関
半永久超魔導増幅型抽出ル・ノーア機関
浮力…3式飛行アイエール機関×3
速度…30ノット
兵装…艦底前部:魔導転送砲1門
艦上前部第1甲板:49㎝4連装砲塔1基
艦上前部第2甲板:45㎝3連装砲塔2基
艦上左部:対空高射角砲10基
15㎝2連装砲塔2基
艦上右部:対空高射角砲10基
15㎝2連装砲塔2基
艦上後部第1甲板:45㎝3連装砲塔2基
艦底中央部:15㎝単装砲10門
艦底後部:15㎝単装砲8門
艦首左右部:魔力感知式誘導ミサイル4門
艦載機:艦載攻撃機エストレーラ5機
艦載資源調査機3機
小型機動強襲艇アーヴァ3機
粗い映像ではあるがその巨大戦艦の姿はハッキリと見て取れた。皇帝はそのあまりの巨大さに思わず溜息が出てしまう。
「何というデカさだ……兵装に至っては従来の戦艦の倍以上の火力があるのではないか?」
「御明察。艦底部は魔導転送砲もあって砲門の数が少し寂しさはあるが、総合火力は魔導転送砲を抜きにしてもテルメンタ級やエスパーダ級の倍近い火力を有している。無論、防禦力も向上化させている。そして、もう1つ注目すべき点は……艦内兵器製造工場がある」
「艦内弾薬製造工場? まさか、艦内で魔導ミサイルや魔導砲弾を造れるというのか?」
「またまた御明察」
「確かに凄まじい事だ。だが問題もあるではないか? 例えばそうだな……魔導エネルギーはどうするのだ? 我が帝国の艦艇に使われる砲弾等には火力、貫通力、耐熱、耐湿を持つ魔導エネルギーを組み込む事で初めて兵器として活用出来るのだ。従来の艦艇でもそれ自体造ろうと思えば可能やもしれん。だが、魔導エネルギーは有限だ。そうなれば艦艇の動力源たるエンジン部から抽出する必要がある。そうなれば艦艇は動力を失い、墜落する。まさか、ノスウーラを自食行為で潰すつもりか?」
皇帝は鋭い視線でスヴェンに問いかける。
無論、スヴェンとしてもそれに反論出来るが、直ぐにそれが出なかったのは彼の鋭い眼光に気圧されたからだ。彼は自分の良き理解者であり、友である。しかし、基本を忘れてはならない。彼は圧倒的なカリスマ性と千里の如き先の展望を見ることが出来る。
要するに王者の資質を持つ男なのだ。
あまり彼を不快にさせるほど、Dr.スヴェンは愚かではない。伊達に長年彼と苦楽を共にしていないのだ。
「とんでもない。それも賢王石の解析率が上がった事で解決済だ」
「ほぅ?」
レムリア帝国を始めとする第2世界の国々の大半が持つ武器兵器には魔導式加工技術なる魔導科学技術の根幹とも言える技術が使われている。
第2世界の武器兵器。
日本がいる外界及び地球の武器兵器。
見た目や形状こそ似ている部分は多いが、その仕組みには大きな違いがある。
地球側の銃火器は弾頭、薬莢、火薬、雷管で基本構成されている。銃器の撃針が弾薬の雷管を叩くと雷管内部の火薬が燃焼。すると、薬莢内の伝火孔を燃焼した際に発生した熱エネルギーの燃焼ガスや火花が通過、火薬に引火して一気に燃焼。その燃焼により発生した燃焼ガスで内部圧力が一気に上がる事で弾頭が押し出される。そして、銃身内で更に加速し、発射される。
第2世界側の銃火器は弾薬の形状こそソックリではあるが仕組みが違う。
火薬というものを使っていないのだ。
薬莢内に入っているのは火薬ではなく、衝撃燃焼式魔導エネルギーが注入されている。雷管を叩くための撃針には数ミリ単位の魔法陣が彫られ、それが雷管部にも刻まれている。撃針と雷管が接触する事で瞬時に魔法陣の効果が発動し、燃焼効果を持つ魔導エネルギーが一気に発生。その燃焼式魔導エネルギーが魔火孔を通過する事で、薬莢内に込められている衝撃燃焼式魔導エネルギーが反応し内部で魔導熱衝撃ガスが発生。その時、弾頭底部に刻まれている魔法陣が反応、発動して更に魔導熱衝撃ガスの力を増幅する事で弾頭が押し出される。後は銃身によって更に加速し発射される。
