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日出づる国、異世界に転移す  作者: ワイアード
第1章 接触編その1
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第9話 医師達の戦場へ

溜めてた分を出します。もしかしたら、次話は少し期間が空くかもしれません。

ーー2日後 アムディス王国 翼龍基地


翼龍が飛び立つために作られた、広くそして整ったグラウンド、長くそびえ立つ鉄塔とその先に付けられた赤く大きな旗。その少し離れた所にある石造の大きい施設が幾つかある。翼龍基地の司令塔と龍舎である。


その翼龍基地の司令官ダロック・ドゥビア。58歳。中年太りのお腹が少し目立つ男だが、若い頃は前線で常に活躍していた英雄である。今はもう前線で戦う体力はないが、当時培ったノウハウを買われ、翼龍基地の司令官として指揮を取っていた。本人としては、出来れば隠居して孫子と暮らす事を考えていたが、上からの命令であっては仕方がなかった。


しかし、今日彼は自分がこの基地を任された事に歓喜していた。未知の北東新興国ニホン、その国の『国境無き日本医師団(MSFJ)』が空飛ぶ乗り物でこの基地にやって来るのだから。


「ニホン国…そして空飛ぶ乗り物…年甲斐も無く興奮してくるわ!」


ダロックは今か今かと近衛兵を引き連れ、外で出迎える準備をしていた。しかし、予定到着時間にもうすぐなるというのに司令塔にある魔力探査機には翼龍などの反応が一向に出てこない。


その場にいる全員が、何かトラブルがあったのではないかと思っていると1人の兵士が空から何かが近づいて来る事に気付いた。やがてそれは近づくにつれ段々音が大きくなり、ハッキリと見える位置まで来ると、ダロックを始め基地にいる兵士達は驚愕と困惑していた。龍舎からは翼龍の威嚇声が多く聞こえる。


「な、なんだアレは⁉︎龍なのか⁉︎いや、アレはどう見ても龍にはッ‼︎」


「あ…あぁ…バケモンだ…俺たちはバケモンを呼び寄せてしまったんだ…。」


「助けて下さい神様ぁ…!!」


腰を抜かす者、後方では何人かの兵が逃げ出している、中には気絶している者もいたが司令官のダロックは恐怖を押し殺し、その場に居続けた。



陸上自衛隊『CH-47J』(チヌーク)

全長30.18m、全幅16.26m、巡航速度270㎞

最大搭載量約9t、乗員は基本38名、最大55名、軽車輌であれば2輌まで可能である。


チヌークが着地し、ハッチから15人の医師が現れた。その中にMSFJの団長の狭山泰平(さやま たいへい)、60歳。


未だにチヌークのプロペラ音と風がうるさく響く為、狭山は出来るだけ大きな声で話した。


「お出迎い頂きありがとうございます!私はMSFJの責任者、狭山泰平と申します!本日は宜しくお願いします!」


「私は翼龍基地の司令官ダロック・ドゥビアです!本日はよくお越しくださいました!色々と伺いたい事が山ほどありますが、今は時間がありません!直ぐに馬車に乗って王城に向かいます!早馬で行くため、多少乗り心地に難はありますが、30分ほどで着きます!」


「宜しくお願いします‼︎」


こうして『MSFJ』は急いで王城へと向かった。道中の乗り心地はハッキリ言ってかなり悪かったが今は一刻を争う事態、文句を言うものは一人もいなかった。






ーー2日前 アムディス王国 魔伝室


別班からの通信で戦争を防ぐ為、日本から医療の提供をしていきたいと言う提案に対し、バルトルア国王はこれを了承した。上級政務官達は皆提案に応じるべきではないと訴えたが全て却下された。バルトルア国王は少し割り込む形でゴメスに代わり魔伝に出た。


『ーー…いいだろ、そなたらの《医療提供》の案を飲もう…実は我が国の上級政務官の娘が重い病を患っておる。余命はあと1年持つか持たないかだ…。もし、その娘を治すことが出来れば、此度の聖戦を中断してやっても良い!それどころか、ニホン国と友好条約も結ぶ事を約束しようではないか!だが!もしこれが嘘偽りまたは治せなかった場合は、その医師たちを斬首刑に処し、ロイメル王国とニホン国に対し無慈悲な聖戦を行う‼︎‼︎良いな‼︎‼︎ーー』