魔導砲弾も似たような原理となっている。
しかし、この弾薬などに刻まれている魔法陣は環境の影響を強く受けてしまう為、湿気や砂塵、泥などに弱い傾向にある。その対策としてDr.スヴェンは悪環境にも耐え得る性能を持つ銃火器を開発研究を進めた事で、現在は大分改善されつつある。が、それでも銃火器不良の報告は後を絶たない。
また、魔導科学技術の活用は銃火器に限ったものではない。
軍服などの兵装にもその技術は使われている。
例えば寒冷地へ兵を派遣するにあたっては、毛皮などを使った暖房服の着用は当たり前。それに加え、魔導式加工技術により耐寒効果を持つ魔導エネルギーを込める事が出来る。その逆も然り。耐熱魔導エネルギーを込めた熱帯地方用の冷房服。防弾ベストの役割を持つ耐衝魔導エネルギーを込めた軍服。耐火、耐毒、耐風など…その用途は様々で臣民達の暮らしは勿論、軍事としても魔導エネルギーは必要不可欠なエネルギー。つまり、それらを抽出できる魔鉱石も必要不可欠な資源なのだ。
飛空艇や自動車の動力源にも魔導エネルギーは使われている。軍用飛空艇や車両に至っては、装甲も魔導エネルギーと加工された魔鉱石が使われている。
「賢王石は今まで使ってきた魔鉱石から抽出される魔導エネルギーとは比べ物にならない程の超高質な魔導エネルギーだ。それは、ほんの僅かな量で戦艦級の飛空艇をフル活用出来るほどに。普通であれば相当量の魔導エネルギーが必要にも関わらず、だ」
「それは分かっている。私が聞きたいのは艦内製造工場で造られた弾薬に必要な魔導エネルギーをどうやって得るのかという事だ。まさか動力源からなどと馬鹿な事は言わんだろう?」
「無論だ。艦内弾薬製造工場の一角にある装置を設置してある。それは本国の賢王石から発生している魔導エネルギーをその装置へ転送させるものだ」
「なんだと!」
その返答に思わず皇帝は椅子から立ち上がる。
要は魔導エネルギーを本国からノスウーラ艦内に設置された転送装置なるものへ転送出来ると言うのだ。確かに、無限に近い莫大な魔導エネルギーの塊である賢王石からなら、いくら抽出し転送しても困る事はないだろう。
しかし、幾つか疑問も出てくる。
「一体どうやって抽出するというのだ? 賢王石の抽出は従来の魔鉱石と違う。より慎重且つ精密な作業が求められるのだぞ?」
「お前の視認性も落ちてしまったか、ルデグネス?」
「む? まさか、あの容器で暴風の如く荒れ狂うエネルギーの!?」
驚く皇帝の言葉にスヴェンはニッコリと笑顔で返答する。
あの時見た巨大なカプセル容器……元々巨大であった賢王石よりも遥かに巨大なあの特殊対魔容器を思い出していた。
確かにあれ程膨大な魔導エネルギーを放出し続けていては容器が破裂してしまう。溢れるばかりの膨大なエネルギーを各都市部に展開している魔導障壁構成に活用しているが、ノスウーラもその1つとして造られた事にもなる。
容器内で見た謎の装置。
アレがその転送装置と見て間違いないだろう。
「勿論、魔導瘴気対策も敷いているとも。艦内転送装置を中心に強力な対魔導瘴気の結果を二重に張る。そして、工場で造られた弾薬に魔導エネルギーを注入させる魔導技工士達には特殊防護服を着用。定期的に清掃もさせる」
「そうか……ふむ。しかし、転送装置など構造理論は確証出来ていたが、それに必要な莫大なエネルギーが必要だったな? そうか、賢王石の解析率が上がった事で、その分のエネルギーのコントロールも可能となった。故に、より大量の賢王石から得る魔導エネルギーが利用可能となったということか」
「そうだ。それは魔導転移装置の有用性を格段に上がる事にも繋がる。そして、このノスウーラにも組み込まれているのだ」
「……動力源か?」
「そうだとも! 従来のエリクシル機関のみではあれほど巨大な戦艦を動かす事は難しいからな。そこで新たな魔導エンジンたる半永久超魔導増幅型抽出ル・ノーア機関を開発したのだ! これは今までのエンジン概念を覆すぞ! 何せこれにも転移装置を組み込んでいるのだ! つまり、賢王石から定期的に魔導エネルギーを抽出し、それを動力として機動力と速力に更なる拍車をかける! 特殊加工の魔導機関だから賢王石の膨大な魔導エネルギーにも耐え切れる代物よ! ル・ノーアがエリクリシルを補佐するというより、エリクシルがル・ノーアを補佐してると言っても良い。ル・ノーアこそノスウーラの心臓なのだ!」
スヴェンが大手を広げて高らかに叫ぶ。
自慢のオモチャをこれでもかと言うほど派手に見せびらかす子供の様だ。
故に微笑ましく、故に恐ろしくもある。
使い様によっては自国すら破滅しかねない魔導機械をあの男はそんな事など二の次に考えて、そして造っている。
「なるほど……理解した。そろそろ始まりそうだぞ? 解説は任せた」
「おう? そうか……では、とくとご覧あれ」
王者の如く悠然とした姿で空を飛行するノスウーラは艦底、艦尾の基部の半球体が赤く発光する。独特なエンジン音を響かせるそれは王者の息吹。空の道に阻める雲すら避けるが如く風格には脱帽したくなる光景だ。
映像は艦橋内部へと切り替わる。
内部は従来の戦艦の艦橋よりも一回り広く、構造自体は大した違いは見られない。内部は三段型の雛壇の様な構造となっており、一番下の一段目が操縦士や航海士、気象士らが配備され、其々の専用パネルと操作盤に向かい合っている。二段目が砲術士、雷撃士、魔波観測士らが配備され、索敵や戦闘面における重役を担い、戦闘配備に付いている乗組員達に指示を送る。
一番上の三段目が指揮官たる艦長が座す艦長席が真ん中に設置されている。
映像が切り替わった事を聞いたのか配備されていた艦長を始めとする各乗組員らが映像機に向かい敬礼する。
「皇帝万歳! 私はレムリア帝国聖規軍第8親衛艦隊所属テルメンテ級戦艦2番旗艦『テルリゴーグ』艦長、アーゼン・ファトゥ・リゴーグ大佐であります! 此度はこの様な光栄なる試験飛行に任命された事を誇りに思います!! つきましては、この任に恥じない素晴らしき成果をお見せしたく存じます!!」
この男、リゴーグ大佐は緊張気味に声を張り上げ、映像機の向こう側にいる皇帝に対し、この任務を与えられた事の僥倖と歓喜の意を伝える。他の乗組員達からも緊張している様子が安易に伺える。滅多にお目にかかる事のない自国のトップが、ワザワザ自分達の働きを観てくれている事に身体が強張っているのだ。
そんな彼らの様子を微笑ましそうに眺める皇帝は、Dr.スヴェンから手渡された魔導無線機を受け取り、彼らに向けて声を掛ける。
『ありがとう、リゴーグ大佐。そして、ノスウーラの乗組員ら諸君。君たちは偉大なる我が国の新たな矛となる艦の性能を証明すると言う名誉ある大命を受けた……その事を理解してくれた事を、私は嬉しく思う』
「ッ!? こ、こ、光栄であります!!」
『ハハハ、肩の力を抜き給え。それでは疲れるだけだぞ?』
「は、ハイ!」
『では、諸君……楽しみにしているぞ』
無線のスイッチが切れる。
後はただ映像を観るのみ。
映像には士気が高まるリゴーグ大佐と他乗組員達が気合を入れて各々の役割に取り組んでいる光景が映っていた。
ーーー
ーー
ー
映像は進み…案内の副艦長が艦内部の説明が終わる頃、突然、警戒警報が艦内全体に鳴り響いた。
『魔波レーダーより感あり! 11時の方向より敵艦隊捕捉! 総員戦闘準備!』