『ーーはい、分かりました。ご了承頂き感謝します。ーー』


『ーーうむ、では2日後の朝に我が国へその医師たちを連れて来るがよい。ーー』


『ーー分かりました。しかし、2日となると少し時間が足りません、空路から貴国へ入国しても宜しいでしょうか?ーー』


『ーーん?空路だと?(翼龍の類で来るのか?)まぁ良かろう、ならば我が国の南西にある翼龍基地へ降りると良い。一際高い鉄塔に掲げられた赤色の大きな旗が目印だ。基地の兵士達には此方からちゃんと伝えておく。ーー』


『ーー分かりました。ありがとうございます。ーー』


『ーー分かっておると思うが、約束を違えるとどうなるか…みなまで言わずとも理解しておるな?ーー』


『ーーご心配なく、約束は必ず守ります。ーー』


「…皆のもの聞いたな、また少し忙しくなるが宜しく頼むぞ。」


「「ハッ!」」


バルトルア国王は不安もあったがそれ以上に娘が助かるかもしれない事に期待と希望を抱いていた。


(フフ…こうも簡単に他国民を迎え入れるとは…ベルム教もここまでか…いや、国教に縛られた法律は一種の呪いのようなものかも知れんな…だが今はそんな事はどうでも良い!娘が助かるのなら…私は…)


バルトルア国王は身勝手な自分を恥ながら、ベルムの神に心の底で祈った。




ーー時は戻り アムディス王国 王城内


『MSFJ』は王城に着いた、メイドと執事達に出迎えられるが、中には少し鋭い目線も感じた。近衛兵達は、明らかに我々を警戒していた、無理もない、未知の国の医師が現れ、そいつらが上級政務官の娘を治療するのだから。


狭山達は自分達はある意味『戦場』にいる事を理解した。そして、狭山達はメイド達の案内のもととある一室へと辿り着いた。部屋に入るとそこにはベッドで寝ている1人の幼い少女がいた。その顔は蒼白で呼吸も荒く苦しそうだった。


「この娘の容態は?」


「え?あ、ハイ!数年前から咳が止まらず、熱も続いています。身体を動かすこともままならず、あと血の混じった痰が出るのです。」


狭山はこれらの症状を聞いてある病名が浮かび上がった。


「もしかすると…普通のマスクを外して、N95マスクに付け替えろ。全員だ!あと、エタノールの用意、あとツベルクリン反応検査の準備、X線検査も」


MSFJだけでなく、政務官やメイド達もN95マスクを着用され、困惑していた。


すると1人の医師がツベルクリン溶液を皮内注射で行おうとする。


「ッ⁉︎おい貴様ぁ、何をするか!」


近衛兵の1人が詰め寄ってくるが、狭山が間に入る。


「この娘の病を確認する為に必要な事なんです!素人は黙って頂きたい!」


「な、何だと‼︎‼︎」


近衛兵が剣を抜こうとするが、直ぐにゴメス局長が制止させる。


「やめんかバカ者‼︎…申し訳ありませんサヤマ殿…治療に関しては貴方達に全てを任せます。どうか…どうかその娘を助けて下さい…」


「…ハイ!」



事は急を要する事態であった為、急いで採血を行い、それを『CケアWウォーカー』にセットする。


次にX線検査、携帯型にまで小型化に成功したX線検査機械の結果、上肺野に多数の陰影が見られた。まだPCR法で検査して見なければハッキリとは分からないが、現時点である疾患が出てきた。



「肺結核だ…それもかなり悪化している。」



他の医師達もコクリと頷く。聞きなれない病名を聞いたゴメス達は何のことかサッパリ分からない様子だったが、狭山から不治の病の詳細を聞かされて、驚愕した。


「な、何と恐ろしい病だ…それで、我々も感染している可能性があると?…」


「まぁ個体差もありますし、明確な症状が出ない事も稀にあるのですが、この病は空気から感染していくので、今までこの部屋に入った事のある方々をお呼びいただけませんか?検査を行いたいので。」