映像から聞こえて来た艦内放送に、皇帝はスヴェンの方へ目を向ける。スヴェンは特に焦るでもなく、お茶を啜りながら映像を眺めていた。
「スヴェン、敵艦隊が見えたと来たが、それは演習としてか? それとも何か仕掛けたか?」
目を細める問い掛けて来る皇帝にスヴェンは答えた。
「ハハハ、常任理事国の3カ国から少ーしばかり敵役を貰ったのよ」
「常任理事国からだと? ガルマ帝国、エル・ドラヴィル王国、ルシール大公国からどんな連中をだ?」
「罪人だよ。軍法を犯した元軍人の囚人達だ。どっちみち死罪を待つだけの連中だ。『ディエナ荒野の巨大戦艦を撃沈する事が出来れば、晴れて自由の身だ』と伝えてある。奴らは死に物狂いで戦うだろうな……何せ命と自由が掛かっている」
「よく逃げなかったな。軍艦を与えられたのならそのまま逃げることも出来たのではないか?」
「奴らも馬鹿ではない、ということだろう。レムリアからは逃げられないと分かっているのだ。それに奴らにはもし逃げた時は艦に設置した遠隔操作の爆弾が爆発する仕組みになっている事を伝えているからな。つまり進むしかないのだ」
「全くお前は……悪魔か?」
「ハハハ! それはあながち間違いではないかもな! 魔導科学の真髄をこの目で見て、そして触れられるのなら私は喜んで悪魔に魂を売ろう。ほれほれ、いよいよ始まるぞ」
スヴェンが映像を見るよう促すと、艦橋内部へと映像が切り替わる。艦橋正面には複数の窓が設置されており肉眼による視界の確保もされている。その正面斜め上には菱形の魔導パネルモニターも設置されており、魔導監視映像により艦底部から地上の様子を伺い、また正面部から見える景色の一部分を拡大化する事も可能。
(従来の軍艦と内部構造の差はほとんど無しか……ふむ、素晴らしいではないか。これなら他艦の者でも即時対応も可能だな)
改めて関心していると、魔導モニターが敵艦隊が確認出来た方向へ映像を拡大化させていた。
まだ豆粒程度だが、確かに多数の艦影が確認出来る。魔波レーダーも上々の働きだ。
「艦種識別……中央に展開する艦隊はガルマ帝国、右陣はエル・ドラヴィル王国、左陣はルシール大公国の艦隊です!」
「魔波レーダーより敵艦数確認! その数50!」
「主砲群、有効射程まであと10分!」
「魔力感知誘導ミサイルは有効射程内です!」
「よーし! 魔誘導ミサイル発射用意! 1番と3番サイロだ! 雷撃士、第1、第3雷撃制御室へ送れ!」
「「ハッ!」」
艦長のリゴーグ大佐の指示のもと、全員が一丸となって無駄なく戦闘態勢を進めていく。雷撃士達が雷撃制御室へ直ぐさま命令を送り、主砲制御室では何時でも撃てるよう発射準備を進めている。
「観測班、敵艦隊の動きはどうだ?」
「ハッ! 砲撃準備を整えてある様子が見て取れます!」
「しかし、空母が見当たりません。艦載機が飛んでくる事は無さそうです」
「対空砲の準備は怠るな! 敵はどんな手を使ってくるか分からん!」
「「ハッ!」」
そこに雷撃士から報告が上がる。
「艦長、魔誘導ミサイルの発射準備整いました!」
「よし! 観測班、魔波探知レーダーによる対象の捕捉だ!」
「了解……捕捉完了!」
「用意……撃てェェ!!」
次の瞬間、艦首左右のミサイルサイロから魔誘導ミサイルが合計4発が発射された。煙の尾を引く筒状のソレは、先端部が突起状に少し膨れ、後部に一対の翼が装着されている。
4発の魔誘導ミサイルは捕捉した敵艦へ向けて真っ直ぐ飛んでいく。そして1発、また1発と敵艦へ直撃し、大きな大爆発を発生させる。
その爆発は凄まじく、近くにいた駆逐艦も巻き添えに一度に複数艦が火の塊となって墜落していく。その中で捕捉された一隻の駆逐艦が直感で気付いたのか、急速旋回を始めた。何とか魔誘導ミサイルを避けようとしたのだろうが、結果的にソレは無駄に終わった。