「あ、あの針の様なのを刺すのか?」


「えぇ、まぁ…」


それを聞いた途端政務官達は「私は感染していない!!」「あの様な恐ろしい事を我々にも行うと言うのか!冗談じゃない‼︎‼︎」と言った答えが怒声にも近い声で聞かれた。まぁ無理もないと狭山は思った。


しかし、ゴメスの説得により何とか全員の承諾を得る事が出来た、中には注射針を刺す瞬間に暴れる人や泣き崩れる人、貧血で倒れる人が出てきたが無事に終えることが出来た。


と思いきや、政務官達全員が注射を終えて部屋から出ると、少し後に1人の男が入ってきた、鋭い眼光で貫禄のある人だった。


「えっと…貴方は?」


「私もこの部屋に何度か入った事がある…」


「ではこちらへどうぞ」


「う、うむ…」


早速注射をその男の上腕に刺す、男は少し「うっ‼︎」と声を出したが全然暴れる事なく終えることが出来た。因みに貧血で倒れたのはゴメスである。


「あの娘は…『ハイケッカク』と呼ばれる病だったと聞いたぞ。」


「はい。暫くは感染拡大と悪化を防ぐ為、隔離した部屋に入れてあります。できるだけ入室は控えるようにしてください。」


「わかった、それで…治るのか?」


「抗結核薬を長期服用していきます。あと、十分な睡眠とバランスの取れた食事を摂ること、暫くは我々もここに留まり、あの娘の治療を行うつもりです。…かなり体力は低下していましたが御安心下さい、助かります。今も投薬により症状はかなり収まっております。」


「そうか…そうか…」


その男は肩をブルブルと震わせながら涙を滝の様に流していた。それを見ていた狭山達は困惑したが、同時にこの男があの娘の父親である事に気付いた。


そして男はガクッと跪き狭山の手を取り必死に感謝の言葉を伝えた。


「…ありがとう…ありがとう…あの娘は…私の…私の…娘なんだ…うぅ…。」




それから約3カ月の時が過ぎる。セティ・ラザロは外を歩けるまでに回復した。そして、ロイメル王国とアムディス王国との戦争は起きないままとなり、日本は両国との友好かつ平和的な国交を結んだ。


アムディス王国は今まで占領した国々を解放し自国が犯した過ちに対し謝罪と賠償をする事を誓った。無論、占領された国々の怒りは簡単には収まらなかったが、日本の仲介により事無きを得た。また、その様なバルトルア国王に対し、王座から引きずり降ろそうとする政務官達も出てきたが、情報局の働きにより失敗に終わった。



これらにつられる形でドム大陸内や付近の様々な島国が日本と国交を結びたいと申し出が出た。


全てが丸く収まるかに思えた。しかし…



ーーロイメル王国 城内


「おのれェ…ニホン国めぇ、どの様な手を使ったは知らぬが、アムディス王国を手なづけるとは…これでは私のドム大陸帝国建国の野望が水の泡じゃあないかぁ!」


城内の薄暗く人通りの少ない広間の隅で爪をかじりながらブツブツと怒り文句を呟いていたのは、ロイメル王国上級貴族のリヌート・テュメルである。


「まさか…本当にあのガキの病を…⁉︎いや、あり得んな。北東の蛮族国家があの不治の病を治せるはずが無い!5大列強国の内の一国、ハルディーク皇国の医薬学術の結晶である『ルカの秘薬』を持ってしてもせいぜい症状を抑える位の効果しかないのだ!」


少しするとリヌートはある事を思いつく。


「やはり、一度『本国』へ戻るべきか…せっかくリヌート・テュメルに『慣れた』と思ったのに‼︎畜生が!それも全て…全て…ニホン国の所為だ‼︎」


そう吐き捨てると『リヌート・テュメルと名乗る人物』は、薄暗い広間を後にした。


ドム大陸編はこれで終了にする『予定です』。

医療現場についても詳しくは分かりません…。

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