避けた方向に魔誘導ミサイルも向きを変えて追って来たのだ。
そして、その艦も他と一緒に火に包まれた鉄くずと化して堕ちていった。
「全弾命中!」
「敵残存艦艇……40!」
「砲撃班より報告、主砲発射準備完了!」
「観測班より報告、主砲有効射程に入りました! 敵艦の有効射程まであと5分!」
「よーーし、砲雷撃戦用意! 撃てェェェェェェ!!」
艦長の命令が下され、遂に主砲がその威力を発揮させた。轟音と共に黒煙と火が砲口から噴いた。49㎝ 4連装砲塔が火を噴き、続いて3連装砲塔2基が火を噴いた。装填された魔導砲弾は貫通力に長けた遅延式信管の徹甲弾。6式魔導砲弾である。
49㎝ 4連装から放たれた魔導砲弾の直撃を受けた戦艦は瞬く間に装甲を貫通され、内部で大爆破が発生。敵艦の戦艦級があっという間に撃沈される。まるで羽虫の様に火を纏いながら大地へと堕ちていく様は的であれ何処となく虚しさを感じさせた。中にはそのまま貫通し、さらに後方の艦も装甲を貫かれる光景もあった。
尚も放たれる4連装砲塔、3連装砲塔からの砲撃に次々と撃ち落とされる敵戦艦。まだ射程外にも関わらず、砲撃をしてくるも当然届く訳もなく。虚しくノスウーラの遥か前方で爆発するのみであった。
次々と撃沈される敵艦隊はどんどんその数を減らし…射程内に入るまで残り1分半を切った時には残りがたったの20隻となっていた。
「敵艦隊反転していきます!」
「尻尾を巻いて逃げる気か!?」
「いえ、ガルマ帝国の艦艇5隻のみが全速前進で突っ込んで来ております!」
魔導モニターにはエル・ドラヴィル王国の艦艇9隻とルシール大公国の艦艇6隻が撤退を始めていた。しかし、中央にいたガルマ帝国の艦艇だけは引き返すでもなく、そのまま此方へ突っ込んで進んでいた。ガルマ帝国5隻の内、3隻は先の砲撃を受け、中破から大破のレベルまで追い込まれていたがそれでも彼らは戦おうというのだ。
その報告を聞いたリゴーグ大佐は思わず口角を上げて笑みを浮かべる。
「流石は劣等人種といえど、誠なる武人であるガルマ帝国の民よ。歴史書が正しければ、その真っ向なる武人気質は実に厄介よ。その気高き精神に敬意を評し……ノスウーラ最強の砲撃を以って撃滅しようではないか……特殊砲撃班、魔導転送砲発射用意!」
艦長リゴーグの高らかな指示のもと、特殊砲撃班の制御室は慌ただしく動いていた。その区域にいた班員たち全員が特殊防護服を着用している。
「魔力隔絶式安全弁拡張」
「魔導力安定化リング装置作動。1番、2番、3番全て正常に回転確認」
「魔導転送砲砲身耐久性向上! 52……86……93……安定!」
「転送装置作動5秒前……4……3……2……開始」
「転送装置作動確認! 各測量値安定確認! 異常無し!」
「魔導瘴気漏れの確認見られず! 異常無し!」
「リング措置3番より一時不安定確認! 現在は安定! 抽出に異常無し!」
「魔導転送砲魔力莢充填率80……85……93……98……100……ひゃ、106!」
「リング装置回転に不安定さ確認!」
「砲身耐久性限界値突破! このままではー」
『よーし……魔導転送砲……発射ァァァァァ!』
艦底前部に備え付けられた筒状の物体。ソレはメカニックな中世の大砲に近い容姿をしている。転送装置が作動し、砲口側に等間隔に付いていたリング型の装置がゆっくりと…そして加速しながら回転を始めた。そのリングは回転の勢いが増すにつれて紫色に淡く光り始めた。その光が強くなるにつれて金属が擦れるような甲高い音が周囲に響き渡る。そして、砲口側に付いていた3つのリング装置は砲身から分離し、紫の電気を纏いながら高速回転を始めた。
それは魔導転移装置と非常に酷似していた。
「こ、これは……」
皇帝はその光景の凄まじさに思わず椅子から立ち上がる。
砲口から放たれたソレは巨大な一本の柱。
紫色の光弾色をした巨大なビームそのものだった。巨大なビームの柱は距離が伸びるにつれて扇状に拡散し、射程範囲を大きく広げた。その巨大な紫の光弾色ビームを受けた艦艇は瞬く間に爆散し、粉微塵に吹き飛んでいく。死力を尽くし立ち向かおうとしたガルマ帝国の艦隊は勿論、恐れをなしてバラバラに退却を始めた他の2カ国の残存艦隊をも飲み込んだ。
それでも巨大なビームの柱は止まる気配を見せず、そのまま突き進んでいくと、遂にははるか遠方に聳え立つ大山へ直撃した。巨大な紫の光弾色に大山が飲まれてから数秒後、漸くビームの柱は段々と細くなり、遂には消失した。
魔導転送砲のリング装置は回転を止めて再び砲身へと戻った。
そのあまりにも現実離れした光景に艦橋内の乗組員らは勿論、皇帝も唖然としていた。
「や、山が……」
観測班がボソリと口を零した。
それを聞き逃さなかった他の観測班が魔導モニターで、直ぐにビームの方向へ映像を拡大した。
そこに映っていたのは平たくなっている山だったものだ。他の山々よりも飛び抜けて高い標高を持つ山が、綺麗さっぱり消えていた。否、残っている根元部分のビームが触れた断面図から察して……焼失したのだ。
融解したもの独特の溶けたような痕が残っていた。
何処よりも高い山は、今では何処よりも低い山……ではなく、平坦な丘と化している。
映像は此処で切れてしまった。
「なんという…………」
「…………」
驚愕が止まらない皇帝は体ごとスヴェンへ向ける。そこには気が狂ったようにニタニタと笑う彼の姿があった。かなり嬉しそうではあるが、その額に滲む脂汗から動揺も見て取れる。、
「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……ヒーーーーーッッッッ!! ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒィィィィ!! うひゃほほほあーーーーーー!! ほへぇぇぇーーーへっへへへへひへひひへへへへ!!」
「スヴェン……」
遂に何かが切れたのか……舌をベロベロと振り乱しながら歓喜の声を上げるスヴェンが、両手を掲げながら膝を床へ付けていた。
「素晴らヒィィ、素晴らひ過ぎウゥゥゥゥ! まさにィィィィ、まさにこれゾォォォ魔導科学の真骨頂ォォォォォォ!! これで……これで私はァァァァァ、かつての連中に見返すことがァァァァァ出来ィィィィるゥゥゥゥ! ウヘヘほほほほひひひ」
激しく身体を振り乱すスヴェンを皇帝はただ静かに静観していた。そこにはスヴェンとは対照的に焦りもなく、ただ眺めるだけだった。
「愚者どもがぁぁ! ようやく私の正解に気付くかぁぁぁ! だが……だがそれだけだァァァァァ! 最初に、最初に到達するはこの私だァァァァァ! あの場所へ辿り着くのはワーーーターーシーーーーダァァァァ! 人類に不可能はなァァァァいィィィィ!」
皇帝は彼にアレの詳細を聞く前に、彼の昔を思い出していた。
彼が目指す真の目的……それを彼は一度聞いている。他の魔導科学者たちはソレは不可能だと嘲笑い、小馬鹿にした。彼は基本気にはしないのだが、彼が目指す夢を馬鹿にすることは許せなかった。
アレは、あの発狂はその可能性に大きな一歩の可能性を見出したのだろう。
皇帝は喜びに狂う親友の肩へ手をポンと置いた。
「落ち着けスヴェン。アレの説明をもう一度聞きたい。此処で理性を暴発させてどうする?」
「ッ!?……こ、これは…恥ずかしいところを……すまなかった」
「ふふ、気にするな。初めて賢王石を見た時と比べればまだ紳士的な方だった」
一呼吸置いた後、スヴェンは椅子へ腰掛けて話を始めた。
「アレこそノスウーラの切札、魔導転送砲。アレから放たれたモノ……アレをビームなる架空兵器と捉えるものも少なくはないだろうが違う。アレはビームではない」
「まぁそうだろうとは思っていたさ。それで、アレは何なのだ?」
「アレは賢王石が放出した膨大な魔導エネルギーと魔導瘴気を一点へ凝縮させて放出したものだ。言うなれば強力なエネルギー体となった魔導瘴気の奔流と捉えて良い。放てば放つその時間だけエネルギーの奔流は扇状に範囲を広げ、その射線上に居るもの全てを焼き尽くす超破壊エネルギー。まさかあそこまでの射程と破壊力を持っているとは思ってもいなかったがな」
「エネルギー物質化した魔導瘴気の大砲水の様なモノか。砲身へそれを転送、その貯留と安定化をリング装置で安定化させ、限界値到達と同時に一気に放つ。というより逃げ道の戸を開ける、に近いか。しかし、そうなれば魔導瘴気が広範囲に広がる危険があるのではないか?」
「その心配はない。この試射実験の前に魔導転送砲の小規模実験を実施した結果、魔導瘴気の使用後は確かにその目標に漂う形にはなるが日光に晒されると自然消滅する事が分かった。コレは通常ではあり得ない現象で、魔導転送砲として活用された魔導瘴気に何かしらの変異が起きたと考えられている。その仕組みは未だに不明な点が多いが、少なくとも魔導転送砲に使われた魔導瘴気は日光で消滅する事は確実だ」
「つまりは……よく分かっていないと?」
「それも今回の大規模試射実験で分かる事だ。今、現地に配備している優秀な研究者達に残留魔導瘴気や空気中の魔粒子を調べさせている。ここまで来たのだ……やっとここまで来たのだ…台無しになってたまるか」
皇帝は少し考え込んだ後、不敵な笑みを浮かべながらブツブツ独り言を呟いているスヴェンへ声を掛けた。
「研究は続行だ、お前が求める形への追及を続けよ。予算も増額を約束する」
「おぉ! 友よ、感謝する!」
「ところで、ノスウーラの量産化は可能か?」
皇帝の問いかけにスヴェンは考え込む。
アレほどの性能を持つ大戦艦をすぐにバンバンと増やせるとは皇帝も思っていない。
ただその為の目安は知りたいと思った。
アレが量産化に成功すれば、間違いなくレムリアは全世界を制覇出来る。
もはや土地という概念ではなく、1つの世界…もとい惑星の単位で一国家としての認識となる。
「直ぐには無理ですな。知っての通り、あれ一隻に投じた予算や資源はバカにならん。多くの試作艦を作り、失敗しては作り直しを繰り返し造り上げたのだ。少なくとも後8年、いや、9年はかかるかと。10年までは掛からないとは思うが……うぅむ」
「そこは任せる。他にも賢王石を用いた新たな兵器開発に尽くしてくれ。それから、資源エネルギー問題解決もだ」
「任せてくれ、友よ」
固い握手を交わす2人。
1人は国の発展と栄光の為、1人は魔導科学者としての探究心を深める為、互いの利益が一致した才人。
ーーー
ーー
ー
1週間後、使節団が帰国。
その更に3日後に帝国御前会議が始まる事となった。
時を同じくして……帝国内で鳴りを潜めていた影が少しずつ動き始めた。
会談・会議シーンも友達からは「分かりやすいけど、逆を言えば捻りがない。もっとあっても良かった。」と言われました。
つまりは小学生の雑談レベル?かな?読み返すとやっぱりそうだなぁと思いました。
ミリタリ知識も相変わらずですし、ファンタジー設定や近未来設定に頼っているのも否定しません。広げた風呂敷が広過ぎた事も認めます。
でも最後まで続けます笑笑
加筆修正は勿論ありますが、一応終わりまでのストーリーは前々から考えてましたのでキッチリやりますよ(^ω^)
…と、底辺作家の意気込みでした( ´ ▽ ` )
長くなって申し訳ありません。
島戦争更新まだかな…